werollってどんなところ? マーケティングエージェンシーと名乗りながら、その範囲は時にコンサル、実装部隊、映画関係でのディープな動き、出版、グッズの展開…それぞれ色々、なぜそんなに”色々”やるのか。この不思議な会社を1人ずつの言葉と彼らの周囲の人からの言葉で紹介していく連載。
第2回は共同代表の浅野雄介から「究極のマルチタスク・ワーカー」と称されるCCOの北原豪。呼び名の通り、ミニシアター・K2の運営、自身の会社であるシステム開発会社と都内ロッククライミングジムの運営、地域の音楽イベントと多彩。もうひとつのwerollの顔となる、不思議な自在さと繋がりを生み出す存在だ。クールな語り口に、とてつもなく熱い哲学をもつ北原のその熱源を探りたい。
日々のルーティンは、ない。複数の現場に足を運ぶことが強いて言えばルーティン。直接に見て把握する「場」に身を置くことが大切
北原の佇まいは、物静かな第一印象だ。声のトーンも発言の数も淡々と、一見クールな風情。話し始めに見据える目は何か見透かされるようで緊張も覚えるが、相手と向き合い語る言葉は言うなれば「誠実」。小細工なしの直球が的確に投げられるのは時間を無駄にしたくない切実さがあるのだろう。
「ここ(下北沢のオフィス)にくるのは週に一回くらい。でも浅野くんとは非同期のコミュニケーションも合わせたら完全に毎日以上には連絡を取ってるかな」。werollのほか、自身の法人であるSunborn、また都内のクライミングジムや地域のプロジェクトなど各現場に顔を出すだけでほぼ平日は埋まってしまう。
「支配人の立場のK2 (werollの階下にあるミニシアター)には、ここに近いのもあるし。顔を出すだけで言えば、werollとそれぞれ週に3回くらいはきているかな。いわゆるデイリーのルーティンはない、立てようがない(笑)」。どの現場に行くかの予定はあり、自身のプライベートでのクライミングは毎週火曜。物理的な居場所のルーティンはある、とはいえ小豆島のロッククライミングのプロジェクトなど出張もある。
「現場のある場所(映画館やクライミングジム)は、現場に身を置きに行くし、それぞれのメンバーとも定例で、少なくともオンラインミーティングで顔を見るようにしています。大きく場の流れや個々の顔色、そういった大切なことは知っておく必要があるので」。
細やかなことや決定の要素を徹底して現場から汲み取るため、今日もふらり現れる。
リアリティのあるものじゃないと人生かける意味がない。時間浪費してマネーゲームしたくない。真剣に遊ぶ、味わい尽くす
クールなようで実は一番熱い、自由な発想と行動の一貫した説得力で突き進む
この日は浅野と同席していて、いつものようにビジネスのトークセッションが始まる。
「社会的な課題感はいつもあって…自分の世代で摩擦を起こしていかなきゃいけないし、その課題感がある中で余計な浪費をしていたくない、マネーゲームもしたくない。しょうもないベンチャー作って売り抜けて終わりみたいな。それって何にも勝ててない。それよりもちゃんとしたスキルで長く続けて価値があるものを作る。それを届ける」。
会社を含めた世代論から、時代の変化に話題がさしかかった時、北原が話し始める。
「こう言うことやりながらチャンスをうかがってる。必然性というか、リアリティのあるものじゃないと人生かける意味がない。仕事を真剣に遊ぶ、自分の体も使って遊ぶ中で、全て味わいながら紡いでいくっていう」。
限られた人生という時間、一曲の楽曲を一緒にする仲間に求めるのは「優劣とか、評価っていう視点も重要なことなんだけど。価値観を共有できればうまく行くんじゃないかって楽観的なところもある(笑)」と、急にクシャッと笑う。
「あとは(事務作業とか)必要な時に真面目な人間にすぐ変われるかどうかも大事かな。
それができる限り普段はちゃらんぽらんでいいし。それが組織だとスキルの基本だね」
キャラが違う代表2人は、バンドでの担当掛け合わせみたいなもの。当然役割も違う、会社って組織も僕はそうあって欲しい
日の少し翳ってくる時間まで。顔を合わせても合わせなくても、こんなセッションが急に始まる浅野と北原というユニット
引き続き浅野とのトークセッションは続く。北原は時折携帯に、浅野はPCのメッセージへの返答やMTGを挟みながらも、話題は改めて多彩すぎる北原の仕事を端的に言うと?
