【初音ミク×ローソン】初ライブの舞台裏。27,000人と共有した13年ぶりの「凱旋」と、共創のカタチ
当社が展開するバーチャルシンガー『初音ミク』のイベントには、自社主催のものだけでなく、他社様との共催や、他社様が主催されるものなど、多様な形が存在します。
大きなイベントほど主催企業がすべてを決定しているような印象を持たれるかもしれませんが、実際には規模が大きくなるほど、複数の企業・団体による協力や密接な連携が欠かせません。特に初音ミク関連のプロジェクトでは、主催・協力といった枠組みを超え、手を取り合いながら一つのイベントを作り上げていくケースも多いです。
先日、2026年1月に開催したライブイベント「初音ミク LAWSON 50th Anniversary Special LIVE」を主催いただいた株式会社ローソンのご担当者様が、当社のオフィスを訪問してくださいました。
本日の記事では、その時に場を設けた座談会の様子を通じ、主催であるローソン様と、ライブステージの企画・演出面を担った当社の担当者がどのように手を取り合ってあのステージを作り上げたのか、その裏側をお届けいたします。
馬場 雄大:2006年入社。エンタテインメントカンパニーのシニアマーチャンダイザー。入社時から「エンタメ」にかかわる仕事につきたいという夢を叶える為、店舗勤務から商品を開発する部門を経て、2018年から現部門に所属。現在は様々なコンテンツの皆様と一緒に取り組みをさせて頂き、ローソン店頭に設置されている『Loppi』にて受注グッズの企画・開発、販促展開といった多岐の業務に関わっている。
目黒 久美子:2007年入社。ライセンスビジネスチームのマネージャー。初音ミクの企画立案に携わり、「SNOW MIKU」や『初音ミク「マジカルミライ」』の立ち上げにも参加。音楽関連事業や中国展開の担当を経て、現在は各種イベントやグッズ展開など、初音ミクたちピアプロキャラクターズのライセンスを扱うチームを取りまとめている。
50周年×30周年。探り合いから始まったライブ計画!
——まずはライブを終えた率直な感想を教えてください。
馬場:ファンの皆さんをはじめ、今回のライブに関わっていただいた全ての皆さんに「感謝」という言葉以外ありません。ライブが終わった翌日には、「本当にあの素晴らしい空間が終わってしまったのか?」という虚無感と、「次はもっと素敵な時間をファンの皆様に届けたい!」という意欲が同時に湧き上がり、心が揺れる不思議な体験をさせていただきました。
私が普段担当しているグッズを制作して売るという仕事にも、もちろんやりがいは感じていますが、ワンウェイ(一方通行)みたいなところがあるとは思っていて。だから、今回のライブでこちらが仕掛けたことにファンの皆さんの反応がダイレクトに返ってくるというリアルタイムのやりとりがすごく楽しくて、いつもとは少し違う達成感を覚えて感動しました。あらためて、皆さまと過ごした時間に感謝しています。
目黒: 私は正直、終わってホッとしました。最近は恒例化しているイベントも多いから、今回のような完全新作のライブイベントというのは久しぶりで・・・無事に終えるまでは何が起きるかわからない、という不安があったんです。あらかじめセットリストを予想できるようなCDの販売もなかったので、ファンの皆さんにとっても「このライブは一体何をするんだろう?」ってわからない部分が多かったと思いますし。「チケットは売れてるけど、本当にお客さん来てくれるのかな?」って、なかなか現実感を持てずにいたんですよ。だから、会場で皆さんの楽しそうな反応を実際見て、ようやく現実だと思えました。
馬場さんとは「とにかくみんなをビックリさせてやろう!」という意気込みで企画を練っていたのですが、その目標通り、ローソン50周年とクリプトン30周年という一度きりの特別な節目にふさわしいイベントになったのではないかと。今はそう感じています。
——ところで、そもそもなぜ「マチのハッピー大作戦」に『初音ミク』が選ばれたのでしょうか?
