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【アニメCGスタジオのお仕事 No.2】コンポジット編①

サブリメイションの作品において最も見た目に影響する部署である、コンポジター。今回はそんなコンポジターとして活躍されている3人にお話を伺います。

自己紹介、本田さんからお願いします。

本田:「ラブライブ!」シリーズのコンポジットの作業のリーダーと、背景のモデリングなどもさせていただいてます、本田です。

サブリメイションでの経歴はどんな感じでしょうか?

本田:一番最初はアニメのモデリングですね。それから遊技機系が多くて、リアル系の実写合成をやっていました。そのあと3Dレイアウトの手伝いなどをしていたら黒﨑さんに誘われて、「ゴッドイーター」と「ラブライブ!」に参加しています。それまでは、ほとんどがひとりプロジェクトでしたね。

当時は小さいプロジェクトが多かったですからね。「ラブライブ!」は2期からですか?

本田:いや、「サンシャイン!!」にモデラーとしての参加からです。ところが、気づいたらコンポジットという仕事が生まれてまして。

当時はサブリメイション社内では”一発出し”でやってたセルシェーディングが多かったので、このあたりから素材分けしてコンポジットすることが主流になってきたという感じですよね。

本田:そうですね。

次に大石さんの自己紹介をお願いします。

大石:Netflixシリーズ「鬼武者」(※9/25のTUDUM内で発表)ルック・レンダー班の大石です。最初は大学生の頃にアルバイトとしてProduction I.Gの中のフリーランスのCGチームにいました。

須貝さん塚本さんも所属していて、攻殻機動隊S.A.Cシリーズなどをやっていたチームですね。

大石:そうですね。もう、塚本さんにバリバリにしごいていただいて(笑)。その時に一番最初にやったタイトルが「東のエデン」ですね。そして、大学卒業とともによそに行きました。実写系に強い会社のエフェクト班としてしばらく働いてから、サブリメイションに戻ってきて「ゴッドイーター」からですかね、付き合いは。

なるほど!

大石:このころのサブリメイションがスペシャリスト寄りで各スタッフの専門性が高くなったくらいの時期だったのもあり、ゼネラリストである自分が人の足りない所にぎゅっと突っ込まれるという流れでした。

エフェクトもやってきたという経験もあって、コンポジターに?

大石:「魔法使いの嫁」もエフェクト寄りでの参加で、コンポジットに強く入れ込んでいましたし、そのあとの「PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System」ではルック開発、つまり今やっているようなキャラクターのコンポジットみたいな方向性のことをやり始めました。

その流れで「ドラゴンズドグマ」ですか?

大石:いやー、「ドラゴンズドグマ」の前に「ラブライブ!」も行ってるんですよ。ヘルプでいろんなところ行ってて。「ドラゴンズドグマ」終わってから、また「ラブライブ!」いって、今は「鬼武者」です。

技術があるがゆえに、重宝されているという感じでしょうか。

大石:ゼネラリストゆえに空きにちょうど収まる形になりますからね。ひとつのプロジェクトに最初から最後までというよりは、必要に応じて突っ込まれる感じですね。今の「鬼武者」はカット作業が始まるちょっと前からの参加です。

では最後に、長嶋さんお願いします。

長嶋:はい、「アイドルマスター SideM GROWING STARS(サイスタ)」の背景メインにコンポジットをやってます、長嶋です。

コンポジターとしての経験は3人の中では一番浅いですよね。

長嶋:一番浅いですね。サブリメイションでの経歴は、最初は遊技機でアニメーターかな。並行して「攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE」を2カットお手伝いさせてもらって、もう1つ遊技機をやり、次に「ジョーカー・ゲーム」でアニメーター、「ファントム オブ キル -Zeroからの反逆-」では3Dレイアウトもやりました。そのあとに「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」、「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」、そして「サイスタ」ですね。合間に遊技機系もちょっとやっています。

基本的にはアニメーターなんですね。本格的にAfterEffectsを使用するコンポジットは「宇宙戦艦ヤマト2202 愛の戦士たち」からですか?

長嶋:そうですね。その経験もあるので、「やれそうだ」ということで「サイスタ」の仕事を任されたという感じですかね。

自己紹介も終わったところで、コンポジットとはどういうお仕事でしょうか、というのをお聞きしたいと思います!

本田:普段3Ⅾの仕事を説明するときは人形劇を例えとして使うのだけど、それだとコンポジットの話をすごい入れづらくて。ライティングとかそういった話の方が分かりやすいのかもしれない。

ライティングもコンポジターの仕事ですか?

本田:そうなることが多いかな。ただ、それも3人の中(長嶋・本田・大石)で大きく違っていて。こっち(本田、長嶋)は背景からの派生で場面を作っていく側、だけどこっち(大石)は撮影さんに渡すためのキャラクターのセルを固める側です。

大石:成り立ちが違って、こちらはアニメーターの延長線上で。

本田:こっち(本田・長嶋)はその後の素材をもらう側なんです。

一概にコンポジターといっても幅広いですね。一緒に呼んでしまったけど分けた方がよかったですかね…?

