台湾、アメリカ、カナダ、香港など多くのホームグラウンドを持ちながら、2017年、日本に移住。高価格帯の長期滞在型ホテル、Section Lを2020年から立ち上げているハワード・ホー代表取締役に聞きました。
ーまずSection Lの創業のきっかけを教えてください
2020年、私と知人の4人が日本で立ち上げた会社です。創業者チームの特徴としては、ホスピタリティのエキスパートが集まっているということ。私同様、アメリカの大学でホテルマネジメントを専攻したり、世界の名門ラグジュアリーホテルの運営や開発の経験を積んできたり、また不動産や金融業界に精通していたり。そんな4人が集まりました。
訪日旅行時の滞在日数が長期化していることから、フォーカスしたのは、日本ではまだ少ない高価格帯の長期滞在型宿泊施設です。2020年にSection L Ginza Eastを開業したのを始まりに、上野、築地、蔵前、など9ホテルをオープンさせ、23年末までに延べ宿泊者数は10万人を越えました。
ー高価格帯&長期滞在向けという形態のホテルを選んだのはなぜですか?
世界的にも観光客の滞在日数の長期化がトレンドになっていて、同時に長期滞在型の宿泊施設が非常に盛り上がっているという背景がありました。観光庁の調査によると、2023年の訪日客の平均宿泊日数は10泊(東京では6泊)を記録しています。しかし日本では長期滞在というと、民泊やウィークリーマンションなど、リーズナブルですが、サービスの質は未知数です。
一方、高価格帯のラグジュアリーホテルでの長期滞在も快適そうに見えますが、期間が長くなればなるほどゲストにはさまざまな不満が出てくる。例えば外食が続いたり、何より自宅やオフィスのように、気兼ねなく仕事ができる環境ではないことがほとんどです。
不動産投資家の目線で見ても、ホテルは本来、利回りが高い魅力的な投資先であるはずが、人手不足などのマイナス要因に足を引っ張られて、よっぽど強い戦略がないとなかなか投資に踏み切れない微妙な対象になりつつあります。
そうした課題を解決すべく、世界ではホテルライクな長期滞在の施設が増えています。一方で、日本では民泊とラグジュアリーホテルとの中間に位置する長期滞在のためのホテルは、これまでほとんど参入がないというのが実態でした。世界から人気の旅行先ナンバーワンとして盛り上がっている日本を舞台に決めただけに、そうした空白地帯にポジションを取っていこうと生まれたのがSection Lです。
ーホテルの詳しい特徴は?
Section Lの由来は、「街のコミュニティの一部」といった意味を込めています。全部屋にキッチンや洗濯機も備えており、仕事をする環境も充実しているほか、各ホテルごとに週一回、フリーのカクテルなどをゲストに振る舞うハッピーアワーというイベントをおこなって、好評をいただいています。
これはゲスト同士の情報交換の場になるのはもちろん、ゲストとスタッフが話す絶好の機会にも。ほかに専用アプリなど、オンライン、オフラインでのボーダーレスコミュニティができやすくする仕組みも用意しています。こうしてサービスの質はホテルライクである一方、自宅にいるようなホームライクな快適さがあるのも、Section Lの特徴となっています。
ーコミュニティ機能の重要性とは?
私自身も、台湾、アメリカ、カナダ、香港など、世界中に”故郷”を持っています。そのため、ホームがどこなのか、ひと言ではいえない経歴です。2017年からは不動産とホテルのビジネスをスタートするために日本に来ましたが、最初は日本での知り合いがそれほど多くなかったため、とにかく話ができる人を探しました。そうして生まれたボーダーレスなコミュニケーションに大いに助けられてきたのです。
現在スタッフも22か国から来ていて、さまざまなバックグラウンドを持っています。また世界中からやってくるSection Lのお客様にも、自分が自分らしくいられるホームのような場所を提供してもてなしたい。そんな思いから、ハッピーアワーなどのイベントが生まれました。
ゲストがバーテンダー役になって、他のゲストと東京でのできごとを話し合ったりする場面というのが、Section Lでは毎週のように起きています。こうした柔軟性も、私たちの取り組みの特徴です。
ースタッフに求めるものを教えてください
これまでの宿泊者の国籍も96カ国と、非常に多様なゲストに使っていただいているだけに、スタッフの出身も現在22カ国と、多種なチームメイトを抱えています。スタッフ数も現在60人にまでなっていて、全員がSection Lらしさのあるスタッフとして行動してもらうためには、何かしらの指針が必要になってきました。
1つ目はどんな仕事にも責任感とオーナーシップを持つこと。2つ目はグロースマインドセット、つまり成長意欲のある方をスタッフとして歓迎します。3つ目はポジティブな影響を生む志。世界中から東京に集まってきたスタッフやゲストの方々たちと、Section Lはポジティブな「街の一部」になることを目指しています。