馬場:社内で「50周年ライブ」の企画が持ち上がった当初、多くのアーティスト候補が挙がっていたのですが、私の中には「アーティストだけでいいのだろうか?」というひっかかりがあったんです。私が思う「ローソン」には“サブカルチャーに強いコンビニ”というイメージがあって、これまでにご一緒させていただいたコンテンツを思い返しながら「どんなキャラクターとのコラボがお客様に一番楽しんでいただけるだろう?」と考えた瞬間、真っ先に浮かんだのが初音ミクさんでした。それで、声を大にしてミクさんを候補としたいと上申し、上司を帯同してこちら(クリプトン)に伺ったというわけです。確か2年前くらいのお話ですね。
目黒:そうですね。ちょうど「MIKU FES‘24(春)~Happy 16th Birthday~」が終わったあたりだったと記憶しています。お話をいただいた時は本当に驚きましたね。ローソンさんとはこれまでにも様々なコラボレーションでご一緒していましたが、こうした主催のイベントというお話は初めてでしたから。最初は本当に実現できそうなのかを探り合うところからのスタートで、この2年間の半分以上は「どう組み立てるか」という認識のすり合わせに費やしていた気がします。
馬場:こうした企画は本来イベンターさんを経由するのが普通なのですが、「50周年ライブ」については、私たちが版元の皆さんと直接向き合って一緒に創り上げたいというこだわりがあったんです。そういうわけでライブイベントの主催に慣れていない人間が動いていたものですから、認識のすり合わせに1年以上かかったのはそのせいかもしれません(笑)
目黒:会場が横浜アリーナに決まって方向性が定まってからは、早かったですね。
横浜アリーナ、13年越しの「凱旋」と「オマージュ」!
——方向性、と言うと『初音ミク「マジカルミライ 2013」』へのオマージュは衝撃でした。きっとファンの皆さまも驚かれたのではないかと。
目黒:そうでしょうね(笑)あれは会場が横浜アリーナに決まったことがきっかけで実現したオマージュでした。
馬場:会場選びで悩んでいた際、社内で横浜アリーナが候補に挙がり、そこが「マジカルミライ」の最初の会場だということを思い出しました。だから、同じ会場で開催すれば「初音ミクの凱旋」という一つの舞台装置ができると考え、横浜アリーナの利用を提案しました。そうしたら目黒さんも賛同してくださったんですよね。
目黒:はい。横浜アリーナで開催した『初音ミク「マジカルミライ 2013」』のライブは、私たちにとっても思い入れの深い場所です。今でこそ様々なイベントやライブステージを企画・運営していますが、あの時は「マジカルミライ」の初演で・・・後悔とは違いますが、正直「今ならもっとうまくやれたのに」と思ってしまう部分はあるんですよね。だから、馬場さんから横浜アリーナを会場で・・とお話をいただいて、「マジカルミライ 2013」のオマージュも含めて「これはぜひやりたい!やらなきゃ!」と思ったんです。
——あのオマージュはそういうきっかけで決まったんですね!当社としてはとてもありがたいお話ですが、「ローソン50周年」のライブとして進める上での懸念はなかったのでしょうか?
馬場:特にありませんでしたね。横浜アリーナに凱旋することは、我々の「50周年記念」、つまり「これまでの50年間の軌跡を振り返る」という考え方にも通ずるものがありましたから。この「凱旋」「振り返る」といった考えを元に、セットリストや演出、グッズなどの様々なものにエモーショナルな要素を散りばめた結果が、奇跡的に「マジカルミライ 2013」へのオマージュという形にまとまったのだと思っています。
それに、企業色が強いとお客様は冷めてしまうので、そういった意味でもオマージュは入れた方がよいと思いました。ライブに来てくださるお客様は「ローソン」ではなくミクさんを見たくて来てくださるわけですから、“初音ミクらしさ”は大切にしたいなと。とはいえ、「ローソン」の要素が何もないとそれはそれで「なぜローソンのライブなんだろう?」となってしまうので、そのギリギリのラインを狙わなければとは思っていましたね。
目黒:「なぜローソン?」という点に関しては、ローソンさんとはこれまでにもグッズを出していただいたり、ポップストアを展開していただいたりといった関係性があったので、ファンの皆さんの反応を見ていても腑に落ちている方が多かったように思います。
『初音ミク』は多くの方の共創に支えられている分、当社としても企業色が強いものは展開し辛いのですが、これまでのご縁があったことに加え、こうして“初音ミクらしさ”を大切に考えていただけたことで、あの「初音ミク LAWSON 50th Anniversary Special LIVE」を実現することができました。
——オマージュを盛り込むことを決めてから、実際の演出面はどのようにして組み立てていったのでしょうか?
