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NB-IoTの発展に向けて

NB-IoT (Narrow Band IoT)の課題について、中国の1級エンジニアが解説した記事をミラ深圳のプロジェクトマネージャーOliverが要約しました。

NB-IoTは掛け声は大きいものの実際の利用はまだまだです。IoTアプリケーションを開発するにはまず通信キャリアのサポートが必要です。記事によれば、中国の三大通信キャリア(チャイナテレコム、チャイナモバイル、チャイナユニコム)はそれぞれ独自サービスを展開する計画ですが、チャイナテレコムは先行して全国展開をするようです。またチャイナユニコムはNBサービスに帯域を提供するため2Gサービスを終了しました。チャイナモバイルは新たな通信基地局を設立する必要があるため、この動きに遅れをとっています。

NB-IoTアプリケーションはスマートシティ(江西鷹潭市はすでに全国NB-IoTスマートシティのモデル都市となっている)の水道メーター、街灯、駐車場など都市のスマート化に貢献しています。また各シェアサービスにもNB-IoTは導入されていて、例えばシェア洗濯機、シェアエアコン、スマートロックなどはすべてNB-IoTを用いた成功事例です。

ところが、NB-IoTチップメーカーのHiSilicon、MTK、またHUAWEIなどはいずれも3キャリア対応のNB-IoTモジュールを生産しているにもかかわらず、現場においてはまだまだネットワーク側のサポートが不十分な状況です。ここで、記事が指摘する今後の発展に向けた6つのポイントを要約しましょう。

第一に、モジュールが10年使えるというのは理論上のビジョンに過ぎないこと。
NB-IoTは早くから一つのバッテリー(5000mAH)で10年もつことをスローガンとして掲げていましたが、その実現にはまだまだ届かないようです。現在のモジュールにおける消費電力は製品マニュアルによると以下の通り。
220mA @23dBm (Band 8/5/20)
250mA @23dBm (Band 28)
80mA @12dBm (Band 8/5/20/28)
65mA @0dBm (Band 8/5/20/28)
これに加えてバッテリーの自己放電、環境条件によるバッテリーの劣化などによっても寿命は異なります。水道メーターのNBサービスアプリケーションを例にとると、データパケットは1日1回報告され、パケットサイズは200バイトで、PSMモードが採用されているようです。
365日×1751μAH×10×1.5(冗長)= 9586mAH。
そのため、端末メーカーはバッテリー寿命を2〜3年とするか、あるいは5年間もたせるために、バッテリー容量を仕方なく大きくしているのが現状です。

第二に、スーパーペネトレーションには限界があること。
NB-IoTチップは登場した当初、従来の2Gまたは4G製品と比較してNB製品のペネトレーションを20dBに高める、つまり100倍向上させるとされていました。これは家庭用エアコンなどのスマートホームネットワーク機器や水道メーターなどワイヤレス環境が良くない場所に置かれる機器にとってはメリットになります。しかしながら無線ネットワークがほとんど届かないマンホールの下や階段の間などの水道メーターではデータがアップロードできず、水道メーター業者とNB-IoT技術を当惑させることもあるかもしれません。

第三に、ネットワーク環境を整えるには国家の強力な支援を要すること。
3大通信キャリアはすでにNB基地局の建設に力を注いでいますが、それには多額の投資を必要としていて、この問題はチャイナユニコムとチャイナモバイルのNBネットワークがなかなか進展しない要因ともなっています。記事によると、主要都市部におけるNBネットワークの敷設がほぼ完了しているチャイナテレコムに対し、チャイナモバイルとチャイナユニコムはまだこれからで、両社は何らかの形で合併する可能性もあるという噂があるそうです。

第四に、顧客のビジネスデータの帰属先がポイントとなること。
現在の社会はデータ社会であり、データを制するものが市場を制します。そのため、どの会社も顧客のデータを他と共有しなくて済むよう、多くの製造業者は各通信キャリアの管理プラットフォームを避けようとしてきました。ところが、最近になってTCPプロトコルが採用され始めています。2G、4Gサービスは通常TCP、UDPまたはMQTTプロトコルを使っており、これはNB-IoTモジュールへの切り替えにおいてメリットとなります。

第五に、モジュールコストとSIMカード料金がまだ高額なこと。
NB-IoTチップは1ドルでの提供を目指していますが、今までのところ、その見通しは立っていません。 記事によれば、NBモジュールはNB-IoT事業の発展に伴い、2Gモジュールの価格に追いつくことはできても、チップが1ドルになるまでにはまだ長い道のりが必要のようです。しかし、各通信事業者がNB-IoTモジュール+ SIMカードをパック販売しており、これによりコストに対するプレッシャーをある程度軽減しているそうです。

第六に、強力なデータ接続は本当のリアルタイム接続ではないこと。
NB-IoTデバイスはほとんどの時間「スリープ」状態です。 NB-IoTの「同時ユーザー」には制限があり、NB ネットワークが15KHzでアクセスし、180KHzの帯域幅を使用するときの「同時ユーザー数」は理論的には12で、ネットワークに同時にアクセスするデバイスが複数ある場合、デバイスはネットワークにアクセスするのが困難となります。そしてそれを超えたデバイスはキューイング状態となります。

以上のような問題点もあり、NB-IoTの普及は当初の期待通りに進んでいませんが、それでも多くの企業が将来的なシェア獲得を狙って依然としてNB-IoT施設の開発に積極的に取り組んでいます。これからも引き続き、動向を注目していきたいと思います。

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