どの企業も品質にこだわりを持っているかと思いますが、どこまで品質を追求できるかは各社の考え方に寄るところだと思います。弥生における「品質」への向き合い方について、現場の実体験を踏まえてお伝えしたいと思います。
プロフィール
川本 拓也
新卒時はSE志望だったが正式配属で品質部門に抜擢される。そこで出会った品質業界の第一人者の影響を受け品質の道を進むことを決意。客先に常駐してテストに関する一連の業務や開発プロセス改善業務等を担当する。相談し合える仲間を得るために転職。弥生ではQLとQAを兼務。夏は海(ウィンドサーフィン)、冬は山(スノーボード)に出没。
QA(Quality Assurance):プロジェクトの品質監査を行い、品質を保証する
QL(Quality Leader):開発工程での品質管理を行い、品質をコントロールする
▼目次
● 自分の常識が覆った弥生の品質へのこだわり
● お客さまのためにリリース延期の判断も
● みんなで一つのものを作っている感覚が持てる
自分の常識が覆った弥生の品質へのこだわり
―弥生が大事にしている「品質第一」について、弥生ならではの品質へのこだわり方を感じた点はありますか?
川本 そうですね…まず、どこの会社でも品質指標があると思います。障害密度やレビュー密度など、母数当たりの指摘件数で基準値が決まっていて、基準を満たしていれば次のフェーズに進められるというルールが一般的です。それに対して、弥生は基本的に品質指標を使わないようにしています。
―指標が無いんですか!?どうやって品質をチェックするんですか?
川本 データだけを見るのではなく、プロジェクトメンバーの行動やコミュニケーションなども見て品質に懸念がないかを確認しています。懸念があれば中身を見て本当にマズい状況なのかを分析して、必要に応じて施策を打っています。
かなり工数はかかりますが、気になった点は徹底してやり切ることを基本的なルールにしています。
―全てチェックするのは大変ですよね。なぜそのような方法を取っているのですか?
川本 品質指標でチェックする場合によくあるのは、指標を満たしていれば多少気になる点があっても品質条件をクリアしているので次のフェーズに進めてしまったり…良くないことですが、メンバーが数値をいじって指標を満たしたことにしてしまったりということです。こういった形骸化のリスクがあるなら、いっそ指標を使わないということを教えていただきました。私が入社したときにはすでに指標が無かったです。
―指標が無いと聞いて驚きますよね
川本 驚きましたよね~!入社時に「指標を作らないんですか?」と聞いたことがあったのですが、形骸化・数値遊びになってしまうことを避けたいという思いについて説明していただきました。なるほどなと。
レビューの指摘内容や起こった事象に対して、一つひとつ施策を打って、自分たちが納得して、品質がいいと自信を持って言えるまでやり切る。このやり方はお金も時間もかかりますが、「品質第一」を掲げて自社製品を作っている弥生だからこその仕組みだと思います。
―前職とはやり方が違うと思うのですが、弥生のやり方は川本さんに何か影響がありましたか?
川本 パラダイムシフトが起こりましたね(笑)。以前は、指標に対してどうかという考え方でしたが、今はそういうロジックが成り立たないので、開発について自分でも説明できるレベルにならなければならないと思っています。そうでないとリリース判定の場で経営層にも納得してもらえません。
開発経験があまり無かったので、設計のどこが弱くて、それに対してどう施策を打つかということが正直苦手でしたが、今はむしろそれがメインです。今の業務で得ているのは、開発の技術というよりは、考え方だと思います。それは様々な場面に応用できるので、自分の成長に繋がったと感じています。
お客さまのためにリリース延期の判断も
―開発現場で「品質第一」を感じたエピソードはありますか?
川本 一番衝撃を受けたことですが、かなり工数をかけたプロジェクトを、このまま進めても品質が良いサービスをお客さまに提供できないということで、最終報告の会議でリリースが延期になったことがありました。
―え!かなり進んだ段階でのリリース延期ですか!?
川本 そうなんです。私が入社直後で自己紹介をする会議と同じタイミングの会議だったのですが、目の前でこのままではリリースは難しいからやめようという判断があって、この会社は建前ではなく品質第一を有言実行しているんだと度肝を抜かれました。
―川本さんの今までの経験でも無かったことですか?
川本 品質保証に携わってきた8年間では、そのようなことは無かったです。マイルストーンに向けて頑張るのは当然のことですが、頑張った上でもまだ足りないと思うところはどうしても出てきてしまいます。しかし、その部分は次直そうとか多少割り切ってリリースすることが普通だと思っていました。
自分のこれまでの価値観からすると、最終報告の場ではリリースすることが決まっていて、誰も覆さないと思っていたので、仕切り直しをするという発想自体が無かったです。
―入社直後の会議で川本さんの価値観がひっくり返るような体験をされたのですね
川本 最終報告の場で、報告すべきことをきちんと報告して、その上で判断ができるということは、弥生は言葉通りの「品質第一・お客さま第一」を表した行動ができるのだと、とてもびっくりしました。
―この判断がされるまでに、関係者がさまざまな思いで取り組んできて、やっと最終の場面での判断なので、判断する側もかなり慎重に検討されたのだと思いますが、誰もができることではないですね
みんなで一つのものを作っている感覚が持てる
―他にも今までとは違うと感じた経験はありますか?
川本 チームで業務ができるところですね。前職では、チーム内で品質に関わっていたのは基本的に私だけだったので、相談する相手がいない環境でした。
弥生では、QAチームの中でお互いの状況を報告し合って、「そこ危ないんじゃないの?大丈夫なの?」と注意喚起し合えています。慣れない間は先輩がOJTもしてくれたので、仕事を進める上でとても助かりました。QLチームは参加したばかりですが、メンバーとの関わりが感じられています。
―相談できる相手がいることはとても大事ですよね
川本 あと、QAという立場上、プロジェクトから一歩引いた立ち位置にいたので、みんなで一つのものを作っているという実感が得にくいとも思っていましたが、弥生ではその点も変わりました。QLになってから、開発メンバーだけでなくマーケティングや顧客サービスの部門の方とも関わり始めています。
製品のシェアが高い弥生の製品なので、お客さまからのフィードバックがマーケティングや顧客サービスの部署に多く集まるんです。お客さまが本当に求めていることを把握して、弥生ができることを考え、この先事業をどうしていくかを考えるための大事な繋がりです。「チーム弥生」はその言葉通りだと、あらためて感じているところです。
―他部署とも関わりながら、チームメンバーとも相談し合いながら仕事ができたら、みんなでモノづくりできてる感ありますね!
川本 はい。今後は、企画段階から関われるようになりたいと思っています。今、次世代プロダクトという新しいプロジェクトが走っているので、企画段階から品質をどう高めるかということを携わってみたいです。具体的な案はまだ無いのですが(笑)。モノづくりの根幹から関われるようになりたいと考えています。
―新しいプロジェクトだからこそ根本から関われるチャンスですね!本日はありがとうございました!