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アイティメディアの人事の仕組み ―第1回:人事ポリシーと人事制度―

就職・転職活動をするとなると、志望先企業の人事制度が気になる方も多いのではないでしょうか。そこで、人事部長・三小田に採用チーム長・木幡がインタビュー。全3回に分けて、アイティメディアの人事制度を詳しくご紹介します。


【管理本部 人事部長 三小田 実】
ベンチャー3社で事業立ち上げを行い、リクルートホールディングスの事業企画マネジャーなどを経験。2015年、リクルートマーケティングパートナーズからアイティメディアへの「キーマンズネット」の事業譲渡に伴い当社へ転籍。2017年に人事部長に就任。人事制度刷新などを通じ、社員がイキイキ働ける環境作りを推進している。

アイティメディアの「人事制度」とは何か

──(聞き手、木幡)「人事制度」の定義は会社によってさまざまですが、どのように捉えていますか?

三小田 : 僕は「社員にこうあってほしいという願い」を形にしたものが人事システムだと考えています。そのため、コアな人事制度にとどまらず、人材育成や働き方の仕組みを一体で構築すべきだと考え、2018年4月に人事制度を刷新しました。

今回は、(1)価値にとことんこだわり抜く「人事制度」、(2)3つの成長機会で加速させる「人材育成」、(3)イキイキと主体的に働ける「働き方」の3点についてお伝えします。これらが合わさり、1つのシステムとして「社員がイキイキ働ける環境」を生み出していることを感じてもらえたらと思います。

価値にこだわり抜く「人事制度」

──まずは、人事システムの礎となるアイティメディアの人事ポリシーについて教えてください。

三小田 : 当社はソフトバンクグループの出版事業に端を発するオンライン専業のメディア企業です。そのため、機械メーカーのような製造設備はなく、価値を生み出す源泉は「人」。だから社員一人一人の力を引き出すことが、当社の提供価値を高めることにつながります。

環境変化に即応しながら提供価値を磨き続け、顧客や読者に求め続けられる企業でありたい。そんな思いを込め、「Value First(価値にとことん、こだわり抜く)」という人事ポリシーを掲げ、より価値創出に貢献している社員を評価・処遇する「等級制度」「評価制度」「報酬制度」を設けています。

キャリア別の役割等級を用いた「等級制度」

──「等級制度」から具体的に伺いたいのですが、アイティメディアではどんなことを重視して社員の等級を決めているのでしょうか?

三小田 : 「社員の価値発揮を最大化する」ことを重視しており、2つの特徴があります。

1つは「年齢問わずの役割等級」です。当社は「役割等級」を導入しており、A〜Hの8等級で職責・役割を定義しています。これにより、高い価値発揮をしている社員は年齢問わずどんどん昇格できます。ちなみに、役割等級の概要を個人業績を担うA〜C等級で例示すると、このようになります。

  • A等級(見習い):手順がある定型業務を上司の補助ありで遂行
  • B等級(一人立):定型業務は自立、非定型の企画業務は補助あり
  • C等級(一人前):非定型業務も自立、組織力向上業務は補助あり

A〜E等級の定義

各等級に求める役割レベルを明確にし、昇格するためにどんな業務に挑戦すればいいかを意識できるようにしています。

もう1つの特徴は「選択制のキャリアパス」です。社員の志向性を尊重して強みを生かすために、組織貢献が求められるD等級になると、「組織価値コース」と「個人価値コース」の2つからキャリアパスが選べるようになっています。

組織価値コースには「組織長として組織の業績を最大化すること」、個人価値コースには「個人の高い専門性で組織に貢献すること」が求められます。どちらも価値発揮レベルが等しければ、等級や報酬のレンジは同じです。

個人価値コースを設けることで、高い専門性を持った編集記者職やエンジニア職などが、管理職にならずとも活躍できる環境を整えています。

──転職活動中の方との面接でも「現職ではマネジメントしか道がないが、自分はスペシャリストとしてやっていきたい」という悩みをよく聞くので、キャリアパスを選択できるのは魅力的かもしれませんね。価値発揮に応じて年齢問わず昇格できるのも、個人的にはモチベーションになっています。

成果と行動を分け多面評価する「評価制度」

──年齢問わず昇格できるのは分かったのですが、その評価はどうやって決まるのでしょうか?

