前回の記事では、解説動画の視聴ターゲットをどう選ぶかについて紹介しました。
「誰に」「何を」視聴者に伝えたいかを決めたら、次は、「どう」理解してもらうかを考えましょう。
simpleshowの解説動画制作は、まず脚本、つまりナレーションを固めるところから始まります。脚本、イラスト、編集の全ての工程で「どう」伝えるかを考える必要がありますが、この記事では脚本作りについて紹介します。
解説動画の最終目標は、視聴者全員に動画の内容を理解してもらうことです。例えば、100人の従業員に、会社の新しい経営方針の中身を理解してもらいたいという場合、100人が漏れなく理解できないといけません。90人くらいは理解できる、という動画では、解説動画として100点とは言えません。
そのため、脚本作りは相当に丁寧に行う必要があります。視聴者が抱くであろう疑問や悩みを予想し、1つずつ消化してもらうのです。
そこで重要になるのが、「ベースキャンプ」という考え方。ベースキャンプは登山や探検などでよく用いられる言葉で、前進するのに必要な食料や資材を集めておく基地のことです。
有名な「エベレスト・ベースキャンプ」は標高約5300メートルにあり、エベレストにアタックする人々の拠点として使われています。ここで数日過ごし、体を高地に順応させたり、登頂に向けた作戦を練ったりします。このベースキャンプをすっ飛ばして登頂するなんてことは難しいのです。
解説動画も同様で、内容を理解してもらうという目標に向かい、周到に作ることが大事。つまり、物事を説明する時に、必要な要素を飛ばさず順序立てて解説し、視聴者が疑問を抱えたまま動画を見ることがないようにするのです。
エベレストの例で言うと、動画制作者のあなたは登山ツアー客を率いる隊長で、ツアー客が高地順応していないままに6000メートル、7000メートルと進んでいくのを防ぐ、といった感じでしょうか。
simpleshowの解説動画の脚本におけるベースキャンプには、色々なルールがありますが、そのうちのいくつかを紹介します。
1つは、課題と解決が1対1になっているか、です。
例えば、製品の魅力を解説する際、「価格の低さ」と「品質の高さ」を伝えたいなら、それぞれへのアンサーを提示しないといけません。
「安くて高品質!」というような、2つの疑問に対する答えを1つにした曖昧なメッセージではなく、なぜ安くできたのかや、従来品と比べてどれくらい安くなったのかなどの「価格の安さ」について、まず具体的に解説しましょう。続いて同様に「品質の高さ」についても詳しく訴求するのです。
別の例として、課題の順番と解決の順番を合わせるというルールもあります。
大学の広報担当であるあなたが、高校生向けに大学の特徴を解説する動画を作るとします。
高校生のAさんは留学プログラムがある大学を探している、Bさんは哲学を学べる大学を探している、Cさんは野球部が強い大学を探しているという設定の場合、解決策もABCの順番で示してあげましょう。「うちの大学には留学プログラムがあります。哲学科も用意しています。野球部はプロ野球選手を輩出しています」という順番です。
これがぐちゃぐちゃだと、視聴者は「今、何の話をしているんだろう」と混乱してしまう懸念があるのです。
ほかにも、新しい言葉を登場させる場合は、ターゲットに合わせ、必要に応じて補足説明を入れる、などの決まりもあります。例えば、「Bさんは、ソクラテスについて、大学で学びたいと思っています」という場合、「Bさんは、古代ギリシャの哲学者、ソクラテスについて...」としてあげると、哲学に詳しくない人にも理解してもらえるでしょう(ただし、哲学に詳しい人が視聴者なら、補足説明は不要です)。
このように、simpleshowの解説動画は、脚本工程ひとつとっても、「わからない」をなくすための様々な仕掛けがあるのです。
ここでは3つの例しか挙げませんでしたが、これらを実践するだけでも動画はぐんとわかりやすくなると思います。ぜひ、試してみてください。