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「クリエイターが正しく報われる世界の実現」に身命を賭す。emole株式会社 取締役COO就任 / 対談インタビュー

2024年10月、emole株式会社の取締役COOに水谷誠也が就任しました。新卒から約13年間エンタメの道を歩んできた水谷は、従量課金型のショートドラマアプリにどのような可能性を見出してemoleに入社したのでしょうか。水谷は、2024年2月にそれまでCEOの澤村1人体制だった経営メンバーに加わりました。以来、澤村とタッグを組んで経営全般を見ながら、主に社内外の環境整備や、大手取引先とのアライアンスを一手にまとめています。本記事では代表の澤村との対談形式で参画した背景や思い、今後のビジョンをお届けしますーー。

emole代表・澤村直道(写真左) 新取締役・水谷誠也(写真右)



水谷 誠也(みずたに せいや)
2011年3月 慶應義塾大学 卒業
2011年4月 テレビ朝日 入社(2014年7月よりサイバーエージェントへ出向)
2018年7月 REALITY 入社(2020年10月より取締役執行役員に就任)
2024年2月 emole 入社

テレビ・アニメ・VTuberなどエンタメど真ん中を突き進んできた水谷が、ショートドラマアプリを運営するemoleへ転職を決めた理由

ーー簡単に、水谷さんのこれまでのキャリアについて教えて下さい。

水谷:もともとインターネット関連の仕事がしたいというような軸で就活をしていたのですが、新卒で縁があって2011年にテレビ朝日に入社することになりました。ドラマ・アニメのデジタルコンテンツやグッズや動画配信などのライセンス事業と、アニメ製作の仕事をしていました。その後、サイバーエージェントへ出向してゲーム事業を経て、両社の合弁会社であるAbemaTVにてアニメチャンネルの立ち上げに複数チャンネルのプロデューサーとして携わりました。

2018年にはVTuberに可能性を感じて、グリーのWright Flyer Live Entertainment(現REALITY)に立ち上げのタイミングで転職して、VTuberとバーチャルライブ配信事業の立ち上げに尽力しました。2020年に同社取締役に就任し、その後はマーケティング/ライブ配信/北米事業/VTuber事業を見させてもらっていました。その他にキングレコードとの合弁子会社であるRK Musicの代表取締役を務めて、そちらでも音楽関連のVTuber事業をしていました。emoleには2024年2月に入社し今に至ります。

――どういうきっかけでemoleを認知して接点を持ったのですか?

水谷:本当は2023年末に前職を退任してから、約半年ほどかけ、じっくりと"自分のやりたいこと"を模索していく心づもりでいたんですが、ちょうど同じタイミングで主にエンタメコンテンツ事業を行うスタートアップ企業の経営者の紹介で、初めて澤村さんとお会いしました。

その時に「ドラマを作りたい」とか「ショート動画が好き」とか、そういう想いがあったわけではなかったんですが、ショートドラマアプリ「BUMP」を通じて「創造で挑戦できる世界」の実現や、「クリエイターに報いるエコシステム構築」を目指すと力強く語った澤村さんの想いに興味と共感を抱きましたね。

そこからは澤村さんから短期間で積極的に声をかけてもらっていたんですが「スタートアップらしさ」を感じてポジティブでした(笑)


ーーどうして安定を捨ててスタートアップへ?emoleへの転職を決めた前日談を教えてください。

水谷:安定かどうかではなく自分の中ではずっと同じ軸でキャリアを選んできていて、その軸とemoleのビジョンが合致したことが一番大きいです。アニメの仕事をしていた時に、事業構造を知り制作現場を見てクリエイターの人たちまでお金が循環してないところを目の当たりにし、多重構造によってクリエイター以外のプレイヤーがたくさん挟まっていて、お金の流れが滞っていることに違和感を感じていました。

その頃ってインターネットのサービスなどによってお金の流れや循環が滑らかになってきているのに、ここ(アニメ領域)では全然起きてないなっていう感じがしていて、自分がアニメ自体を作る方ではなくて、そういうクリエイターの人たちを何らかサポートするとか、そこを支援していくビジネス側としてエンタメコンテンツ領域に携わることをしたいなってずっと思っていました。

最初にemoleの話を聞いた時も、澤村さんがそこを目指しているっていう話が一番刺さりましたね。

スタートアップ特有の混沌(カオス)から、ルールを整備し、強い組織へ

ーー2024年2月に入社してから一番労を割いたのはどんなところですか?

