― 入社までの経緯を教えてください。
翔泳社には2016年に第二新卒として入社しました。新卒では衛星テレビの放送局に就職し、企画営業や映像編集の仕事をしていたのですが、力を付けたいという自分のモチベーションと実際の仕事内容にギャップがあり、物足りなさを感じていました。
退職してしばらく無職生活をした後、昔から物作りが好きだったこと、また日本語が好きだったことから、「言葉を使って何かを作る仕事」という軸で再就職先を探し、翔泳社と出会いました。
― 日本語が好き、ということはもともと本が好きだったんですか?
日本語に興味を持ったのは、学生時代の台湾留学がきっかけです。現地の言葉で生活をする中で、日本語の美しさや味わい深さに気がついたんです。本は割と読む方でしたが、それ以来、本に限らず落語や歌舞伎など、日本文化が濃く感じられる日本語に興味を持つようになりました。そういった意味では、取り立てて「本」に思い入れがあったわけではないかもしれません。
不安を感じにくいはずが…不安でいっぱいの入社直後
― 入社をしてからはどのように仕事を覚えたんですか?
入社後は、まず簡単な業務を覚えながら新人向けの研修に3か月間参加しました。その後、編集部に本配属という流れです。
編集者の仕事は、イレギュラーな対応が求められたり、先のスケジュールが読みにくかったりする仕事です。私は普段からあまり不安を感じにくいタイプなのですが、そのときばかりは未経験のままわからないことだらけの業務に囲まれ、不安でいっぱいでした。
最初に携わったのは、既に刊行されていた書籍の改訂版の編集です。先輩にやり方を聞いたり、進め方のアドバイスをもらったりし、そして事故を何度も起こしながら一冊の書籍を作る仕事の流れを学びました。
担当する資格書の編集は「制約」があるから面白い
― 現在、担当している業務について教えてください。
現在は所属する編集部で、主にIT・情報系の資格書の企画・編集を担当しています。資格書は、受験者全体の規模や、試験運用団体との連携など、企画を練る上で考慮しなければならないことがたくさんあります。それらの条件や制約をクリアし、なおかつ商品としても成り立つ書籍を作ることにはじめは苦労しました。
― 今後の目標などはありますか?
新しい価値観で勝負する資格書を作りたいと思っています。どういうことかと言うと、資格書は「過去問を〇年分収録!」「最安値!」など、それぞれの書籍のスペックが比べやすい指標で比較されやすいんです。しかし、「競合が過去問3回分なら、こちらは5回分!」「競合が2000円なら、こちらは1800円!」などと対抗する努力は編集者を疲弊させます。特に、年度版(毎年改訂版を出すような本)になると、競争は毎年果てしなく続いていきます。
そこで、従来とは異なるベクトルで工夫を凝らした、新しい資格書を作れないだろうかと模索しているところです。ある程度フォーマットの固まった資格書というジャンルだからこそ、周りと同じ制約の中で他とは異なる面白い工夫や新しい仕掛けがいきてくるんじゃないかと。ただ、奇抜なアイデアがあっても、需要に応えるものでないと意味がないので、それらを上手く組み合わせて商品の形にするのは難しいんですけどね。
著者との刺激的なやり取りが編集の醍醐味
― 仕事をしていて楽しいのはどんな時でしょうか?
編集者として楽しさや嬉しさをよく感じるのは、書籍を執筆する著者の方々とやり取りをしている時間です。面白い方、さまざまな個性や才能に溢れた方とお会いしていると、すごく刺激を受けます。大きなエネルギーに触れているような感じです。この人のエネルギーが本に詰まって刊行されたら、世の中がひっくり返ってしまうのではないかと、いつもワクワクしています。
それから、著者の方は自分自身で本業を持ちながら、原稿を書いていただいている方が多いのですが、刊行した書籍が本業のビジネスや活動に何かしら良い影響を還元できたと聞いた時は、その本を出してよかったなと嬉しい気持ちになりますね。
「そこそこ真面目で面白い人」、待ってます
― 編集者に向いているのはどんな人でしょうか?
自分もまだわからない…というのが正直なところですが、「何かを好きになるのが上手」という人は、編集者に向いているんじゃないかと思います。気になるトピックやテーマがあれば、とにかく見に行ってみる、まずやってみる。そして、その題材の中で自分が「好きだ!」と思える入り口が見つかると、それが新しい書籍企画の芽になります。
それから、個人的には「そこそこ真面目で面白い人」と働きたいですね。これは全て私の妄想ですが、そういった方は自分なりの「好きなもの」を強く持っている人が多い気がします。編集業務は個人作業がほとんどですが、私はそういう方と一緒に仕事をしていると刺激を受けて楽しいです。
私も編集未経験から入社して仕事を覚えました。経験がなくても、熱意を持っていれば、それをくみ取ってくれる会社だと思います。これから入社してくる方と一緒に面白い本を作っていけることを楽しみにしています。