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行政の「あたりまえ」を変えたくて、公務員を辞めて起業しました。

はじめまして。株式会社 Ambirise 代表取締役の田中です。

私たちは 2020 年 5 月に "行政の「あたりまえ」をアップデートする"をキャッチフレーズに、北海道発の GovTech スタートアップとして歩み始めました。


本記事を通じて、私たちのミッションや価値観について知っていただければと思います。

目次

  1. 行政・行政サービスの「あたりまえ」って?
  2. 自己紹介
  3. 「あたりまえ」の原因
  4. テクノロジー×ビジネスの活用で行政の縛りから脱却する
  5. 多様なサービスの担い手が必要
  6. 北海道・札幌から、行政のあたりまえをアップデートする
  7. はじめに取組んでいること
  8. あなたの力を貸して下さい

行政・行政サービスの「あたりまえ」って?

みなさんが、行政や行政サービス(以後、「行政」という言い方にします)に対して思う・感じる「あたりまえ」には、どんなことがありますか?

「あたりまえ」で思いつかない人は「行政」を「役所」、「あたりまえ」を「イメージ」と読み替えてみてください。

よくあるのは、「平日しかやってない」「縦割りでたらい回しにされる」「融通がきかない」「行かないと手続きできない」「何度も書類を書かされる」「遅い・待たされる」「複雑でわかりにくい」・・・といったマイナスなものでしょうか。

このようなマイナスイメージが多い行政の「あたりまえ」。
これはそこに関わる政治家や公務員が無能だからなのでしょうか。

確かにそういった要素もあるのかもしれません。
公務員にも沢山の人がいて、志高く仕事をしている人もいるし、どうしようも無い人もいるのも見てきました。

ですが、私が18年間市役所の職員として行政に携わってきたなかで感じたのは、マイナスイメージが多い行政の「あたりまえ」の原因には、行政サービスが税金を原資として行われている以上どうしても生じる制約があるということでした。

自己紹介

ここで、少しだけ自己紹介をさせてください。
私は、元札幌市職員(2020年3月退職)で、2020年5月に株式会社AmbiRise(https://ambirise.jp/)という会社を立ち上げ、CEO (当面は CTO も兼務)をしています。


職員時代は情報システム部門の経歴が長く市の基幹システムの運用や再構築などに関わってきました。また、プライベートプロジェクトとして、オープンデータを活用した観光・地域活性化のWebサービス(アプリ)「Korette(https://korette.jp)」の開発・運用や、サービスを活用した地域活性化に取組んできました。


地域の魅力をクイズで発信するプラットフォーム「Korette」

「あたりまえ」の原因

行政が主体で、または行政の委託で事業者が行政サービスを提供する場合その費用が税金で賄われています。

私は行政職員として関わるなかで、行政が便利で使いやすいサービスの提供やサービスを迅速に提供しようとする場合、どうしても税金を原資とすることから、次に挙げるような制約が生じてしまうと感じていました。

(「誰にも使いやすい」は「誰にも使いにくい」|公平性に縛られる)


ビジネスとして提供されている便利で使い勝手の良いサービスは、子育て中の母親、〇〇代の若者など、年齢や性別・趣向などでターゲットが絞り込まれます。そして、それぞれのターゲットを意識した画面の色調やレイアウト、遷移などが設計されて提供されています。

これに対し、国民・住民からの税金が原資となっていることから、「誰にとっても使える(特定の人を置き去りにしない)」公平性が確保されたサービスであることが求められます。

この「誰にとっても使える」公平性が確保されたサービスは、ターゲットを絞ることができないため、結果として「誰にとっても使いにくい」サービスが生まれてしまいがちになります。

(「既存のサービスをやめられない」|公平性に縛られる)


