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企業としてのDNAを活かし成長路線を描く。人事責任者が説く「人事ポリシー」策定の意義

「カンムの目標は『銀行機能をアップデートする』。当然ながら、人事の取り組みはすべてこの目標の実現を想定して行っています」

こう語るのは、人事責任者の横井一喜です。2023年3月カンムへ入社して以降、人事制度、組織体制、採用戦略、ミッション・行動指針の制定など、会社の根幹部分を次々と整備してきました。

今回は、人事施策のすべての拠りどころとなる「人事ポリシー」にスポットを当て、策定に至った背景や狙いについて横井に詳しく聞きました。

制度をつくる前に、思想を持つ。すべての拠りどころになる「人事ポリシー」

──はじめに、なぜこのタイミングで「人事ポリシー」の策定に至ったのか、経緯を教えてもらえますか。

横井:代表の八巻から「人事制度をリニューアルしたい」とリクエストがあった際に、私から人事ポリシーの策定を提案しました。長年人事をするなかで、制度をつくる前に“観”を持つことの重要性を痛感してきたからです。

人事制度は処遇のためだけでなく、期待する行動やパフォーマンスの基準を示すコンパスであり、マネジメントサイクルをスムーズに回すためのツールとして機能させる必要があります。手直しをしたい内容を先行してつくると、つぎはぎだらけで矛盾が生じてしまう恐れがある。しかし、立ち返る場所となる人事ポリシーがあれば、筋の通った制度を敷くことができます。

──今回、どのようなプロセスで「人事ポリシー」を構築していったのでしょうか。

横井:当時ビジネスサイドを管掌していた八巻と、開発サイドを管掌していたCTOの伊藤の考えや想いをベースにしてつくり上げました。

まず、基本的な企業活動に対する考え方を細かくヒアリング。「給与は何に基づいて支払われますか。これまでやってきたことを清算する形ですか?それとも将来に対する投資ですか?」というような原始的な問いです。

ほかに、これまで評価時に重視していたこと、組織運営で大事にしていること、会社として残したい・強化したい価値観や行動などを整理して体系化。人事ポリシーとしてまとめていきました。

▲ヒアリングの一部。さまざまな観点からヒアリングを重ねてまとめた。

▲「銀行機能のアップデートに挑む組織」を理想の組織像として置き、下支えとなる既存のカルチャーと齟齬が起こらないように組み立てられていった。


──最終的には、どんな形に落ち着いたんでしょうか。

横井:大枠の考え方や価値基準などは今までのものに準ずるものになっています。つくりだしたというよりは「既にあるものを形式知化した、もしくは再解釈した」という表現のほうが正しいかもしれません。

新たに付け加えた要素は、主に2点です。ひとつは、「今後、より強化していきたい考え方や行動」。八巻が抱いている課題意識も組み込みました。もうひとつは「会社が提供するもの」です。


▲新たに策定された人事ポリシー。

新たな事業を生み出し、さらなる成長を遂げるために。人事として契機をつくる

──トップが感じている課題について詳しく教えてください。

横井:カンムはこれまで「バンドルカード」という単一のビジネスモデルで成長を遂げてきました。しかし、今後は「お金の新しい選択肢をつくる」をミッションに掲げ、事業を多角化してさらなる成長を目指しています。

新たな事業の創出を前提としたとき、今のカンムにはないケイパビリティ(企業成長の原動力となる組織的能力)を持つ必要があります。既存の最適化や改善という筋肉を中心に使ってきたものを、非連続な成長を遂げるために新たな付加価値をつくりだす筋肉も鍛えなければならない。

つまり、組織全体として”世の中にある正解を探すのでなく、新たな付加価値を自らつくりだす”動きができるように進化する必要があります。

こうした目指すべき姿と現状とのギャップが課題です。

──2023年10月から組織を刷新したのも、その布石なんですね。

横井:はい。機能型組織から事業部制の組織に変更したのは、「一人ひとりにオーナーシップを持ってもらいたい」という意向があったからです。

八巻をはじめとする役員から各部署の責任者へ権限移譲し、各事業部の自立を促すのが主な狙いでした。

もっと初動を速く。「チーム駆動」に込められた思い

──ここからは「人事ポリシー」の具体的な内容についてお聞きします。印象的だったのが「チーム駆動」という言葉なのですが、こちらはどのような背景でつくられたのでしょうか。