馬場:目黒さんには「当時できなかったことを、全部やってください」とお伝えしました。この「ローソン50周年」のライブという場を使ってできることがあるなら、ぜひ!と。
目黒:当社がやりたいことを快く受け入れてくださったのは、大変ありがたかったです。イベントがシリーズ化すると、そのイベントならではの特色とか、ある種の“守らなければいけない枠”のようなものができて、アイディアはあっても盛り込めない演出というものが少なからずあります。だから「なんでもできる」と思うと、楽しくて。お祭りみたいだなと!
何をどうオマージュするかについては、なにぶん10年以上前のことなので、社内で当時の映像を見てもう一度「マジカルミライ 2013」をおさらいするところから始めました(笑)今だったら絶対しない演出とかもあって、みんなで笑いながら見返して・・・当時のことを知っている人に「こんなのもあったよね」と懐かしくなっていただけるのと同時に、当時は来れなかったという人たちにとっても楽しめるものにしたいねと話していました。
セットリストについても、社内のライブ担当と一緒に色々と考えました。2013年当時はまだ楽曲によってペンライトの色を変えるといった流れが今ほど浸透していなくて、『深海少女』(ゆうゆ feat. 初音ミク)の演奏時にぱあっと色が変わった光景がすごく印象に残っていたんです。だから、当時を知る社員と一緒にこの曲は絶対入れよう、みたいなことを話したり。きっと、様々なシーンで同じように当時の光景を思い出したファンの方もいらっしゃったのではないでしょうか。
ちなみに、セットリスト全体の構成については、50年もみなさんに親しまれ、愛され続けてきたローソンという存在を表現するために「愛」を主題にしました。初音ミクは個の創作という数多の点が線に、線が円になることでその文化圏を構成しています。だから、全国世界各地の店舗という点が線のように繋がり、円のように拡がっているローソンというコンビニも同じではないかと思ったわけです。
馬場:セットリストのお話で言うと、2013年当時、その年のマジカルミライ衣装姿の初音ミクのモデルは完成していたにもかかわらず、テーマソングがなくてMCだけでしかステージに登場させられなかったというお話を目黒さんからお聞きして・・・ならばこの機会にぜひ!という思いもあり、アンコール後の2曲はどちらもマジカルミライ関連の楽曲となりました。ラストを『インビテーション!』にしようというアイディアは、両社から自然と出てきましたね。
——演出面もそうですが、グッズでもオマージュしたものが出ましたよね。
目黒:はい。折角ならば、グッズも当時のデザインを踏襲したものを出したいと思い、倉庫から当時のグッズのサンプルを引っ張り出し、ローソンさんへサンプルとしてお送りしました。当時と同じ制作会社に事情説明したら、当時も担当してくださった方から「嬉しいです」と快く協力してくださいました。グッズデザインはそのまま再製造するのではなく、現物を参考にしながら、デザインはローソンさん側でブラッシュアップをしていただいて、当時の流れを汲みつつも現在のアイテムとして蘇りました。
馬場:自分が10年以上前に手掛けたグッズをオマージュしたいって言われることは、なかなかないことですよ。これもある意味、初音ミクの創作文化ならではのエピソードなのかもしれませんね。
目黒:そうかもしれません。こんな感じで、演出面もグッズまわりも、本当に当社のやりたいことを存分にやらせていただく形となりました。
振り返ってみると、2013年当時の横浜アリーナはとても大きな会場のように感じていましたが、今回は昔ほど圧倒されず、いつの間にか1万人規模の会場が普通に思えるようになっていたことに気付きました。すごくありがたいことですよね。
遊び心いっぱいの衣装デザインに“指示書”はなかった!
——はねことさんによるメインビジュアルを初めて見た時、散りばめられた「ローソン」要素を見つけるのが楽しくて心が躍りました。お二人の第一印象はどうでしたか?
馬場&目黒:びっくりしました!!
——びっくり、ですか?あのデザインは何か指示書のようなものがあったのかとばかり。
目黒:基本的なビジュアルの制作依頼書はお送りしましたが、様々なモチーフの入れ込みを具体的に細かくようなお願いするものではなく、あのメインビジュアルは、はねことさんがご自身で調べて下さりながら、衣装案としてあそこまで制作してくださったんです。こちらからは「コンセプト」「衣装の全体的なイメージ」「アニバーサリー感など希望する複数の要素」「衣装の方向性のイメージ画像」のような方向性を合わせるための資料提供を行なったのみです。三面図に様々な設定や楽しい要素を書いてくださっていて、我々は(とてもいい意味で)言葉を失いました。・・ですよね?
