(この記事は DeNAヘルスケア事業本部サイトからの転載です)
新卒で入った製薬企業で研究員をしていた三友俊平。
入社直後から研究テーマを担当しプロジェクトリーダー的に動けるなど、研究者としての幸せなキャリアを積んでいた三友でしたが、昨夏、DeNAライフサイエンスへとジョインしてくれました。
何が彼を突き動かしたのか? 先に見据える自身のキャリアビジョンとは?
MYCODEの知見を、より役立てるため
――三友さんが所属するR&D事業部では、DeNAが持つ貴重なヘルスデータを活かした新規研究や事業を創出していると伺いました。
三友俊平(以下、三友) はい。DeNAライフサイエンスが提供している遺伝子検査サービス「MYCODE(マイコード)」には、「MYCODE Research(マイコードリサーチ)」という研究プラットフォームがあるんですね。
これは「MYCODE」のお客様の中から研究に同意いただいた方の協力を得て、ゲノムデータを新たなライフサイエンス、ヘルスケア領域の研究開発に繋げていこうとするもの。
多くの場合、大学研究室などのアカデミアや食品メーカーなどとの共同研究になりますが、研究だけではなく、こうしたアライアンスのための企画提案や渉外をするのも、今の私たちの仕事です。
――具体的にはどのような研究事業をローンチされているのでしょう?
三友:まだオープンにできるものが少ないのですが、たとえば森永乳業と共同で「腸内細菌叢×ゲノム」をテーマにした研究を行いました。
ご存知のとおり、腸内に生息している多様な細菌を「腸内細菌叢」といいます。腸内細菌叢の状態が、肥満や疾患、健康状態に関連することがわかりつつあり、世界中で研究が進んでいます。この共同研究では、個人ごとに異なる腸内細菌叢と、遺伝要因や生活習慣との関連を研究し、個人の腸内細菌叢がどのように決まっているかを調べました。最終的には腸内細菌叢が関わる病気の予防につながる可能性があります。
――なるほど。そのようにDeNAが持つゲノムデータと、他の研究室やメーカーが持つ知見やデータをかけあわせれば、画期的なヘルスケア商品やサービスが生まれるかもしれない。その先鞭を切っているわけですね。
三友:そうですね。とくにDeNAのように一社で大量のゲノムデータを所有している企業は、日本にほぼない。
そのため多くの大学や企業から興味を持っていただけますし、健康長寿社会をつくるための手がかりが、自分の足元から生まれるかもしれない。その可能性があることは、とても意義が高いし、単純に心躍りますね。
もっとも、以前はスペシャリストのような研究者だったところから、ジェネラリスト的な研究職になっていることにも、戸惑いと、面白さを両方感じているところです(笑)。
製薬企業の研究員として九州へ。
――前職は製薬企業で研究員をされていたとか。どういう経緯で製薬業界へ?
三友:もともと子供の頃から競馬が好きだったんですね。
――え、競馬?
三友:ああ、ギャンブルというより、サラブレッドが美しく、好きで(笑)。
一方で生物も得意だったので「獣医になってJRAに勤めたいな」と考え、獣医学部に進んだのです。
ただそうなると、馬術部に入って馬に親しむのがスタンダードなのですが、毎朝4時起きときいて、怯みまして(笑)。研究室では病原体の研究、具体的には、家畜伝染病のウイルスの研究をしてきました。
▲ 野生の馬が放たれている都井岬にて撮影
――馬からはそこで離れたわけですね。
三友:研究が性に合った面もありました。なんというか「解析する」楽しさですね。
解析を進めると、何かしらの「解」というか「ストーリー」が見えてくる。簡単でシンプルではないライフサイエンスの世界でも、ロジックで真理に近づけるようなそういうおもしろさがありました。
――そして製薬企業に就職されたと。九州勤務だったそうですね?
三友:ええ。大手製薬メーカーに比べれば小さい会社でしたが、周りにはなにもない広大な研究所で、研究に打ち込める環境でした。
加えて、入社した直後、直属の上司が異動となり、若手ながら私が主体的に研究テーマを進めるなど、ある程度裁量をもって働くことができました。私はどちらかというと誰かに言われて動くより、自由にやるほうが好きなタイプなので、いきいきと研究を進められました。
――「恵まれた環境」だったようですが、4年目にDeNAへ転職されましたね。理由はなんだったのでしょうか?
三友:最も大きかったのは「ドライの実験、データ解析をもっと強めたい」と考え始めたことですね。
――生体を扱うウェットな実験に対する「ドライの実験」。いわゆるデータをもとにコンピュータを用いて研究を行う領域ですね。
三友:はい。大手となれば別ですが、小規模の製薬メーカーではドライ系の領域にそこまで力を入れておりません。
そもそも以前の会社は、細胞や動物を用いたウェットな実験に強みを持つところでもあったので、なおさらドライな実験の機会が少なかった。もともと「解析」が好きな自分は、どちらかというとドライな実験をやってみたいと、次第にジレンマを感じるようになっていました。
――なるほど。ただ製薬企業の研究員の方は製薬業界を渡り歩くケースが多いなか、なぜDeNAを選ばれたのでしょう?
三友:まず、ドライ系ならばIT企業が強みを発揮できる領域ではないかと考えたことが大きいです。データの解析に強い大手製薬会社もありますが、やはり研究実績や経験がないと入りにくいですしね。
それならば、新しい領域に意欲的なDeNAはエントリーしやすそうだし、おもしろそうだなと感じたんです。
あとは「ベンチャーのような環境に飛び込んでみたい」という漠然とした希望もありましたね。
――望んでいたベンチャーのような環境とは?
