患者視点の医療変革を目指し2000年に創業されたメディヴァは、当時、McKinsey & Company, Inc.のパートナーだった代表の大石が、自身の出産時の経験から医療への問題意識を患者視点から解決したいと設立した会社です。
そんな #創業ストーリー を大石が語ります。
はじまりの違和感
メディヴァを設立したきっかけは息子の出産でした。
特段大きなトラブルがあった訳ではありません。当時マッキンゼーに勤めていて忙しく、健康で病院などに通ったことがなかったのが、出産前後に集中的に掛かるようになり、患者として「あれ??」という小さな違和感を抱いたことから始まります。
「違和感」とは例えば、
近所の産科医院から大病院への紹介状には「異常なし」の一行だけで、今までの検査データは二度と使われないこと。
病院の待ち時間が長いこと。
先生が不機嫌で不愛想なこと等々。
今から考えると「些細な違和感」でした。
しかし、「些細な違和感」ですが、「当然」のようで、何も改善の手が打たれていないことは「大きな違和感」でした。
医療界の協力者
「制度だから」「そういうものだから」「特に問題ないから」
ではなくて、何か出来ることがあるのではないか?
医療界以外のノウハウも活用すれば、変わるのではないだろうか?
産休中、暇だったこともあり、まずは「医療界の人」であるお医者さんたちにお話を聞きました。
全員で40名程も伺ったと思いますが、共感して下さる方も多く、また「何かするなら一緒にやろう」と声を掛けてくださった方々もいます。
その言葉に勇気づけられ、まずはマッキンゼーの中で病院コンサルティングを始めました。
医療界は特殊だといいますが、企業等で使う経営手法は病院経営においても有効であることが実証できました。
ただ、コンサルティングの「限界」も感じました。
通常のコンサルティングであれば、提言を受けて、経営者が「やろう」と言ったら、組織は実行に動きます。新しい取組みが「戦略」として重視されます。
ところが医療界は、理事長・院長が「やろう」と言っても、振り向くと誰もやる人がいない。また新しいことは「先例がないから」と忌避されます。
医療を本気で変える覚悟
医療界で本当に変革を起こしたければ、「提言したこと」を「実行に移す」まで自ら動かなくては駄目だということ、そしてパイロット・サイトを持ち「実証」しなくてはいけないことを痛感しました。
医療界に対して感じた「些細な違和感」は、コンサルティングだけでは変えられない。
では、変えられるところまでやってやろう。そういう思いで、メディヴァを設立しました。
最初にインタビューを受けてくださった先生方の中で、「パイロット・サイトを一緒に作ろう」として手を挙げて下さったのが、「用賀アーバンクリニック」(のちの医療法人社団プラタナス)の野間口先生、遠矢先生でした。
また「ノウハウを出してあげる。一緒にやろう」と言ってくださったのが、鴨川の亀田総合病院の亀田信介先生、亀田省吾先生でした。
メディヴァの成長
2000年に用賀のクリニックから始まったメディヴァは、今では国内外のヘルスケア全般に業容を拡大し、「トータル・ヘルスケア・コンサルティング&オペレーション・カンパニー」(Total Healthcare Consulting & Operation Company)になりました。
診療所や病院のコンサルティングや運営支援だけでなく、病院の再生、M&A、介護施設の再生・運営、健康経営や疾病管理等の予防事業、地域包括ケアシステムの構築、街づくり、新商品・新事業の開発、医療や介護の海外展開等、予防から治療、そして介護に亘り、多面的にヘルスケア業界全般に関わっています。最近は医療DXへも取り組んでいます。
成長の中で揺るぎない意思
組織は大きく成長する一方で、メディヴァには変わらない側面もあります。
一つは、患者目線と現場主義。
「患者さん」や「ご利用者さま」等、医療・介護消費者としての素朴な疑問や現場の視点を大事にすること。
二つには、目線を高く持つこと。
ヘルスケア業界における「革新」と新しい「価値創造」を目指し、「政策」へ反映させるという目標を持ち続けること。
三つには、仲間を大事にすること。
メディヴァは株式会社でありながら、NPO的な側面ももっています。社員だけでなく、ネットワークの一員として一緒に仕事をする人も含め、皆同じ目的を目指して集い、貢献し、学び合う仲間でありつづけること。
この三つを実現するために、メディヴァでは常に自ら下記を問うことにしています。
Are we innovative?
(我々は革新的か?)
Are we creating value for our patients and clients?
(我々は患者さんとお客様のために新しい価値を創造しているか?)
Do we excite the best people?
(最も優秀な人材が集まり、楽しんでいるか?)
これらは採用活動においても重要視している点で、このような価値観へ共感してくれた仲間がいまや200人を超えました。
2020年とこれから。
2020年はメディヴァにとって創業20年の年でした。世の中では新型コロナ感染拡大によって今までのやり方が一変してしまうような困難な年になりました。幸いにもメディヴァはそれらをクリアして業績を伸ばすことができましたが、かなりの影響を受けました。
しかし、大きな視点で見れば、必ずしも悪いことばかりではなく、イノベーションを起こすチャンスとも捉えられます。この機にオンライン診療は一気に進みましたし、メディヴァでもDXで介護の生産性を1.5倍にアップするプロジェクトなど、歴史的ピンチをチャンスに転じるポテンシャルを感じる取り組みが進んでいます。
私達の持っている力の本質は、「課題を定義する」力と「問題解決」の力だと思います。医療介護はDXで変わる可能性があると言われていますが、DXが真価を発揮するには、現場の課題を理解し、優先順位をつけ、その解決にDXをどう活かすかを考えて実行することが重要であり、DXを含めたイノベーションを外の力を持ったプレーヤーと連携して実現していくことも必要です。
各人が本当に変革を起こす気概をもち、今までと違う方法はないかと常に考えること、自分の頭で考え、恐れずに行動すること。個々人の力を結集してメディヴァ全体の力とすることで、医療介護を変えていくことができると信じています。
(株式会社メディヴァ 代表取締役社長 大石佳能子)