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複雑なことをいかにシンプルに解決できるかがすべて。アートディレクター・谷川瑛一さんが仕事をするうえで大切にしていること

2020年3月9日にたった2人で創業された株式会社FUSION。

ロゴやキービジュアルを始めとする、シンプルで洗練されたFUSIONのベースデザインは、アートディレクターの谷川瑛一さんが手掛けたものです。 

博報堂を経て、現在はフリーランスとコンテンツスタジオ・CHOCOLATE Inc.所属。これまでにACC、NYADC、ADfest、Clioなど数多くの広告賞を受賞しており、手掛けたプロジェクトはどれも大きな話題となっています。

そんな谷川さんがお仕事で大切にしていることや、FUSIONのロゴに込めた想いについてお話していただきました。

「楽しんでやっていたら、最終的に広告になっていた」


ーーまず、谷川さんがこれまでにやられてきたことを教えてください。

谷川さん:

僕は武蔵野美術大学 視覚伝達デザイン学科を経て、博報堂に8年間勤めたのちに独立しました。今はコンテンツスタジオ CHOCOLATE.Incに所属しながら、サブカルチャー領域を中心としたさまざまなプロジェクトのアートディレクションをしています。

高校生のときに美大に進路を決めたのは、勉強ができなかったから…(笑)。でも、絵を描くことは昔からすごく好きだったんです。

そのなかで、油絵や彫刻などのひとつのことを長く続けるよりも、幅広くいろんなことをやりたいと思っていたので、デザインを選びました。それまで一切絵の勉強はしたことがなかったので、今思えばリアル『ブルーピリオド』ですね。

そして、当時はデザイン学科から博報堂・電通に行くのは王道ルート。佐藤可士和さんや小杉幸一さん、長嶋りかこさんを始めとするアートディレクターの方々への憧れもあり、あまり疑問なく進路を決めましたね。

ーー谷川さんは、「絵が好き」というところからデザインに入っていますが、デザインは課題を解決することでもありますよね。その課題解決自体が楽しいと気付いたのはどのタイミングだったんですか?

谷川さん:

武蔵美で過ごした時間が大きかったですね。武蔵美でやっていたことは、まるで「研究」のようでした。

自分の気の赴くままに作ることはできなくて、アプローチ、構図、表現する手法すべてに「どうしてそれを選んだのか」「なぜそれでなければいけないのか」という理由をつけなくてはいけない。すごく理屈っぽいんです。

それを繰り返していくなかで、少しずつ楽しさに気付いていきました。特に、仕事となるとすべてを言語化できないと相手も納得感を得られないし、何よりクライアントが上に通すときに説明することが難しい。仕事をしていくうえで必要な素養だと思います。

ーーなるほど。実際にデザインの仕事を始めてからはどうでしたか?

谷川さん:

入社してから4年目までって、本当に何もできないんですよ…(笑)。僕もベテランアートディレクターのアシスタントとして、がむしゃらに働いていました。

当時は「なんでこんなに自分の案が通らないんだろう?」と苦しかったですね。そもそも広告なんて作ったこともないし、イチから教えてもらえるわけでもない。とにかく世の中の広告をひたすら観ることで何かを得ようとしていました。

特に、打ち合わせに行くのが嫌でしたね。企画を出して「つまらない」と言われるのが辛くて。まるで素人の芸人がいきなりステージに立たされてネタを披露するような気分でした。

でも、4年が過ぎるころには他のアートディレクターの企画や仕事の様子を見て、「この人はどうやって考えるんだろう?」と考えること自体がやりがいになり、試行錯誤していくうちに仕事が名指しで来るようになりました。

自分ひとりで責任を持って現場で立つことで考える量が圧倒的に増えて、仕事の幅がぐっと広がりましたね。

谷川さん:

博報堂から独立してからは、自分の好きなアニメや漫画など、サブカルチャーにまつわるプロジェクトに携わることが増えました。やっぱり自分の知らないものを作るよりも、自分の好きなものを作ったほうが明らかに自分のテンションは上がりますね。

今は「好きなものが作れる」ことがやりがいです。従来の広告領域だけでなく、カプセルトイやボードゲームを作ったり、舞台や漫画のストーリーを作ったり、オーディション番組を作ったりと、さまざまなことに挑戦しています。

「広告を作る」というよりも、「楽しんでやっていたら、最終的に広告になっていた」というようなアウトプットになることが増えてきましたね。

アイデアの「発想」と「定着」の両輪を回すアートディレクターへ

ーー谷川さんはこれまでに数々のプロジェクトを手掛け、どれも大きな話題となっていますが、ご自身の強みをどう分析していますか?

