LLMの次は「Embodied AI(身体性)」
燈が描く、Embodied AIとロボット産業の未来
燈はこれまで、「日本を照らす燈となる」という使命のもと、AIを中心とした最先端のテクノロジーを活用し、建設業や製造業を中心に日本の基幹産業のDXを推進してきました。
産業特化型LLMや、建設AIなどで知られる燈が今、新たなフロンティアとして「Embodied AI(身体性AI)」の開発に参入しています。
なぜ今、ソフトウェアからハードウェアを含むロボティクス領域へ進出するのか?
日本のものづくり産業が持つ「暗黙知」をいかにしてAIに実装するのか?
最前線で開発をリードする石本さん・丸尾さんに、その技術戦略とエンジニアにとっての魅力を伺いました。
目次
LLMの次は「Embodied AI(身体性)」
燈が描く、Embodied AIとロボット産業の未来
1. Embodied AIの定義:
従来のロボットを超越する「身体性」と「柔軟性」
2. 燈の戦略:
日本の「ものづくり」の優位性を活かす
3. 技術基盤:
自社製シミュレータとデータ収集
4. 独自のアセット:
高速プロトタイピングとVLAモデルの開発
5. ロボット技術のロードマップ:
3年後の自立生産、10年後の文化輸出
6. ポジショニングと求める人材:
能力を最大限に発揮し、価値を提供したいと思っている方
7. 募集のご案内
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【プロフィール】
右:丸尾 恭四郎(Kyoshiro Maruo)
DX Solution事業本部. VPoE 東京大学大学院修士課程卒。研究内容は機械学習の最適化に関する理論研究。
前職はエムスリー株式会社にてAI・機械学習チームでデータ基盤・検索基盤の構築、サイトの改善の分析・企画に従事した。
燈には2022年10月に入社し、画像分類モデルの学習プロジェクトなどの機械学習プロジェクトのリードを経て、現在エンジニアのマネジメントに従事している。
左:石本幸暉(Koki Ishimoto)
DX Solution事業本部. DXConsultant
東京大学大学院修士課程卒。研究内容はヒューマンロボットインタラクションに関するアプリケーション研究。
燈には2023年4月に入社。(2022年8月より業務委託)
World Robot Summitの家庭内お片付けAIのロボットコンテストにて世界2位の実績を持つ。
チームリーダーを務め、お客様との商談や、主にロボット系プロジェクトの進行に従事している。
1. Embodied AIの定義:
従来のロボットを超越する「身体性」と「柔軟性」
── 燈ではEmbodied AIを開発されていますが、従来のロボットとは何が違うのでしょうか。
石本: まず背景として、物理世界におけるAI活用、すなわち「フィジカルAI」への注目があります。Embodied AIはそこからさらに発展し、身体を持ったロボットが現実世界のデータを収集し、フィードバックを得ながら自律的に賢くなっていく、そういった概念です。
従来の産業用ロボットとの最大の違いは、「身体性」です。 従来のロボットは、関節の位置を厳密に決め、寸分の狂いなく動かすことにフォーカスしていました。
対してEmbodied AIは、人間のような柔軟な関節や触覚センサーといった「身体性」が非常に重要になります。
── どのようなユースケースに向いていますか?
石本: 人間にとっては定型業務であっても、従来のロボットには難しかった動作の代行に向いています。例えば、洗濯物を畳んだり取り出したりする作業です。
また、一度覚えた動作を別の動作に応用できる点もEmbodied AIの特徴です。人間が教えた情報や、現実世界での失敗を学びに変えていく「柔軟性」は、この技術の革新的な点です。
2. 燈の戦略:
日本の「ものづくり」の優位性を活かす
── テスラなどの巨大企業も開発を進めていますが、燈の目指す形や優位性はどこにありますか?
丸尾: 我々が目指すのは、学習したモデルを現実世界のタスクにすばやく搭載できるEmbodied AIです。建設業や製造業において、日本の職人の知識や生み出されるクリエイティブの品質の高さは、世界的に見てもトップレベルです。
我々は、この「ものづくりに関するノウハウ(暗黙知)」が前提にないと、生産性の向上に繋がらない領域に取り組んでいます。建設業や製造業などのお客さまとのプロジェクトの中で「本当に使える」形を目指して日々開発・チューニングを行なっています。
石本: 基盤となるベースモデルについては、巨大企業がデータを集めて拡大していくストーリーは十分にあり得ます。
しかし、Embodied AIで重要となる「現場のカルチャー」や「ものづくりのコアとなる情報」は、インターネットには上がっていません。
丸尾: 我々は、日本のものづくりレベルが世界と比較してもトップ水準だという優位性を活かし、現場のリアルなデータを集めることによって高精度なロボットを開発する。
これが、我々が日本で事業を行う理由であり、勝機だと考えています。
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3. 技術基盤:
自社製シミュレータとデータ収集
── 現場のデータはどのように集めるのでしょうか。
石本: 主に3つのアプローチがあります。
- 遠隔操作(テレオペレーション): 現場にロボットを置いて操作し、データを収集。
- 人間による動作デモ: グローブのようなアタッチメントを使い、人がロボットと同じ動作をするマリオネット方式。
- シミュレーションによるデータ増幅(オーグメンテーション): シミュレーション上でデータを使いながら拡大させていく。
── 燈としてはどこから着手していますか?
