田中 三枝のプロフィール - Wantedly
英治出版株式会社, プロデューサー
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みなさん、こんにちは。英治出版の田中です。
営業やプロモーションを行うプロデューサーを募集するにあたって、その仕事内容や実際の取り組み、大切にしていきたい姿勢など、いくつかお話ししてみたいと思います。
田中三枝(たなかみえ)
プロデューサー、営業統括
デザイン事務所、出版社等を経て2013年に英治出版入社。営業、プロモーション、マーケティングに従事。2019年にはアクティブ・ブック・ダイアローグ®(一冊の本をみんなで手分けして読み、内容をシェアし、対話を通して理解を深める読書法)の認定ファシリテーターの資格を取得し、英治出版オンラインABDの企画運営とファシリテーションを行う。また、2022年には「学習する組織×セルフマネジメント」全5回プログラムを企画・プロデュース。モットーは「本で人を繋ぐ」。
英治出版では、編集も営業も、「プロデューサー」です。目の前の著者、一冊の本をプロデュースしていくという意味を込め、あえてこう称しています。とはいえ実際の業務としては、編集を中心に行うプロデューサーと、営業やプロモーションを行うプロデューサーに分かれています。
私の役割は、後者の営業やプロモーションを行うプロデューサーですが、なぜ「プロデューサー」と名乗って日々の業務を行っているのかをお話しします。
本が生まれる最初の場所とも言える英治出版の「企画会議」は、なんと「全員参加」です。編集を担当するプロデューサーが主に企画を提案しますが、参加メンバーは編集担当者だけではありません。経理や営業を担当するメンバーも全員がそこに参加します。
対話を重ね、アイデアを持ち寄り、企画の可否を決めていきますが、一度で決まるものもあれば、何回も何週にもわたって練り直すこともあります。企画者への共感が醸成され、出版を通じて著者や仲間を応援したいという思いが「みんなのもの」になったとき、企画が決まり、出版へと進みます。
また、企画会議だけでなく、タイトル会議や販促プロデュース会議なども全メンバーが参加することができます。発売前に多様な視点、多彩なアイデアを集めることを大切にしています。
(企画会議や本づくりの考え方について取材していただいた記事です)
そして営業・プロモーションのプロデューサーとしては、前述のさまざまな会議はもちろん、著者との書店同行営業、発売前後のイベント計画・運営、SNSを活用したマーケティングなども行います。企画段階から深く関わっていくことで、本をつくる・本を届けることへの覚悟が芽生えてくるのです。
また英治出版は、「一年に何冊出版するか」という出版点数を重視していません。一つ一つ丁寧に、心を込めて向き合うことができるのも、この仕事の魅力の一つだと思います。
「営業」だけやる、「プロモーション」だけやる、のではなく、企画当初から関わり、プロモーション全般を考え、編集担当のプロデューサーや書店などと協力しながら実行していく。「営業・プロモーション職プロデューサー」の仕事に、私は責任感と緊張感を持ちつつも、どのように本やコンテンツの魅力を広げていくか、毎日ワクワクしながら楽しく挑戦を続けています。
営業やプロモーションを行うプロデューサーにとって大切な仕事の一つが、書店や取次(出版社と書店の間をつなぐ流通業者)に対して、なぜ出版したのか、どんな人に読んでもらいたいのか、この本を通して何を伝えたいのか、店頭でどのように展開してほしいかをしっかりと伝えることです。
そのために重要なのは、「私自身が、最初の読者」という視点です。私が「面白い」と感じたこと、「必要だと」感じたことを、自分の言葉で率直に伝える。「最初の読者」という視点を持つことで、書店や取次に対して、心からの提案ができると考えています。
企画会議のときも本が完成つつある段階でも、最初の読者としての感覚を磨くために、感度高く社会の潮流や情報に日々触れていることを大切にしています。また、書店の現場を知っておくことや、POSデータ(出版売上データ)を把握しておくことも不可欠です。
最初の読者という視点を持ちながら、この本が世の中になぜいま必要であるかを問い続ける。そうした視点や自分なりの考えが、企画会議から営業、プロモーションなどで活かせるよう日々学び続けていく姿勢を大切にしています。
次に、英治出版が「書店」や「書店員さん」をどのような存在だと考えているかをお話ししたいと思います。
本は、「書店」という場所を通じて「読者」とつながります。今ではオンライン書店で本を買う人も多くいますが、それでも大半の本は「リアル書店」を通じて読者の手に渡っています。
私たちは、自分たちの本が「読まれるべき人に、しっかりと届くこと」をとても大切にしています。「この書店に足を運ぶこんな感じの人が、こういう本を手に取って・・・」と想像します。読者が書店で目に入りやすい場所、そして手にしやすい展開をイメージしながら、この本がどういう人にどのように読んでもらいたいのか、そのイメージを書店員さんに伝えます。
そして、書店員さん自身がその本を自分のお店でどうお客様に届けるかをイメージができたとき、はじめて「注文」につながります。一日に数百冊もの本が入荷される中で(あるいは、どこまでも増やし続けることはできないので、それらを減らす作業も必要です)、書店員さんは「この本は自分の店に置いておきたい本か」という選択を日々行っているのです。
英治出版は、本づくりを著者や仲間を「応援」する方法として捉えており、企画会議などでも常に「著者を応援する」という視点でアイデアや議論が交わされています。
