ブラザー工業からカーブアウトし、建設業界向けに「ナレッジプラットフォーム」を展開する株式会社BuddyBoard。
BuddyBoardが目指しているのは、単なる業務のデジタル化ではありません。図面が完成するまでに、現場ではどんな会話が交わされ、どんな判断があり、どんな工夫が積み重ねられているのか。そうした「ものづくりのプロセスそのものをナレッジとして残していくこと」に挑戦しています。
そんなBuddyBoardを見てきた投資家は、この会社をどのように捉えているのでしょうか?
今回は、BuddyBoardに投資するIXS(IncubeX Studio)の明石さんと村岡さんに、投資の決め手や、建設業界の現状をどう捉えているのか、そして株式会社BuddyBoardの代表・小坂氏を交えながら、「このフェーズでBuddyBoardに入る面白さ」まで、じっくり聞きました。
(写真左から:IXS 村岡氏、BuddyBoard 代表 小坂、IXS 明石氏)
―― まず、BuddyBoardというプロダクトと小坂代表の第一印象を教えてください。
村岡:私が最初感じたのは、「大きな市場に目をつけたプロダクトだな」ということです。
業務のDX化ツールは世の中に沢山ありますが、BuddyBoardがフォーカスした建設業界は、世の中の流れに対してDX化が遅い。そういった意味で、この業界でDX化を図るというのは大きい市場が狙えるな、と思いました。
小坂さんについては、ブラザー工業出身ということもあって、最初は「大企業のメーカーらしい、真面目な方だな」という印象でした。ただ、実際にお付き合いしてみると、良い意味で大企業っぽくないんですよね。
柔軟ですし、レスポンスがとにかく速い。自分で考えて、すぐに動く。そしてAIのような新しい技術や取り組みに対しても、まったくアレルギーがない。
あと、とにかく忙しない(笑)。オフラインでお会いすると、いつも次のアポイントが入っていて、そそくさと帰っていくんです。でも、それだけ常に物事を前に進めているということでもある。余力を残してのんびりしているというより、「とにかくやってみる」推進力のある方だと感じています。
―― 明石さんは小坂さんと知り合ってから4〜5年経過しているとのことですが、ここ数年で小坂さんの変化は感じられましたか?
明石:かなり感じています。お会いした当時、小坂さんは「ブラザー工業の社内新規事業の方」という立ち位置であり、プロダクトとしても「複数業界向けのiPadアプリ」という位置付けでした。
そこから、「建設業界に絞ったほうがいいのでは?」と話をすると、すぐに方向転換してくる。「iPadだけだと市場が狭いので、デスクトップでも使えるようにしたらどうか」と話したら、次に会ったときにはもう機能が増えている。そういうことが何度もあって、プロダクトマネージャーとしての実行速度の速さを感じていました。
その後、ブラザー工業から独立して代表になったときには、顔つきも変わったなと思いました。単に動きが速いだけではなく、「自分がこの事業をやり切る」というコミットメントが強くなった印象があります。
なぜ、数あるDXプロダクトの中でBuddyBoardだったのか
―― VCとして毎年多くのスタートアップを見る中で、投資を決めた決定打は何だったのでしょうか?
明石:単に業務をデジタル化するのではなく、人の創造性そのものを加速させるプロダクトだと感じたことが、私にとって一番のポイントでした。
世の中にあるDXプロダクトを見ると、写真管理や報告書作成など、「やらなければいけない業務」を効率化するものが多いですよね。
もちろん、それも重要です。
でも、BuddyBoardが対象にしているのは、そのさらに先にあるものなんです。職人さんやベテランの方が、長年の経験の中で身につけてきた判断や工夫。いわば、MBAでは学べない、頭の中にしかない経験則です。
それをどう残して、次の人の創造につなげていくのか。ここに、他のDXプロダクトとは違う面白さを感じました。
村岡:私は「出自」そのものが競争優位性になると思っています。BuddyBoardはブラザー工業から生まれた会社です。建設業界のお客様からすると、「いきなり現れたよくわからないベンチャー」ではなく、「ブラザー工業から出てきた会社」という安心感がある。エンタープライズ領域では、これはかなり大きな意味を持ちます。
新しいことに挑戦するスタートアップらしさと、大企業発だからこその信頼性。この両方を持っていることが、BuddyBoardならではの強みだと思います。
「図面を残す」だけでは、ナレッジにはならない。「管理のDX」から「経験のDX」へ
―― 建設業界はいま、何が求められているのでしょうか?
