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世界のデータサイエンス事情から捉える物流改革:イスラエル編

砂漠の中に光り輝く頭脳国家イスラエル

 スタートアップといえばまず思い浮かぶのがシリコンバレー。他に挙げるとすれば、ボストン、ニューヨーク、ベルリン、パリ、シンガポール、深圳、上海、と続きます(残念ながら東京はTop10には入ることは少ないです)。その中でも忘れれてはならないのが、強力なスタートアップハブとしてのイスラエル。つい最近のニュースだと、MobileEyeがIntelに買収されたり、数年前にはWazeがGoogleに買収されたりしています。そのイスラエルで、人工知能、IoT、ビッグデータ、サイバーセキュリティー、などについて現場の方々に直接話を聞けるということで、イスラエル視察に行ってきました。
 なぜイスラエルで0->1ビジネス創出が続出するのか、学術的にもビジネス的にも非常に興味深い。イスラエルで誕生したスタートアップといえば

AppsFlyer
Airobotics
CheckPoint
Cortica
Datos Health
Viber
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と例を挙げるとキリがありません。それも当然のことで、スタートアップ密度が世界で一番高いのがイスラエルなのです。この小さい国の中に8000ものスタートアップが存在し、80近くのアクレラレーター、25ものインキュベーター、と技術開発をする者にとっては刺激がありすぎる場所です。

イノベーションが起きる環境の大切さ

 通常、都市に人・物・情報が集まり成長していく過程で、knowledge spillover(知識の波及プロセス)が起きると言われています。シリコンバレーが技術革新の中心地として幕開けしたのは、1939年にスタンフォード大学で教鞭をとっていたターマン教授がヒューレッドとパッカードがガレージで設立した会社のアドバイザーになったのが起源だと言われてる話はご存じの方も多いと思います。

 このターマン教授、第二次世界大戦中に東海岸に移り戦闘機向けの電波レーダーの開発を指揮しました。米国国防省とHarvardやMITなど名だたる大学研究機関との密接な関係が作り上げる技術革新の熱気を肌で感じたターマン教授は、大戦後にスタンフォード大学に戻り、パロアルト・メンロパークを中心に西海岸から技術革新を起こすんだと決意したことからシリコンバレーの発展が始まります。軍で使われる技術が民間に落ち、その技術をさらに民間企業が汎用化させ、一般人にとってより身近なものにしていくプロセスがイノベーションハブというエコシステムを育む一つのきっかけになっています。

 このイノベーションハブというナレッジ集積メカニズムは、都市の集約メカニズムを研究していた私としてはとても興味深いと思っています。その理由の一つは、色々な都市がシリコンバレーやイスラエルを真似ようと躍起になっていますが、なかなか成功しているとはいえない状況です。しかしある特定の都市では技術と知見が集約していく。なぜそういう現象が起きるのか、今回イスラエルで色んな方々と話ながら少しずつ見えてきました。もう一つは我々物流改革を目指すスタートアップがどこでだれと一緒に事業を進めると最短なのか、理解するにはイノベーションハブが非常に重要な要素だからです。

Tech Nation、Not Startup Nation:ユダヤ人の革新DNAと革新的拠点


 2000年近く流浪の民として世界に散らばり移動し続けて、やっと70年前に国を持てたユダヤ人。彼らの文化に脈々と流れ、受け継がれる生き方や物の捉え方に非常に興味深いものがあります。米国留学の時も、今回のイスラエル出張でもそこらじゅうで耳にした言葉に

1. 口よりも耳を高い位置につけよ
2. 知恵は最高の武器と認識せよ
3. 既存概念に挑戦せよ

というのがありました。

 まず、1つめの「口よりも耳を高い位置につけよ」は、人は話すのはうまいが他の人の話を聞くのは不得手。そういう事実に対する戒めなのか、話し上手になるより、聞き上手になるほうが自らの知恵を深めることにつながり、また、良好な人間関係を築くことができるという意味合いだそうです。流浪の歴史からなんとか生き延びてきたユダヤの処世術なのかもしれません。2番めの「知恵は最高の武器と認識せよ」。知識よりも知恵を重んじるユダヤ人らしい言葉です。物事を知るのではなく、いかに実利のあるものにしていくか、また人に使われて指示される内容、その知恵が社会貢献の第一歩であり、自身を守ってくれる手段だという意味合いのようです。最後の「既存概念に挑戦せよ」。ユダヤ人は小さいころから「なぜ~」を繰り返して既存概念を疑い、悪いところを改善し、不要なものは廃絶して実利のあるものを即座に展開する、そういう生き方が染みてるそうです。

 イスラエルが世界の開発拠点となっている背景として、軍事産業の技術の民営化、軍事人材の民間化が大きく影響しているとよく言われますが、イスラエル人は口をそろえて熱く語ります。「技術そのものじゃなくて我々の血、DNAだよ。イスラエルがスタートアップ国家とよく言われるがそうじゃない。我々はそもそもテクノロジー国家なんだよ。テクノロジーは実利があって革新的じゃないと生き残れないんだ。それがユダヤ人だ」と。彼らの姿を見ながら、こうした革新を起こすDNAを持つユダヤ人が集まるイノベーションハブは今後も世界を変えていく基礎技術を生み出してくんだろうな、と実感しつつ、我々GROUNDはどういうストーリーで物流を変えていくべきなのかと考えさせられた数日間でした。

物流に必要なデータXサイエンスとは何か

 イスラエルで次々と起こる技術革新や買収劇を横目で見ながら、日本発の物流改革企業としてGROUNDは何をすべきか、帰国の機内で考えました。混沌としたカオス状態を解決するという行動自体を好む私ですが、日本から世界に通用するような物流改革を実現していくためには、どんなふうにデータ戦略を守りから攻めに転換していくかが重要なのかなと感じています。”データドリブンな物流”、これは攻めの姿勢を表してるのかと思いきや、その言葉自体データがないとなにも進まないことを意味しており、実は待ちの物流であるという側面もあります。

 今後企業に求められているのは、あるべき姿を想像・創造し、そのためにはどんなデータを作り上げる必要があるのかを提言していくことです。そこを目指すからこそ、単なる物流領域の人材だけではなく、いろいろな領域でデータ分析・データ戦略を実行してきた人材が今後の物流には必要となるのです。一般的にテクノロジーの適用が遅れている物流の領域に対して、多様なバックグランドで構成された人材プールが日々切磋琢磨して解決方法を生み出してくようなと、さらにはそもそも解決すべき課題が何でどう解決すべきか外部に提案できる、そういった自己学習組織を作り上げてくことが重要なんだなぁと、今回の視察で接したユダヤの生き様を通して実感しています。

GROUNDではいろいろな領域から自分の強みを活かして物流改革を行いたい仲間を探しています!

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