2020年3月9日にたった2人で創業された株式会社FUSION。
創業時に借りていた狭いオフィスのころからエントランスに飾られている絵画は、当時武蔵野美術大学大学院造形研究科修士課程美術専攻油絵コースに在籍していた荒 星輝さんが手掛けたものです。
1995年生まれの26歳。絵画表現の新たな領域を模索しつづけている、今注目の若手アーティストです。
SNSを通じてこの作品の存在を知った前田は、翌日すぐに展示会に赴き、作品を80万円で自費購入。以来、目に入るたびに「頑張ってきたなぁ…」と実感する、いわばFUSIONを象徴するものとして捉えているといいます。
前田と同世代である若手アーティストは、日々どんな思いで作品づくりに取り組んでいるのか。普段はあまり言葉を綴らない彼の内側を探ってみました。
「カジュアルに楽しんでいただきたい。ただそれだけの思いなんです」
ーー荒さんの作品、こちら(オフィスの応接室)に飾らせていただいています。
荒さん:
嬉しいですね。前田さんに購入していただいたのは、シェル美術展2019で入選させていただいた『Face and Lines』という作品です。
前田さんとの最初の出会いはSNS経由でご連絡をいただいたことでした。それまで自分の作品が誰かに買われるという経験がなかったので、嬉しかったですね。いい意味で、作品を制作していく責任感を覚えました。
もちろん、これまでも他人に見られるという意識を持って制作をしていましたが、より引き締めてやっていかなきゃいけないなって。
ーー荒さんの作品はひと目見るだけでもすごく印象に残るな、と感じます。
荒さん:
普段から、多くの人にカジュアルに楽しんでいただけるような、印象に残るビジュアルの作品を制作することを心がけています。
大学では多くの作品が展示されるので、ひとつの作品に対して時間をかけて観ていただくのが、とても希少な行動だったんです。もちろん、大学を出た今もそれは変わっていません。
なるべく一番最初に観てもらって、なるべく印象に残ってもらいたい。観てもらえないと、興味すら持ってもらえないじゃないですか。
ーーまずは知ってもらうことがスタートだと。
荒さん:
承認欲求はあっていいと思うんです。それがなくて作家を続けているというのは、さすがにちょっと本心じゃない。「見てもらいたい」という気持ちは前提としてあります。
自分も人なので、これからいろいろ変わっていくと思うんです。作品を通して、その変化もまた楽しんでいただけたらいいなと思いますね。
自分がやりたいことに対する自信は、個人感でおわってもいい
ーー荒さんは、もともと「作品を誰かに見てもらいたい」という思いが強かったんですか?
荒さん:
そういう思いが芽生えたのは大学在学中ですね。
そもそも本格的に筆を取ったのは大学からなんです。それまでは本当に人並み程度にしか絵を描いていませんでした。特にガッツリ練習もしていませんでしたし、人にもあまり見せたことがなくて。
美術の授業は好きだったので真面目に授業を受けてはいましたが、なにかの表紙を手掛けたり、コンクールで選ばれたりと言った経験はないです。
ーーえっ、そうなんですか? そんな荒さんが進路で美大を選んだ理由って…
荒さん:
「やってみたい」。その気持ちが強かったです。
もともと特に夢は抱いていなかったんですけど、「やりたいことをやって生きたい」とは思っていました。ただ、受験しているときはそれも漠然としたものでしたね。
荒さん:
どちらかというと、最初はデザインコースに進む体で大学に入ったんです。現実的な目線として、最終的には仕事にしなければならないじゃないですか。両親がお金を出してくれている以上、そこには誠実さがないといけないと感じていました。
でも、いざ横浜美術大学の説明会を受けたとき、絵画コースで紹介されていた作品を何点か見て、すごく惹かれて。「やっぱり絵画をやってみよう」とコースを変更することにしました。
友だちはびっくりしていましたね。自分の環境のなかだと、まわりにそういう人がいなかったので、いわゆる「変な人」だったかもしれません。でも、両親はすごく賛成してくれて、応援してくれました。
ーー大学に入るまで、絵を誰にも見せなかったのはどうしてなんですか?
荒さん:
単純に人に見せるような出来栄えじゃないと感じていました。自分が思う、自分のなかのクオリティ的な問題だと思います。当時はまわりに絵を書くような友だちもいなかったですし、恥ずかしいという気持ちもありました。
今でも人前で絵を描くこと自体には抵抗はあります。でも、大学に入って人に観ていただく機会も増えたことで、徐々に慣れていきました。現在の自分が発表している作品に関しては、自分も納得して発表させていただいています。
ーー未経験から美大に入り、昔から絵を描いてきた人たちと並んで描く。並大抵のことではないと思います。挫折などはありませんでしたか?
荒さん:
挫折…というか最初からヘタでしたし、今でも未熟だと思っています。それでも好きだから続けている、という感じですね。
でも、小さいときから「個人感で持ってる自信」はありました。自分がやりたいことに対する自信や過信は、個人感でおわってもいいと思うんですよ。
それは、別に他人に披露するような自信じゃないけど、そういう気持ちはあって然るべきだと思います。自分自身のなかで完結してるので、そこには明確な根拠が必要ないんです。
ーーその自信は、アーティストに限らず、すべての人に必要な自信かもしれないですね。自信を失わないために意識していることはありますか?
荒さん:
絵を描くこと以外にも、性格、ルックスなど、何でも比較しちゃうじゃないですか。でも、そうやってまわりの人を気にしすぎると、辛い目に遭ったりするので、ポジティブでいつづけるために見ないようにしています。
どちらかというと比較してしまうタイプなので。できているかはわからないけど、そうありたいと思っています。
自分の口から説明をすることで、変わってしまうものがある
ーー改めて、『Face and Lines』はどのような思いで制作されたんですか?
荒さん:
それは、すごく難しいですね。なんて言ったらいいんだろう。
荒さん:
特筆して何の意味も込めてないというか。一つひとつの作品に対して、特別なテーマやコンセプトがあるわけではないんです。
自分の口で説明することが大切なことだとはわかってるんですけど、言語化すること自体が、自分の目指してるものから外れていくと感じるんです。
いろんな人に楽しんでいただきたいと思ったとき、どの発言もメタ的な発言になってしまう。これ以上のことを話してしまうと、自分の伝わってほしいニュアンスと変わってきてしまうんですね。
もちろん、作品に込められた思いや背景を作家さんが語ることに関しては、いろんな考えかたがあっていいと思うんですよ。あくまで自分がこのスタイルなだけです。
誰しもに自分の作品をカジュアルに楽しんでいただくためには、これでいいんじゃないかな、と。
だから、想像を委ねようとすら思っていないです。
ーー言語化することで、荒さんが目指す「作品をカジュアルに楽しんでほしい」というのがブレてしまう。それは無理に言語化することじゃないし、今おっしゃっていただいたことがすべてだと感じます。最後に、今後の展望だけお聞きしても良いですか?
荒さん:
どうなっていきたい、というよりかは、制作を続けていくのが、自分のなかでは目標です。現実的に、これからも描きつづけていきたい。そんな気持ちです。
(取材・執筆=いしかわゆき/撮影=中澤真央)
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