私のLiferayでの歩み
はじめまして。Liferayでリージョナルサポートマネージャーを務めており、ヴィンセント・リュウと申します。出身は中国で、現在は東南アジアやオーストラリア/ニュージーランドのお客様をサポートするチームを率いています。
Liferayに入社して14年になりますが、振り返ると、まるで3〜4社ほど全く別の会社を経験してきたような、そんな不思議な感覚があります。
私が入社した頃は、製品はまだ「Liferay Portal 5」。当時役に立っていた知識やノウハウは、今ではほとんど使い物になりません。製品も会社も、そして自分自身も、何度も「リスタート」を繰り返してきました。
それでもLiferayに居続けたいと思える理由は、技術ではありません。
変わらずに存在し続ける文化、価値観、そして「テクノロジーを良い力として活かす」という揺るぎない信念です。
変わらない価値が会社を形づくる
外から見ると、Liferayは数あるソフトウェア企業のひとつかもしれません。しかし実際に働いてみると、他社とは明らかに異なる「空気」があります。
象徴的なのは、外部投資(VCなど)を受けていないことです。投資家の短期的な期待に左右されず、会社として守りたい価値観を大切にできる——その自由さこそが、Liferayらしさだと感じています。
そして、Liferayでは私自身の強みを「人のために使う」機会を数多く与えてもらいました。サポートエンジニアとしてお客様の問題を解決することも好きでしたが、何より心に響いたのは、「人が人の成功を支える」ことに喜びを感じる自分に気づけたことでした。
その価値観を最も体現しているのが、Liferayの社員ボランティア制度(EVP)です。
「Impact One Life」——EVPの原点にある想い
EVPの中心には、『Impact One Life』という考え方があります。これは単なるスローガンではなく、
「たった一人にでも良い変化をもたらせるなら、それは十分に意味のある行いである」
という姿勢そのものです。
雲南省で出会った障がいを持つ少女・シャオピンとの出会いは、私の価値観を大きく揺さぶりました。生涯にわたる差別や困難を経験しているにも関わらず、彼女のお母さんは誰よりも前向きで、こう言いました。
『笑給天看』——天に届くように笑おう。
困難に立ち向かう「静かな強さ」を表す言葉で、その意味を知った瞬間、胸の奥が熱くなるほどの衝撃を受けました。
この言葉は今でも私の支えです。
そして同時に気づかされたのは、
助けているのは自分たちだけではなく、むしろ相手から多くを与えられているのだということ。
EVPが生み出す、忘れられない瞬間
Liferayでは、全社員に年間5日間のボランティア休暇が付与されます。1年のうち、わずか5日。しかし、この5日こそが毎年もっとも心に残る時間です。
■ 大連:自閉症の子どもたちを支える活動
中国・大連では、自閉症の子どもたちを支援する団体「愛納」と協力していました。外見は他の子たちと変わりませんが、表現の仕方が誤解されることもあります。私たちが担ったのは、その違いを自然な個性として受け入れてもらうための架け橋になることでした。
団体では、子どもたちの将来の自立を目指し、手作り作品を販売する小さなショップを運営していました。一つひとつの作品には、彼らの努力と才能がしっかりと宿っています。
■ 天津:教育の機会を広げる支援
天津では、医療的ケアや障がいを持つ子どもたちを支援する施設「Shepherd's Field Children’s Village」と活動を続けてきました。スタッフの方々は献身的ですが、圧倒的に人手が足りません。そこで私たちは、得意とする「テクノロジー」で支援しました。
中古PCの提供、タブレットやIT環境の整備、小さなコンピュータラボの設立。
Liferayの社員たちは毎年訪問し、授業を手伝ったり、清掃や準備を行ったり、チーム皆で力を合わせました。
■ 雲南:10年続いた、人生を変える体験
そして何より大きな影響を受けたのが、雲南省の山間部での活動です。街から遠く離れ、言語も文化も全く異なる地域で、特別な支援を必要とする子どもたち、そして若い教師たちと関わりました。
20代前半で複数の子育てをしながら働く先生たちの姿には、毎回胸を打たれました。
道のりは長く険しいものでしたが、やがて私は両親や友人も連れて参加するようになり、小さな「共に歩むコミュニティ」が生まれました。
楽しい瞬間もある一方で、心が張り裂けそうになる瞬間もありました。
何年も会ってきた子どもが、ある日突然いなくなってしまうことも——。
そのたびに、「生きることの尊さ」を深く考えさせられました。
そして一番学んだのは、
相手が必要としているのは高価な支援ではなく、寄り添う時間や『あなたを見ているよ』という存在の証明であること。
そして、
私たちが受け取る学びのほうが、ずっと大きいということでした。
日本での新たな挑戦
1年半ほど前、私は大連から日本チームへ異動する機会をいただきました。家族と離れて暮らす決断は簡単ではありませんでしたが、日本のリーダーである Craig Kaneko、Daniel Ozeki、Tony Lim を信頼していたからこそ挑戦を選びました。
彼らは長年Liferayを支えてきた仲間であり、価値観を共有できるリーダーです。日本チームに合流したとき、「新しい土地に来た」というよりも、「長く続く旅の続きを歩き始めた」ような気持ちになりました。
最後にーーLiferayで働く意味
私が14年間Liferayにいる理由は、とてもシンプルです。
- 仕事に「意味」があるから。
- 人が本当に温かいから。
- そして会社が、テクノロジーを良いことのために使おうと本気で取り組み続けているから。
EVPが教えてくれたことは、
「世界すべてを変えられなくても、目の前の誰か一人の世界は変えられる」
という事実です。
そして、そのたった一人の変化が、ときにとても大きな意味を持つのだと思います。