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アナフィラキシーショックを発症する人が増えていることをご存知でしょうか。人によって重症度が違うことから場合によっては数分の間に重篤化し、生死をさまようこともあります。非常に危険な症状のため、迅速な対応と判断が求められる症状です。
今回はアナフィラキシーショックについて詳しく解説していきます。ぜひ概要について理解し、予防に努めると共に緊急時の参考にしてください。
アナフィラキシーショックについて
まずはアナフィラキシーとはどのような状態なのか、ショックに陥った際の症状や主な原因についてご紹介します。
アナフィラキシーショックとは?
アナフィラキシーショックは1つの症状として認識されていることが多いですが、厳密にはアナフィラキシー症状にプラスしてショック状態が起こった事象のことをアナフィラキシーショックと言います。
アナフィラキシーとは特定のアレルゲンが体内に侵入することによって全身に強いアレルギー反応を起こした状態のことです。原因はさまざまですが、例えば食物アレルギーを持っている場合、アレルゲンとなる食物を摂取することでじんましんや痒みなどのアナフィラキシー症状を引き起こします。
アレルギー反応レベルが高い人ほど、アナフィラキシーの重症度が増しショック状態に陥りやすいと言われています。ショック状態とは何らかの原因によって血圧が急激に低下し全身の血液供給量の低下と共に酸素供給量も低下することで、意識消失が起こります。
生命に危険を及ぼす重篤な状態のため、意識がない場合は迅速な対応が必要となります。この2つの事象が合わさって起こった症状を「アナフィラキシーショック」と言います。
よく起こる事例として、食事をしている時に急に喉の違和感や全身に痒みが起こり、意識を失って倒れたということがありますが、この事象は食物アレルギーによって引き起こされたアナフィラキシーショック状態になっていると言えます。
アナフィラキシーショックの症状は?
アナフィラキシーは、主に4つの器官に症状として表れます。
1.皮膚症状
じんましん、発赤(皮膚の赤み)、腫脹(腫れ)
2.呼吸器症状
呼吸苦、喘鳴(ヒューヒューなど呼吸をする際に音を伴う)、くしゃみ、咳
3.粘膜症状
目や喉の痒み、浮腫(むくみ)、唇の腫れ
4.消化器症状
腹痛、嘔吐
これらの症状のうち皮膚症状と粘膜症状が数分〜1時間の間に急速に出現し、呼吸器症状や血圧の低下を来している場合はアナフィラキシーショック状態になっていると判断します。
アナフィラキシーショックの原因
アナフィラキシーショックを引き起こす原因は、主に4つあります。
・食物
特定の食物に対しアレルギー反応が強く出現する。人によって食物の種類はさまざま。
・薬剤性
抗菌薬や検査で使用する造影剤、麻酔薬、解熱鎮痛剤、輸血に特に多い。
・ラテックス(天然ゴム)
ゴム製品にアレルギー反応を示す。
・虫刺され
ハチやアリなどの毒性を持った虫に刺されることにより発症する。
稀にこれらの原因以外にも、海洋生物(クラゲなど)による刺傷、動物による咬傷などの物理的刺激によってもアナフィラキシーショックが起こることがあります。
アナフィラキシーショックの対処・予防法
アナフィラキシーショックになった人を見つけた場合、まずどのような対応が必要となるのか、対処と予防法について詳しく説明します。
すぐに救急車を呼ぶ
アナフィラキシー症状を起こしていて意識がない、呼吸に異常があるという場合はショック状態にあると判断し、迷うことなくすぐに救急車を要請しましょう。
救急車を呼んでいいのか不安になる方もいますが、まずはショック状態にある場合は電話をして救急隊にできるだけ簡潔に経緯を説明しましょう。
①救急であることを伝える
②住所
③症状
④年齢
⑤報告者の名前と連絡先
そして救急車が来るまでの間は発症した人のそばを離れないこと、意識がない場合は心肺蘇生を開始しましょう。周囲の人の協力を得てAEDを準備し、意識がない場合はすぐに使用することも大切なポイントです。
もともとアレルギーを持っていてアナフィラキシーショックを起こしている場合は、エピペン(アドレナリン注射)という注射器を常備している方もいます。明らかにアレルギーが原因であると分かった場合はすぐに常備している注射を、足の太ももに打ちましょう。
アナフィラキシーショックは程度にもよりますが、基本的に発症してから症状が緩和することは少なく、一旦症状が緩和したとしても時間が経過して再度発症するリスクが非常に高いと言われています。再びアナフィラキシーを発症した際には重症化する可能性が非常に高いです。
救急車を要請するまでには至らなかったとしても、必ずその日のうちに医療機関を受診するようにしましょう。このようにアナフィラキシーショックは短時間で急速に症状が悪化するため、いかに早く適切な対応と処置を受けることができるかがポイントになります。
無理のない体勢を保つ
アナフィラキシーショックを起こしている場合、状況に応じて身体の体勢を保持することも大切です。
・ぐったりして意識がない場合
急激な血圧の低下を来している可能性があります。まずは体を仰向けにしましょう。そしてできれば足を高く挙げましょう。足を高く上げることで血流を少しでも良くして血圧低下を防ぐことに繋がります。
・吐き気、嘔吐している場合
吐物による窒息リスクがあるため、顔と体を横向きにしましょう。もし口に含んでいるものがあれば喉を詰まらせる可能性や原因物質の可能性もあるため、できるだけすぐに除去しましょう。
・呼吸苦があり仰向けが苦しい場合
上半身を起こして、後ろにもたれかかれるような楽な体勢を作りましょう。
保持していた体勢を変えようと、急に身体を動かしてしまうと心臓に負荷がかかりやすく血圧も変動しやすくなります。急変リスクを高めるため、体勢を変える際はゆっくりと動かしましょう。
アレルゲンを認識する
アレルゲンが特定できている人は何のアレルギーを持っているのか周囲にも事前に伝えておきましょう。アレルギーといっても鼻炎や花粉症などの部類ではなく、原因の項目でご紹介した内容に該当するものを指します。
アレルギーの発生過程は主に2つあります。
1. 小児期から治療していたが、大人になっても治癒せず継続している場合
2.大人になって体質が変化し、突然アレルギーを発症する場合
特定の食べ物で痒みが出たりしやすい食物がある場合、特に注意が必要です。自己判断でそのままにしてしまうと、ある日突然アレルゲンが過剰反応してアナフィラキシーショックに至ったというケースもあるため非常に危険です。
もし何かしら特定の物質に対してアレルギー症状が出る場合は、医療機関を受診しアレルゲンの特定に努めることをおすすめします。
まとめ
アナフィラキシーショックはアレルギーを持っている人だけではなく、さまざまな要因によって突然発症することがあり、誰にでも起こり得る症状の一つです。
発症してから症状の悪化までの経過が非常に早く、重篤な症状を引き起こす可能性があるため迅速な対応を心がけましょう。
参考文献:
Turner PJ et al. J Allergy Clin Immunol Pract. 2020;8:1169-76