水谷:未経験なコーポレート領域を見ることになったことです。想定以上でしたね(笑)

組織のケイパビリティを超えて事業がすごく伸びている状態で、テレビ局から協業の問い合わせが立て続けに入ったりと、自社と比べて取引相手先の会社がとても大きかったんです。チャンスが回ってきていて、採用して組織をつくりたいとか、自社制作や外部からの調達作品を増やしたいとか、複雑な契約モデルを実現したいとか、そういうやりたいことがたくさんありました。ただ、まずは守りを固めないといろんなところで問題が起きて継続的な成長を実現できなくなってしまうと感じて、コーポレート周りの必要最低限の整備をしつつ、採用、組織強化から取り掛かっていました。もはや入社する前から、「市場や事業に組織がついていけないのが一番怖いです、早く手を打ちたい」と澤村さんとは話をしていて、短期間で組織を作ることを自分の中でプライオリティ高く置いていました。

今では業務委託者まで含めると60名を超える人達がemoleに関わってくれていて、年初と比べて2〜3倍の規模になったと思います。正社員として入ってくれる方も増えてきていて、入社予定者まで含めると20名弱になっています。幸いなことに離職者もゼロで拡大できています。

ーー澤村さんは水谷さんの入社にどのような印象を持っていますか?

澤村:今話してもらったコーポレート・組織づくりの部分は、水谷の参画により大きく変化しました。これまではスタートアップとして、一人一人が考えて行動しよう!という状態でマネジメントと現場レイヤーが別れておらず、とにかくカオスの中を駆け抜けてきたという感覚です。一方で、水谷さんが入ってからは、欠けてるポジションの採用強化、マネジメント機能やレポートラインの確立など組織の整備をしつつ、労務観点でも上場企業での経験をベースに足りていないところを整備してもらいました。少しずつ人が増えていく中で、しっかりと指揮系統がつくられつつ、従業員として守られるべきところは守られるようになり、みんな動き易くなったのではないかと思います。もちろんスタートアップに必要な、自分ごと化する精神や視座高く保ち行動するという部分は今でも大切にしていますが、うまくバランスのとれた組織になってきているように思います。大きい企業を渡り歩いてきて、10→100→200人と組織がグロースしていくフェーズの経験が豊富だからこそ、広範囲にリスク感知能力が高く、緊急度の高い課題を事故が起きる前に先回りして潰していってくれるので、かなり安心感があります。水谷さんが参画したことで会社組織がかなり強くなったなと思います。


ーーその他に「これは水谷さんの参画が大きな影響をもたらしたな」というポイントはありますか?

澤村:対外的な部分で、座組み作りや法務面の整備という観点で水谷さんの参画は大きな変化をもたらしました。BUMPは、関わるクリエイターに収益を分配したいという思想を持ってるが故に、権利の所在やレベニューシェアの発生条件等がかなり複雑で、うまく仕組みを作らないと契約パターンが無限に出て来てしまったり、処理しきれない規模の支払い集計業務などが発生してしまいます。スタートアップがこのようなところにリソースを割くのは、経済合理性の観点だけでいえば無駄であると考えられてしまいますが、僕の場合は、この仕組みが実現できないのであれば、どんなにスケールしても事業を立ち上げた意味がなくなってしまうと考えていました。

ここは頑なに譲らない部分だったのですが、水谷さんはそんな僕のわがままに付き合ってくれて、ビジョンを実現しつつもしっかりとプラットフォームとしてスケールできるような座組みのパターン作り、契約パターンの整理、支払い集計業務フローの設計などを行ってくれました。この辺りは、ビジネス観点、法務観点、エンタメビジネスの業界慣習などかなり幅広い知識が必要であり、かつ、取引ごとに発生するイレギュラーな事象を包括できるように何度もフォーマットを作り替えなければいけず、胆力が必要なプロジェクトだったので、ほんとに水谷さんしかできる人間がいなかったのではないかと強く思っているポイントです(笑)


ーー2人の精神的な役割分担はどのように?