三友:大企業や老舗企業に比べると、スピーディーでボトムアップでものごとが進む。優秀で自律性の高い社員がのびのび仕事している...…というイメージがありました。そういう組織に自分も飛び込んでみたい、そこでさらに成長できるのではないか、という思いですね。
――実際のところ、いかがでした?
三友:想像とギャップはありませんでした。
まず最初の面接の段階で、社員の方に会うと、とてもロジカルにDeNAのビジョンや上下関係のない社風、また私に求めることを端的に話してくれました。
自律性を強く感じたし、私自身は、もともと論理性を大事にするタイプでしたから、とても馴染みやすかったです。別業界に飛び込む不安はありましたが、「むしろ自分にフィットしそうだな」と。
――そして昨年6月からDeNAライフサイエンスのR&D事業部で働き始めたのですね。業務の業務に携わってからの印象は?
三友:これは想像以上でした(笑)。
出口を目指すだけじゃなく、創る仕事へ
――想像を上回っていたこととは?
三友:想像以上に、いろいろやることがあるな、と(笑)。
前職は研究員として、研究所で実験や解析をする仕事がほとんどでした。もちろんDeNAでは希望通り、データを解析する業務も手掛ける。
ただ、それ以上に、先に述べたとおり大学や他社との共同研究や新規事業を生み出すための提案、折衝という仕事も多かった。スペシャリスト然とした仕事をしてきた身には、最初は戸惑うというか、衝撃を受けましたね。
――与えられた出口を目指す仕事から、出口を考え、創る仕事になった感じでしょうかね。
三友:まさにそうです。スペシャリストでありながらよりジェネラルな思考、働き方が求められ、鍛えられる。
ただ、これは研究者としても、とてもポジティブなことだと感じています。
――ジェネラルなスキルを鍛えられることが?
三友:はい。さきほどの「出口」じゃないですが、スペシャリストとはいえそもそも研究者の仕事は、ただ目の前のことを打ち込めばすべてうまくいくわけじゃない。
業界や社会、あるいは時代を見据えて、他社との折衝や、共同研究をすすめるうえでコンサルティング的なスキル、高めの視座と広い視野がいる。また異業種含めた大勢の人たちとチームを組むためのコミュニケーション力など多くを求められます。
こうした「事業感覚」のようなものを、データ解析を学びながら着実に身につけられる場って、あまりないと思うんです。ストレッチできる、せざるをえないことを実感していますし、貴重だなと感じますね。
――なるほど。ジョインしてから受けた社内の印象はありますか?
三友:「受け身で仕事している人が本当にいない」。それに尽きますね。ちょっとしたミーティングでも、目の前の業務と、社会の課題と、自分の理想のビジョンや思いのようなものが一気通貫につながっていることがわかる。
そういう“芯”があるから、ときに事業部を越境したり、仲間を巻き込んで新しいことをはじめたりする人が多いんだろうなと思うときが多々ある。
自律性に憧れた身としては、そこは本当にすばらしいなと思います。ただ……。
――ただ?
三友:出社初日、社内のPCのセットアップやツールのセッティングの説明が、ほぼ何もないまま、「どうぞ」とPCを渡されたことは戸惑いましたね。ITリテラシーが高い人ばかりだからでしょうが、「そこは、もう少し教えてくれても......」と(笑)。
――(笑)。九州から渋谷という場の変化はいかがでした?
三友:実は私は関東出身なので、そこは全く問題なかったです。そういう意味では、オフィスが渋谷にあると、学会や講演などに出るのがとても楽なのがいいですね。「午前中に学会に参加して、午後から出社」ということが簡単にできますからね。情報収集はとても幅広で柔軟にできるようになりました。
――なるほど。今後、DeNAでどのような成果を出していきたいと考えていらっしゃいますか?
三友:もちろん、今手掛けるライフサイエンス領域でのデータ活用、他とのコラボレーションはどんどん実現させ、進めていきたい。
もっというと「データサイエンスをもっともっと社会に実装していきたい」という気持ちが、DeNAに入ってからさらに強まった感があります。
――その理由は?
三友:私はライフサイエンスの領域ですが、DeNAはオートモーティブ、エンターテインメント、マーケティングなど多くの領域で、AIなども含めたデータサイエンスに基づく事業をカタチにしている。その有用性を目の当たりにしています。
一方で、今の仕事柄、異業種の方々と話すと「この面でもデータサイエンスが活用できるのでは」「こういう事業はAIをうまく使える領域では」と感じることが多々あります。データサイエンスが力を発揮すべき領域が数多くあるし、現状はまだ使えきれていない、という課題感もひしひしと見える。
そうしたクライアントの埋もれたニーズや社会の課題を丁寧に拾い集め、データサイエンスでバリューを出せるようなサービス、事業、未来のようなものを作っていければなと......。
うん、DeNAに来てからそういう思いが芽生え、膨らむようになりましたね。
――どんどん面白い「出口」が生まれそうですね。
三友:そうありたいですね。
またそうした新しいなにかを創りたい方に、もっともとっと多く集っていただきくことを希望し、期待しています。
三友 俊平(みとも しゅんぺい)|DeNAライフサイエンス ヘルスケアサービス部 R&Dグループ
1991年、埼玉県生まれ。2009年、東京農工大学農学部獣医学科入学。2015年に同大学を卒業し、獣医師免許を取得。九州の製薬企業に入社し、ワクチンの研究開発に従事。2018年にDeNAへ転職し、現在はR&Dグループの研究員としてMYCODEで取得した遺伝情報・ヘルスデータを活用した研究『MYCODE Research』のプロジェクトを推進。趣味は旅行。
執筆:箱田 高樹 編集:八島 朱里 撮影:小堀 将生
※本記事掲載の情報は、2019年9月10日時点のものです。