本田:いや、でもそんなもんだと思いますよ。

大石:会社やプロジェクトによって仕事の内容や立ち位置がだいぶ違いますし、やっぱり作品によって何を作りたいかというのもありますからね。

本田:メインで使うツールがAfterEffectsというのは一緒だけど、それがどこにハマるのかというのが違ってきたりしますね。

作業内容としては3ⅮCGツールからレンダリングした様々な素材を合成していくという解釈でしょうか?

本田:そうそう、素材。それらを合わせて馴染ませたりとか、必要なエフェクトを加えたりとかしていくお仕事ですね。

大石:料理でいうなら、食材を用意するのがモデラー、いい感じに切るのがアニメーター、我々はそれらを鍋で煮込む役目で、そして盛り付けは撮影さんですね。我々は鍋に素材をガッと入れて味をちょっと整えてというのがイメージしやすいかも。「一つにまとめる」っていうのが基本ですね。

なるほど。少し整理させていただくと、アニメーターが作ったものを大石さんが素材分けをして出力、背景は本田さんや長嶋さんが素材を分けたりどこを光らせるかなど決めたりして、合成する、ということですね。素材の数って、キャラクターとか背景とか様々にあると思うんですけど、何種類出すのでしょうか?

本田:正直どんどん複雑化して増えてきてしまっているので…。今のアイドル系だと、ベースが各種マスクとカラーとラインの5種類。そこに透け素材がある、発光素材があるとなると、透け素材の線が必要だとかで素材が増えていって、5をミニマムとして大体ベースから2、3増えていくっていう状態かな。

大体5〜10種類くらいという感じでしょうか?

本田:たまに超えることもあるけど、10種類はさすがに行かないと思う。それでも、複数人分あったりするので…。

人数分、別々に出力するということですね。

本田:3Ⅾに来るカットは画面内に1キャラしかいないということはほぼないんです。あとは背景の素材がどんなに少なくても10種類を切ることがなくて。

背景の方が1キャラクターより素材が多いのですか?

本田:構造的に空などレイヤー分けがあったり、発光マスクやカラコレ用マスクもついてくるし。樹木だったらディティールをちょっと追加するためのグラデーションマスクとか…。あとはモニターのマスクとか…、20超えるかな。

!?かなりヘビーですね!

本田:さらに降ってくるパーティクルみたいなものが追加されてくるので、やはり20超えちゃうっていうのは結構あるかな。で、特殊カットの追加レイヤーとかあるとさらに増えちゃう…という感じですね。

ちなみにサブリメイションの最新作、現在制作中の「鬼武者」ではキャラクターはどれくらいの素材数ですか?

大石:キャラクターは一体につき10種類前後になりますね。これでもいらないものを削っていった結果で、このくらいないとクオリティの高いものは作れないですね。

本田:量産性との兼ね合いだよね、最後は。

長嶋:悩ましい(笑)。

お仕事だから使える時間が限られるという問題もありますね。

大石:レンダリングするために1枚(1コマ)に対して何分使えるかっていうところで計算してて、終わるまで4、5分とかになっちゃうとダメなんで。

PCの性能が上がっても?

大石:PCの性能が上がった分だけ同じくらいの時間になるように詰めてくので、早くなるのではなく今まで通りです。

本田:やれることが増えてクオリティは上がる。

長嶋:でも作業時間自体は短くならない(笑)。

サブリメイションの業務の中では最もPCのスペックを要求される職ですね。

大石:そうですね。コンポジットやシミュレーション、エフェクトあたりが一番必要ですね。AfterEffectsはメモリをかなり食うので、1枚で64GB使用するときも。

もっとメモリ積んだPC買わないと足りないですかね(笑)。

本田:後工程だから、どうしても前工程よりスペックが良くないと。ボールが受け止められない。

大石:コンポジターだけPCスペック上げ過ぎると、今度は他部署からヘルプに入れなくなっちゃうんだけどね。

「鬼武者」みたいなアクションと、アイドルモノとでは見せたい画が全然違いますよね。コンポジターとして画を作るにあたって気を付けていることってありますか?

本田:えっと、一番はエラーがないこと。

それはジャンル関係なく、すべての作品ですね(笑)。

本田:次は監督とか演出のプロファイリングだね。

うーん、コンポジターに限らずどんな職でもみなさん言うくらい、そこは大事なんですね。

本田:色周りとかは自分でも言語化できない人が多いですからね。テイクを重ねながらその人のブラックやホワイトの許容値がどれくらいか、どういった彩度が好みかを観察します。特にブラックは人によってかなり意見が変わるから、どこまで大丈夫かとかですね。

赤味とかも結構気にする人いますよね。

本田:そうですね。キャラに対して色が被った時に「リアルだったらこうなるよね」って人と、「いや、画としてこれだと可愛くならない」っていう人に分かれますね。

監督たちが作りたい画を作るにはコミュニケーションも大事になってくるのですね。

本田:何気ない雑談とか、とても大事(笑)。

そういうところからヒントを得ることもあると。

本田:その監督が好きそうな作品であるとか、監督が自身の過去作の中で気に入ってるのはどれかというのはある程度知っていないと、ゴールに対するアプローチの仕方が変わってきますね。

作品を通して見ると後半になるにつれてクオリティが上がっていくのは、やはりコミュニケーションが取れてくるからですか?

