「諦めるという選択肢が、僕にはない」。九州・四国・沖縄などで「Oiwaii」の新規導入を切り拓く市場開拓チームの吉房さん。1年越しの受注、沖縄の文化に応えるための仕様変更の調整など、数字だけでは測れない粘り強さで、全国展開を牽引してきました。業界未経験からどうやってお客様の信頼を勝ち取り、成果を出し続けているのでしょうか。その価値観や働き方、原動力に迫りました。
PROFILE
市場開拓チーム 吉房さん
学生時代からスタートアップのインターンでCSや営業を経験。従業員エンゲージメントに特化した、創業前のベンチャー企業の長期インターンシップでWebライティング、新規の顧客開拓、契約後の支援までビジネスサイド全領域に従事。活躍を評価いただき、2番目の正社員として新卒入社。年商2億を超えるタイミングでCSのマネージャーに昇格しながら、営業の個人予算を社内で唯一達成。学生としての期間を含め5年間従事した後、TAIANからのオファーにより転職し、エリアの新規受注を開拓する営業に従事。2025年の4Q、2026年の1Qの営業成績は社内トップクラスとTAIANの事業を牽引する重要な存在に駆け上がる。
滝行とサッカーで培われた、やりきる力
──今日は、吉房さんのエリア営業としてのご活躍について教えてください。代表の村田さんから、「吉房さんなしではTAIANの九州・四国・沖縄エリアでの活動は語れないほどの存在感」だと伺っています。まずは、現在のお仕事について教えてください。
市場開拓チームの営業として、九州、四国、沖縄の婚礼・宴会を手掛ける式場を運営するお客様に
自社商材の「Oiwaii」を通じて、お客様のDX支援をしています。市場開拓チームは僕あわせて3名のチームで、それぞれの担当エリアにあわせて、各エリアでの新規導入を目指す形で営業をしています。
── なかなか難易度の高そうな営業をされていらっしゃいますね。TAIANに入社されるまでのキャリアを教えてください。
大学生時代、周りがサークルや飲み会に夢中な中、僕一人スタートアップのインターンに飛び込みました。サッカーをずっとやっていたので、何かに120%の情熱を持ってぶつかるのが当たり前で、アルバイトには物足りなさを感じてしまって。熱量を持って思いっきり動けるフィールドとして、スタートアップのインターンがちょうど合っていました。2社のインターンでCS(カスタマーサクセス)などを経験し、そのうち1社に新卒入社しました。ここでは「ourly」(アワリー)という、社内コミュニケーションSaaSの法人営業とCSを経験しました。
──サッカーで培った情熱ややり切る力の他に、ストイックさも感じるキャリアです。学生時代はのびのびしたいという方も多いですから。
実家がお寺の家系だったことが影響しているかもしれません。滝行をするのも珍しくありませんでした。幼いころから当たり前の日課だったので、当時は「鍛えている」という意識はありませんでしたが、後になって「あれって普通じゃなかったんだ」と気づきました(笑)。大きな影響を感じる場面はありませんが、苦しい時にやりきる力はここからきているのかもしれません。
「楽勝ですよ」と言わなかったTAIANで挑戦したかった
── 新卒で入社した前職での営業を3年続けた後にTAIANに入社されていますね。転職活動では引く手あまただったと思います。TAIANを選んだ決め手は?
