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こんにちは。マネーフォワード広報の青木です。
年の瀬が近づいて参りましたが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
マネーフォワードでは年末の恒例行事として1年間のFintechの振り返りをしております。今年は「2017年の瀧的Fintechニュース」と題して、Fintech研究所長の瀧にこの1年で気になったニュースと2018年の展望について聞いてきました。
2017年の主なニュース
1. 仮想通貨
2. 即金経済圏
3. キャッシュレス
4. ICO
5. 銀行の次の時代
6. 国際的なコンセンサス
2018年の展望
1. Insur(Insurance)tech
2. データポータビリティ
3. オンデマンド経済圏
2017年の主なニュース
1. 仮想通貨
瀧:青木さん、タイムキーピングお願いしますね。1時間でおさまらない自信しかない。
青木:(笑)。この後は半期総会ですしね。今回は2017年の瀧的Fintechニュースとして振り返ろうということで。
瀧:インパクトがあった話題を振り返りましょう。まずは仮想通貨です。この盛り上がりに加えて、今後どう考えるべきなのかがポイントですね。もちろん制度やモデルの話も進んでいきますが、報道のほとんどはビットコインでした。
青木:本当に2017年後半は報道を見ない日がなかった気がします。
瀧:正直、価格が15倍とか50倍とか、1年間でそんなに値が動くものってなんだろうという驚きがあります。報道には大きなトピックスが2つあって、ひとつは今年前半のビットコインの分裂の話で、もうひとつは先物市場ができたという話です。今までは、ビットコインの売買は個人を想定していましたが、機関投資家も取引できるようになったんですね。ただ、物の値段は買いと売りで決まりますが、どうしても最初は買いから入る人が多いので価格が上がるのではと。このあまりに大きな価格変動に多くの人が注目したのが2017年後半でしたね。
青木:なぜここまで買う人が増えたのでしょうか。
瀧:日本人は元来すごく値動きするものが好きなんだと思います。「貯蓄から投資へ」は動かないけれど、「貯蓄から投機へ」は非常に動きやすい。例えば、昔からFXとかは好きですよね。主婦の方が家でデイトレするとか、それは資産運用というより値動きが大きいものが好きというか。資産運用と投機の違いは、増えることをやりたいけれど、投機は「今だから買う」とか「他の人よりはうまくやれる」とか、そういう感覚の有無が投資との違いだと考えています。
青木:プラスサムの「投資」、ゼロサムの「投機」なんて言いますよね。
瀧:そうですね。プレイヤーに関しては、仮想通貨はベンチャーがメインでしたが、GMO、DMM、サイバーエージェントなど大手も参入していて従来よりプレイヤーが大きくなったなと。ただ、三菱商事とか伊藤忠がやっているわけではなくて、いわゆるインターネット大手ベンチャーが参入してきているのが人々の関心を誘うポイントかなと。
青木:ふむふむ。
瀧:ビットコイン関連の書籍でも良い意見が出てきていると思います。ビットコインは現状、使い勝手の悪さが課題です。それが今後進化していくのか、ブロックチェーンネットワークが大きくなるのかは不明ですが、お金が集まった以上はいずれ何か便利なものを作りやすくなったはずです。
青木:確かに使える場所が少ないというのはありますよね。
瀧:Suicaなみにビットコインを使えるお店が出てくる条件を揃える必要がありますよね。ビットコインは、ずっと持っていないといけないとか、たくさん持ってないと決済できないわけではなく、その場で必要なだけ買って、必要なだけ売れば良いんです。だから、ビットコインの価格と利便性は必ずしもイコールじゃないところがあります。『アフター・ビットコイン』という書籍がありますが、非常に良書です。以前は妄想めいた話が多かったんですが、今は非常に真面目な議論が展開されるようになったと感じられます。
元々日本の場合、現金社会にマッチする決済システムがしっかり整備されてきたために、かえって古いアーキテクチャーが保存されやすい。今の技術環境ならもっと安く作れるいう話があります。ただ、それに加えて、日本円がだんだん信頼できなくなってきた、みたいな国への不信を全て仮想通貨で解決しようとか思いがちなんですよね。だけど、そうではなくてひとつひとつに原因があるのでそれを根治していかないと。
青木:それですべてを解決できるわけではない、ビットコインは銀の弾丸ではないと。
瀧:蒙古襲来は台風が解決しましたが、ビットコインは台風ではないんですよ。
青木:ビットコインで老後の不安はなくなりますか?