浅野「werollで北原さんはweroll Oneではバックオフィス系の支援しつつ、営業をSunbornのメンバーが支援したり管理的に入ってる。Productionsだと(前のzineの)『attempt+』はクライミングテーマだしがっちり入ったり。K2とか小豆島でのコラボアイテムなんかのネタを突っ込んでいく」
北原「経営権的にはフラットなんですけど。各事業ってとこだと、バックオフィスサポートと人のマネージメントとかの守りをやってる。(ネタを持ってくる話には)色々違うスパイスにはなっているかなと」
浅野と北原の2人はこれまでのキャリアも違いキャラクターも違う、少し不思議な組み合わせにも感じる、その問いに対しては。
北原「(werollは)バンドだよねって話をしていて。だから役割もテイストも違う、そんなもんじゃないかと。バンマスが誰かみたいな話で。このバンドだと曲だとこの人が取ってやってるって言うような形でいいんじゃないかなと。その延長線上で今のところうまくやれてる」。
ただ、時代的な問題なのか世代的な固有性での傾向か、バンド的なフラットさを求めていない人が増えているとも言う。
北原「特にアシスタントからメンバーに上がるときに、方向性を示して欲しいと求められると、やりたいことないの?ってなる。バンドカルチャー的なものが廃れたというか、譜面が揃っていてそれを演奏するってのだと、即戦力の業務委託の方がいいかもしれない。”あなたがそうくるならこっちはこうしようって言う気持ちでいるよ”って言うスタンスでいるんだけど」
まるで、そこには答えが既にあってそれを教えてもらいにくるつもりの人が多いと感じる。確かに、検索世代やマニュアルで答えを正しく出すことが「コスパ世代」「タイパ世代」という時代ではあるかもしれない。
北原「新しい人が来たら、あ、この人いたらこれできるじゃん!って言う、そう言うの楽しんでるって部分があって、そう言うのがないとバンド的にはなり得ない」
浅野「北原さんが大体、とんでもないものを持ってくる(笑)。ジャムってる間になんか変なの入れてきたよ!みたいなのが、このあとどうするんだよ!ってそう言うのもコミュニケーションの取り方の一つだし」
北原「究極そういうことがいいなと思ってる、お互いにリスペクトしていて仕事ができればいいし」
インディーズのバンドで作品を世に出す、ライブや活動などを全て自分達でやりきるという経験がベースにある北原。新たなものは日々のセッションから生まれてくる
共同代表の浅野雄介から見た北原豪とは
北原のいうところの「フラットなバンド性、違う役割を仕掛け合えるバンドメンバー」としてwerollの確固たるバンマスの1人、CEO浅野雄介は、笑い合い真剣に語り合う日々の中から彼をこう評する。
「(北原豪は)身体性を大事にしながら、とにかく完遂する男。究極のマルチタスク・ワーカー。一緒に10年先を見通しながら、この瞬間に為すべき仕事を進められる稀有な存在」
ともに真剣に遊ぶ、いつも音楽が鳴っているような関係。そんなメンバーと出会えること、ここで出会えたこと。それは、人生の中でもかけがえない喜びのひとつだろう。
浅野「ジャムってる中で、北原さんが見つけてきたとんでもないネタを投げてくる。で、そうくるかとこっちも返す。みたいな関係」というバンド『weroll』に、あなたならどんな音を重ねてくれるのだろうか
北原 豪 Kitahara Gou weroll共同代表(CCO)
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大学在学中から音楽活動を始め20代をインディーズのバンドシーンに捧げる。この時に、作品や見え方にこだわり過ぎて周りが見えなくなる間違いや、限りある中でもこだわり抜いて最善を尽くす喜びを学ぶ。そのモノづくりの経験や挫折から、現在は企業やサービスの「伝えたい」ことを「伝わる」に変えることを信条に活動。Webサービス・アプリの構築からグロースまで支援する株式会社Sunborn代表、マーケティングの力で企業のグロースを支援する株式会社weroll共同代表、ロープとボルダリングを併設した総合クライミングジムROCKLANDS代表。シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』支配人。クライマー。
<Photo>
Akimoto Fukuda
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