CTO interview【大手メーカーからメガベンチャーの分析系部門の部門長に。データ×エンジニアリングが自分の強みになった】
ーー岩尾さんはメガベンチャーの分析系部門を経て Hogetic Lab に CTO としてジョインされましたが、これまでの経歴について教えてください。
新卒は大手複合機メーカーにエンジニアとして入社して、8 年間コンビニエンスストア向けネットプリントサービスの開発などに携わっていました。
開発からPMまで経験する中で、元々『何かを効率的にやっていくこと』が好きだったことから、レガシーなシステムをクラウドに移行することでのコスト削減や、非効率なデータ分析業務に対してデータ分析基盤を立ち上げて効率化する、といった業務も担当するようになりました。
具体的には、営業担当が Excel を使ってピボットテーブルで何十万行とあるデータを集計してPCが固まったり、処理に何時間もかかっている状況だったので、分析基盤を立ち上げて数秒で終わるような環境を構築していましたね。
ーーそこからメガベンチャーに転職しようと思ったきっかけは何かあったのでしょうか?
当時、データ分析というものが、社会的にも注目されてきている流れを感じていたので、『データ×エンジニアリングを自分の強みにしてキャリアを築いていこう』と思ったことがキッカケでしたね。
ちょうどそのタイミングでメガベンチャーからオファーをいただいて、実際に社員と面談をしてくなかでも『ここでなら自分のやってきたことが活かせるかも』と思い入社を決めました。
転職当初はデータアナリストの部門で『データ分析を横断的に効率化・高度化してほしい』というざっくりとしたミッションを与えられて。僕はバックグラウンドがエンジニアですし、チームの中でも異色だったので、その強みを活かしてみんなの分析をより効率的にできるように取り組んでいましたね。
ーーデータエンジニアとしての強みを、入社すぐに遺憾なく発揮されていたのですね。
分析ってそもそも、データ活用するまでに元データを加工したり、集計することでようやく使われるようになるのですが、そこに時間がかかりすぎて業務に支障をきたさないよう、データ処理の高速化に取り組んでいました。
また、データ分析基盤はお金がかかるもので、それが必要経費なのか果たして無駄なのか分かりづらいんですよね。そこで、メタデータや監査ログから必要性を明確にして、コスト削減にも取り組んでいました。
これらのプロジェクト成果を、社外エンジニアイベントなどでも発信していくうちに『こうした取り組みを組織化してやっていけたらいいな』と思うようになって。
当時はいちプレイヤーでしたが、データエンジニアというポジション採用を強化していけるよう提案して、グループマネージャーとして組織を立ち上げることになりました。現在ではアナリストも含めた部門の部門長として、約 30 名のマネジメントをしています。
【自分自身も、チームとしても。相互に『強み』を活かす CTO としての組織作り】
ーーメガベンチャーでの部門長という大きな役割がありながら、Hogetic Lab に CTO としてジョインした理由は何かありましたか?
大竹と白石がまだ Hogetic Lab を法人化して間もない頃、最初は業務委託の社外 CTO として声をかけてくれたことキッカケでした。それにこの 2 人なので、『じゃあやってみようかな』という気持ちで、まったく迷いはなかったですね。
それに、本業・副業それぞれの業務が全く異なる領域ではないですし、それぞれの役割で自分の強みが活かせるような関係になっていると感じます。
ーー凄まじい両立ですね。具体的には 2 つの組織でどのように切り分けているのでしょうか?
メガベンチャーではマネジメントに全振りしているので、組織のミッションやビジョンの策定から期の目標を考えメンバーをアサインし、組織としてのパフォーマンスを最大化するための組織作り、といったことをとにかく考えています。
一方、Hogetic Lab はまだエンジニアメンバー数も 1 桁台なので、プロダクトの開発進行をチェックしながら僕が実装することもありますし、作っていくべきプロダクトの軸足ををそろえる役割としても、メンバーと一緒にバリバリ議論していますね。
ーーこの 4 月から Hogetic Lab の取締役 CTO になられたとのことですが、役割に変化はありましたか?
今は Hogetic Lab は全員が業務委託のエンジニアなので『こういう人がいるといいな』『こんな組織がいいな』とイメージしたときにハマるような、優秀な人を獲得して組織のパフォーマンスを上げる、ということに注力しています。
副業ならではの難しさもあるなかで、メンバーそれぞれの得意なところも見えてきたので、大きなプロダクトを作る中で、みんなの強みを活かして上手くワークするための業務分担を考えたり、結局ちょっとマネジメントに寄ってきていますね。
あとは『経営層と話せるエンジニア』としての立ち位置を担うようになりました。同じ目線で『こういうプロダクトにした方が世の中のためになるんじゃないか?』と議論する時にも、僕は技術に強く、大竹と白石は経営やオペレーションに強いため、それぞれの強みをうまく補完しながら対話できていると感じます。
【『誰もが心地よく働いてもらえる仕組み』を作り、同じ目標に一本鎗で向かえる副業組織に】
ーー先ほど『副業ならではの難しさがある』と仰っていましたが、具体的にはどういった難しさを感じましたか?