瀧:ビットコインで10億持っていて売ってしまえば老後の不安はなくなりますが、それは億単位で持っている人にしかないメリットで。相場を読めないと使えないものは、使えないものと思っていた方がいいんです。タイミングに恵まれなかった人が幸せになれるかどうかが重要で。
青木:では、将来のために今買っておこうというのは違いますか?
瀧:あんまりないかなと思います。必ず上がるなら買うべきですが、戦後の日本なら自動車産業を育てるべき、的な「王道」シナリオがビットコインにあるわけではないです。私が最近思うのは、競艇みたいなものかなと。競艇を楽しむのはいいですが、競艇に全資産突っ込んだら破産しますよね。だけど、儲かるかもしれないから5%くらい入れるのは良いんじゃないかと。投機にも意味があって、それをやることでお金について勉強するようになるんです。
青木:なるほど。
瀧:しかし、こんなに上がったものはみたことないので正直驚いています。不動産バブルだってせいぜい数倍です。
青木:落ちるのはみたことありますが、上がるというのは...めずらしいですね。
瀧:そんなに動くものだからニュースバリューも高い。これは良い副産物もあって。Fintechへの注目も然り、既存社会で新しい可能性があるものにみんなが注目しているというのは、とても価値があると思います。それが生まれたのはよかったなと。
青木:瀧さん的なこれからの仮想通貨との付き合い方を教えてください。
瀧:投資として考えるなら自己責任でというのがメッセージです。減った場合には、自分で不幸にならない範囲でやるべきで。買っちゃダメというものではないですが、資産運用ではなくて、その世界観に資産の2%とかを割くという認識が良い気がします。同じものでいうと金で、金は資産と言われていて、昔から大金持ちが5%、場合によっては30%程度を金で持つということがありました。金も上がったり下がったりしますし、資産としてのビットコインはそういう類のものと認識すると良いかなと思っています。
一方で、決済や社会システムのあり方において、ブロックチェーンがもたらす未来は大きいです。従来、コストをかけて構築してきた中央的なシステムは、確実にいくつかの分野で分散型になると思います。それが金融においても起きるのか自体も、よく議論していく必要がありますが、いずれそういう便利な技術の恩恵を我々は受けられるようになるはずです。
2. 即金経済圏
青木:つぎも注目のサービスがいろいろと。
瀧:個人がすぐにお金を手に入れられる経済圏、即金経済圏というネーミングが適当かは不明ですが...(笑)。登場人物は、CASH、メルカリNOW、タイムバンク等ですね。お金が手元にない人たちが、手元のものや自分のスキルを売って、すぐにお金を得られるソリューションが出て来ました。
青木:今年はこれらの領域の新サービスが多かったですね。
瀧:即金経済圏は何を叶えているのかというと、手元にお金がないけどすぐに必要だという瞬間のニーズです。例えば遠足前とか、給食費とか。従来は、家族、友人、消費者金融などがお金をなんとかするための方法でした。即金で買ってくれるCASHやメルカリNOWは、そこに革命を起こしました。とにかく手元のものをお金に変えられるという、ドラえもんの道具ですよね。
青木:確かに...まさにドラえもんの世界観ですね。
瀧:もうひとつは、「これから働きたい」という人がその意思表示をお金に変えられるのがタイムバンクですね。ただ、今はまだインターネット界隈で有名な人達が中心に使える手段なので、一般の方がお金をつくる手段にはなっていないのかなと。
この辺りは消費者金融産業の変化も効いていると思います。例えば、将来返す信用を元にお金を得るのが融資ですが、良くも悪くも2007年の貸金業法改正で国内の消費者金融は立場が弱くなり、昔より強く出られなくなったという背景があります。金利や回収に関する社会問題は確かにありましたが、ただ、それでも消費者金融のお陰で行けた修学旅行もあったはずなんですよ。
それは行くべきじゃないのかもしれないですが、人はその時必要なお金と一緒に生きていく側面があります。この領域は、かなり苦しくてもやりたいことを可能にしてくれるサービスで、それがいろんな形になって出てきたなと。
青木:海外だとこの辺りってどんな状況なのでしょう?
