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CRO丸井 朱里 インタビュー

MEDITAのビジョンのひとつに「「研究×テクノロジー」を社会実装させ~」とあるように、事業の中心にはいつも「研究」があります。その研究部分を統括するのがCROの丸井朱里さんであり、MEDITAの共同創業者です。田中代表の数々のインタビューの中で毎回質問される「起業してこれまででもっとも印象に残っている出来事は?」という質問には必ず「丸井との出会い」と答えるほど、MEDITAのコアな部分を担うキーパーソンです。その丸井さんに研究者を志したきっかけから、MEDITAの未来についてお話を伺いました。



プロフィール:

株式会社MEDITA共同創業者兼CRO  丸井朱里(まるい しゅり)
2018年早稲田大学人間科学研究科博士課程修了、博士(人間科学)主に閉経前後の女性の体温調節について、ラットを用いた研究を実施。またヒト女性を対象に、基礎体温の予測研究や測定方法に関する研究も行っている。2016年12月よりMEDITAに参画し、博士課程在学中の2017年9月に株式会社MEDITAを共同創業者として設立し、ウェアラブルデバイス開発に携わっている。


体温の分野で研究者を志すきっかけ

ーそもそも体温の分野で研究者を志したきっかけを教えていただけますか?

大学3年生から体温の研究をしている研究室に所属していました。きっかけですが、元々女性の健康に興味があったんです。なぜ興味を持ったかというと、私自身が女性であり生理前にとても眠くなってしまうという悩みを抱えていたんですね。そこで、何かしらその悩みを軽減できるコトはないのかな?というところに関心が寄っていきました。女性の性周期に伴う不調はどうしても体温が関係してくるので、この体温の分野に入っていったというのが全ての事の発端という感じですね。

ーそれでは大学3年生の時に「将来は研究者だ!」と決めて入られたわけではないのですね?

当時は、3年生の時点で研究者を目指したというわけではなく、まず修士課程までは研究を続けたいという思いがありました。でも修士課程の1年目が終わって就職活動のタイミングがやってくるんです。そこで就職活動か、もしくは博士課程まで進むか、という選択肢があるんですね。私は企業の研究職向けの就活はしたんです。しかしちょうどその頃研究が面白くなってきて、しかもひとり立ちし始めた頃でもあったんです。でも周囲は就活をしているわけですから、自分もやってはみたものの、結局本腰を入れることはできませんでした(笑)。今思うと就職に向けての気持ちも固まっていなかったなと。やはり自分の研究を進めたいということで博士課程に進む道を選びました。

ー読者の中には「研究って何をするの?」と思っている方も多くいます。丸井さんが行っていた具体的な研究内容を伺ってもよろしいでしょうか?

研究は、動物とヒト両方を対象としておこなっていました。動物実験では、メスラットを用いて、更年期障害にみられるホットフラッシュに関わる研究をおこなっていました。他にヒト対象の研究としては、低体温についてです。「私、低体温なんだよね」というような表現が巷ではよく使われますよね。実は低体温という言葉は医学的には定義されていないんです。そもそも体温の測り方が間違っていたり、自分が平熱と思っている温度が実測値に基づいていないんじゃないか、というところから始まった研究でした。100名以上の大学生を対象にいくつかの体温の測定方法とアンケートを実施し、自分が思う平熱と、いくつかの体温測定方法による実測値との差のデータを出すという調査研究寄りの内容でしたね。

基礎体温に関する研究に本格的に取り組み始めたのは田中さんと出会ってからですね。


田中さんとの出会い、そして創業へ

ーここで田中代表が登場しましたが、前回の社長インタビューでも触れているように、ちょっと特殊な出会いでしたね。当時の丸井さんの状況や心境などをお聞かせください。

はい、SNSでのくだりですね(笑)。最初はメッセージに1か月くらい気づかなかったのかな?でも今と変わらず田中さんの印象は最初から熱量が高い感じでしたよ。

当時、田中さんと出会った時も、創業した時も、私はまだ学生だったんですよね。一般的に社会で働いたことがないという状況で出会い、チームHERBIO(旧社名)として動きながらゆくゆく創業することになるんですが、今思うと社会に出て働いたことがなかったからこそ、迷うこと無しにすっと入れたというのはあるかもしれません。話を聞いた時、単純に研究内容が面白そうで、田中さんが求めることに自分なら応えることができるなと思いました。
それと、今後研究者として歩んでいく中で、MEDITAに関わることで自分自身の研究に対しても勉強になるという思いがありジョインしました。だから当時は自分が重要なポジションで創業に関わるとは一切思っていませんでしたね。