石本: まずはシミュレーションです。企業様と協力して現場データを収集し、それをシミュレーションで増幅させて活用するのが最初のステップです。
他社との大きな違いは、 三次元シミュレーション基盤である『Melchior(メルキオール)』を内製化している点にあります。
我々は元々、建設業や製造業界にAIソリューションを提供しており、そこで蓄積されたアセットが外部学習にも応用が効く形で構築されています。 Isaac Sim(※1)のような既存ツールと比較しても、マルチプラットフォーム、柔軟性、スピードにおいて独自の強みがあり、最新技術を柔軟に取り込んで拡張できる点も特徴です。
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※1:NVIDIA Omniverseを基盤とし、ロボットのAI学習用データ生成やデジタルツイン構築を可能にする高性能シミュレーションプラットフォーム
── 技術的な課題はありますか?
丸尾: 最大の課題はシミュレーションの精度です。
重要なのは、現実にいかに即したシミュレーションを作るかであり、SF の動画生成とは違い、厳密な物理シミュレーションの生成が求められます。これは世界の物理法則を認識している世界モデルの開発に関わってきます。
石本:現在は、自社開発の『Melchior』をベースに、テクスチャをよりリアルにしたデータを生成したり、物理的な挙動を訓練できる世界モデル応用手法の検証などに取り組んでいます。
4. 独自のアセット:
高速プロトタイピングとVLAモデルの開発
── 燈といえば建設DXのイメージが強いですが、ロボット開発は最近始めたのでしょうか?
石本: 実は、1年以上前からロボット開発自体には着手しています。 建設現場でロボットをどう動かすかといった学習の取り組みは以前から進めていました。
最近になり知能や動作技術が発展し、フィジカルに適用できる領域が広がってきたため、今さらにアクセルを踏んでいる状態です。
── シミュレーション以外に、開発において積み重ねているアセットはありますか?
石本: 大きく分けて「ハードウェアのプロトタイピング(検証)体制」と視覚、言語、行動を統合するAIモデルである「VLA(Vision-Language-Action)モデル」の2つです。
ハードウェア面では、既存のロボットを仕入れつつ、我々の仕様に合わせてカスタマイズし、現場データを最速で集めています。足りないパーツがあれば3Dプリンターで設計・印刷するなど、高速にプロトタイピングを回す体制があります。
── VLAモデルについてはいかがですか? テキスト指示でロボットは動くようになるのでしょうか。
石本: VLAモデルについては、リアルデータやシミュレーションデータを生成させ、学習データを回し、チューニングを重ねています。テキスト指示を追加し、モデルを意図する方向へ寄せていく開発も行っています。
丸尾: テキスト指示で動くことは絶対的な方向性ですが、現時点では、正確に物に触れるといった細かい動作の実現は世界レベルでも難しいのが実情です。
生成AIと同じく、指示と動作の間に必ず「誤差(ハルシネーション)」が生じるため、どこまでを許容し、どう制御するかが技術的な勝負どころです。
── 現在の燈がやっている企業へのAIソリューション提供と、Embodied AIはどう繋がるのですか?
