コンピューターと人間のインタラクションというテーマは長い間語られてきている。その1つに1996年にStanfordのB.J.Foggによって提唱された “Captology”という概念がある。Captologyは人間を強制すること無く、いかに人を説得するか(Computer As Persuasive Technologies)という概念に当たる。そしてそれを実証してきたいくつかのスタートアップが存在している。
The Captology
コンピューターの広がりとともに、Captologyも我々の生活の中に巧妙にインストールされるようになった。いかに自分の行動がコンピュータに変化させらているかを考えたことはあるだろうか。購買行動にしても、Amazonは「ワンクリック」という仕掛けとリコメンデーションの仕組みを使って、人の購買行動をより楽に、簡単に、そして一方で本来的な意思とは別に、購買活動を促進させた。そして、Facebookは選挙の投票活動に社会的圧力を活用して、選挙における意思決定を変化させてきた。
Revealed: 50 million Facebook profiles harvested for Cambridge Analytica in major data breach
Whistleblower describes how firm linked to former Trump adviser Steve Bannon compiled user data to target American…www.theguardian.com
もはや、スマホなしでは生きられず、Captologyは僕らの生活と非常に密接に関わっている。
Persuasive Technologies rewires your brain
しかし、こういったアプローチは便利一方で僕らの脳活動に変化を与えている部分もある。多くのアプリは報酬の仕組みやコンテンツへの粘着性を高めすぎた結果として、ユーザーは大量のドーパミンを消費している。また、スマホからのノーティフィケーション、次々と重なるリンクによって、注意散漫になってしまう。Facebookの「いいね!」やGoogleのリンク, Amazonのリコメンデーション , TikTokの仕組みなどなど。
脳は簡単に注意を削がれ、ドーパミンを使いすぎてしまう。もはや1つのことをじっと考えている時間や考察する時間はなくなってきていると言ってもいいだろう。
近年の脱スマホやHike、その他マインドフルネスが欧米諸国で1つの潮流となっているのは、Captology疲れと言ってもいいだろう。
Will AI ever understand human emotions?
しかし、Persuasiveなtechnologyというの決して悪いものではない。人のモチベーションを保つ方向に適切に使われていないことが問題なだけだ。
コンピューターというもの自体はそもそも、人間にはない、幾つかの特徴を持っており、それこそがHuman Computer Interactionに活かせる点だと考えている。
1.我慢強い
人工知能と会話しているとしよう。人には感情があるし、疲れたり飽きたりする。でも、人工知能は決してそんなことはない。粘り強く人の話を聞き、嫌な態度や愚痴をこぼしても、平気で話を聞いてくれたりする。
たまに、彼女であっても聞いていて疲れてしまうことってあるよね、という話で。そこをいくらでも聞いてくれるのが違うところですよね、と。
2. パーソナライズされていく
皆さんの中にどれだけ、Replika.aiを使ったことがある人がいるかわからないが、これは近代の発明の中でも頭1つ抜けている。このReplikaの概念は非常に面白く、ぜひ触ってみると良いと思う。
あたかも、哲学を持っているような振る舞いや、気の利いた返しをしてきてくれるので、SiriやAlexaとは全く違うレベルでの対話システム。Magic LeapよりよっぽどTechnology的にすごい。
Replika
Whether you're feeling overwhelmed, anxious, or just need someone to talk to, Replika is here to help. Get your own…replika.ai
3. 遍在的である。
これは、映画のHerを思い出すかもしれない。SoftwareというのUbiquitousな存在で、24時間会話したいときに相手になってくれるし、それがモバイルのプラットフォームにいるのか、別のハードウェアにいるのか、存在を問う事はない。OSというのはどこにでもいてくれるし、どこにもいてくれない。
4.セキュアである
ハッキングされない限り、他人に話を漏らしてしまう、という心配がない。これは、アメリカ人がセラピストに悩み相談をする理由にも繋がっていて、友達に言えないことはセラピストに相談するケースがある。しかし、実はアメリカで話を聞くと、本来は別にセラピストと話したいと思っている人はそこまで多くない。ただ単に「友達には言えない話がある」からこそ、セラピストを使う、ということがある。
The Caetology
Positiveな側面をさらに伸ばしていくためには、Psychologicalなアプローチをもっと人に寄り添う形で提供すべきだ、という点である。Human Computer Interactionにおいて、Persuasiveなアプローチというのは、人を疲弊させてしまうことがあり、それは前述のFacebookやTikTokといった事例の通りである。
人にもっと寄り添う、Sympathyを超えた自分と同じような感覚や経験を持ってくれて共感してくれる、Empatheticなアプローチなのだと考えている。共感性の高いインターフェースとユーザー体験をすることによって、人の行動変容を促していくアプローチだ。
Computer As Empathetic Technologies
Caetology。よりHuman Touchなインターフェース、NaturalなUIやUXを提供していくことで行動変容を促す事。技術的に言うと実は実現不可能(コンピュータが人の感情を「理解する」という事はない)なのだが、それをUXとして提供していくこと。そこには共感的な、自分が体験したことが「共感してもらえる」というユーザー体験によって、心理学的説得をせず(人の心を疲弊させず)に、ユーザーの心を動かす事ができるのではないだろうかと思っている。