2019年2月よりPREVENTに入社しました、医療サービス部門の金居です。
私は理学療法士として、脳神経外科病院に勤務しながら「脳卒中再発予防」を研究のメインテーマにし、論文執筆を行っていました。

この研究テーマと関連した話題として、昨年末に日本では「脳卒中・循環器病対策基本法」が成立されましたね。この法案の成立により、脳卒中・心臓病予防のための市民啓発が進んでいくことが期待されており、今後ますます脳卒中・循環器病の一次予防や、二次予防（再発・重症化予防）のための施策の重要性が増していくことが予想されています。

日本での具体的な啓発・施策については、今後検討され実施されていくと思いますが、世界ではどのように展開されているでしょうか。今回は、脳卒中啓発キャンペーンに先進的に取り組んでいるアメリカの事例について紹介いたします。

American Heart Association/American Stroke Association (AHA/ASA)はLife's Simple 7というスローガンを提唱し、啓発キャンペーンを行っています。

Life’s Simple 7

皆さんがご覧になった感想はいかがでしょうか？私自身は、学会が啓発しているものとは思えないデザイン性だなぁと感じました。それにとてもシンプルな構成ですね。日本でも心血管疾患に対するライフスタイル介入は心臓リハビリテーションにより提供されることも多いと思いますが、脳卒中に対して大々的にライフスタイル改善を指導する機会は少ないのが現状かと思います。

Life's Simple 7の項目は以下です。

Smoking status：喫煙
Physical activity：身体活動
Weight：体重
Diet：食事
Blood gulcose：血糖
Cholesterol：コレステロール
Blood pressure：血圧

これらのライフスタイル因子は改善可能なものであり、ライフスタイルを是正することで理想的な心血管の状態を保つことができることを啓発しています。

下の表は、Life's Simple 7の管理目標値です。アメリカの基準値ですので、日本人にそのまま適用できるかはさておき、参考程度にご覧下さい。

(Lin et al., Stroke 2019)

また、Michelleらは、脳卒中者のLife's Simple 7と長期予後との関連について調査しました。その結果、ライフスタイル因子が「理想的」であるほど、脳卒中後の死亡率が低減することが明らかになりました。

（Michelle et al., JAHA 2015）

Life's Simple 7の内、血糖、コレステロール、血圧の管理は、服薬によりコントロールすることも可能です。しかし、注目すべきは、その他の4つのライフスタイル因子（喫煙、身体活動、体重、食事）を是正することでも、血管疾患の発症・再発予防効果が期待されることです！

ライフスタイルは長いスパンで構築されていくものですので、なるべく若い時期から気をつけていきたいものですね。ライフスタイル因子の具体的な改善指導や、効果については、別の機会でまとめたいと思います。

しかし、シンプルとは言っても中々管理することが難しいのが実情です…。アメリカにおいて過去30年でコレステロール・血圧の管理は改善しましたが、肥満・身体不活動・不適切な食事などのライフスタイル因子のは管理不良が増加していたそうです（Lin et al., 2019）。

とは言え、脳卒中、心血管疾患発症のリスクや、予後への影響を学術的に公表したうえで、協会単位でここまで啓発キャンペーンを実施できていることは素晴らしいですね！日本でも、このようなキャンペーンが展開されていくことを期待しています。

PREVENTはデジタルヘルス領域で活躍する人材を募集しています！！

アメリカでの脳梗塞再発予防キャンペーンについてお話しをさせて頂きました。適切なライフスタイル介入を行うことが出来れば、今あなたの目の前にいる患者さんの未来の生活を守ることが出来るかもしれません。しかしながら、病気を持った方へのライフスタイル介入を行うには、正しい臨床推論による病態の把握はもちろんのこと、行動変容に基づいた適切なコーチングなど多くの事が必要になってきます。PREVENTでは、生活習慣改善支援プログラム「Mystar」というサービスを提供しており、高血圧や糖尿病、脳梗塞、心筋梗塞などの生活習慣病や循環器疾患の既往を持った方への、ライフスタイル指導により、有病者の方の健康づくりを支援させて頂いています。

PREVENTは、名古屋大学医学部発のデジタルヘルススタートアップとして、この領域のスタンダードを創っていくとともに、次世代の医療専門職の育成に力を入れており、PREVENTからデジタルヘルス領域で活躍する医療人材を輩出していきたいと考えています。
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