三小田 : 当社では公正な評価を行い人材を育成するため、2つの指標を用いています。1つは、半期業績目標に対する成果を定量評価する「MBO」、もう1つは等級に応じた期待役割を任せられるかどうか行動を定性評価する「3I」です。

2つの評価指標を使うのには理由があります。当社では「生み出した成果」と「成果を生み出す行動」は分けて評価すべきだと考えているからです。

営業職を例に考えてみましょう。Aさんは「担当顧客は大幅未達だったが、退職する先輩の案件を引き継いだ結果、予算達成率は120%だった」、Bさんは「大口顧客が予算凍結になったが、新規窓口を自力で開拓して予算達成率を100%にした」とします。

この2人を評価しようとしたとき、MBOだけでは「Aさんが優れ、Bさんが劣る」ことになりますが、主体的に課題を解決し、成果を出したのはむしろBさんです。Bさんの「成果を生み出す行動」を評価できるようにするために、MBOとは異なる軸が必要になります。それが3Iです。

3Iは課題解決力を測る指標

三小田: 3Iは課題解決の行動プロセスを3つに分解して定義した当社独自の指標です。社員の価値発揮能力を、「見立て:Insight」「巻き込み:Integration」「仕立て:Innovation」の3つに分けて定性的に評価します。

見立ては「対処すべき課題を特定し、解決策を提示する行動」、巻き込みは「関係者へ働きかけ、合意形成して協力を得る行動」、仕立ては「PDCAを回して、計画を軌道修正しながら成果を出す行動」を指します。等級ごとに影響規模を定めており、昇格要件にもしています。

3Iという軸を設けることで、全社員が自ら課題を発見し、解決することを意識するようになるとともに、管理職が目先の成果に惑わされずにメンバーを評価できるようになりました。

半期に1度、全管理職で多面評価を実施

──成果だけでなく行動も評価してもらえるのはとても理想的ですが、行動評価は感覚的になりがちだと思います。「上司の好き嫌いで自分の評価が決まってしまうのでは?」と不安に思う人もいるのではないでしょうか。

三小田 : 確かに直属の上司が1人で評価を行うと、感覚的な評価になりがちです。それを防ぐために、当社では本部別に全管理職が集まって協議する「本部評価会議」を半期ごとに開催しています。

ここで、各管理職が担当するメンバーの評点と評価背景を説明し、他の管理職が納得いくまで質疑・協議することで、ようやく社員の評価が決まります。また、全ての評価会議は人事部長の僕がファシリテーションを行い、本部によって評価軸がバラバラにならないようにしています。

等級変更についても、全社横断の多面評価を行っています。具体的には、社長・全本部長・人事部長が集まって、本部評価会議にで出た昇降格案を検討し、協議の上で決定することで、評価の妥当性と信頼性を高めています。

──多面的な評価だから、メンバーの納得感もあるということですね。

価値発揮に応じ素早く反映する「報酬制度」

価値発揮に応じた昇降給

──次に、評価結果をどのように報酬に反映しているのか教えてください。

三小田 : 2つの評価指標があると説明しましたが、各指標の貢献がどの程度続くかによって、報酬反映の仕方を変えています。具体的には「半期MBOで高業績を納めた社員には賞与で報いる」「3Iが高評価だった社員には月給で報いる」ようにしています。

MBOと3Iの評価結果を報酬に反映するテーブルがあり、評価に応じて論理的に昇給額・降給額が決まるようになっています。

降給というと驚かれることもありますが、これは1つ下の等級に等しい価値発揮しかできないなど、期待役割を大幅に下回った場合に限った話です。期待役割を多少下回る程度では降給にはなりませんので、ご安心ください。

報酬改定は年2回

──では、報酬改定の頻度とその理由も教えてください。

三小田 : 評価や昇降格による報酬改定は年2回です。せっかく目標設定と評価を半期ごとに行っていても、報酬改定が年1回では通期評価と変わりません。社員にめまぐるしい環境変化への対応を求めている以上、半期で創出した成果や行動も半期ごと評価し、フィードバックや報酬還元を行う必要があると考えています。

また、当社は「役割等級」を導入しているので、高い価値発揮をすれば年齢問わず昇格できますし、昇格に応じて報酬もアップしていきますよ。

アイティメディアには、選択制のキャリアパス、価値発揮に応じた昇格、成果と行動を分けた多面評価、年2回の報酬改定などさまざまな仕組みがあり、社員が納得感を持って働けることを非常に大事にしています。

次回は、当社にどんな成長機会があるか、人材育成の仕組みについてお伝えします。

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