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小さなまちの映画館「シネマ・アミーゴ」館長・長島源さんが話す、映画館の電気を自然エネルギーに切り替えて見えてきた風景

みなさん、こんにちは! 自然電力の渡部です。今回はグリーンパートナー(自然電力のでんきを使っていただき、共に『自然エネルギー100%の世界』を目指す仲間)の声として、神奈川県逗子市にある「シネマ・アミーゴ」の館長、長島源さんに伺ったお話をご紹介したいと思います。


カルチャー配信基地型映画館「シネマ・アミーゴ」

神奈川県逗子市。海も山もある小さなまちの住宅街にひっそりと佇む映画館。京浜急行線、新逗子駅から歩くこと15分ほどで、趣のある建物、映画館「シネマ・アミーゴ」に辿りつきます。

2009年に、館長である長島源さんを始め、有志と共に空き家をリノベーションしてオープンした、映画館「シネマ・アミーゴ」。その規模は、1階のフロアに22席と決して大きな映画館ではありませんが、すぐにまちのランドマーク的なカルチャースポットとして多くの人が足を運ぶように。メディアでの紹介も後をたちません。「シネマ・アミーゴ」がランドマーク的存在である理由のひとつは、”カルチャー配信基地”をコンセプトにした映画館だということ。映画の上映だけでなく、地元から海外まで、様々なアーティストによるライブやパーティーを開催。

また併設するアミーゴマーケットでは、廃棄されてしまう地元のオーガニック野菜を使ったサンドイッチやガレットが楽しめたり、ケータリングで街に飛び出したりと、地域と関わりながら、常に新しいカルチャーを配信し続けています。

そんな「シネマ・アミーゴ」ですが、特筆すべきは、映画館で使われる電力が、自然エネルギー由来だということです。

昨年、建物全体の電気契約を、自然電力株式会社の「自然電力のでんき」に移行。「自然エネルギー100%の世界」を目指し、供給電力がすべて自然エネルギー由来となるよう、供給電力全量分の証書を購入し充当するとともに、自然エネルギー発電所でつくられた電気も届けるサービスです。映画上映に使われる電気のみならず、2階のシェアオフィスもすべて、この、「自然電力のでんき」で運営されています。

「電力会社の契約先を変えただけ」と館長の長島さんは笑いますが、映画を観る人たちに、「この映画館は自然エネルギー由来の電気で上映されているんだ。」という、小さな気づきを与えられる、そんな映画館にもなっているのです。


自分が納得のできるエネルギーで暮らすこと

ここからは、館長・長島源さんのインタビューをお送りします。自然電力へと切り替えた背景には、どんな想いがあるのでしょうか。

「単純に、同じ電気をつかうためにお金を払うなら、自然エネルギー、つまり再生可能なエネルギーにお金をつかいたいと思っただけなんです(笑)

そもそも、「シネマ・アミーゴ」の立ち上げの背景として、もっと地域が自立した社会をつくっていきたいというコンセプトがあって。都市に人が集まりすぎているアンバランスな状態に、昔から疑問がありました。

都心に行かなくても、おもしろいカルチャーはこのエリアにもあるし、クリエイティブな仕事もできる。それを配信する場所として、「カルチャー配信基地型映画館」というコンセプトの「シネマ・アミーゴ」をつくりました。だから、電気というエネルギーに関しても、地域でエネルギーの自給をして、そのエネルギーで上映できたらと思っていました。

ただ、自分たちで発電をすることはすぐにできることではないので、まずは今すぐできる一歩をという思いで、自然エネルギー由来の電気を買うことに移行したんです。

2009年に、「シネマ・アミーゴ」の立ち上げ時にはなかった電力会社の選択肢。ようやくエネルギーの自由化が動き出した。だから、電力会社を移行した。動機はいたってシンプルだと話す長島さん。

地域自立型社会への関心や、「シネマ・アミーゴ」をつくろうと思ったきっかけは、福島の原発事故の前から始まっているんです。10年くらい前に、青森県・六ヶ所村にある核燃料の再処理施設が稼働することになったとき、そのことを伝えるウェーブメントツアーを、仲間のミュージシャンたちと一緒にやりました。

ドキュメンタリー映画『六ヶ所村ラプソディー』を撮影した、鎌中ひとみ監督ともそこでつながって。参加して感じたことは、結局、大きな発電所が必要な理由は、多くの人の、中央依存体制にあるということ。そして、あらゆるものが都市に集中しすぎていることだと思いました。

都市集中型の暮らしや社会がある限り、大きくて集中的に電気を発電する設備が、外に必要な社会になってしまう。持続可能な社会を考えたとき、その構造から脱していかないといけないんじゃないかと感じたんです。

できるだけ中央集権的なものに依存しない。まずは自分の足元から変えていくような、そんな場所や暮らしをつくりたい。そんな思いが「シネマ・アミーゴ」の背景にあるのです。

エネルギーも地域で自立しているほうが、ライフラインとしても安心ですよね。

例えば、逗子にはゴミ処理場があるんですけど、そのゴミを燃やすエネルギーを発電に利用できればいいな、なんて思います。地域の発電所兼ゴミ処理場みたいに。

そうしたことが実現するのはまだまだ先かもしれないけど、まずは自分が納得できるエネルギーで自分の足元の暮らしをまかなっていくことには、大きな意味があると思っています。」


「依存」に気づくこと

地域のエネルギー自立まで見据え、まずは大きな電力への依存から離れる。「シネマ・アミーゴ」のように、人が集う場所や小さなまちが少しづつ自然エネルギーへシフトしていくことには、どんな意味があるのでしょうか。

「エネルギーだけでなく、今の消費社会って、もう無理がありますよね。この貨幣システムを維持するためにありとあらゆる資源を使いつくして、ある日「あ、エネルギーがない。」ってなった時、貨幣がただ紙になっていたみたいになってしまうと思うんですよね。

持続可能な社会にしたいと考えたら、自然と、一年に降り注ぐ太陽の光から派生したエネルギーと、地球のエネルギーともいえる地熱でどう暮らしをまわしてゆくか、そういった方向にシフトすることが大事だと思うんです。

結局、そういったことを可能にするのは、地域の自立が鍵だと思います。小さなまちの中で経済もエネルギーも自立するってことだと思うし、自分の足元くらいは自分でコントロールしたいなって思います。

自分の足元を見つめなおすこと。多くの人がふと立ち止まり、依存していることに気づき、その依存から離れることで、未来は少しづつ変わっていく。長島さんの話には、そんなメッセージが込められている気がしました。」


少しづつ「自立」できるものを探すこと

自然エネルギー由来の電気で映画を上映する小さな映画館「シネマ・アミーゴ」では、様々な地域の課題やそれをとりまく人々、わたしたちが普段目にすることのない国で起こっていることを伝えるドキュメンタリーなども上映されています。

それを伝えるためのエネルギーをおざなりにしない。ここには、地域の自立を考える長島さんの強い意思がありました。

最後に、シネマ・アミーゴのほしい未来について伺ってみました。

「電気を自給して、オフグリッドの映画館にすることも挑戦してみたいんですけど、建物の日当たりがよくないとか、課題はたくさんありそうです。例えば、食器を洗うお湯をつくるために太陽熱温水機を取り付けようとしたんですが、建物の高さが高すぎて、水圧が足らないとか。でも、少しづつ“自立”できるものを探していけたらいいなと思います。」


※この記事はgreenzに2018年1月30日に掲載されたものを転載しています。

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