澤村:基本僕はどんどん前に出て、多少リスクを取りながらも周りを巻き込んで、事業を拡大するぞと働きかけていきます。社外には、従量課金型のショートドラマ市場の可能性を示しつつ、自分たちのビジョンについて声を上げて届けていくためのアクションを取っています。社内でも高くモチベーションを維持できるよう、自分たちがやっていることの意義や数値的な進捗を丁寧に共有することを意識しています。一方で、「安定感」や「守り」を固めるのが水谷さんの役割で、冷静に物事を判断したり、従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できるような環境・仕組みの整備を徹底してくれています。後は、これまでの経験と知識を踏まえた情報提供をしてくれるので、「何をやり、何をやらぬべきか」という意思決定をスピード感を持ってできるようになりました。


水谷:この構図をつくること、崩さないことに強くこだわっていました。自分としては「代表が2人」に見えるような組織にはなりたくなくて、自分はあくまで2番目のポジションだということをちゃんと取りたいなと思っています。誰がこの会社を引っ張っているんだという存在をはっきりしていないと、スタートアップという環境の中で会社のスピード感が落ちてしまうリスクがあると思っています。BUMPって環境的にすごく恵まれた状況なので、やったら伸びることがたくさんあるんですよ。澤村さんのやりたいことを自分が2番手としてなるべく素早く実行する、組織状況を踏まえてやばそうだったら止める、ということを徹底しています。

従量課金型のショートドラマアプリは新しいお金の循環が生まれる、コンテンツフォーマット×販売モデルの革新

ーーエンタメカルチャーがマス化していく過程に共通性はありますか?ショートドラマの可能性についてどう見ていますか?

水谷:新たなコンテンツが拡大するとき、先にテクノロジーが先導して人の生活習慣を変えていると思っています。変わった新しい生活習慣に適するコンテンツがつくられるようになり、市場が生まれて、さらにそこにコンテンツをつくる人が増えて、消費する人も増える、というサイクルが発生すると考えています。

アニメにしても、インターネット配信できなければ、ここまで全世界で見られることもなかっただろうし、海賊版ではありますがファンが勝手に字幕をつけて拡散して認知が広がっていくような現象も生まれなかったと思います。

VTuberに可能性を感じたのも、テクノロジーへの確かな感覚値がありました。スマホで気軽に動画が見られるようになり、自宅から誰でもライブ配信ができる環境が整っていた。そんなところにモーションキャプチャーでキャラクターが動かせると来たら流行しないはずがないと自ら市場に飛び込みました。

ショートドラマについても同じことを感じています。ショート動画プラットフォームはすでに皆が当たり前のように使うようになって、そうなるとだんだん長いものが見られなくなっていくというか、時間あたりの情報量が多いものにどんどん惹かれるようになっていて、これは大きく見ると不可逆な変化だと思っています。そうなったときに楽しめる“ストーリーコンテンツ”が足りていなかった。

ショートドラマの登場はいまそのタイミングを捉えているんだと思います。

ーー澤村さんは今の話を踏まえてどう分析しますか?

澤村:基本的には水谷さんと同じ考えです。BUMPの立ち上げ前は、コンテンツのショート化というパラダイムシフトに、コンテンツフォーマットの適応が追いついていないという状況だったのかなと思っています。一方で、野良で新しい需要に応えるコンテンツが発生していました。例えば「ファストシネマ」はそれに当たると思っていて、映画を10分に要約するコンテンツです。2時間は観られないけど、10分とかの短い時間でストーリーを消費したいという需要は少しずつ顕在化していて、再生数もかなり出ていました。同じようにテレビドラマの切り抜きも当時からそれなりに再生数が出ていたかと思います。ただ、これは他人の権利を勝手に使って第三者が収益をあげるという問題構造の発生でもありました。

別の捉え方をすると、確実なニーズはあるはずなのに、ビジネス側が対応しきれていないとも言えるのではないかと思っています。そんな中で思いついたのが、従量課金型のショートドラマアプリです。ドラマを1話1-3分にショート化するというコンテンツフォーマットの革新と従量課金で漫画アプリのような体験で視聴継続ができるという販売モデルの革新を組み合わせた新しいビジネスモデルを作り出すことで、これまでにない収益をコンテンツが生み出せるのではないかと考えました。これがBUMPを立ち上げることになったきっかけの一つです。

テクノロジーの革新による消費行動の変化で生まれる需要を捉えられていたことと、ドラマのショート化(それも1話1-3分という極端にショート化)という発明に成功したことが、BUMPというサービスが拡大するきっかけになったんじゃないですかね。

とはいえ、いまはまだまだ黎明期だと思っていて、これから成長を続けることでマスにコンテンツが広がっていく可能性が十分にあると考えています。そこに向けて事業を拡大していきたいです。

大衆に広く文化や産業として定着するショートドラマへ

ーー3年後、ショートドラマはどうなりますか?

