「ディレクターになりたいけど、自分にできるか不安で」という声をよく聞く。
その不安の中身を聞いてみると、だいたい3つに分類できる。「ITの知識がない」「コミュニケーションが得意じゃない」「決断するのが怖い」。
それぞれ、現場の視点から答えてみる。
「ITの知識がない」について
必要な知識は、働きながら身につく。
これは慰めではなく、事実だ。ディレクターに必要なITの知識は、プログラミングを書けることではない。「何がどのくらいの工数で実現できるか」「なぜこの技術選定が適切なのか」を判断できる「感覚」だ。
その感覚は、実際のプロジェクトに入って、エンジニアと毎日話して、失敗して修正することでしかわからない。入社前に完璧に準備することはできないし、する必要もない。
ただ、「基本的なWebの仕組みくらいは知っておきたい」という気持ちがあるなら、Webサービスがどう動いているか(ブラウザとサーバーのやり取り、データベースの役割など)を大まかに理解しておくと、最初の慣れが少し早くなる。
「コミュニケーションが得意じゃない」について
ディレクターに必要なのは「うまく話せること」ではない。
「相手が何を伝えようとしているかを正確に理解し、それを別の人に正確に伝えられること」だ。
話し上手な人がディレクターに向いているかというと、必ずしもそうではない。むしろ「自分が話しすぎず、相手の話をしっかり聞ける人」の方が向いていることが多い。
クライアントが「こういうシステムが欲しい」と言ったとき、すぐに「わかりました」と返すのではなく、「もう少し詳しく教えてもらえますか?」と聞けること。その聞く力が、プロジェクトの品質を決める。
「決断するのが怖い」について
これが一番本質的な不安かもしれない。
ディレクターは毎日、大小さまざまな決断をする。そしてその決断が間違えることもある。スケジュールが遅延したり、クライアントの期待とズレが生まれたり。
怖くて当然だ。でも「決断しないこと」がもっとも高いリスクを生む。
曖昧なまま進むと、エンジニアは止まり、クライアントは不安になり、プロジェクトはどんどん重くなる。決断の質は経験で上がっていく。最初は間違えてもいい——間違えた後にちゃんと学べれば、それが次の判断の精度を上げる。
できる人の共通点
これまで一緒に働いた「伸びるディレクター」には、ひとつ共通点がある。
「わからないことをわからないと言える人」だ。
知ったかぶりをしない。確認を怠らない。迷ったとき、一人で抱え込まず相談できる。そのシンプルな誠実さが、信頼を作り、チームを動かし、プロジェクトを成功に近づける。
スキルは後からついてくる。その「誠実さ」だけは、最初から持ってきてほしい。