丸尾: そこは密接に繋がっています。 現在、企業に提供している画像や音声認識だったり、テキストを読み込むといったAIソリューションは、そのままVLAやシミュレーションのチューニングシナリオ、学習データの収集に直結します。
今の燈のAI開発事業は、Embodied AIという未来に向かうためのパーツを一つ一つ作り上げている、という関係性にあるのです。
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5. ロボット技術のロードマップ:
3年後の自立生産、10年後の文化輸出
── ロボット技術の未来予測をお願いします。
丸尾: 現在は論文上では性能が高いものの、実用段階としては、LLMに例えるなら当時のGPT-2やBERTのようなレベルです。 しかし1年後にはGPT-3.5レベルになると考えます。ハルシネーションの不安は残りますが、ロボットの可能性に気づき始め、富裕層を中心に家庭用への普及が始まると予測しています。
石本: 3〜5年後には、今のChatGPTのような感覚でロボットが使えるようになり、これまで自動化されていなかった人手の領域が自動化され、生産性の底上げが実現していく世界線なのかなと。
その時に、日本がその技術を実現して、世の中を変えられる立場になるか、ただ技術を享受する側になるかどうかは、今の頑張りが重要だと思います。
これまで自動化されていなかった人手の領域が自動化され、生産性の底上げが実現していく世界線なのかなと。その時に日本がその技術を実現して、世の中を変えられる立場になるか、ただ技術を享受する側になるかどうかは、今の頑張りが重要だと思います。
丸尾: 10年後は、ゲームの世界のようになってくるかもしれないですね。
あるいは高性能よりも、ロボットそのものに対して独自の愛着が持てる要素を持った、ペットのようなロボットが普及する可能性もあると思います。
また、「寿司職人ロボット」が世界で活躍するなど、日本の文化やオペレーション自体がロボットを通じて輸出されるおもしろい環境になるのではと考えています。
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ロボットの将来性について楽しそうに議論するお二人
6. ポジショニングと求める人材:
能力を最大限に発揮し、価値を提供したいと思っている方
── 他のR&D(研究開発)企業と比較して、燈の立ち位置はどう異なりますか?
丸尾: 最大の違いは「課題へのアプローチ」です。
多くのR&D企業や巨大企業が、広範囲な基礎研究からスタートして適用先を探すのに対し、我々はまず特定の産業(製造、建設、ものづくり)の「現場の課題」から開発に入ります。 これは、資本力勝負になりがちな広範な基礎研究競争を回避し、最初から「業界にフィットするソリューション」を最短距離で実装するための戦略です。現場の課題を理解しているからこそ、技術の社会実装において独自の優位性(ポジショニング)を築けていると確信しています。
── どのような人材を求めていますか?
石本:「日本を代表するロボットAI企業を創る」という情熱を共有できる方を求めています。技術進歩が爆発的に進む今、私たちは世界を変える技術開発の最前線に立っています。
燈が掲げる使命は「日本を照らす燈となる」。これを実現するための行動指針「燈道」には「爆速」という項目があります。これは、目標を全速力、トップスピードで達成し続ける、私たちの組織文化そのものです。
今、Embodied AIという領域には、無限の可能性が広がる最前線にあります。このエキサイティングなフェーズで、能力を持て余していたり、燻っていたりするのは本当にもったいありません。 だからこそ、自分の持っている「能力」を最大限に発揮し、価値を提供したいと思っている方に、燈へジョインしてほしいと思います。
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丸尾: 正解が決まったレールの上を走る仕事ではないため、「これをやればいい」という答えはなく、そこを一緒に考え切り開いていけるメンバーにぜひ来てもらいたいです。
── 技術的には、特にどのようなエンジニアが必要ですか?
丸尾: 特に制御エンジニアです。 AIが生成したモデルと、物理的なロボットのハードウェアを繋ぎ込む(インテグレーションする)役割は、現在最も重要かつ難易度の高い部分です。
石本: また、我々の活動はR&Dだけでなく、顧客と直接コミュニケーションを取り、産業界での「実運用」まで責任を持ちます。そのため、エンジニア以外の職種であっても、製造業や建設業をはじめとした、ものづくり産業の課題に対して強い当事者意識を持っている方は活躍できる場が存分にあるので、大歓迎です。
── 学生でロボコンなどに打ち込んできた方も対象になりますか?
石本: ぜひインターンとして活躍してほしいです。
私自身もロボコン経験者ですが、何かに熱中して技術を磨いてきた経験は、この最前線の現場でこそ活きます。 「学生だから」という枠に囚われず、即戦力として活躍できる場が無数にあります。
── 最後に、どのようなチーム環境なのか教えてください。
石本: 燈のチームは、異なる強みを持つ「凄腕」たちが揃っています。
- アジャイルな開発サイクルを回し、現場からのフィードバックを即日UI/UXに反映・実装するソフトウェアエンジニア
- LLM(大規模言語モデル)や画像認識技術など、最新の技術を複合的に活用し、現場のクリティカルな課題を解決するAIエンジニア
- ラボの中だけでは完結されず、実際の現場に足を運び、エラーやノイズと向き合いながら制御精度を実用レベルまで高めていく制御エンジニア
これらが縦割りではなく、一つのチームとして機能しています。 この記事を読んで、少しでもワクワクしたり共感していただけた方は、ぜひ我々の仲間に加わっていただけたら幸いです。
まずはカジュアル面談からお話しましょう!
7. 募集のご案内
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