水谷:今年の春夏あたりから一気に日本でもショートドラマアプリが増えました。世界で競争してきた中国系外資の日本進出もありますし、今後は国内大手や国内スタートアップの参入も増えてきます。1年後にはユーザーからしてみれば、コンテンツの選択肢が無数に拡がる良い状況になっているだろうと思います。

ましてや3年後ともなると、コンテンツのジャンルも多様になっていて、今よりもいろんな人に届く可能性があると思っています。ショート動画を見るのは年代に限ったことじゃないと思っているんですよ。ショート動画=Z世代って言われているし、僕らも言っていたこともあると思うんですけど、Z世代など若い人たちが新しいフォーマットに対する適応性が高く早く順応しているというだけで、だんだん世代は広がっていくと思っていて、ショートドラマは多くの世代の人が楽しめるものだと思っています。

今はまだまだ一部のジャンルとかも結構絞られたりするというのが、それぞれの世代に適したようなコンテンツっていうものがもっと生まれてきて、成立するんじゃないかと思っています。BUMPがそこを開拓していきたいですね。


ーー同じく3年後、澤村さんはどのように予測しますか?

澤村:基本的に僕も水谷さんと同じことを考えています。なので、あえてこうしていきたいという視点で話すと、ショートドラマのいいところって、小さい予算でいろいろな人が挑戦していけるところだと思うんですよね。

商業映画やテレビドラマの制作費を個人あるいは1社で捻出するのには限界があって、ヒットすれば回収ができるが、ヒットするまでの入念な準備とコストが発生します。こうした独自の経済性もあって参入障壁が大きい。

ショートドラマとなると、1タイトルあたりの制作コストが10分の1に縮みます。これは、失敗に対する許容度を高めることにつながるし、まずははじめてみるという意識変革にもつながると考えています。これまでエンタメの畑ではなかった人など、多彩な角度からのコンテンツが入ってきて盛り上がっていくんじゃないかなと。

また、健全でフェアな競争環境が生まれていくきっかけになればいいなと思っています。ショートドラマは、『どこで離脱が発生しているか』などデータが取得しやすく、制作期間も短いので、PDCAが回しやすい。作り手にそういったデータをフィードバックすることで、良質なコンテンツを生み出す循環につなげたいですね。その先には、グローバルでの競争力向上も起き得ると考えています。そんな3年〜5年後の明るい未来に向けて協働していける仲間が欲しいです。

emoleでキャリアを積むことの魅力

ーー最後に、emoleに興味がある方に向けてemoleで働くことの魅力を教えてください

水谷:自分自身がアニメやVTuberに育ててもらった経験からも、個人が自己成長やキャリアを積むにあたっては伸びている産業にまだ少人数である最初のときに入ることが大事だと思っています。emoleはまさに今がそのステージだと思っているので、ぜひこのフェーズから入ってもらいたいです。チャレンジできることが山程あって、市場や事業とともに一緒に成長していけるような場所になっているんじゃないかなと思います。

澤村:僕らよく会議とかやると、「やりたいことが多すぎる!」っていう話になるんですけど、やりたいことが多すぎる状態ってめちゃめちゃ幸せなことだなと思っていて、やれることがめっちゃあるし、実際やれば伸びそうみたいなものも多い。いろんな部署で、ちょっとした工夫が目に見える形で事業の成長につながったりするので、何かに対して貢献している感覚を肌で感じやすいと思うんです。加えて、ユーザーの反応もすごくリアルタイムで目の前で返ってくるというB2Cサービスの良さもあります。

数字としても成果が見られるし、人からの反応とかもダイレクトに返ってくるっていうのはめちゃめちゃやりがいのあることかなと思っています。

取材・文:ウラタコウジ 写真:Rocky

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