馬場:その通りです。最初はマジカルミライをはじめ、弊社で初音ミクさん関連に長く関わっている担当者 渡さんに協力・アイディアを出してもらい、昼と夜という2つのコンセプトでビジュアルを・・・と思っていたので、それを伝えるための簡単なイメージ図をお送りしました。でも、それだけです。唯一心配していたのは“店員の制服そのまま”といったような衣装にならないかどうかだったのですが、届いたラフを見たら、もう何も言うことがなくて。これでいきましょう、って!
目黒:ほぼ一発OKでしたね。こちらの意図を汲み取ってくださっているどころか、「ローソン」さんへの解像度がものすごく高くて、クリエイターさんの力を感じました。ロゴは当社のスタッフ(ビジュアル・グッズ周りの担当者)が制作したものになりますが、そのほかの要素は全て、はねことさんによるものです。
馬場:先ほどもお話した通り、企業色が強すぎるとお客様が冷めてしまうから、当初はコンビニ感が出ないように全体のバランスを気にかけていたんですよ。だから初めはMVやステージの演出に「とりまさむねくん」を登場させるつもりもありませんでしたが、メインビジュアルの中に「とりまさむねくん」が入っていたからMVやステージの演出にも入れる方向になりました。他にも、マイクがバーコードリーダーになっていたり、ポシェットがからあげクンのパッケージだったり、色々な要素がメインビジュアルに含まれていて・・・それで考えを変えて社内でも相談し、MVやライブでも“Lポーズ”を入れていただきました。
——ポリスピカデリーさんによるテーマソング『シアンブルー』のMVにも、色々な「ローソン」要素が登場しますよね?
馬場:あれもメインビジュアルの影響ですね。そういうわけで、個人的には当初思い描いていたよりも“ローソン色”が出てしまったなと思っています(笑)
——テーマソングについても特に注文はなかったのですか?
馬場:コール&レスポンスの場を作りたいとは思っていましたので、それはお願いしました。あとは、ちょっとした文言を入れたいといったような希望も。確か三、四回くらいのやりとりで方向性が決まりました。
デモソングの一発目のフレーズを聴いた時に「あ、これで大丈夫だ」と確信したことを覚えています。MVは期間も限られた中での制作だったはずなのに、本当に素晴らしくて。感動していて、今でもYouTubeを覗いてコメントとか全部読んでいます。
目黒:そうそう、馬場さんはよくファンのコメントを読まれていますよね。初報を出した時からずっとエゴサされてるんです。で、それを定例で話題にしたりして、反映できるところは反映していく。お互いに色々な話をしながら進めるスタイルで、定例会はもう一年半以上続いていますよね。
馬場:クリプトンさんはイベント運営の実績があるので、そういったところは信頼してお任せしつつ、こちらがわからないところを質問しながら一緒に創り上げている時間になっています。こうした時間があったからこそ、ファンと一緒に創り上げられるお祭りのようなイベントになったのだと思っています。
——ファンと一緒に創り上げると言えば、ライブでは“ローソンコール”も生まれましたね!
馬場:そうなんです!裏のモニターで見ていて、最初は聞き間違いだと思って(笑)音量を上げて聞き間違いではないとわかってすぐ会場に向かいました。
目黒:最初は半笑いみたいだった一部の声がどんどん拡がって、最終的に揃って「ローソン!ミーク!」って。ファンが自分たちで楽しんで拡げてくださるのが、うちらしいなと。
——「マチのハッピー大作戦」では全部で5つのライブが開催されていますが、他のライブでも“ローソンコール”は生まれたのでしょうか?
馬場:いえ(笑)あれは初音ミクだけです!
——ところで、Kアリーナのライブでは「レシート」が降ったそうですね? WEBニュースで拝見して羨ましく思ってしまったのですが・・・?
馬場: そうなんです!それが今回のライブにおける一番の後悔なんです(笑)実はあの レシートを降らせる案が社内で出たのがミクさんの公演の直前で、ミクさんの公演にだけどうしても間に合わなくて・・・。どこかで絶対にリベンジして、レシートを降らせたい!!
目黒: ――と思っていらっしゃるんですよね(笑)
馬場: はい。私個人としては、そう思っています!今はまだどんな形になるかはわかりませんけど、いつか実現できれば嬉しいなと思っています。
——お二人とも、ありがとうございました!
企画立案や商品開発、イベント制作・サービス運営業務などに興味のある方、ぜひクリプトンでご自身のアイディアやコミュニケーション能力、好奇心、熱意を活かして働きませんか?
みなさまのご応募お待ちしております!
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