東京証券取引所マザーズ市場への上場のお知らせ
株式会社マネーフォワード(本社:東京都港区、代表取締役社長CEO:辻庸介、以下「当社」)は、2017年9月29日をもちまして、東京証券取引所マザーズ市場へ新規上場いたしました。ここに謹んでご報告申し上げますと...
https://corp.moneyforward.com/news/release/corp/20170928-mf-press/
Kyash代表の鷹取です。自身がKyashで個人間送金のサービスを運営していること、また三井住友銀行の出身で現在はFintech協会の理事を務めさせていただいているというバックグラウンドもあり、国内外の金融業界及びFintechの業界動向には常に関心を持っています。
2017年は、日本においてもビットコインを始めた仮想通貨以外にも産業としてFintechが世を賑わした年でもありました。
国内Fintech企業をざっと整理すると、こんなところでしょうか。
そんなFintech勃興・激動の2017年を俯瞰し、個人的感想も交えながら国内外の10大ニュースをご紹介したいと思います。
2017年9月に、株式会社マネーフォワードがマザーズ上場を果たしました。
Fintechという言葉が流行し始めてから、初の本格的フィンテック銘柄とも呼べるマネーフォーワードの上場。売出の価格も、同社への期待が詰まったものだったように思います。
また、時期を同じくして、日銀から金融庁に出向をしていた神田さんがマネーフォワードに移籍されるというニュースがありました。こちらは業界外では馴染みの深いニュースではないかもしれませんが、神田さんのような行政サイドで日本の金融界の変革を実践されてきた方がFintech企業に入社されるというニュースは、業界にも大いに勇気を与える出来事だったのではないでしょうか。
個人的にも、神田さんにはFintech協会を通じて大変お世話になりました。神田さんが金融庁の出向を終えて大きなご決断の際におっしゃられていた司馬遼太郎の「坂の上の雲」の話は沁みました。弊社も将来何らかの形でご連携し、一緒に業界を盛り立てていければと思います。
Apple社が個人間送金市場に進出するというニュース。今年12月4日には米国ユーザ向けにサービスリリースされました。
ApplePayCashの機能が決済だけであるならば、ウォレットという形で、既存のクレジットカードのネットワークでユーザー側のカード情報を今までよりもさらに便利に支払えることが価値になります。
そこに送金という機能が備わるとなると、ウォレットの中の仕組みで残高を管理していく運用が発生します。米国ではGreen Dot社と組むことでプリペイドカードの発行・残高移動を行っていますが、今後各国に進出する際には、各国に置ける資金決済法準拠を行うでパートナーと組んでいくことが考えられます。一般のWebサービスと異なり、送金の国際展開が難しいと言われるのはこの理由からです。
また、このニュースに対して、米国個人間送金の雄であるVenmoの親会社PaypalCEOのDan Schulman氏が「Apple Pay Cashは競合にもならない」と発言したことも、あわせて業界で注目を集めました。
ご存知の通り、2017年ビットコインの価値は高騰を続け、各国の法定通貨と比較して4位にまで上昇と報道されました。そんな中、中国では当局がビットコインの扱いを禁止するというニュースがありました。
このニュースのポイントは、単にビットコインの価値が上がり続けているということや、中国当局が取り扱いを禁止したことではなく、「中国当局が正式にビットコイン取引を禁止」という事実を受けてもビットコインの価値の減少が限定的であったというところです。
この事実は、投機的な流入に加えて、様々な事情で自国の通貨の信頼や価値の安定を懸念し、より価値の保存として仮想通貨に指示が集まるアフリカなどの地域の力強さを浮き彫りにしたと言えるのではないでしょうか。
5月に「銀行法等の一部を改正する法律」が成立し、6月2日に公布されました。銀行法の改正は2年連続となります。
2016年に改定された「銀行による出資上限の緩和」では、金融機関がFintech企業などを買収・出資がしやすくなりました。以前より金融庁主催の「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」でも議題に上がっていた、銀行は専業の義務からIT事業を営む(又は5%以上出資する)などが難しく、事業主体が小売業やIT業の場合は子会社として銀行を保有できるという問題がありましたが、今回の改正でこの点が(個別承認制ではありますが)公平性を担保した形で整備され、2017年4月から施行となっています。
今回の改正は、銀行によるオープンAPI(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)公開の努力義務と銀行システムに接続する企業の登録制導入です。2018年春以降施行される見通しです。
その他、割販法などの決済周りの法改正に加えて、送金と決済といった従来では経済産業省と金融庁が個別に管掌していた業種もサービスの軸で捉えた法整備が進む検討もなされています。