副業となると、当たり前ですが本業やご家庭があるので、たとえばお子さんの寝かしつけのあとに時間を合わせて会議設定したり、みんなの事情を把握したうえで、お互いに配慮しながらスケジュールを組むようにはしています。
会議自体も、優秀なメンバーが集まっているからこそ、技術の話ももちろん大好きですし、議論が発展してまとまらなくなって時間内に出すべき解が出ないことも最初の頃はあったんですよ。
これは今後、新しいメンバー増えていくなかでは必ずしも望ましいものではないですし、本業ほどの時間が取れないからこそ、事前に各々検討してドキュメントに目を通したうえで会議に向けてしっかり準備をするようになりましたね。
ーー組織としても変わっていくなかで、CTO として意識していることは何かありますか?
そうですね。規模感やフェーズで期待値も変わると思いますが、組織として文化がまだないからこそ、基本に立ち返って『誰もが心地よく働いてもらえる仕組み』を作ったり、個人でそれぞれ持ち帰って仕事を進められるように意識して試行錯誤しています。
そして何より、今はプロダクトの開発に向かってみんなで一本槍になって向かっていくところが大事だと思いますね。どの時期に何ができているべきなのか何度もすり合わせて、組織としてメンバーみんなが同じ目標に向かっていけるように、しっかり進めていくことを意識しています。
【身近な人に喜ばれることがモチベーションの源泉?データエンジニア向きの意外な人材要件】
ーーこれまで様々な組織マネジメントを経験してきたかと思いますが、今後 Hogetic Lab で仲間を集めていくなかで、どんな方にジョインしてほしいですか?
副業という組織上、日頃一緒にいないからこそ、ミッション・ビジョンや目標に向かって、主体的に何をやるべきか考え、各々が進めていけることが大事だと思いますね。進捗も見えにくいからこそ、『この人たちだったら任せていても安心だな』と思える人がいいですよね。
どういう粒度まで決まっていれば動けるか、というのは結構人によって違っているもので、方向性と期待値を伝えると動ける人もいれば、タスクの粒度まで落として納期も併せて具体的に言うケースもあります。
そのため基本は自走してもらって、不明点があれば『こうしようと思うのですがどうでしょうか』と言ってもらえると、お互いにとても楽ですね。
ーー岩尾さんご自身も他領域のエンジニアでしたが、Hogetic Lab のデータエンジニアとして必要だと思うスキルセットはありますか?
使っている言語が SQL や Python、シェルスクリプトなどの言語なので、スキルセット的には、サーバーサイドのエンジニアをしている人だったらハマる人が多いと思います。ただ、システムが単に動けばいいわけではないので、データの意味をちゃんと分かっていることは必要ですよね。
そもそも、上流工程は絶対にできなければいけないと思っていて。何のために使うのか、どういう使われ方をするのかまで分かっていないと、良いテーブルの設計もできないですし処理も書けないですから。
僕たちは一気通貫して実装まで行うケースが多いので、何のために使うデータなのか、どう使われるのかを考えて、想像したり会話しながら実装できることは大事なスキルだ思いますね。
ーースキルセットはまさにといった内容でしたが、岩尾さんの思うデータエンジニア向きだと思うマインドは何かありますか?
スマホアプリやサービスを作りたいエンジニアは多いですが、実はデータエンジニアの場合はデータアナリストやデータ利用者を喜ばせることができる仕事なんですよね。自分たちが良いと思ったものだけではなく、利用者のニーズをしっかり満たすものを作っているからこそ、会話する機会もよくありますし、喜んでくれる人がすごく近くにいるんです。
だからこそ、人を喜ばせることに価値を置いている人には向いているなと思いますね。地味で泥臭いことも多いですが、喜ばれることがモチベーションの源泉になっているメンバーが多いと感じています。
あとは、いろんな技術に興味がある人がいいですね。Google のプラットフォームで動かしているのですが、その技術自体がどんどん新しくなっていくなかで、そのアップデートを追いかけて『このケースで使えそうだ』と検証してみたり、利用技術自体をアップデートしていくことで開発を効率化したり、データを安全にしたり、そういうことに興味を持てる人が良いかなと思います。
【移り変わりが早い世界だからこそ、あらゆる技術に柔軟であれ。データエンジニアの未来が明るい理由】
ーー岩尾さんはこれまでデータエンジニアとして活躍されてきたなかで、今後のデータエンジニアの世界はどうなっていくと思いますか?
データエンジニアというポジションは地味に見えるのか、まだ日が当たってなさすぎるのですが、これからくることは間違いない、今いちばん注目のエンジニアポジションだと思いますね。
これまで様々な会社を見てきても結構レガシーで、データ活用ができていない、データ自体が蓄積できていないところが多いからこそ、データエンジニアの未来は当面は明るいと思っています。
特に最近のデータエンジニアリング周りは、技術の移り変わりも早くて、自分の技術にこだわりすぎたり、このコードさえ書ければいいというものではなくなっているので。それではコモディティになってしまいますし、自分たちの技術だけでなく、他にあるより良いソリューションを活用するケースもありますね。
ーー自分たちの技術だけにこだわらず、本質的な価値の提供が大切なのですね。
そうした新しい技術を放置せず、しっかりキャッチアップし活用して、お客様の目的に合わせて外部ツールも含めた解決策をしっかり提供できるのが理想的ですし、そういった柔軟な考え方は大切だと思いますね。
今、世の中にはデータ活用における万人向けツールはないので、新しい技術への目を養いながらデータエンジニアをやっていれば、未来は明るいんじゃないかなと思っています。
Hogetic Lab としても、データを世の中の人たちがより簡単に使えるようにしたり、そこをハードルに感じないような価値を伝えられるように頑張っていきたいですね。