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この作品でたくさんのことを学べました『ブラックパンサー』感想

こんにちは。映画を語るサロンのKKです。

今月は『ブラックパンサー』の感想について投稿したいと思います。



アフリカ大陸にある超高度文明を持った国ワカンダの新しい王となったティ・チャラは王と同時にブラックパンサーという国を守る存在でもありました。ワカンダの王は国の技術力の源である「ヴィブラニウム」という鉱物の存在を隠す役割を担っていました。このヴィブラニウムが国外で闇取引されることを知ったティ・チャラたちは回収へ向かうと、キルモンガーという男に遭遇し、このことにより国の存続を揺るがす事態に発展していきます。


この映画は数あるヒーロー映画の中でも群を抜いて評価されている映画の一つです。単なる興行収入などではなく、アカデミー賞にいくつもノミネートされ、またヒーロー映画として初めて作品賞としてノミネートされました。

ブラックパンサーの一番良くできていると感じた部分は人種差別問題をアクション映画という娯楽映画に完璧に落とし込んでいるところです。


これは監督のライアン・クーグラーの作品の特徴かと考えています。クーグラー監督の代表作で『フルートベール駅で』という映画がありますが、これは実際に発生した黒人男性が警官によって殺害された事件を題材しています。
敵であるキルモンガーはティチャラたちワカンダ人と同じルーツであるアフリカ系ですが、アメリカで生まれたことで彼らと全く違った環境で育ったことがわかります。
2020年にBLM(Black Lives Matter)運動が大きく話題になったように、アメリカでは現代でも黒人差別問題が続いています。差別的な言動を取られるような直接的な差別だけでなく、貧困や経済格差など構造的な差別も根付いています。
そのようなアメリカの背景を映画内でも描くことで何故キルモンガーというキャラクターが誕生したのかを観客は納得して彼の動機を理解できます。キルモンガーの行いは間違いには違いないですが、そこに至るまでの経緯を知ることで一概に彼を否定できないため、MCUの中でも随一と言えるほど複雑で多面的なキャラクターに仕上がっています。


キャラクターの話す映画のアクセントも重要な要素だと考えます。ワカンダ出身のキャラクターはアフリカ英語でアメリカやイギリスのアクセントと大きく異なることがわかります。その一方で、ヴィランであるキルモンガーはアメリカ英語を使用しており、このアクセントもキャラクターの出自を表す重要な要素だと感じています。同じ英語という言語でもアクセントはその人物の出自を表すもので、どんなアクセントかで出身や身分も分かってしまうことがあります。
例えば、アメリカだと南部訛りというアメリカ南部で話されるアクセントがあり、イギリスでは地域ではなく階級によって英語のアクセントが異なってきます。
映画内に登場するアフリカ系のキャラクターはほぼ全員がワカンダ人ですが、キルモンガーだけは違います。この一人だけ違う英語のアクセントがキルモンガーがワカンダの国民とは違う存在だということを強調しているように感じました。


この映画が公開されると世界中で大きな反響を得ました。黒人のアメコミヒーローは何人も既にいましたが、ブラックパンサーが黒人として初めて映画の主人公となったことも大きな要因です。
『ブラックパンサー』はアメリカ国内でも大ヒットしましたが、アフリカの国々でも人気となり公開同時には映画館のロビーで観客が音楽に合わせて踊る動画がインターネットで話題となりました。それだけ黒人のスーパーヒーローが望まれていたのだと実感しました。

海外には「リプレゼンテーション(Representation)」という概念があります。これは現実に存在する多様な人々を映画などのフィクションにも反映させるというものです。
今までアフリカ系の人々はハリウッド映画において常に隅に追いやられてきました。ステレオタイプと呼ばれるタイプが決まったような役ばかり望まれ、主人公になるということがあり得なかったのですが、これほどの大規模な映画で主要なキャストがほとんどアフリカ系で構成されているというのは初めてでした。
この作品は大ヒットを収め、2018年においてアメリカ国内で年間1位、全世界でも2位の興行収入となりました。これは当時アフリカ系の監督の作品で最も大きなヒット作となり、歴史的に見ても大変重要な作品です。
その功績のため、アカデミー賞においてもいくつものカテゴリーでノミネートされることとなりました。
自分と共通点のあるキャラクターが映画内で活躍する姿を見ることで、現実世界の人に対してパワーを与えられることは大いにあり、特に『ブラックパンサー』はアフリカ系アメリカ人に対してとてもつない大きなパワーが与えられたと思います。


スーパーヒーロー映画は単なる娯楽映画と見做されがちですが、このような素晴らしいことができるのがこのMCUシリーズだと考えるので、『ブラックパンサー』のような作品がどんどん作られていってほしいです。

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