瀧:アメリカの場合、クレカ市場とかが代替しているんです。日本人はやっぱり借金が怖いという感覚があるので、手元の物をお金に変えるというのが先行するのかなと。
3. キャッシュレス
青木:つぎがキャッシュレスですね。
瀧:これは今年もですが、来年も引き続きます。こんなにわかりやすいテーマは今までなかったですよね。政府の未来投資戦略2017でキャッシュレス比率を40%にするというKPIがあって。それが最近になって騒がれ始めたんです。
青木:ここ最近メディアでの報道も増えたイメージです。
瀧:話題を大きく盛り上げたのが三菱東京UFJ銀行のMUFGコイン、みずほフィナンシャルグループのJコイン。それぞれ時間をかけた取り組みではありますが、銀行がこのような取り組みを行うと、ベンチャーでは考えられないようなニュースバリューがあるんですよね。
青木:Jとついてるとオールジャパン感もありますし。
瀧:そして大きな火付け役は、今年8月のアリペイの日本進出に関する報道です。海外からの競争って非常に重要で、多くの関係者が真剣な議論を始めました。日本人だけだと議論に時間をかけてしまいますが、黒船が来た感覚がありますよね。もちろん、中国での発展経路と日本の現状には多くの違いがあります。日本は、なんだかんだお店に決済システムが入っていますよね。中国は何も入ってなかったので、一気に普及させられたんです。
青木:そうですね。日本と中国はその違いが大きいですよね。
瀧:あとは、LINEはみんな使っているけれど、LINE Payは日常的に使うところまでは普及していないということです。日常的な利用の多い電子マネーでいうと、結局都内ではSuicaが圧倒的なんですよね。キャッシュレスは普及への道が非常に問われています。
青木:ただしSuicaは相互送金ができませんよね。これができたら非常に便利になると思うのですが...。
瀧:その通りです。Suicaが相互送金機能を持ち、限度額が10万円という世界になれば非常に多くのことが可能になります。私たちのビジネスではないのですが、社会を前に進めるためにはそこが大事だと考えているんですよね。
青木:電子マネーはSuicaがメインという方が多いと思いますので、消費者視点でみてもこれは実現してほしいです。
瀧:AnyPayやKyash等のベンチャーが拡大していて、来年はさらに盛り上がるかなと思っています。そして、最後に店舗のあり方ですね。大宮駅で実験していたPOSレジのコンビニとか、キャッシュレスのロイヤルホストといった事例が出て来ました。
青木:ロイヤルホストは大きなニュースにもなっていましたね。
瀧:先日、馬喰町のロイヤルホストのお店に行きまして、まだ空いてましたが来年はもっと盛況だといいなと。
青木:キャッシュレスと言えば、個人的好みなんですがスターバックスリワードの開始後はスターバックスへ行く回数が増えました。
瀧:僕も使ってますが...3回しか行ってなかった(笑)。
青木:私、GoldStarが貯まりました。
瀧:いきなりステーキの肉マイレージも面白いですよ。ほら。
青木:(瀧のスマホをみて) 「肉マイレージ」、めっちゃ貯まってますね(笑)。
瀧:スマホだけで生きていく企画すると生き残れるかも。
青木:次回はそれでいきましょう。
瀧:雑(笑)。
4. ICO
青木:4つ目は、ICO(Initial Coin Offering:仮想通貨による資金調達)ですね。
瀧:この勢いはすごいですよ。先日はCOMSAが100億円を調達しましたが、これは投資資産ではないので、分かりやすい経済的権利から逃れてはいけないんです。ある意味、その用途をどうしていくかを含めて、ICOは性善説の世界として運営されています。でも、お金の世界は性悪説でも動くので、怪しいICOもあります。ただ、日本では社会的慣習もあって、そこまで怪しいものは出てきていません。そのような、不確実性の高い環境なのでAnyPayでもICOコンサルティング事業を開始されています。法人のICOではそういった状況が展開されている一方で、個人の方ではVALUの騒動がありましたね。
青木:個人型ICOということですね。
瀧:そうです。ヒカルさんの騒動は、ICOであれば起き得ることでした。中身が良くわからない物を買うというのは、本人に対する寄付型クラウドファンディングだと考えられると良いんですが「経済的な権利だから値が上がる」という期待値で売買が行われていくと、想定しない展開が生まれてしまいます。
アメリカでも経済的な権利を前に出したICOが何件か止められていて、これだと法律的な「証券」にあたってしまうんです。証券は様々な規制に則らないと、不特定多数の人たちに売ってはいけないので。その辺りが整備されないと、このような問題が出てきてしまいます。
青木:なるほど。権利の観点以外でICOで気になったポイントはありますか?