また、行政サービスは他に提供者がいない(選択肢がない)ため、全ての住民が利用できるサービスであることを求められます。

既存のサービスを廃止するということは「弱者の切り捨て」に繋がりかねない、そういう批判の的にもなるため、選挙で選ばれた訳ではない行政職員の立場でやめるという決断をするのは非常に困難を伴います。

したがって、効率化や利便性を向上させようと、新たなサービスや新たな提供手段を増やそうとすると、基本的にこれまでのサービスや提供手段が残ってしまうことになります。これが、複雑で分かりにくいサービスを生んでしまうだけでなく、サービス提供のコストや手間をかえって増やしてしまうということに繋がります。

(「情報を共有しない原則」|縦割りの制度に縛られる)


また、行政という組織は、「縦割り行政」という言葉が聞かれるように、土木や福祉といった制度や、財政・人事といった機能の単位で明確に業務範囲や権限が分けられています。
そして、法令や条例(有名なものでいうと個人情報保護条例)で、ある制度で入手した情報は(基本的には)他の制度で勝手に使ってはいけない、システム同士を繋げてデータ連携してはいけないという制約がかけられています。

〇〇市役所や〇〇県のといったひとくくりにみえる行政のなかでも、それぞれの組織は全く別の会社が運営する専門店が並ぶショッピングモールのような状況になっています。

国民や住民が行政と接点を持つとき、それは子供が生まれた、引っ越したといったライフイベントが起点で、これには複数の制度が絡んできます。
しかし、前述したとおり、行政側は制度単位で組織が作られ、組織間の情報連携に制約があります。そのため、ライフイベント起点でみると情報連携が不足しがちとなったり、たらい回しになったりといったことが発生しやすくなります。

もちろん行政の怠慢も沢山ありますが、同じ〇〇市役所や〇〇県の中で情報連携に制約があるということは知られていない事が多いようです。

そして、このことが、国民や住民が手続の都度、複数の窓口にいって、氏名や住所などの同じ情報を書くことや、住民票・税証明など市が保有する情報の添付を求められる要因にもなっています。

(皆が納得できる結論には時間がかかる|調整型の意思決定に縛られる)


先ほどの組織の縦割りとその解消の話はずっと昔から言われていることです。その解決手法として、総合窓口の開設や、統一的なIDを持つ事で利用者の情報を一元的に管理するという方法が話題になります。
統一的なIDを持つ方法は民間サービスの場合であれば当たり前のように行われています。また、そのような管理を前提とした便利なサービスを望む人も沢山いると思います。

しかし、行政が同様の仕組みを導入することについては、「国民や住民が番号で管理される、監視される」「個人情報が漏洩する」と懸念を持つ人、反対する人が多くいます。

そのような状況もあり、付与した番号に、行政がもつ個人の情報を紐付ける・あるいは閲覧するということに厳しい制限を課した制度になっていて、統一IDが付与されているにもかかわらず、法令や条例で行政が保有する情報を紐付けられず、その情報を活用したサービスが出来ないという状況が生じています。
これは、最近で言えばマイナンバーがあるのに支給に手間がかかる特別定額給付金の事例などはあてはまるでしょう。

利便性と個人情報保護は両方を追求していくのは必要ですが、どうしても天秤のようなところがあります。個人の価値観として、利便性に重きを置くのか or 個人情報保護に重きを置くのか、価値観が並立している状況です。

これが1つの方向に収束していくまでには相当の時間が必要です。強いリーダシップによる政治決断があれば早まるかもしれません。しかし、過去20年でもそれほど議論が進捗していないところをみると、そのような決断があったとしても相応の時間がかかることが想定されます。

私がこのようなお話をすると、
「国がデジタル化するっていってる」「今回は本気で取組む姿勢がみえる」「コロナが追い風で、すぐに変わる」
こういう風に言われる方もいらっしゃいます。

そうであればもちろん良いことです。

しかし、これまでの政治や行政の取組をみてきた自分としては、蓋をあけてみたら「〇〇をする=使われるかは別」、「すぐに=検討はすぐに始めるが実施は5・10年後」という事態になることを想像してしまいます。

