楊
今日は、1ヶ月間インターンで来ていただいた遠藤さんにインタビューします。では、自己紹介からお願いいたします。
遠藤
オックスフォード大学の博士課程3年生で、Simon Benjamin グループで量子コンピュータの理論研究をしています。Near-term quantum algorithm という、近い将来実現できる可能性のある数百個の量子ビットのデバイスを使ってどのようなアルゴリズムを実行できるのか、という研究をしていて、Qunasys の方々とはかなり関心が近いですね。量子コンピュータはまだまだノイズが非常に大きいので、ノイズを抑えるQuantum error mitigation の研究もしています。
楊
どうしてQunasys をインターン先に選ばれたんですか?
遠藤
現在留学中なので、お世話になった研究者の方を除き、日本との連絡は多くはなかったのですが、ある日、日本で量子情報ベンチャーが生まれたというニュースをネットで見て、ベンチャーをやっている人たちなんていたんだ! と思いました。そして創立者の1人である御手洗さんをはじめとして、量子コンピュータ関連で世界レベルの研究をしている事を知って、これはどこかで一緒に研究しないと! と思った次第です。
来た印象としては、研究サイド、実装サイド、みなさんめちゃくちゃ優秀で、尊敬と危機感を同時に受けました(笑)。NISQのアルゴリズムを考案し、なおかつ高いレベルで実装できる技術力つまり、レベルの高い理論家とエンジニアの双方が揃っている事に感銘を受けました。
楊
そう言ってもらえてありがとうございます!量子コンピュータは大きな可能性があるのですが、今知られているアルゴリズムで可能なことは限られています。なので、特に博士課程の優秀なインターン生中心に量子コンピュータの新しい使い方提案をする論文を自由に書いてもらっています。遠藤さんは自由過ぎた気もしますが(笑)。
遠藤 傑 さん (話し手、写真右):英国オックスフォード大学博士に在籍中、QunaSysで一ヶ月間インターンを経験。
楊
では、Qunasys ではどのような事をやっていましたか??
遠藤
エラーミティゲーションの新手法の検証、Qunasysとメルカリ社との共同研究、物性に使えそうなNear-term algorithm の考案(論文詳細:https://qunasys.com/news/2019/10/1)ですかね。短い滞在だったので研究成果をまとめるという事は難しかったですが、いくつかの方向性は見えました。
楊
そうでしたね。1ヶ月しかいなかったのに、3つも研究テーマを同時に進めていたのでまとめ上げるのはちょっと不可能でしたね(笑)。ちなみに、どうして海外進学を選ばれたんですか?
遠藤
もともと、海外に行くつもりそいうのは、憧れはありましたけど、そんなになかったですが、研究でお世話になっていた方に、海外留学は非常に楽しいし常に最先端の知識に触れられて刺激的だと言われて、まあこれは行くべきだな、と思ったからです。実際いってみると本当にその通りで、充実した研究生活を送ってます!
楊
そうなんですね。Simon Benjamin グループは論文が出たらQunaSysも必ずチェックするハイレベルの研究室ですもんね。今後はどのような研究をしていきたいですか?
遠藤
今後もアカデミックな立場から、アルゴリズムの理論を突き詰めていきたいですね、アカデミアの側からNISQのapplicabilityを広げていきたい。NISQ は適応範囲が広いと睨んでいるので、NISQを使える範囲を広げる事が重要だと思っています。他には量子アルゴリズム以外にも具体的な物理系にも興味があるので、そちらでも研究していけたらなあと。そして、企業・アカデミア問わず一つの大きなチームとして大きな仕事ができるように、量子計算の研究を盛り上げていきたいと願っています。海外とのつながりも活かして日本の研究者を刺激し続けていきたいですし、自分の役割は「コンセプトの発見」だと思っているので、どういうコンセプトが必要なのかを考えて、必要な人を巻き込んでいきたい。リサーチャー、エンジニア、みんなが意味ある形でコミュニケーションしていけるようにする、そんな研究者になりたいです!
楊
なるほど、そのようになっていくといいですね!応援しています。インタビューは以上になります、ありがとうございました。