前述の書店員さんの「選択」は、本に対する「応援」の気持ちが少なからず含まれるのではないでしょうか。売り続けていきたい、お店に置き続けたい、そういう応援の気持ちを持っていただくこと、持っていただくための関係構築や企画提案がとても大事なのではないか、と思うのです。
書店員という立場を越えて、一人の人間、一人の読者として、著者や著者の活動を応援してくださる書店員さんとご一緒してきました。その想いはその都度、著者にしっかり伝えています。著者も書店員さんからの応援に背中を押されながら、ますます活動に力を入れていく、そういう人と人とのつながりを育んでいくことも、プロデューサーの大切な仕事だと考えています。
(『すべての子どもに話す力を』著者 竹内明日香さんと書店を訪問)
今回募集する「営業・プロモーションを行うプロデューサー」の具体的な仕事内容をイメージしていただくために、英治出版のロングセラー『イシューからはじめよ』で私が取り組んできたことをお話したいと思います。
私が入社した2013年、『イシューからはじめよ』は発売から3年ほど経ち、発売当初の勢いは落ち着いていました。しかし、私が書店を訪問してすぐ感じたのは、『イシューからはじめよ』に対する書店員さんからの信頼の高さ、根強い人気でした。ちょうど10万部を超えるタイミングでもあり、社内では担当プロデューサーを中心に「10万部突破プロジェクト」が立ち上がったばかりで、私もそのプロジェクトに参画しました。
白と黒の目立つカバーデザイン、そして帯や本文に並ぶキャッチーな言葉(例えば「やるべきことは100分の1になる」や「根性に逃げるな」など)を店頭で大きく展開をすると、かなり注目されるのではないかとすぐイメージすることができました。そこで考えたのが、「DVDプレイヤーを使ったオリジナル動画を店頭で流す」施策です。
(2013年に制作した『イシューからはじめよ』書店放映用のプロモーション動画です)
『イシューからはじめよ』の本文の中から印象的な言葉を選び、誰にとってどんな価値のある本なのかを約一分間にまとめた動画を作り、書店店頭での放映を依頼しました。すると、全国の数十書店さんが協力してくださることになり、「イシュー10万部突破プロジェクト」は大成功。書店店頭での展開・企画は、著者の想いを多くの読者に伝えることができるのだという達成感、手応えが得られた取り組みでした。
また『イシューからはじめよ』では、デジタルマーケティング施策も積極的に行っています。本書は、大学生や新社会人などの若い世代の購入割合が高い書籍です。SNS上の口コミや購入者の「大学生が卒論を書く際に本書を活用する」「上司から読めとすすめられた」といった声がヒントとなり、大学生や新社会人に向けた15秒から30秒の動画を制作し、TwitterやFacebookなどで広告展開しました。
(『イシューからはじめよ』他、英治出版の書籍動画プロモーションに関する記事です)
その他には、書店で配布する「しおり」を作成しました。一般的によく作成される広告色の強いデザインではなく、「持ち帰りたくなるしおり」をコンセプトに、本の認知度を高めることを目指しました。
ここまでご紹介してきたとおり、営業やプロモーションを行うプロデューサーの仕事は多岐にわたります。
●企画会議、タイトル会議、プロデュース会議などを通して、書籍の内容を理解
●POSデータで販売動向を把握・分析
●訪問営業(書店、取次、チェーン本部、著者同行)
●直接訪問以外の営業(メール、電話、FAX、オンライン商談)
●注文書の制作・案内
●販促物制作(ポスター、POP、しおり、小冊子など)
●書店ブックフェア企画提案
●新聞広告・電車広告の企画提案
●オンラインプロモーションの企画提案
●著者イベント、読者会などの企画 など
売れ行きや読者の声と常に向き合っているプロデューサーだからこそ、生まれてくるアイデアやプロモーション施策があります。一方で大切にしているのは、一人で全部やるのではなく、そして編集と営業の分業ではなく、チーム全員で協力しながら本をプロデュースし、著者を応援し続けていくこと。これが英治出版の「プロデューサー」として私が目指す姿なのです。
英治出版は、創業当初から「本を絶版にしないこと」を大切にし、未来の読者にも届く本づくり、そして長く読まれ続ける本づくりを目指しています。
どうすれば、長く、未来の読者にも読まれる本であり続けられるか、そのためにはどのような届け方がいいのかを探求し続けています。創業23年を経て、書店や多くの読者に支えられ、ロングセラーや名著と言われるような本が育ちはじめています。
いま、世界は変化の時代と言われ、あらゆる産業においてビジネスモデルの変化やパラダイムシフトが起こりはじめています。出版業界もこの数年のうちに、今とは想像もつかないような変化を遂げているかもしれません。
例えば現在、電子書籍市場は拡大を続け、今後は電子書籍を好む人が読書人口の多くを占めてくるようにもなるでしょう。紙、電子、オーディオなどこれまで独立していたチャネルが組み合わさり、またNFT、メタバース、スマートグラスなどの普及で、見る・聴く・読む・感じる・話すといった行為が統合された読書体験が当たり前のように行われる・・・そんな未来は、そう遠くないのかもしれません。私たちは、その変化を恐れることなく柔軟に受け入れ、新しい挑戦を楽しむマインドを持ち続けていきたいと考えています。
英治出版の「プロデューサー」として、志に共感し、変化を共に楽しんでいける仲間に出会えることを心から願っています。