横井:カンムではもともと「自律駆動」という言葉を用いながら、“個の強さ”を強みとしてきました。確かにこれまでは、ひとりで何人分もの働きをする一騎当千のような人材を積極的に採用していたので、表現としては合っていたと思います。しかし今後さらに成長していくにつれ、個の強さだけでは乗り越えられない壁も数多く出現するでしょう。

立ちはだかる壁を、個だけではなく、集合知で乗り越える力も育んでいきたい──「チーム駆動」にはそうした意思が込められています。それぞれの専門性を持ち寄って3倍の速度で乗り越えていく。そんなイメージです。

──チームとして動くことで、能力だけでなくスピードアップも図りたいと?

横井:そうですね。機敏さ(アジリティ)については、特に八巻が重視していた部分なんです。

チーム駆動を前提とした「個人に求める行動・振る舞い」。そのなかにある「それぞれの専門性や強みを持ち寄って補完し合いながら事業を加速させる。」という一文には、「組織の集合知でより高い成果を生み出していく」と「考えることに時間をかけすぎず、初動を速くする」ことの2つを一体として捉えています。

カンムには「議論を重ねる」、「事実に向き合う」文化があり、今後も大切にしていきたい一方で、これらに時間をかけすぎることは避けるべきです。必要以上に議論や調査をしてしまうかもしれない。それよりも、筋の良い仮説を立て検証していくことを優先すべき、というのが八巻の見解です。1か月後の100点より、3日で60点を目指したいとも言っていました。

──そのほか、挙がっていた課題はありますか。

横井:社員数が増えたとしても当事者意識を持ち続けてほしいという話もしていましたね。職種を問わずユーザーに向き合い、考え抜いて課題を設定したり、能動的に仕事をやり抜いたりできる組織であり続けたいと思っています。

課題を問い直し再定義して、成果をも定義する。「抽象的な課題を解く力」を育む意味

──「初動を速くする」、「当事者意識を持つ」先に、どんな成長を描いていますか。

横井:より抽象的な課題、そして経営課題を解く力が養えると考えています。どちらも新たな付加価値を生み出すために必要不可欠な素養です。

「抽象的な課題を解く」ことについては少しわかりづらいと思いますので、事例を用いてお話ししますね。

手前味噌で大変恐縮ですが、採用活動においては「計画どおりに採用が進捗しない」という課題がありました。その課題に対して、広告の出稿を増やしたり、スカウト打って、応募数を増やすというのもひとつの手段ではありますが、表面的な解決策で終わってしまいます。

課題を問い直して再定義して、成果そのものを定義する。それが、私が取ったやり方です。

まず、3年後の組織図を作成しました。会社の目標、起こり得る外部要因を鑑みながら、少し先の事業内容、売上構成などを予測し、その実現に必要な組織を“仮定”したんです。そのあと、目指す組織の成長ドライバーとなりうるキーポジションを特定し、フォーカスを決めて採用を進めていきました。

キーポジションが埋まっていくと、新たに加わった人が生み出す影響によって、採用の要件や他の必要なポジションが変わり、組織の作り方や各機能の持ち方も変化していく。動的なものだからこそ、最初にキーポジションを特定することがとても大事なんです。

このような流れで「抽象的な課題を解いた」結果、採用人数は昨年の倍になりました。

──先ほど話に出た「筋の良い仮説を立てて、検証する」を実証した感じですね。

横井:「いかにして勝ち筋をつくりだすことができるかどうか」がカンムにおけるパフォーマンスの意味です。事業においても金融という枠組みのなかで、誰の何の課題をどのように解決するかを思考と検証を繰り返しながら糸口を手繰り寄せる。

話が前後しますが、勝ち筋をつくりだすことができる強い組織になるために、全3項目の「個人に求める行動・振る舞い」が掲げられているんです。

構築した人事基盤を2024年に「確立」させていきたい

──最後に、人事領域における今後のスケジュールについてお聞かせください。

横井:今年は2023年に構築してきた基盤を、確立させていく年になります。人事としての活動は、いよいよ本番に入ります。

今後も経営に伴走しながら「お金の新しい選択肢をつくる」ことを目指していきたいです。

──横井さん、本日はありがとうございました!


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