都市型ワイナリー『島之内フジマル醸造所』が誕生するまでの経緯の後編。
物件も決まり工事もすすんでいく中で都市型ワイナリーならでは?な困難も色々とありました。
ワイナリーですので『果実酒製造免許』を申請するのですが、大阪市中央区の管轄の税務署さんや保健所さんも前例が無い事だったので、申請に伺った時も、『えっ?ワインを造るの?中央区で??』っという感じで(笑)
私達だけじゃなくお役所さんの大変なご苦労の元に許可を頂く事ができました。
あと大阪のワイナリーとしてこだわった点が、ワイナリーに必要なブドウを搾るプレス機です。
普通ならイタリアなど海外からの輸入品を使用するのが一般的ですが、私達は大阪が誇る「ものづくりのまち」八尾の鉄工所に特注しました。(ステンレスタンク等も同じ会社さんで作ってもらいました。)
価格も同サイズの物の約3分の1の値段でできましたし、故障した際などのアフターケアの点から鑑みても八尾ならスグに修理に来てくれるというメリットもありました。
そして何より大阪のブドウを使って大阪市内のど真ん中でワインを造る時に一部でも大阪製の道具も使えればより一層Made in Osakaと言えるのじゃないかな?
形は違えど同じ『ものづくり』の仲間として、大阪の誇る町工場の技術は凄いんだぞ!って一緒に大阪を盛り上げていけたらなって想いもありました。
そうして切り詰めた予算で、ワイナリーと共に、どうしてもつくりたかったものを実現させます。
それがワインを醸造している様子も見える併設のレストランでした。
都市型ワイナリーの設立に至って、どうしても作りたかったのが併設のレストランでした。
そして集まったのが現料理長でもある岡、副料理の竹内(現在は福井県acoyaさんの料理長)、マネージャーの河端でした。
当時の(今も変わってはいませんが)私達が考え続けていたのが『もっと多くの人が"日常的"にワインを楽しむようになって欲しい』という事でした。
実際"都市型ワイナリー"という形だけでも、ワイン好きな方を中心に、お客様は来て下さっていたと思います。
ただ、それだと訴求範囲はある程度限定的になってしまいます。
でもそこに、美味しいお料理も食べられるレストランが併設されていれば・・・。
街中にあるおかげで、ランチやディナーなど、普段使いの"レストラン"として訪れることもできる。
ワイン好きだけが集まる場所じゃなく、色々な方に色々なシチュエーションでご利用頂ける。
いつもはワイン以外のお酒を嗜む方も、(当時のワイン以外のアルコールメニューはビール1種類のみでした。)普段は飲まないけど今日はせっかくワイナリーに来たんだしワイン飲んでみよか!ってなる。
これなんです(笑)
私達はワインって良くも悪くも会話を生む飲み物だと思っています。
良い香りだねぇ〜。
これは酸味が強いねぇ〜。
これは私の好みだわぁ〜。などなど。
私達のお店がワインを飲む小さなキッカケになり、そんな方が増えて、ワインを好きになってくれてお家や他のお店でもワインを愉しむようになってくれれば・・・。
日本の食卓の会話が増えるんじゃないかと。
そうなれば素敵だなと。
元はと言えば予算の都合上の苦肉の策でいきついた都市型ワイナリーでしたが、実はその中に"ワインを身近にしたい"という私達の理念を具現化させ得るたくさんの事が詰まっていたんです。
こうして2013年4月11日大阪に数十年ぶりに新しいワイナリーが生まれました。
これも老舗ワイナリーの全面的なバックアップがあったからこそです。
この狭いワイン業界の中で、生き残りを賭けたライバルになる可能性だってあったと思います。
新規参入のない業界に未来がないことは明白とはいえ、だからといって協力までできる老舗は多くなかったはずです・・・。
私達、島之内フジマル醸造所は本当に沢山の方に支えられて設立できたのでした。
株式会社パピーユ
私たちは生産者とレストランを繋ぐ『業務用ワインショップ』をベースに、フレンチ、イタリアンなどの飲食店やワインスクールに講師を派遣したりイベントなどを企画運営するワインのプロフェッショナルです。また、私たち自身も社会問題となっている耕作放棄地になったブドウ畑を借り入れ、ブドウ栽培、ワイン造りを自ら行っています。今ではアーバンワイナリー(都会型ワイン醸造所)を東京、大阪に構え、固定概念に捉われない社会活動を行っています。