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航空業界の運航のレジリエンス向上を通じてCO2排出量を減らす―世界初の航空業界向けSaaS開発に挑戦しているエンジニアのよもやま話

今や世界中の共通目標となりつつある「脱炭素社会」。電気自動車や新素材の開発など、様々な取り組みで二酸化炭素の排出量削減が推進される中、私たちNABLA Mobilityが手掛けるのはMobilityの運航における対応力(レジリエンス)を高めることを通じての脱炭素社会。中でも、とりわけ難易度が最も高いと言われる航空業界の、運航面からの変革を手掛けています。

飛行機は時速850kmで空を飛び続けます。当然、あの巨大な機体を空に浮かべるには大量のエネルギーを消費しなければならず、少しの運航の非効率が大きな無駄を生む構造になっています。弊社ではAI/ML等のテクノロジーを駆使することで人では判断できない複雑な情報を処理し、航空会社が不確実な運航環境により適切に対応できるようにすることで運航のレジリエンスを高める運航ソリューションを提供しています。航空会社がより運航のレジリエンスを高めることで、運航オペレーションの非効率を排除し、より効率的でより環境に優しい世界を実現することに繋がっていくのです。

今回はエンジニア採用にあたり、創業期から弊社の開発を牽引するボードメンバーの平本にインタビュー。どのようにして飛行機の運航を効率化しているのか、どのような技術が求められているのか。エンジニアとして働く面白さについて聞きました。

創業前から代表の頼れる相談相手に


―まずは平本さんの経歴を聞かせてください。

私は新卒でNECに入社し、電子回路設計を効率化するための設計ツールの研究開発をしていました。5年ほど働いた後に、今度はモルフォという画像処理を専門とした会社に転職し、当初はハードウェアIPの開発もしていたのですが、最終的にはスマートフォンのカメラの画質改善等を行うソフトウェアの開発に専念していました。

NABLA Mobilityの代表の田中は私の大学の後輩で、画像処理の会社にいた時から起業の壁打ちを頼まれていました。最初は一緒に働くつもりはなかったのですが、壁打ちをしているうちに田中から「一緒に起業してください」と言われ、私自身も事業に魅力を感じ、いつの間にか共同創業する流れになっていました。

ただ、起業する1年前ぐらいから前職で新しいプロジェクトの責任者もしていたので、すぐ辞めることはできませんでした。従って、創業前~創業当初はは業務委託という形でまず関わりながら、前職のプロジェクトが一区切りついた2022年初めになって正式にジョインしました。


―なぜ航空業界向けのサービスを作ることになったのでしょうか?

代表の田中は航空好きでした。IHIやBCGを経ながらもいつかは航空に戻りたい・航空をより良くしていきたいという想いがあって、起業する2年前から私に相談に来ていました。彼は航空業の経験はなかったものの、持ち前の戦略コンサルの経験や研究経験を活かして、ビジネスを組み立てており、私は「技術的な実現性についてどう思いますか?」という点を中心に相談を受けたことが始まりです。

その後も、航空業界のどういうペインをどういう事業で解決するのか?それは技術的に実現可能なのか?そして何より、長期的に大きなインパクトを継続的にに残し得るか?というポイントについてディスカッションし続けてきました。その中で、自然と顧客のペインが最も大きく、かつ、技術的な広がりも大きい、運航にフォーカスした事業が出来上がっていった感じですね。


航空機の運航のレジリエンス向上をサポートするSaaSを開発


―現在はどのようなサービスを開発しているのか教えてください

私たちのサービスの根底にあるのは、航空業の、ひいてはMobility全体の二酸化炭素の排出量を減らしたいという想いです。そのソリューションとして開発しているのが、航空会社が自社の運航のレジリエンスをより高められる運航SaaSです。

あの巨大な飛行機を空中に浮かべる為には相当なエネルギーが必要です。その為、航空業界が使う燃料量は他のMobilityと比較しても相当多く、航空業界の使用燃料を減らす取り組みは昔から多岐に渡って検討されてきました。例えば、水素を使う新しいエンジンや電動航空機、持続可能な航空燃料(SAF)の開発等ですね。しかし、それらの開発から実装までには多大なる時間とと巨額の資金がかかり、社会が要請するようなスピードにはとてもじゃないですが間に合いません。じゃあ、社会の要請するスピードに合わせて脱炭素化をより迅速に進めるためにはどうすべきか?、という現実的な問いに対して、私たちが目をつけたのが運航のレジリエンスを高めることをサポートするサービスです。


―どのように運航のレジリエンスを高め、効率を減らすのでし非ょうか?