昨年、インドで一夜にして高額紙幣が使えなくなったことが金融界を超えた衝撃ニュースとなりました。地下銀行や偽札問題の改善に対するアクションですが、これに加えて政府が「UPI (Unified Payment Interface)」という決済サービスを展開すると発表し、Modi首相自らがアンバサダーを務めるという力の入り具合にこの国のマネーのデジタル化へのコミットを見た気がします。
2017年1月にデンマークが造幣局を閉鎖して紙幣の印刷を中止しました。硬貨についても国内での製造を終了して外国に委託製造をすることを決定しています。
現金廃止の動きは、北欧を中心に現金を受け付けない飲食店の増加(スウェーデンでは現金決済比率が2%とも言われています)などありましたが、デンマークの造幣局閉鎖は、まさに通貨の主体が物質的なものからデジタルに変わっていく本格的な兆しと言えます。
メルカリのプラットフォームで折りたたんだ紙幣や残高入りのSuicaなどが取引されるといった出来事があり、話題になりました。
不適切な出品であったといえばそれまでなのですが、額面よりも高い額での取引されるということは、「一万円札が状況に応じて一万円以上の価値を持つ(ことがある)」つまり金額と価値は常にイコールではない、ということを表しています。これは当たり前といえば当たり前ですが、この出来事は、取引が成立する金額というのはあくまで「価値」を数値化したものなので、物質的な紙幣が固定の「価値」を持つのではなく、デジタルであることでその可変性をもたらすということを示してくれた、個人的に興味深いニュースでした。
Kyashも資金決済の業界でサービス提供していますが、送金や決済においても、「残高を現金化できるかどうか」ではなく、原則はデジタルな価値として保有しつつ、「現金という形態を借りる」というサービスを購入できると考えられると、展開の幅が出てくるように思うのです。
JP MorganのJamie Dimonが、ビットコインのことを「Fraud」と呼んだことが注目を集めました。
日本でもビットコインは投機の対象という毛色が現時点では強いですが、ジンバブエなどのアフリカ諸国や一部の地域では自国の通貨よりも価値の保存・維持という観点で支持されるという事実から、置かれた環境や情勢によって価値の存在自体が多様に解釈される事例だったように思います。また大手金融機関の首脳陣が本格的に仮想通貨の未来に対して言及するようになり、行方は別としてビットコインなどの仮想通貨の存在が高まった年でした。
仮想通貨が各国で活況ですが、国内のメガバンクも自社コイン(仮想通貨)の開発に躍起です。
従来まで、日本の金融界は、経産省が管掌する決済事業(割販法)と金融庁が管掌する為替事業(銀行法・出資法)に分断されていた為、精算機能を担う銀行がクレジットカード発行や主体的に決済事業を行う環境ではありませんでした。
しかしVisaデビットや銀行口座直接決済などを通じた決済機能を銀行が担い始めるようになり、景色が変わり始めています。
2018年は、国際ブランドのネットワークとの連携方法・領域をどう考えるか、現存する全銀システムによる資金移動のコスト構造からどのように脱却を図りながら、利用者に対してより良い体験を実現するかを実証する年になりそうです。
米アマゾンが銀行業に参入するというニュースが出ました。
このこと自体には何も驚きはないと思いますが、Amazonが日本でも2014年からAmazonカードを発行し、金融事業への参入に向けて時間をかけて検討してきたということです。
自社のコマースプラットフォーム及びそれ以外の範囲(国際ブランドネットワーク)でユーザーがアクションを起こすために必要なインセンティブとそれに見合う投資について検証してきたのではと推察しますが、Eコマースの雄でありながら検証にじっくり時間をかける姿勢には、スピードが重要なKyashのようなスタートアップへの示唆だと受け止めています。 楽天グループと同じようなEコマースの出店する店舗を基盤としたユーザーへの経済的なインセンティブ提供を中心とする参入をするのか、今後の動きに注目です。
さて最後に、自社のことで恐縮ですがKyashも2017年4月にサービスローンチしました。
「個人間送金」はFintech領域においてもまだ未開拓領域で、確立した市場は存在していないと考えています。米国では、Venmoの取扱高が年間2兆円を超えていることや、日本でも内閣府の未来投資戦略や行政の掲げるキャッシュレス方策でも言及されるなど潜在的市場は非常に大きく、期待されている領域です。
「送金」の領域は、法規制や業界構造の複雑さ、技術的な難易度の高さからこれまでIT・テクノロジーの恩恵をさほど受けて来ず、情報やコミュニケーションがユビキタス化する中で依然として不便が残っています。「現金のストレスをゼロに。」を標榜するKyashですが、2018年は新しい価値移動のインフラとなることを目指し、そしてFintech界及び経済を前進させるところに寄与できればと思っています。
鷹取 真一 Kyash Founder&CEO:早稲田大学国際教養学部卒業後、三井住友銀行に入行。 法人営業を経て、経営企画にて海外拠点設立、金融機関との提携戦略の担当として国内外の銀行モデルを研究。その後、米系戦略コンサルファームの日米拠点にてB2C向け新規事業に携わる。次世代の通貨を構想し、株式会社Kyashを創業。一般社団法人Fintech協会の理事。