LeapMindは超低消費電力AI推論アクセラレータIP「Efficiera(エフィシエラ)」の正式提供を開始しました。Efficieraの開発とビジネス展開を取りまとめるBlueoil事業部のGM兼VPoBIZ 山崎に開発・ビジネスの今後と、Efficieraで目指す未来について伺いました。
聞き手:Marketing Communication Division
LeapMind株式会社
Efficiera事業部 GM,VPoBIZ
山崎 勝利
1970年生まれ。慶應義塾大学修士課程修了。日米欧の半導体/IP製造業で事業責任者を歴任。2020年にLeapMindに入社し、Efficiera事業の責任者を務める。
エッジデバイスにディープラーニングの機能をくまなく、あまねく搭載して実用化を目指す
― Efficieraの商用版が正式にリリースになりましたが、今、市場に対して伝えたいメッセージを教えてください。
一番は、Efficieraを軸にして、エッジ、IoTの組込み領域に対して広くAIを搭載していきたいということですね。Efficieraの製品群ではアクセラレータIPと、それに伴うツールとディープラーニングモデルが同時提供されていて、基本的にはエッジ、あとクラウド系でやられているプリファレンスの部分をブリッジングしていきます。それで、ブリッジングをどんどん太くしていって、最終的にはエッジデバイスにディープラーニングの機能をくまなく、あまねく搭載して実用化を目指す、というところが一番押し出したいポイントになります。そしてEfficieraは「エッジAIのスタンダード」になるポテンシャルがある、ということも強調しておきたいです。
―Efficieraを始めとしたLeapMindの技術はどういう人達に使われるものなのでしょうか?
今の我々のビジネスから遠いところだと、すべての人たちになりますね。LeapMindの最終的な目的は生活をより便利にする、ということです。なので、私達みたいなサラリーマンとか小さなお子さん、おじいさんおばあさんたちの支えになるように開発に取り組んでいきたいです。あるいは、人間の立ち入れないようなところでなにかのモニタリングしなきゃいけないケースなど、そういうもっと社会基盤のような部分を支えるものとしても使われるようにしていきたいと考えています。
我々に近いところだとエッジデバイスに関わる業界の方々です。この業界では制約が非常に多い、小さなCPUを使って製品として高機能なものを作らなきゃいけないんですね。制約というと、例えばメモリ容量が足りないとか、消費電力が低くなきゃいけないとか、あるいは値段が安くなきゃいけないなど…でもそれでいて頭の良いものでないといけない。こういった制約の中で、エッジデバイス業界の方々は日夜頑張られているんですけれど、LeapMindはここへ集中して資源を投下して、エッジデバイスでもAIを動かせるようにしていこうというわけです
―そのエッジデバイス上でのAI、エッジディープラーニングはどう活用されるのでしょうか?
エッジディープラーニングは、いろいろなユースケースが考えられて、例えば農業機械とか産業機械に使われれば、人間の目で認識できないような現象を捉えることで制御能力を高めていくとか、人間の立ち入れないところで作業の補助をして効率やクォリティを上げていくことなんかが挙げられると思います。
―Efficieraの持つ良さを山崎さんの視点で教えてください。
まずは、ハードウェアIPとして非常に小さくて適切な精度で計算ができるように作ったというところです。このIPの競争優位性は非常に大きなものがあると私は考えています。
それと、IPに加えて、それを使うためのツール、更に重要なその上で動くモデルも我々は作りました。このように色々と複合的にEfficieraの製品群を作れているところも良さだ思っていて、モデルまで全部自分で作る例は他にないと思います。
IP単体だとたくさんの競合が、そして、モデルでも競合が多くいます。ですがIPとモデルまでつなげて、きちんとブリッジングできる、というところにこの製品群の強さがあります。
半導体業界に長くいた身からしても、ツールやモデルの知見は半導体業界にはないので、そこまできっちり作り込めているというところは優位性が高いと言えます。
LeapMindは受託開発でモデルの開発とかチューニングの対応を数百社した経験を持っていて、その知見がこういった優位性をもったEfficieraの形を作っています。組込みにはなかなか対応しづらいよねとか、実用化にはここがネックなんだよねとか。そういう課題感がEfficieraの良さに活かされているんです。
IPとモデル、その間をつなぐソフトウェア、その3種類を更に良いものにしていく
―今後のEfficieraの展望を聞かせてください。
開発の展望としては、我々の狙っている、エッジ領域の市場向けに集中して資源を投下して、低消費電力で適切なパフォーマンスが出るIPを継続的に改善して作っていくというのが第一にあります。
そしてソフトウェアでは今後、一般的に広く使われているフレームワークをサポートしていくことで、我々の極小量子化を使ったディープラーニングモデルをより柔軟に作れるようなインフラストラクチャーのような機能をEfficieraに持たせたいと考えています。
その上で、お客さんのユースケースにあったモデルを大量生産して市場にどんどん拡大させていく、言わばモデルのデパートのような存在にLeapMindがなっていくというのが今の構想です。IPとモデル、その間をつなぐソフトウェア、その3種類を更に良いものにしていくということですね。
ビジネス面のことをお話すると、我々の行なってきた垂直統合型のビジネスでは、現状の市場課題をすべて解決できるとは思っていません。まだ知らない多種多様な問題があるはずです。なので現在は市場に対してヒアリングをすることで課題抽出をしていっていて、今後はその結果を元にした課題解決の水平展開をしていきます。垂直展開での深堀りと、水平展開で市場のお客さんが困っているところにきちんとアドレスすること、この2つでビジネスを広げていきます。
また、こういった開発やビジネス展開をしていくとなると、我々一社じゃできない、我々に付加価値が出せないところが出てきてしまうのですが、そこではパートナーの方々と協業してビジネスを確かなものにしていきたいと考えています。具体的には、FPGAのマーケットでは、当然、我々はFPGAを作れないので、FPGAのサプライヤの方と協業したいし、ASICやASSPにおいては半導体サプライヤの方々と協業したい。さらに、OSのサポートとか、AIの開発フローの中で必要になってくる工程でもパートナー企業の方々の力を借りる必要があると思っています。パートナーの方々と自社、LeapMindも含んだEfficieraのエコシステムの拡大を図っていきたいです。
LeapMindは「顧客課題を解決可能なAI搭載製品・ソリューションの共創」を目的とするEfficiera FPGAパートナープログラムを提供しています。
人間の生活様式が変わっていくところのお手伝いをしていきたい
―最後に、Efficieraが広がった後の世界はどうなると山崎さんは考えていますか?
今のEfficieraだと人々のワーキングスタイル・ライフスタイルを変える、というところまでは届いていないと思います。けれど、今後数年かけて継続的な開発をして、人工知能というキーワードで製品を出していくことで、人間の生活様式が変わっていくところのお手伝いをしていきたいと思っています。
いろいろな情報をAIで取捨選択して人々に届ける、その内容を人間が有効に活用して暮らしやすい世界にしていく。あるいは農機でAIの目なり耳なりをもたせることで効率が上がって農作物がたくさんできる、そして農業やっている方々が幸せになる、そういう世界をEfficieraを始めとしたLeapMindの技術で支えることを目指していきたいですね。