瀧:今後は、普通の証券のICO型も出てくると言われています。つまり、証券関連の法律に基づいた資金調達がトークンで行われていくものです。ICOと聞くと少し前まではよくわからない資金調達だというイメージだったと思いますが、それは昔、紙だったけど今は電子化されてる株券と一緒じゃないでしょうか。インターネット上で東京証券取引所への上場ができるようなイメージに進化するような。そういうのがあっても良いのかなと思います。
青木:今後、より一般的な用語になっていくんでしょうか。
瀧:報道はしばらく続くんじゃないでしょうか。ICOはコインの話ですが、普通の証券型のICOだったらICOという表現はしなくても良いかもしれないですよね。
青木:マネーフォワードも提携を開始しましたが、クラウドファンディングにとってもまた、非常に変化の激しい1年だったのではないでしょうか。
瀧:そうですね。CAMPFIREをはじめ、ボリュームが拡大してきました。自分の代わりにお金を使ってくださいという形の消費が広がっていて、ふるさと納税などもこの動きに寄与しているのかもしれません。まだまだお金が余っている層はいるので、今後も伸びる可能性があると思います。
青木:お金の使い方の多様化が起こっていると。
瀧:自分が手元の1万円を使うより、地方とかの応援したいプロジェクトにお金を使う方が、心が満たされる、という利他的動機の最たるものですよね。従来のお小遣いのような形だと親戚間のやりとりが多く、お金の行動範囲が限られてしまいますが、クラウドファンディングが普及することで、お金の移動距離が伸びたなと。個人的には、苦しさが見えてくるまでは自分のところでお金を寝かしちゃいけないなとも思いますね。そういう形でお金を使うと気持ちがすごく豊かになるんですよ。自分の代わりにお金を使ってほしい、本当のお小遣いってそういうものですし、全く悪いことじゃないと思います。
5. 銀行の次の時代
青木:つぎは「銀行の次の時代」ということで。
瀧:少し動き始めているなという実感を込めて「銀行の次の時代」と呼んでみました。MUFGとみずほフィナンシャルグループがそれぞれ、JDD(Japan Digital Design)とBlue Labを立ち上げ、イノベーションの方向性では全くこれまでとは違う環境を作り出していると思います。また、生産性改善の側面でRPAを用いた施策による大規模な業務量削減を公言するなど、前のめりでテクノロジーを活用する方向に舵を切っているなと。
青木:メガバンクがここまで動くのかというのは個人的にも驚きました。
瀧:ここまで振り切るのはすごいと思います。メガバンクが揃って振り切ると、他の業態も動きやすくなります。APIも来年はより一層開かれていくはずなので。
青木:消費者にみえる形で銀行が変わり始めているという感じですね。
瀧:実務家レベルではとても良い時代になったかなと思います。
6. 国際的なコンセンサス
青木:最後は、国際的なコンセンサス、ですか。
瀧:今年、複数の国際的な金融制度・ルールを決める場で、Fintechとの向き合い方が公表されました。一つは、バーゼル銀行監督委員会。金融監督の国際協力を目的に1974年に設置されたものですが、いろんな国での金融制度のあり方を考える人たちが属しているものです。ここで6月に、Fintechがもたらすインパクトの整理が行われました。参考はこちらのページです。
青木:ふむふむ。
瀧:また、別ですが、FSB(金融安定理事会)という場所で、Fintechをシステムとしてどう捉えるかが整理されました。こちらに詳しく載っています。ここから数年間で起こる技術変化を、社会としてどう考えるべきかが定義されたので各国の政府も動きやすくなったのだと思います。日本でも今後、横断的法制という、大きな金融制度の再検討が行われるのですが、「銀行とは何か」を考え直す議論が出てきています。日本は銀行が大きな役割を占める国です。その巨大な意味を、改めてこの時代に問い直しているというのは大きな進展だと思いますし、今後もFintech研究所としてちゃんと発信していきたいところです。
2018年の展望
1. Insur(insurance)tech
青木:ここからは来年の展望をお聞かせください。
瀧:来年はまず、保険tech、Insur(Insurance)tech(以下「Insurtech」)がくるでしょう。今年くらいから保険サービスを作るベンチャーが数社出てきています。justInCaseという会社などを含めて、新たな、友達とリスクシェアできるタイプの保険を目指しています。例えば、みんなの間でiPhoneが壊れたら保証しよう、その方がAppleCareより安いよねといったパターンです。もうひとつはWarranteeNowという損害保険サービスで、これはすでにリリースされていますが、必要なときだけ家電製品に保険を掛けられる仕組みを提供しています。
青木:保険サービスも次の時代が近づいている感じがありますね。
瀧:銀行、証券、保険があって、銀行と証券に関連する新たなサービスが生まれ、分かりやすさが提供されてきました。一方で、現代版の保険サービスが足りないのではという話なんです。Insurtechは、当面は損害保険の方が分野としては先に進むと思っています。生命保険はライフネット生命などが多くのチャレンジをされていますが、生命保険が死後の世界で保険金を受け取る商品であることのハードルはまだ高いですよね。Amazonで配送予定日が死後の商品は買いづらいですよね。損害保険は、車や旅行でみんながニーズを実感しているし、実際に事故の話も見聞きするので、ネット上での購買にも近いのではないでしょうか。
青木:たしかに生活に身近ではありますよね。
瀧:生命保険や医療保険もそうですが、リスクヘッジができていると楽に生きることができます。保険では、少額短期保険という分野でペットの医療保険などでの新しい動きはあったんですが、まだ制度自体があまりスケールしていません。来年は、保険そのものの動きに対しての提言が増えていくのではと思っています。
2. データポータビリティ
青木:2つ目がデータポータビリティですね。
瀧:先日、総務省と経済産業省が開催する会議のメンバーに選んでいただいたのですが、昔よりもこの議論は注目を浴びるようになったと思います。銀行のAPIの一部は、銀行のデータポータビリティという文脈に入るのですが、欧州でこの議論はすごく進んでいるんです。
青木:良い方向で進んでいるんでしょうか?