まず、調達型の成長スピードの速いスタートアップであることです。私は前職で5年間ベンチャー事業の立ち上げに従事してきましたが、自分の力不足やマーケット状況もあり、事業・組織成長を経験することができませんでした。
そこで、調達型のスタートアップに挑戦し、事業も組織も非連続的に成長する環境で、自らの力を伸ばしてみたいと思っていました。
いくつかのスタートアップからオファーをいただきましたが、中でも決め手になったのはTAIANの「誘い方」です。他社の多くは「吉房さんならすぐ売れてマネージャーになれますよ」「成約率30%のプロダクトをご用意してます!」「楽勝ですよ」とハードルを下げるオファーをしてくださいましたが、それに少し違和感を感じていました。
30代までのキャリアの礎をつくる今の時期は、ビジネスパーソンとしての底力をつけたかった。そんな時TAIANの方から聞いた「正直うまくいくかどうかはわからない。セールスが難しい市場かもしれない。けれど、婚礼業界を盛り上げ、牽引していく存在になっていくつもりだ」「うちが伸びなかったら、婚礼業界は縮小する一方かもしれない。業界内外に向けたチャレンジだと思って取り組んでいる」という言葉が響きました。ここでなら、自分の力を育てながら誰かにそれを還元することができると感じました。
── あえて難しい方を選んだということですよね。
20代後半のうちに負荷をかけた方が、30歳で取れる選択肢が確実に増えると考えているからです。というのも、僕が尊敬している経営者の
方々には、20代は圧倒的に仕事をして目の前の顧客や市場に向き合ってきた方が多いのです。スポーツと同じで、先に鍛えておいた方が、その後のプレーに幅が出るはずですから。
九州・四国・沖縄へ。足を運びイシューを共有する営業
── 他の営業スタイルと比べて、エリア営業の最大の違いはどこですか?
お客様の数が限られており、さらにそのお客様が営業のプロであるということです。結婚式や宴会を手掛けるお客様は、高単価のイベントを消費者に売るプロです。その所作からトークまで全てが洗練されており、そこに法人営業をするのはとてもハードルが高い。これがエリア営業の最大の関門だと感じています。
──それをどのようにして乗り越えているのでしょうか。
婚礼業界出身者ならば他のやり方があるのかもしれませんが、私は業界未経験です。なので、徹底的にお客様を知り、自分の目でその素晴らしさを確かめて、そこで得たリスペクトを伝えることを大切にしています。
Web情報や口コミは徹底的に調べ上げ、その上で現地にも足を運びます。式場に行くと、どんな人が来館していて、どんな結婚式が行われて、お客様がどんな表情をしているかが、すべてわかるからです。AIが躍進し、さまざまな仕事を代替できるようになってきて、検索媒体が高次元化している今、あえて非効率でも足を使い、自分の目で情報を確かめることが重要になりつつあると感じています。
月曜にアポがあれば前の週末に現地入りして、土日にホテル周辺をランニングしながら来館者の様子を見ます。顧客層のモニタリング、駅からの交通手段、競合との位置関係などからその会場の差別化ポイントや特長を頭に入れておくのです。会場のブライダルフェアにお付き合いしているパートナーと参加することもあります。また、同じエリアのお客様から評判の声を集めることもあります。それらをアポイントで率直にお伝えすることが、関係値づくりの第一歩になっています。
エリア営業は、会食の機会に恵まれやすいのも特長です。そのお店選びも営業の大切な要素です。地方のお客様は車通勤が多いので、代行タクシーの番号や帰りのアクセスまで調べて臨みます。「よく調べてきましたね」と言ってもらえると、その後の会話の深さがまったく変わってきます。
そうすると、お客様が自然と課題やビジョンを教えてくれるようになる。目先の業務課題ではなく、その地域全体の経済・産業や工場誘致などの状況に併せた経営戦略や、婚礼事業に端を発した新規事業や新たな市場創出の具体的な方法に関するブレストといった、お客様にとってのイシューを話してくれるようになります。そのようなお客様のコアになる課題を教えていただいたら、お客様にとってもっとも役に立つソリューションだと思えるタイミングでプロダクトの導入を提案するのです。
──すごいですね。業界未経験でもそこまでできる理由は何ですか?