ー結果、2017年に共同創業者としてMEDITAを創立されているわけですが、チームから会社として、そしてご自身がCROとしてやっていくんだろうなと具体的に意識されたタイミングなどあったのでしょうか?

チームにジョインした際に、3か月後にとあるピッチに出場することが決まっていたんです。でもそこで思ったような結果が残せませんでした。審査員から「実現は難しい」と言われたことが悔しくて、将来見返してやろうと心に決めたことを覚えています。それからより私の専門家としての意見を尊重してくれて、丸っと任せてもらい、さらに面白くなっていったんです。しかも知財の道筋が見えてきたので、であればその知財と技術、そして研究結果を社会実装していくためには法人化して事業としてやっていくべきだなと思い、CROとして、そして共同創業者として関わることを選びました。

ーその時特に迷いや不安はありませんでしたか?

特に迷いや不安はありませんでした。家族に相談したくらいでしょうか?当時は周囲にスタートアップの知り合いもいませんでしたし、同じような境遇の方もまだまだ珍しかったので。やはり社会人経験が無かった分、怖いもの知らずで一歩踏み出せたというのはあると思います。


創業時の苦労、スタートアップでのギャップ

ーでは、創業された頃に苦労されたことは何だったんでしょうか?

ひとつめは資金調達ですね。当時、アイディアはあったものの、それをカタチにするためにはお金が必要でしたから、とにかく田中さんと2人でVCをはじめプレゼンをしに回っていました。学会発表などでプレゼンの場数は踏んでいたものの、資金調達のためのプレゼンというのは経験はなかったので、はじめは厳しいご意見を頂くことがほとんどでしたね(笑)。最初の頃はゴールも見えずかなり苦労しました。この状態が1年ほど続きましたね。

ふたつめは、商談も田中さんと一緒にこなしていたのですが、当初、社会人経験が無い分研究者目線での対応しかできませんでしたね。やはり、研究者はデータとエビデンスを元に話をするので、営業や営業トークという点では、勉強しながら社会人1年目として慣れていったという感じでしょうか(笑)。

ー営業トーク(笑)。丸井さんのように大学での研究職からスタートアップに飛び込んで感じるジレンマの一例として印象的なエピソードですね。大学で研究職などをされている方はやはりギャップを感じるでしょうか?

そうですね、何かしらのギャップは感じると思いますよ。例えば大学で研究職をしている研究者は、自分がやっている研究は基本的に利益の追求ではないので、いざ会社にジョインするとなると、会社の利益の追求、事業成長への貢献も考えて動いていかなければなりませんから。これは大企業の研究職でも同様でよね。やはりそのギャップには最初慣れないと思います。


スタートアップでの研究の魅力

ーMEDITAでは現在研究者の採用に力を入れているのですが、スタートアップ、ベンチャーでの研究の魅力ってなんでしょうか?

研究の内容にもよるかもしれませんが、大企業の研究職よりは自由度は高くなる可能性があると思います。よりその人の専門性にピンポイントで焦点を当て採用されると思うので、自分のやりかったことに取り組むことができるチャンスも多いでしょう。
また、研究成果が社会実装されるまで随分長くかかってしまうイメージが一般的にはあると思うんですが、やはり実際にそういう側面はあるんですね。研究者は学会や論文発表などでその成果を世に出してはいるものの、どうしてもその界隈および、基本的に専門家向けの発信のみで、社会に活かされるまでは随分時間がかかってしまいます。スタートアップやベンチャーでの研究成果は、サービス化されるまでの時間も早いですし、社会実装までの間も一般の方に認知してもらいやすいので、社会への還元スピードと、自分たちもそれを早めに見届け実感することが出来るというメリットは感じますね。

ーでは、丸井さんが思うスタートアップやベンチャーでの研究職に向いてる方ってどんな方でしょうか?

