今回紹介する本はこちら
『会計の世界史 イタリア、イギリス、アメリカ――500年の物語』
著者:田中靖浩
私はこの本に、簿記の勉強を救われました。
この本と出合わなければ、私が簿記3級に合格できることはなかったです。
この本と出会うまで
2021年某月、社長よりバケモノ社員達へ命令が下りました。
「簿記3級勉強して合格すること」
社長曰く、これからの人生における投資や蓄財、会社の経営指標を読めるようになるための第一歩としてらしいのですが、簿記3級……はて……。
就活の履歴書に書くとなんかいいらしい資格の代表格として聞き覚えがあります。
金と政治と組織体系の話になると途端に理解力がポンコツになる私は、ふと思いました。
でも簿記って確かお金とかそういう系じゃなかったっけ……?
そういう系でした。
途端に私は絶望を感じました。
「とりあえずいきなり勉強しろって言っても、みんなそもそも簿記って何か分からんだろうからちょっと勉強会開くわ」
と社長が3回ほど週始めに時間を設けてくれたものの、
もう序盤も序盤の「貸方・借方」の時点で話が受け付けない。
基礎中の基礎である5つの概念「資産・負債・純資産・収益・費用」で更に混乱していく。
会社から簿記3級の教科書を買い与えられ、おすすめのyoutubeチャンネルを教えてもらったものの、
3ページ読んだだけで超絶眠気が襲ってくるわ、
動画を5分見ただけでもう別のことをしたくて仕方がなくなるわ……
しまいには物事の意味不明さに怒りを覚える始末です。
苦手意識を持つ以前に、体が拒否反応を示しまくっていました。
さすがにこのままじゃさすがにだめだな……と
一旦教科書とyoutubeチャンネルは置いといて自分なりに色々やった結果、前程の拒否反応はでなくなり、「貸方・借方」は割り切って覚え、5つの概念もなんとな~く薄っすら受け入れられるようになりました。
それでも苦手な感覚は残ったまま、私と簿記3級との距離感はまだまだギクシャクしていました。
転機
私は考えました。
そもそも私は簿記の何がそんなに引っ掛かっていて、時には怒りを覚えるほどに受け入れがたいと感じているのか?
漫画『ハンター×ハンター』で私の好きなセリフがあります。
「その人を知りたければ、その人が何に対して怒りを感じるかを知れ」
簿記に対するこの気持ちは私が私自身のことを知る切っ掛けになりえると捉え、そこを解消してあげればもっと簿記のことを理解できるようになるかもしれないと思った私は、考えました。
考えて、答えを出しました。
一言で言うと、「何故そういう風にルールが出来上がってしまった(しかも皆それを受け入れている)のかが分からないから」でした。
ならば、そもそも簿記がどうやって誕生し世界中に普及する現在に至ったのか、
その経緯を学ぶことができれば、私は新しい気持ちで簿記と向き合えるのではないか?