飛行機を飛ばすことって、実はなかなか計画通りに行かないものです。現に、天気予報通りに風は吹きませんし、予測と違うところで乱気流も発生し足りします。そういう想定外の気象条件等に出会った時、飛行機は進むルートを変えるなどして対応しております。しかし、どういうルートに変えたら本当に最短時間かつ最小燃料で目的地まで行けるのか?という点は実は空中で正確に計算することが難しいので、非効率が生じやすいのです。

私たちは、飛行機が計画したルートから外れる際に、効率的な運航ができるルートと飛び方のオプションを、様々なモデルや予測を使って計算して提供しています。例えば、高度をXフィート下げ、速度をYノット下げると燃料はZリットル・時間はT分節約できる飛び方がありますよ、と勧めてあげる、といった感じですね。


―他にどのように無駄を省いているのか教えてください。

先ほど申しました天候に加え、交通流も非常に重要な要素です。例えば、到着空港が非常に混んでいて滑走路が混雑している場合は、管制官から安全上の理由で真っ直ぐに着陸させてもらえず、空を飛びながらタイミングを調整することがあります(“ベクタリング”)。そういう時、渋滞ができるって先にわかっていれば、敢えてゆっくり飛ぶことで無駄な燃料消費を抑えるような運航オプションを提供することも方法の一つです。


「二酸化炭素排出量を削減したい」「Mobilityの進化を後押ししたい」に共感し、様々なバックボーンを持つエンジニアが集う


―会社の魅力や強みについても聞かせてください。

一つは、国内外の航空会社や大学等、様々ステークホルダーと幅広く関わりながらプロダクトを作っていくというところです。これは代表の田中のすごいところでもあるのですが、様々なステークホルダーと非常に良好な関係を築きながら、関係者皆にとって価値あることを追求し続ける姿勢があります。私たちのようなサービスを思いついたとしても、その実現のためには航空会社や大学、監督官庁等様々なステークホルダーとのやり取りと協力が得られなければ実現はできません。そういった意味で、航空会社やアカデミック、航空の専門家等様々なステークホルダーを巻き込んで座組を作っていく構想力と巻き込み力、実行力は弊社の大きな強みです。

普通なら信用も実績少ない創業期のスタートアップが、航空業という巨大な産業の中で協業を進めることは並大抵のことではありません。しかし、今まで本当に魅力的でかつ同じく理想を描いているようなパートナーの方々に恵まれてきたことは、本当に幸運でした。代表の田中の巻き込む力や人としての魅力は会社の強みに直結していると思います。

もう一つビジネスの魅力を挙げるなら、対面する市場の大きさです。航空会社をお客さんにする以上、私たちのビジネスは全世界が対象です。まだこのサービス領域は世界的にも黎明期で、スタンダートになっているサービスもないのです。私たちが市場を作れば、世界でこの流れを主導できる可能性は十分にあります。新しい市場でいち早くポジションを構築して市場を作っていけることが、私たちの魅力であり強みだと思います。

―現在、エンジニアを積極採用中ですが、どのような開発をするのか教えてください。

私たちのサービスはSaaSかつ本当に複雑な環境と人を対象にするので、ユーザーが使いやすいUI/UXを設計したり、バックエンドで運航履歴や天候などに関するデータベースを設計するなど多岐にわたります。中でも特に大切なのが以下の二つです。

まずは、機械学習や最適化アルゴリズムです。私は数理最適化というものを主に扱っていて、他にも物理学的な気象や航空機モデルの設計等に取り組んでいる仲間がいます。例えば乱流を予測する場合も、乱流の規模によって生じる影響は機体ごとに違います。大きな機体であれば影響は少ないですし、小さくなるほど影響も大きくなるのです。