デザインと企画の両輪を回すことができること。自分が思うアートディレクターの仕事って、実はデザインをすることだけじゃないんです。

博報堂時代、僕が一番最初にいたのはCMを多く制作するチームだったんですけど、企画はコピーライターだけが考えるものではなく、チームにいる全員が出すんですよ。だから、企画を出したり、コンテを書いたり、セリフを書いたりと、できることは何でもやっていました。

その経験があったから、アイデアの「発想」と「定着」の両方ができるようになり、それが自身の強みにもなりました。

今は企画だけを担当することもありますし、ボードゲームを作る仕事ではデザインからルールメイキングまですべて担当することもあります。

ーーデザインに関しては大学でも学ばれていると思うのですが、アイデアはどのように考えていくんですか?

谷川さん:

アイデアというのは基本的には「掛け合わせ」なんです。既存のもの同士を掛け合わせていけば、無限にアイデアは出てくる。だから、僕はアイデアを出すときはとにかく量を出すようにしています。

クリエイティブディレクターの水野学さんもおっしゃっていますが、「センス」というのは知識の集積によって磨かれていくんですね。生まれ持ったセンスというものはないから。

アイデアの発想法にはさまざまなものがあります。たとえば「語呂合わせ」発想法で商品の名前に似ているタレントを起用してみたりだとか。これまで様々な企画にまつわる本を読んできましたが、アイデアの発想法に関してはどれも同じことが書いてあるな、と思います。

「アイデアが出てこない」と悩んだことはなくて、すべて締め切りが解決してくれると信じています。締め切りよりも早くおわることは一切ありません。ギリギリまで考えて、最善のものを出す。その繰り返しです。

「伝統と革新が混ざり合う」FUSIONのロゴに込められた想い

ーーFUSIONのロゴは谷川さんに手掛けていただきましたが、改めてロゴに込めた思いを教えてください。

谷川さん:

前田さんからは「あまり“ベンチャー”っぽくしたくない」というリクエストが最初にありました。ベンチャー企業のロゴは、ネーミング自体が変わっていたり、ロゴが動いたりと、「真新しさ」を全面に出すものも多いなかで、あえて尖らせずに耐久性のあるCIにしたいと。

それをベースにいくつか案を出して、一緒に検証していきました。「.inc」を付けたほうが良いのか、フォントをどうするのか。「FUSION」は文字数が少ないうえに、求められていたこともシンプルだったので難しかったですね。

最終的には、会社の実直さを出すために、あえて文字だけにして、強いボールドなフォントのシンプルなロゴにすることにしました。そして、FUSIONには「伝統と革新が混ざり合う」というコンセプトがあります。だから、よく見ると文字の一つひとつの角が溶けているんですよ。

ーーそんなところにもこだわりが!

谷川さん:

そうなんです。

ロゴの他には、表参道に移転したときに表参道交差点に出した、オフィス移転記念ビジュアル広告のアートディレクションも担当しました。FUSIONが表参道と混ざり合うイメージで会社のロゴと同じフォントの上に、筆記体を重ね合わせています。

そして、FUSIONは移転記念のノベルティにも竹素材とバイオプラスチックを用いた「竹の歯ブラシ」や、ぶどうを丸ごと使用した「瀬戸内スムージュ」を選んでいます。そんな自然を想起させるようなカラーとして、緑と青を選びました。

ーー前田とデザインについて擦り合わせを行うなかで、どんなことがありましたか?

谷川さん:

実は、前田さんとの思い出は…いい意味でなくて…(笑)。というのも、あまりにオリエンがスムーズすぎるからなんです。

特に、FUSIONのロゴについての打ち合わせは本当にスムーズで、表参道のスパイラルカフェで食事をしながら2時間程度でトントン拍子で進んでいきました。特に、前田さんが経営者になってからの決断の早さはピカイチだと感じますね。

谷川さん:

僕は、デザインにおいて複雑なことをいかにシンプルに解決できるか、というのを大事にしているんですよ。

一見クライアントから出されるお題は複雑のように感じますが、解決にしたいことは至ってシンプル。だから、それに対するアンサーとしても、「こういう企画なんです」と一言でシンプルにアウトプットすることを大切にしています。

FUSIONの場合は、最初からシンプルなので仕事が本当にやりやすいですね。

ーーありがとうございます。最後に、FUSIONの好きなところを教えてください。

3つあります。「ワクワク」「期待感」「勢いがある」

今や本当に業界問わずいろんな人が集まってきているのを見ていると、「これからすごいことをやってやるぞ!」という気概を感じます。またぜひご一緒させていただきたいですね。

(取材・執筆=いしかわゆき/撮影=中澤真央)

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