瀧:欧州では規制が相当に先行して進んでいるという感じです。データは個人のものであるという前提で、誰に使わせるかという議論がとても大事で。少し極端な例ですが、マイナンバーカードさえあれば健康保険証が不要だったり、自分のカルテが他の病院で共有可能になったりすると、医療サービスはすごく便利になりますよね。
青木:それはすごく便利です。医療費の改善にもなりますよね。
瀧:ですね。これは早くやらないと医療費はかさみます。ほかにも、災害時に、通帳がなくても本人と確認できればお金を引き出せるようなこともできればいいですよね。あとは、データがいろんな所に分散しているのも良くないので、丁寧に整備して金融データを組み合わせられると新しい産業が出てきますよね。
青木:非常に便利そうですが、どんな壁があるんでしょう?
瀧:個人情報保護法のあり方や、様々なガイドラインが必要となるため、ここについては引き続き議論されています。大前提としては、データはお金と一緒で、ちゃんとした理解の下で安全に取り扱われるのであれば、使われるべきものだと思います。人材と同じで、良い人材は良いところで活用されるべきという議論と一緒です。Fintechは情報産業だと言われますが、情報がより有益に活かされる方法はFintechとしても重要なので、もっともっと盛り上げたいテーマですね。
3. オンデマンド経済圏
青木:最後がオンデマンド経済圏。
瀧:ネーミングが難しいんですが、この1年で私たちの生活って結構変わったはずです。僕個人でいうと、UberEatsとかはものすごく自分をダメ人間にしました。
青木:瀧さん使うんですか(笑)。
瀧:めっちゃ使いますよ。これは普通に使っている人が増えて来たというか。ちょっと前だけどAmazon Dash Buttonとかもそうですよね。
青木:インターネットあんまり詳しくない人でも使うというか。
瀧:そうそう。一般層にも降りてきた感があって来年はこういうサービスがより普及していくのかなと。あとは、僕もずっと待っているZOZOTOWNの...
青木:ZOZOSUIT!これは衝撃でした。
瀧:UberEatsはおしゃれなものを食べにいく服がない問題、ZOZOSUITは服を買いに行く服がない問題を解決しています。そして、自動走行車は必要な車を取りに行けない問題を解決していますが、これは結構重要な問題で、データの話と少しかぶりますが、位置情報に起因する発注プラットフォームというのはこんなに便利なんだと。人間は、子どもにとってのお母さんのように、自分を世話してくれる人を求めているんですよ。繰り返しの行動で生きていく中で、欲しいものがボタンひとつで届く世界って、まさにお母さんですよね。
青木:あるいは冒頭と被りますが、ドラえもん的な。
瀧:そうですね。それに頼るようになるともう戻れなくなりますよね。
青木:NetflixとかHuluもそうでしょうか。
瀧:そうそう。ラインナップがもっと充実すると今以上に抜けきれなくなります。Netflixとか今ものすごい時価総額で、オリジナルのシリーズもすごく面白いですよ。
青木:あ、瀧さんあと2分です。自分で言ったのにすいません(笑)。
瀧:(笑)。では、2018年の展望はこの3つのテーマがコアということで。Fintechは実務レベルの議論が生まれてきているので、もっと新しいベンチャー、いろんな会社が出てきて良いんじゃないかと思っています。ずっと同じ会社で忘年会している気もするので、ベンチャーの忘年会って「もうこの人には二度と会えない」くらいの意気込みでやりたいですよね。
青木:えっそんな意気込み(笑)。私意識低かったですね。改めます。
瀧:(笑)。