実現したは良いが使われないサービスが生まれてしまう、実現に何年もかかるため、その間は現状と同じ不便な状況が続いてしまうことになるのではないか。
少子高齢化・人口減少社会が進むこれからの時代、これまでの10年間と同じように国民・住民を現状のままの不便を強いる、行政の変革を待つような悠長な時間も、ダメだったときにもう1度挑戦する余裕も残されていないのではないでしょうか。

テクノロジー×ビジネスの活用で行政の縛りから脱却する


他にも請負・入札前提の契約制度、専門人材の確保、庁内の全体最適の意思決定が難しい問題など、さまざまな問題があります。

これはこれだけで何本も記事がかけるだけなので割愛しますが、行政がサービス提供の主体である限り、その原資が税金で賄われている以上、縛りが生じてしまいます。

私は、18年間市役所の職員として行政サービスや行政の情報化に関わるなかで、このような課題と限界を感じていました。行政職員という仕事の重要性ややりがいといったことも感じていましたが、この限界を乗り越え課題を解決するためには、行政が主体で提供するサービスでは担えない部分をビジネスとして提供しようと考えるようになりました。

それにより、今後、一層限られた予算や人員のなかで多様化していくニーズに答えていく行政サービスを実現することができる、行政の「あたりまえ」を変えることができる。そして自らその役割を担うため行政の枠を飛び出そうと考えました。

行政サービスをビジネスで提供するという考え方自体は以前から存在します。ただ、行政サービスに近ければ近いほど、収益化が難しくなります。
これをテクノロジーの活用とスタートアップという身軽で小回りのきく組織で運営することで限界費用をできるだけ下げ、ビジネスとして成立させていくことを考えています。

実際に、「GovTech」と呼ばれる、これまで当たり前と思われていた「行政サービスを行政主体(行政からの委託)で提供する」のではなく、「行政サービスをテクノロジーの活用で持続可能なビジネスとして提供(補完)」することに取り組むスタートアップ企業が注目を集めています。

行政サービスをビジネスで提供することで、例えば以下のようなことが可能となります。

・住民や企業など情報の発生源プロセスのデジタル化を進める
・ターゲットを絞ってUX/UIを最適化したサービスを提供する
・追加費用を払っても便利なサービスを利用したい層へ付加価値の高いサービスを提供する
・希望するユーザーに対し情報紐付けを実施する
・どの行政あてもワンストップで同じUIのサービスを提供する
・サービスの早期提供と機能追加・改善のPDCAを回す

多様なサービスの担い手が必要

ここまで、行政主体でのサービス提供で生じる限界と、その限界を回避するためのビジネスのアプローチをお話しました。

もちろん、このアプローチは行政が主体で提供されるサービス不要で全て置き換わるというものではありません。
行政が主体となるサービスは、「ビジネスでは提供されない層にサービスを提供する」といった観点からも必要です。これらの行政主体でのサービスについても、今よりもより便利なサービスを追求していく必要もあるでしょう。
また、特に重要な個人情報を扱う場合や、権利義務を扱うものは引き続き行政は担っていく必要があると思います。

また、NPOを初めとする非営利団体といった担い手も行政主体・ビジネス主体のカバーしきれない領域を埋める役割として一層求められています。そして、こういった流れのなかで行政サービスの担い手に多様性が生まれて行くことが望ましいと思います。

時間はかかるけど大きく変えるということは行政が担いつつ、それまでの時間軸を埋めたり、多様なニーズにたいして痒いところに手が届かない、サービスの多様性が必要といったところがビジネスや小回りスタートアップが担うといったような行政の役割を補完するようなことはもっと出来るのだと思います。