明石:これからの建設業界で重要になるのは、ベテランが持っている経験やノウハウを、どう次の世代に渡すかだと思っています。
これまでの建設テックは、「管理アプリ」が中心でした。写真を管理する、報告書を作る、進捗を管理する。そういった領域は、ある程度デジタル化されてきています。
一方で、いま業界が直面しているのは、その先にある問題です。ベテランの方々が引退していく中で、その人たちの頭の中にしかない経験や判断基準をどう残すのか。これは、単純にアプリを導入すれば解決できる問題ではありません。
村岡:そして、これは一企業だけの問題ではないと思っています。技術の伝承ができなくなれば、建設のレベル、ひいては日本のものづくりそのものの強みが弱くなってしまう可能性がある。
日本の建設や製造が積み上げてきたものを、どう次の世代につなぐのか。
BuddyBoardが向き合っているのは、単なる業務効率化ではなく、日本のものづくりの強みを次の世代へ繋ぐというテーマなんだと思います。
小坂:建設は「一品一様」と言われるように、同じ建物は二つとなく、同じ条件の現場も存在しません。だから、完成した図面だけを残しても、「なぜこの図面になったのか」はわからないんです。
本当に価値があるのは、その図面に至るまでにどんな修正や議論があり、どんな工夫があったのかというプロセスそのものです。そのプロセスを残して、次の現場で活かせるようにする。そこにBuddyBoardの価値があると考えています。
「3D化すれば、ノウハウも残る」は本当なのか?
―― 一方で、建設業界では3D CADなどのデジタル化も進んでいます。その中でBuddyBoardが提供する価値を、どのように伝えていくのでしょうか?
村岡:ここには、お客様が考える「DX」と、私たちが考える「ナレッジ」の間に、まだギャップがあります。
例えば、「3Dモデルで設計すれば、データもノウハウも残るのではないか」と考える方もいます。ただ、実際の設計では、3Dモデルが完成する前にたくさんの議論や試行錯誤があり、その過程こそが重要なのに、完成した3Dモデルだけを見ても、その背景まではわかりません。
小坂:私自身、製造業にいたので、そこはよくわかります。製造業は建設業界よりも早く3D化が進みましたが、3Dモデルを作っただけで、すべてのノウハウが残るわけではありません。3Dモデルは、議論して決まったものを形にするためのものです。
一方、本当に価値のある修正のプロセスは、その前段にある打ち合わせに残っています。2Dの図面やホワイトボードを囲んで、「ここはこうしたほうがいい」「この条件ならこっちだ」と議論する。そこに、経験や判断が表れているんです。
だからこそ、「3D化=ナレッジの保存」ではないということを、丁寧に伝えていく必要がある。ここは、BuddyBoardがこれから事業を広げていく上で、大きなチャレンジの一つだと思っています。
―― では、事業を広げていく上での難しさはどこにあるのでしょうか?
明石:建設業界特有の「現場と本社の分断」が、一つの大きなチャレンジだと思います。現場では「これは便利だ」と評価されても、本社側からすると「それは何の予算で導入するのか」という話になる。
現場と本社で意思決定や予算が分かれているケースもあるので、両方のステークホルダーに価値を伝えていく必要があります。
だからこそ、これからのBuddyBoardには、プロダクトを作る力だけではなく、お客様の中に入り込み、現場の課題を理解し、それを事業として広げていく力も求められています。
小坂さんに必要なのは、「全部自分でやる」ことからの卒業
―― そんなBuddyBoardを率いる小坂さんは、どんな経営者ですか?また、これからどんな経営者になってほしいですか?