本田:この辺がストライクゾーンだろうな、みたいな感覚の精度はどんどん上がってくし、その分特殊なことに回す余裕がちょっと出てきたりします。直接好みを聞いても、自分と他の人との違いを認識している人ってそんなにいないと思うので、何気ない会話などから情報を集めることが必要ですね。

ちなみにそのストライクゾーンに上手くハマったときはどんな感じでしょうか?

長嶋:「ラッキー!」くらい(笑)。

大石:自分のセンスが認められたのかな、みたいな。自分の作りたいと思うものを作った上でそれがOKもらえた時は「よっしゃ!」、「当ててやった!」みたいな所はありますね。

本田:これは人によって違うと思う。

大石:言われた通りのものを作った、って人もいれば、自分の表現したいものを表現してOKを取りにいったみたいな人もいますね。

本田:正直色々やるし、勝手にやったりとか提案することもあるけど、最終的に放送されてその時の評判が流れた時に「あ、大丈夫だった」って思うかな(笑)。普通に「この子可愛かった」みたいなスクショがあったりする中に、たまーにそういった所を褒めてくれるコメントがあると嬉しいよね。

長嶋:コメントで1個あると「うれしっ」って。

最近はSNSで簡単に感想とか見れますもんね。

本田:ここは上手く行ったんじゃないか、みたいなところがスクショ上がってたりすると安心する。落ちサビとかが少し長尺のときだと、コンポジターが背景やエフェクトでキャラクターより前に出るべき瞬間っていうのはもちろんあるんだけど、基本はやっぱり一番前に出るべき存在ではないので。個人的にはRPGでいう僧侶だと思ってます。

支援役?

本田:そうそう、あくまでバフをかける仕事なので。正面で殴り合うべきではない(笑)。

例えで出てきた料理と僧侶はしっくりくると感じましたが、なかなか説明が難しいですね。

大石:抽象的というか、よその会社のコンポジターに「今影付けとかテクスチャーで描いてます!」って言ってもおそらくPhotoshopで描いてると思われるんですよ。AftrerEffects上で描いてるんで実は全然違うんですが、これを理解してもらうのが大変!「こういうツールがあって、これをしてこうするとこういうことができて、それを今やってます」っていうことを言わないと、同じコンポジターと言っても同業者にすら全然通じない(笑)!

本田:自分はインターンもいれてサブリメイションが4社目だけど、同じような見た目でもワークフローが全く違うというのはザラにあって。ある意味、臨機応変を求められるから、ゼネラリストからコンポジターにくる人が一番多いと思う。

大石:結局必要になった素材が足りなかった時に自分で作る、かつ全部の工程を理解してないと前工程に対してのアプローチができなかったりして。

本田:ちょっとこういう追加素材お願いできる?とか。

大石:逆に分かってるからこそそういうオーダーができるので…。そういう意味で総合的な知識が必要かな。

AfterEffectsの知識も必要だけど前工程で使ってる3ⅮCGツールの知識も必要ということですね。

大石:このやり方ならこの素材が出せるとか、やっぱりあるので。

本田:コンポジターは特に締切に対して割とシビアな位置にいることが多いから段取り込みで提案するので、やりたいことをやるためには何が必要か判断できないと。あと正攻法で行くとそもそも間に合わない場合もある(笑)!

それこそ先程話していた1枚に何分かけられるかという部分ですかね?

大石:そうですね、コスト感も考えはかなり強く出る部署だとは思いますね。やはりどんどんどんどん重くなっていっちゃうので…。素材としても出すのが時間かかるし、それをくっつけて書き出すのもまた時間かかるんで、やっぱり1枚を出すのに何分かかるのか、30秒ならじゃあ10枚出したら300秒だ、みたいな。そういう感じで計算していますね。

本田:レンダリングもそうだし、各素材を組み合わせるパズルを組み直すのに1カットにどれくらいかけていいのかみたいなのがあるんで。組んでみないと分からない、みたいな時は結構ドキドキする(笑)!

大石:そして、レンダリング始めるとすんごい時間かかる(笑)。

ある作品の1キャラクター分のベースコンポを開いているAfterEffects作業画面>

長くなってしまったので①はここまでとなります!②ではコンポジターを目指す上で気を付けた方がいいことや、やりがいなどを中心にお話を伺いました。

お楽しみに!

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