そんなこんなで私は書店に直行し、今回紹介する本『会計の世界史』を手にしました。
この本を選んだ理由は、分野特有の考え方や概論が知りたければ、その分野の歴史を学ぶのが手っ取り早い方法だというのが持論だからです。
この本自体はかつて書店で目にしたことがあったもののその時はそれほど購入する気もなく、でも記憶にだけはずっと残っていて、それで今回この事態になった時に「アレだ!」と思い出したので購入しました。
そして今年(2022年)の1月、題して「憎いと思ってた悪役キャラも過去編を見ると憎めなくなっちゃうよね」作戦が実行されるのでした。
本の感想
結論から言うと、最高に楽しく最高に素晴らしくて、
まだ2022年始まったばかりだというのに私の中の今年最高の1冊に輝きました。
結論から言うとと言いましたが、正直この一言に尽きます。
言葉にすると「それだけ?」みたいな変化が世界中に影響を及ぼしていたり、高校時代に授業で習ってたものの何となくで暗記していた世界史の端的な記憶が、会計(簿記)を軸にして点と点が繋がって途端に理解できたり……
本を読んでいる時間中、ずっと楽しく、興奮と好奇心が冷めやらず、
色んな人の会計にまつわる色んな工夫や苦労のエピソードもあり、
毎日1章ずつ読みながら、「昨日読んだ章はこんなだった……これがこういう流れで……」と社長や姉に語り聞かせ(る相手になってもらっ)ていました。
エピソードはややドラマチックなタッチで物語として書かれてあり、それがまた引き込まれました。
この本は題名にもある通り、会計(簿記)の歴史を500年としています。
レオナルド・ダ・ヴィンチ時代のイタリアから500年。
会計のルールはこの間に様々な人達の工夫によって変化・発展してきたんだ……
そしてその集大成が、自分が今勉強しようとしている簿記なんだ……。
私は簿記のことが許せるようになりました。
前まで「意味わからん!」と憤慨していたものにはそうなる(ならざるを得なかった)背景があったことを知り、「ならば仕方ないね」と思えるようになりました。
これまでの拒否反応が嘘のように、ぐんぐん簿記の勉強が捗るようになりました。
前は5分でだめだったyoutube動画も全て楽しく制覇して、教科書の問題集も全部やって、
最初は正答率が5割くらいだったのが8割9割とどんどん上がって安定して、
しまいには「今日ちょっと元気ないかも…」と思いつつも簿記の模擬テストをやっている内にめちゃくちゃ元気を取り戻すくらいには勉強が楽しくなりました。
今自分で書いてて「進研ゼミの漫画か?」ってなるくらいには効能がすごかったです。
私は簿記3級と友達になったのでした。
そして試験合格。ありがとう、会計の世界史……
本を読み終わって約1か月後が試験日だったのですが、試験日10日前くらいから日毎に私の中の合格予感率が5%ずつ上がっていくのを感じる日々でした。
試験前日ではもう合格する予感しかなく、気持ちはさながらアイドル系少女漫画の「これまでさんざん練習はやってきた……。あとは本番を思いっきり楽しむだけ!」状態でした。
あの時の私はアイドルでした。
そして満を持して合格。
惜しむらくは「合格祝いは点数9割以上でいいから」と自信満々に姉に告げたにも拘わらず合格点が9割にあと少したりなかったこと、
そして、私のその時持てた力を全力発揮できたと錯覚して実はもう1段階ギアを上げられたことに後々気づいたことです。
あと、本当は2021年11月末が簿記3級合格締切だったけど、私が合格したのは2022年2月だったので、まあそこも……。
でも、本当に楽しい1ヶ月でした。
この本と出会ってなければ、私はこんなに簿記の勉強を楽しいと思えなかったし、試験に合格できたとしてももう少し先の話だったと思います。
本当に、感謝してます。
著者の方と、出版社の方と、書店と、色々と関わっている方・存在に、ありがとうの言葉を。
その他オススメ
会計の世界史に出会う前に読んでいた本も、私の力になってくれました。
会計の世界史があんなに楽しかったのも、これらの本でまず土台を最低限構築できていたからだと思います。
そんな本たち+αもここに載せておきます。
『会計の地図』
入門の入門者にオススメ。
まずは簿記の5つの概念の関係に早々につまずいた人に読んで欲しい。
私はこの本で、ただの表としてしか見れなかった貸借対照表におけるお金の流れがフワッとイメージできるようになった。
『世界一楽しい決算書の読み方』
決算書を読むということの入り口をクイズを通して教えてくれる。
推理している時の気分はさながら名探偵コナン。
これを読んだ後に「私、決算書ちょっと読めるようになりましたよ…」と社長にドヤったら、どこかの上場企業の決算書を刷って渡されて、あまりの文字の多さに目が回った。
こんなに文字が多いなんて聞いてない。
youtube動画:ゼロから簿記3級
簿記3級の教科書はこの動画で十分。
私も問題集以外ではこの動画でしか勉強していない。
説明が分かりやすいし、自分は耳からの勉強の方が捗るっていうタイプの人には絶対推奨。