逆に未経験だからこそ、業界の固定観念を持っていないことがお客様の信頼につながっているように感じます。実際に私は多くの方が結婚式を挙げる年代である20代後半です。先ほどお話したリスペクトをお伝えしたり、細やかなケアをすることはもちろん、等身大の視点でフィードバックをお伝えしたり、お客様にとって一番役に立つことは何かを考えて提案をしたりしています。
PMFの前に、営業スタイルのフィットが必要。
COOからの助言
──そんな吉房さんにも、入社後しばらく受注が伸び悩んだ時期があったとか。
実は、最初の10ヶ月はほとんど売れませんでした。オンラインで完結させようとするスタートアップ的な商談の型が、お客様にも、私の営業スタイルにもフィットしていなかったんです。
また、「お客様の課題と理想のギャップを明確化してソリューションをあてる」といったSaaSの典型的な営業を行っていましたが、それも全く手応えがありませんでした。そもそも課題が顕在化していないお客様が多い上、営業そのものへの抵抗感がある方もいらっしゃったからです。
そんな時、COOの米倉さんから「PMF(プロダクトマーケットフィット)の前に、SMF(セールスマーケットフィット)が必要なんじゃない?」とアドバイスをいただきました。型通りの営業ではなく、「誰よりもお客様を好きになれているか」「家族に紹介できるレベルまでプロダクトに惚れ込んでいるか」というヒントをいただき、スタンスを根本から見直しました。
さらに、外部の営業コンサルタントに商談動画を見てもらいそのやり方もブラッシュアップ。現在の出張でお客様のもとへ足を運ぶスタイルへ転換したことで受注できるようになりました。
沖縄の婚礼文化を仕様に反映。
お叱りから見えてきた営業戦略
──これまでの営業経験で、特に印象的だったエピソードはありますか。
沖縄で経験したできごとです。導入が決まって喜んでいた矢先に、システムが沖縄の文化に対応していないことが発覚して、お客様からお叱りをいただきました。
沖縄では、結婚式における「招待」の文化に特徴があります。新郎新婦の周りの人だけでなく、「友人の友人」「元恋人」「なじみの飲食店の店員」など参列者の範囲が広く、招待した全員が来る前提のため出欠確認の習慣もありません。数日前になって参列者が2、30人前後することも珍しくないのです。そのため料理はテーブルごとの大皿料理のビュッフェ形式で、人数の前後に対応できるようになっています。
これに対し、TAIANの料理、飲料、引き出物などが確定したら全ての項目を変更できなくする「ロック機能」は適していませんでした。料理だけ、引き出物などを柔軟に変更したいというニーズに対し、プランナーが全てのロックを毎回外すことになり、使い勝手が悪い上、誤って他の項目を変更してしまうリスクがあったのです。
── そこからどう動いたんですか?
すぐに現地へ飛んで、その式場で行われるすべての披露宴を見学しました。その上で「システムに合わせていただくのではなく、沖縄の結婚式のオペレーションに合わせるのが絶対に正しい。必ずシステムを変えます」とお約束して。ただ、その時点では開発が動いてくれるかどうかは未定でした。
── 「変えます」と言い切ったのはすごいですね。
普段から出張のたびに社内チャンネルで出張の報告をし、「このお客様が沖縄でシェアを持つキーパーソンです」「このお客様を絶対に幸せにしたい」と発信し続けていたので、開発の優先順位を動かしてもらうための地盤ができていました。営業は社内にも働きかける仕事だと考えているので、このような核心的な要望が出た時にすぐに動いていただくことができました。結果的に約3週間で仕様を変更することができ、チャーン(解約)を防ぐことができました。
── その後、お客様との関係はいかがですか。
システムの件が落ち着いた後、今度はプライベートで沖縄旅行に連れていってもらったりするようになりました。そういう関係が、別の会社の紹介や新しい案件につながることも実際にあります。
── それがTAIANの営業戦略にもつながったとか。
地域で高いシェアを持つ会場をご支援し、そのお客様からの紹介でプロダクトを広げたり、その会場を運営する会社の売上が伸びることで少しずつ口コミでプロダクトの魅力を伝えていただく。この流れを自ら生み出し、それが会社全体の営業戦略のひとつになりました。とても嬉しかったですね。