明石:小坂さんは、プロダクトへの愛がとても強い経営者です。今でも自らプロダクトマネージャーのように動いている。それだけプロダクトに対するこだわりが強いんだと思います。
加えて、営業もできるし、プロダクトマネジメントもできる。組織管理もできる。
本当に何でもできる人なんです。だからこそ、これから必要なのは、「全部自分でやる」ことから卒業することだと思っています。
背中を預けられる仲間が一人、二人と増えれば、小坂さん自身がより重要なことに集中できる。自分ですべてを見るのではなく、信頼できる仲間に任せていく。
そうなったとき、経営者としてさらに強くなると思っています。
村岡:小坂さんは、会社を大きくするだけではなく、その先にある「産業そのものをつくっていく」という視座を持っている方です。私たちIXSも、「人と資本を投じて産業を構築する」ことをビジョンに掲げています。
BuddyBoardという一社、一つのプロダクトだけではなく、日本のものづくりに新しい価値を生み出す。そこまで一緒に目指していけたらと思っています。
「お客さんはいる。打ち手は自由。」
―― では、これからBuddyBoardに入る人にとって、今のフェーズならではの面白さは何でしょうか?
明石:一言で言えば、「お客さんはいる。打ち手は自由」ということだと思います。ブラザー工業からのカーブアウトという難しい局面を乗り越えて、これまであった制約が外れ、スタートアップらしいスピード感で動けるようになった。
しかも、すでにお客様がいる。つまり、ゼロから市場を作る段階ではありません。「顧客という土台はある。でも、次に何をするかは自分たち次第」というフェーズです。
投資家として見ても、非常に面白いタイミングだと思っています。
村岡:このフェーズには独特の「手触り感」があります。
入社した人の考え方や、「こんな事業をやりたい」という思いが、会社やプロダクトの形そのものに反映される余地がまだ大きい。
完成された会社に入って、決められた仕組みを運用するのとは全く違います。
自分の仕事が、会社そのものを変えていく。そこに面白さを感じる人には、すごく魅力のあるフェーズだと思います。
ジョインして欲しいのは、自分のスタンスを持って、泥臭く動ける人
―― では最後に、BuddyBoardで活躍するのはどんな人だと思いますか?
小坂:プライドを持って細部にこだわることができる人、そして当事者意識を持って動ける人です。
私は「神は細部に宿る」という言葉が好きなんです。プロダクトでも事業でも、最後の細かい部分にどこまでこだわれるかで、完成度は変わる。
だから、「これでいいや」ではなく、「もっと良くできないか」と最後までこだわることができる人には、すごく面白い環境だと思います。
明石:私は、泥臭さを楽しめる人ですね。決められた仕事を待つのではなく、自分で考えて、自分の足で動く。
特にこれから東京のメンバーが増えていく中では、誰かから指示を受けて動くというより、自分なりのスタンスを持ってお客様と向き合える人が必要になると思います。
村岡:そして、自分のスタンスを持ちながら、チームワークも大切にできる人です。
自分で意思決定する場面が増えるからこそ、「私はこう思う」と言えることは重要です。でも、それを一人で進めるわけではありません。
小坂さんや仲間とコミュニケーションを取りながら、お客様にとっての価値を一緒につくっていく。自律して動けることと、チームで成果を出せること。その両方が大切だと思います。
完成した会社ではなく、「これからのBuddyBoard」をつくる
BuddyBoardには、すでに顧客がいます。市場も見えてきています。一方で、まだ完成した会社ではありません。
どんなプロダクトにしていくのか。
どんな組織をつくっていくのか。
そして、日本のものづくりにどんな価値を届けていくのか。
その答えは、まだ会社の中にあるわけではありません。
だからこそ、自分で考えて、自分で動いて、会社の未来そのものをつくっていける。
すでにあるものを運営するのではなく、これからのBuddyBoardを、一緒につくっていく。
そんなフェーズに興味がある方は、ぜひカジュアル面談にお越しください。