PREVENT医療サービス部門の石田です。

ここでは、再発予防やライフスタイルに関連した情報も定期的に発信していきたいと思います！今回は、脳梗塞についてのお話しをさせて頂きます。

私の理学療法士としての経験からすると、脳梗塞発症後の医療現場での中心は、救命と社会復帰に向けた機能改善に目が向けられます。今回は、もう一つ、新たな視点「再発予防」についてフォーカスしたいと思います。

この記事を読んでいただいている方の中には、医療専門職の方も多いと思いますが、皆さんが所属する医療施設では脳梗塞後の患者さんにライフスタイル改善指導は行っていますでしょうか？循環器内科や循環器外科では、心臓リハビリテーションや心不全管理の一環として、ライフスタイル指導を行う機会も多いと思いますが、日本では脳梗塞後のライフスタイル改善指導は多く行われていないのが現状だと思います。

こんな話をすると「脳梗塞後では、麻痺や後遺症があって生活管理も難しいのでは？」なんて質問がきそうですが、実はそうではないかもしれません。

コメディカルだからこそ出来ること、またそれによって患者さんの退院後の生活をより良いものとするために、脳梗塞における生活習慣指導の重要性についてまとめてみたいと思います。

ここでは

1.日本人の脳梗塞にはどんな特徴があるか？

2.ライフスタイルが脳梗塞再発に与える影響

3.ライフスタイル改善による再発予防効果

の３つで話を進めていきたいと思います。

1.日本人の脳梗塞にはどんな特徴があるか？

日本人の脳梗塞の特徴はどんなものでしょうか？日本人では、動脈硬化を背景とする脳梗塞は全体の7割を占め、そのうちの約6割は身の回りのことを介助無しに生活することが出来る軽症例が占めていることが大きな特徴になります（modified Rankin Scale2以下）
脳神経外科の急性期病棟で働く方であれば、感覚的に理解している所もあると思いますが、日本人の初発脳梗塞では軽症例が多いのです。一方、軽症例であっても再発率は高く、3年で約30%程度の方は再発をし、加えて、再発を繰り返す毎に運動麻痺は悪化していくことが研究にて報告されています。そのため、軽症脳梗塞では再発予防のために、発症リスク因子を管理することがとても重要です。医療機関では、この発症リスク因子を管理するために、薬剤での管理をまずは考えます。もちろん服薬管理がとても重要である一方で、薬剤による治療はあくまで対処療法であるため、その原因となったリスク習慣（下図参照）を是正しなければ、リスク因子の管理はうまくいかず病気が重症化していってしまいます。

運動や食事などのライフスタイル介入は重要である一方、軽症であるがゆえに入院期間も短く、入院期間中で機会を逃せば忙しい外来の時間で生活習慣指導を行うことは困難となってしまいます。加えて、現状の外来でライフスタイル介入を対応すると、医療費が上がりすぎて医療システムを破たんさせる恐れも出てきてしまいます。そのため、限られた期間で、正しい知識を持つ医療職からの指導はとても大切になってくるのです。

2.ライフスタイルが脳梗塞再発に与える影響

では、脳梗塞後の患者さんのライフスタイルはどの程度健康被害に影響があるでしょうか？脳梗塞最大の危険因子である血圧と、塩分・身体活動量の関係について検討されたものでは以下のような結果が得られています。

減塩がなされ、良く動いていたライフスタイル良好群と比較して、塩分摂取が多く、活動量が少ないライフスタイル不良群では退院後の血圧に差がでることが明らです。もちろん両者とも服薬治療はおこなわれているにも関わらず、塩分・活動量によりこれだけ差が出てくるのです。では、実際にライフスタイルと再発率の関係はどうでしょうか？

上図は、縦軸に積算再発率を、横軸に初発脳梗塞からの日数を示した図となります。活動量と塩分摂取量の組み合わせにより4群に分けると、再発率に大きな差が出ています。特に、塩分・活動量の両方の管理が悪い群（図中赤）では再発率が高く、両方の管理が良い群（図中青）では低いことが分かります。繰り返しになりますが、服薬管理がなされている集団にて検討をしても、ライフスタイルによりこれだけの差が出てくるのです。

3.ライフスタイル改善による再発予防効果

ここまでは、ライフスタイルの管理状況が再発率に係る影響についてまとめました。しかし、ここまで読むと感じるのは、ライフスタイルが悪い人は介入してもよくならないんじゃないか？という疑問が出てくるかもしれません。実際に臨床で働いていると、何度も再発しているのに生活習慣改められない人っていますよね？この疑問に対する答えとして、活動量改善、減塩指導というライフスタイル介入により軽症脳梗塞再発予防を目的とした研究の結果をお示しします。この研究では軽症脳梗塞発症後に無作為にライフスタイル介入群と対象群（通常の外来診療のみ）の2群に分け、ライフスタイル介入群には運動指導および減塩指導を6か月実施しています。ライフスタイル介入期間は退院後6か月間で、その後3年間は脳梗塞再発について追跡調査を行っています。結果は以下に示す通りとなりました。

この結果は衝撃的ですね。介入開始時には、歩数や塩分摂取量、ABI値、メタボリックシンドローム保有などの値に差が出ないように割り付け、背景要因を統制しています。それでも、対象群としておいた一般的な外来治療を受けている集団では、やはり3年で30%程度の方が再発していた一方、ライフスタイル介入群では再発率を2.8%と10分の1まで抑えることに成功しています。まだまだ一般的に普及していない脳梗塞へのライフスタイル指導ですが、とても重要なことが分かりますね。

PREVENTはデジタルヘルス領域で活躍する人材を募集しています！！

軽症脳梗塞再発とライフスタイルに関するお話しをさせて頂きました。適切なライフスタイル介入を行うことが出来れば、今あなたの目の前にいる患者さんの未来の生活を守ることが出来るかもしれません。しかしながら、病気を持った方へのライフスタイル介入を行うには、正しい臨床推論による病態の把握はもちろんのこと、行動変容に基づいた適切なコーチングなど多くの事が必要になってきます。PREVENTでは、生活習慣改善支援プログラム「Mystar」というサービスを提供しており、高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病や循環器疾患の既往を持った方への、ライフスタイル指導により、有病者の方の健康づくりを支援させて頂いています。

PREVENTは、名古屋大学医学部発のデジタルヘルススタートアップとして、この領域のスタンダードを創っていくとともに、次世代の医療専門職の育成に力を入れており、PREVENTからデジタルヘルス領域で活躍する医療人材を輩出していきたいと考えています。

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