1年越しの営業は、同じビジョンを共有したからなせた技
── 長期にわたって粘り続けた案件もあるそうですね。
あるエリアのシェアが非常に高いお客様で、1年越しでようやく受注が決まったことがあります。そのお客様は地域での婚礼シェアをほぼ取り切っていて、新規売り上げを伸ばすことが難しくなっており「まち婚」のような取り組みで結婚式に触れる機会を増やしたり、結婚式後のレストランや旅行をパッケージにして新しい商品を設計しようとしていました。
そこで、OiwaiiのWeb招待状機能によるゲストの参列情報のマーケティングに活用を提案したところ、「ゲストのデータを使って、結婚式後も関係を続けていける」と高く評価していただきました。
しかし、既存の基幹システムとの連携が大きな壁になり、全社導入には至りませんでした。昨年6月にWeb招待状の機能だけを4店舗に先行導入していただいたんですが、席次表アプリと連携できていないので現場のオペレーションが大変になってしまって。アカウントの発行数が伸びず、使われない状態が続いてしまいました。プロダクトを提供するTAIANにとっては、契約ではなくお客様の事業に貢献している度合いや、それに紐づくアカウント発行数が、然るべきKPIです。そう考えると、当時の提案は営業としては失格でした。基幹システム側の整備が進むのをひたすら待ちながら、定期的に訪問してお客様の状況と向き合い続けました。
── それが先週の訪問で、ついに受注が決まったんですね。
基幹システムとの連携がようやく整備され、受注することができました。お客様から「吉房さんの1年越しの営業が実りましたね」と言っていただいた時は、本当に嬉しかったです。さらに、そのお客様から別の事業部や会場への紹介をいただくこともできました。
── 1年間もの間、諦めずにいられた理由は何ですか?
諦めるという選択肢が、ないんです。お客様にとってのベストな導入タイミングは1年後でも3年後でもあり得る。お客様の役に立つことが一番大切ですから、長さはそこまで気になりません。
それよりも、「同じビジョンを共有できているか」の方が大切だと考えています。「システムが使いにくい」という課題ではなく「10年後のこのエリアのマーケットの売り上げをどう作るか」を共有できていたので、粘り強く待つことができました。
タイパ・コスパでは表せない喜びを存分に味わえる
── どんな人がTAIANに向いていると思いますか?
婚礼業界は、損得や合理性では説明しきれない領域の仕事なんです。人口動態的に考えれば、これから爆増する市場ではないかもしれない。けれど、「誰かに感謝を伝えたい」、「1人では生きていけないという本質」——そういう人間の根っこにある“衝動 ”に支えられたとても面白い市場です。さらにTAIANはそれをコアに市場を「祝祭」全体にまで広げ、それを牽引しようとしている。そこに面白みを感じられる人に、向いていると思います。
人への感謝やその喜びは、タイパ・コスパといった経済合理性や損得勘定の外側にある、もっと文化的で情緒的な、人間としての根源的な衝動にあるはず。ところが今は、選択肢があふれ、SNSで「これまで正しいとされてきた生き方」の負の側面ばかりが目に入りやすくなっている。そのため、時代は進んでいるのに、精神的に窮屈さや不幸を感じる人が増えているのではないでしょうか。
TAIANで働くことは、人生を輝かせる仲間や家族との時間、互いへの思いやりに、十分に向き合うことでもあります。その喜びを一緒に感じられる人にはぜひ仲間になってほしいなと感じています。
最近、仕事と人生のかかわりについてよく考えることがあります。ただお金のために働くのではなく、自分や周りにいる人の人生が豊かになるきっかけを仕事でつくれたら、仕事と人生が共に豊かになっていくのではないでしょうか。TAIANがつくっていく祝祭は、誰かの人生や気持ちを上向きにさせるさまざまなライフイベントを支えるもの。そんな素敵な瞬間の連続を仕事を通して支えられることに喜びを感じています。
少なくとも僕は、この会社に来て初めて、会社の未来と自分の価値観が一致する感覚を覚えました。この喜びに動かされた結果が、お客様や婚礼業界の喜びにもつながっていたらとても嬉しいですね。
編集・文・写真:出川光(ノンブル社)
デザイン:Ayaka Momose(TAIAN)