もちろん研究者の中にはデータと向き合って地道に進めていくということを得意とされる方も多いと思うのですが、私自身は色々な人の話を聞いて、コミュニケーションをとりながら進めることが好きだったんですね。その中で、社会に対して自分が出来ることは何だろう?と考えながら研究をしていたので、周囲の研究に関わる色々な層の人と連携をしながら、世の中の課題解決を自身の研究と絡めてやって行きたいと思っている方が向いているのではないかなと思います。

実は研究者ってマルチなことをやっているんですよ。世の中的にどういう仕事をしているのか伝わりづらい部分があるのですが、研究というのはお金がかかるものでもあるので、そのお金を得るプロセスの中でしっかりと研究に対してのストーリーを組み立てる力が必要になります。

―まさに資金調達のお話と似ていますね

そうですね。自分の研究が世の中にどう貢献できるのか仮説を立て、研究計画の中でどのような実験をしなければならないのか、そしてその実験・研究成果は世の中のこういう人たちに届ける必要があると、文章に落とし込んで伝える能力が必要です。だからゴールまでの筋道を立てるということを得意としている人は多いですね。また、学会でプレゼンもよくするので人前で話をするスキルや、研究室の後輩の教育・指導経験など、実は企業で求められるスキルと同様のスキルが求められます。研究者はひとり社長的な動きをしているので、スタートアップ、ベンチャーで能動的に力を発揮できると個人的には思っています。


MEDITAでの働き方

ーではスタートアップで働いてみたいと思っている研究者の方がより働き方をイメージできるよう、MEDITAでの研究者としての働き方のとある一日のスケジュールを教えていただいてよろしいでしょうか?

新型コロナウイルスによりリモートが主になる前は、商談やPoCの実施先などにも実際に出向いていました。現在は状況も変わり、地方で研究に取り組んでくれているメンバーもいます。以下は一例で、出社した際のオフィスでの過ごし方ですが、少しでもイメージが湧くお手伝いができると嬉しいです(笑)


これからのMEDITAについて

ー現在のお気持ち、そして今後のMEDITAの展望を教えていただけますか?

「よし、これからが勝負だな!」という気持ちですね。もちろんこれまでもその気持ちではあったのですが、今は資金調達を実施し、医療機器認証を取得することを目指すと同時に、世の中に広めていくというタイミングにあるので、よりその思いは強くなっています。

展望としては、やはり体温に関する私たちの独自の技術と、それを活用した研究という部分が世の中になかったので、今ニーズが高い感染症や病気に関連する部分であったり、妊活や不妊なども含めた女性の不調などを何かしら軽減するサービス、また今まで基礎研究では出来なかったことがヒト研究で出来てくるので、そこのデータを取りに行くなど、今までやってきたことをより深めて多方面で研究を進めていきたいと思っています。
今後はクライアントのニーズにもより応えることが出来ると思うので、検証の場も広がって行くと思います。

また、メンバーも増え、エンジニアさんと連携しながらデバイスだけでなくアプリケーションから取れるデータというのもあるので、そこの価値も高めていきたいですね。

ーより研究に注力できる環境が整ったという感じでしょうか?

これまではアライアンスを含め商談にも出向くことも多かったのですが、研究者も増えてきたので、責任者として私たちが取得できるデータの解析、及びその価値付けがどうできるのか?という点をより深めていきたいです。体温の研究をしている人は多くはないのですが、ヘルスケアに関する研究をしている方は、MEDITAでは多様性のある研究を目指しているので、ご自身のスキル・知見・経験を存分に活かすことはできると思います。まずは安心してご相談ください(笑)。やはり体温を軸とした事業であり、皆さんの健康にしっかりと貢献できる、そんな会社にしていきたいですね。

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