機体のサイズによって環境の影響を受ける度合いも変わるため、提示する最適な提案も変えなければいけません。そのため、一つずつデータを集めて、様々な機体に対応できるよう開発を進めています。航空というグローバルで巨大な市場をターゲットとしながらも、非常にきめ細かなカスタマイズが必要であるという特徴があります。

二つ目は、今後顧客にプロダクトを提供する為に、アルゴリズムを活用してプロダクトを形にしていくエンジニアリングです。特に、航空会社のパイロットやディスパッチャーは非常に忙しくかつ大きなプレッシャーの下で仕事をしているので、いかにストレスレスにサービスを提供するか?というポイントは、実は非常に大切です。

例えば、彼らは既にたくさんのアプリケーションを使っていてとても複雑な業務環境に直面しています。こういう環境下で、ただ新しいアプリケーションを追加させて下さい!というだけでは全く使われない可能性が高いです。従って、いかに他のアプリケーションとスムーズに連動させるのか?などといった、実際に使ってもらう為のエンジニアリングの余地がとても大きいというのも特徴ですね。




―どのようなエンジニアが活躍しているのでしょうか。

今は幅広いエンジニアの方たちが在籍しています。私のようにメーカー出身のエンジニアもいれば、研究を中心に行ってきた方もいて、非常に多様性に富んでいます。先程も言ったように、Webサービスを作るだけでなく、物理学的なモデルや数理的なアルゴリズムも作らなければいけないので、幅広い人と技術、視点が必要なんですよね。

二酸化炭素排出量を削減したい、Mobilityの進化を後押ししたいという想いに共感してくれるエンジニアなら、幅広く活躍できる場面があると思うので、ぜひ興味を持ってほしいと思います。逆に様々なバックボーンを持っているエンジニアが集まっているからこそ、刺激をもらえる環境だと思います。

―具体的にどんなバックボーンの方がいるのか聞かせてください。

航空宇宙というど真ん中のテーマの人もいますが、必ずしもそれに限りません。例えば前職で水産系のIoTをしていた方だったり、大学で教員研究として気象の研究をしている人だったり、ブロックチェーン・フィンテックのバックグラウンドの人もいます。他にも提携している大学の研究室の学生がインターンをしてくれたり、同じ大学のOBで機械学習に強い研究室の方がアドバイザーのように関わってくれたりと、本当に様々なバックグラウンドの人が関わってくれています。そしてチーム・会社には日本のみならずアメリカ、ヨーロッパ、アジアの国籍のメンバーがおり、非常に多国籍なチームになっているのも特徴です。


―エンジニアを幅広く募集していると思うのですが、特にニーズの強い領域はありますか?

現在はプロダクトとしてしっかり形にしたいフェーズなので、SaaS作りに強いエンジニアが欲しいですね。とはいえ、私たちは組織も小さいので、フロントエンドやバックエンド、R&Dとチームが明確に分かれているわけではありませんし、ロールも有機的に変わり続けると思います。

こういう流動的な環境において、自分の強みを活かしながら、会社に必要な部分を自分で考えて補ってくれる方であれば、そしてそれを楽しめる方であれば、どのポジションでも嬉しいです。


―どのような理由でジョインする方が多いのかも教えて下さい。

二酸化炭素排出量を減らすことで、社会に貢献できることに惹かれる方は多いですね。他には、私のように大きな業界の負を解決することに興味を持つ方も少なくありません。

多くの人が飛行機に乗ったことがあると思うのですが、その裏側には今でも多くの非効率が残っているんです。それを自分の力で効率化し、課題を解決できるのはエンジニアにとって大きなやりがいになるのではないでしょうか。


―働き方でも工夫していることはありますか?

私や田中を含めたボードメンバーがみんな子どもがいることもあって、ワークライフバランスにはとても気を使っています。ビジョンの達成のために本気で働いていますが、同時に家族やプライベートの生活があってこそ、仕事のパフォーマンスも最大化できると思っており、生活や健康を犠牲にして働くということはありません。

集中する時は集中して、家族や自分の生活も大事にする。それをボードメンバーが率先して行っているので、メンバーにもそのように働いてもらっています。創業期のスタートアップにおいては往々にしてそのバランスを取ることが難しくなりがちでありますが、それでもこの働き方を続けるスタートアップでもちゃんと成功できることを示すということは、私たちの目標の一つのでもあるんです。

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