そして、そういった役割の人達を増やし、多様性を作るために、行政にはデータやインターフェースの公開といったハブとなる役割を担って欲しいと思います。

北海道・札幌から、行政のあたりまえをアップデートする


ここまで長文にお付き合いいただきありがとうございました。
ここまでお話したことが、私が公務員というソーシャルセクターを退職し、AmbiRiseという会社を立ち上げた理由になります。

私がお話したのは、政令指定都市のイチ市役所の職員として18年間仕事をしてきた中で見てきたこと、感じてきたことです。
行政にまつわる課題は色々な視点とその視点から見える課題・解決策があると思います。
行政に対する議論は、要・不要、公務員が善・悪といった二元論で語られがちですが、色々な視点があると思います。色々な立場の人が建設的な議論を重ね、「あたりまえ」が変わっていって欲しいなと思っています。

私は、行政の事が分かっているからこそできるアプローチ、そしてテクノロジーを活用したビジネスからのアプローチで、開拓精神が根付く北海道・札幌からの地から、私が見てきた感じてきた行政の「あたりまえ」を自分が思い描く行政の「あたりまえに」アップデートし続けていくことに貢献していきたいと思います。

行政の当たり前が変わっていけば、人は行政の手続き時間を割くこともなくなり、行政そのものを意識することがなくなる、それが究極の「あたりまえ」なのではないかと思っています。

政治や行政に関わるものは、10年先、100年先まで見据えて自分の役割を発揮していくことが求められます。
今は何かと明日を楽しみに思いにくい時代ですが、行政の「あたりまえ」が変わっていく未来の先に、100年先も、あらゆる世代の人々が明日を楽しみに思える社会を実現できたら良いなと思っています。

はじめに取組んでいること

AmbiRiseの取組み第一弾として、現在、企業から行政宛てに行われている請求書の発行を効率化するプラットフォーム「Haratte」の開発を進めています。


行政・公共機関向け請求プラットフォーム「Haratte」

「Haratte」は歩みの遅い行政の請求業務を便利で効率的にするために、あえて最初から完全に紙を排除せず、紙とデジタルを融合した請求プラットフォームです。

歩みの遅い行政領域において、どうやったら最初の1歩を踏み出すことができるかということを考えた結果、あえて紙を残し、請求代行の仕組みを用いることで擬似的にデジタルで得られるメリットを享受できるサービスとして考えました。

あなたの力を貸して下さい

AmbiRiseはまた出来たばかりの会社です。社員も実質私一人です。いまは企画も開発も雑務も全て一人でやっていますが、ありとあらゆるものが足りていません。

これをお読み頂き、共感いただけたみなさん、行政のあたりまえをアップデートすることに力を貸していただけませんか。

行政手続きやサービスは自分の身近な人が利用するものです。身近な人が利用するものが自分達の力で変わって行く・良くなっていくことに貢献すること、それを実感できることは、凄まじい程の達成感を得ることができます。

また、行政サービスに関わるということは、ビジネスとして目先も見据えつつも10年、100年というスパンで世の中がどうあるべきかということを見据えて仕事をしていくことになります。そういった責任感や誇りを持って仕事に取組むことができます。

もちろん、その実感を得ることは並大抵のことではないと思います。色々な理想と現実の狭間に翻弄されながら、泥臭い取組を諦めずにやった先にやっと得られるものだと思います。しかしだからこそ、その達成感・満足感は高いものになると思います。

あなたも、「行政のあたり前」を変えることに一緒に取組みませんか?あらゆる世代の人々が明日を楽しみに思える社会の実現に貢献しませんか?そして、一緒にそのための組織を作っていくことに挑戦して頂けませんか?

本社は札幌ですが、サービスは日本全国に提供していきます。なので、札幌の方・北海道の方はもちろん歓迎ですが、限定はしません。オンラインでの参画もありです。お手伝い頂ける方は、当初は業務委託という形で参画いただき、その過程で共に戦える仲間となっていって頂けると嬉しいです。

あなたからのご連絡をお待ちしています。

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