こんにちは。今回は、今年度HITにジョインし、企画・総務事業部(9月末まで経営企画・マーケティング事業部)に所属している職員にストーリーを書いてもらいました。ぜひご覧ください。
山を登り岩のテラスに立って、息を呑む。
この日、瀬戸内海は晩秋の陽射しに輝き、島々が浮かんでいました。この穏やかな風景に出会うことは、広島で過ごす私にとって、とっておきの時間のひとつです。
目次
広島県の自然の魅力
一度捨てた広島に戻ってきた理由
HITでの半年間
これからやってみたいこと
広島に住んでみませんか
広島県の自然の魅力
私は、高校卒業以来45年ぶりに東京からUターンし、今年の4月からHITに参画しています。二拠点居住先だった長野県で約15年間、日本山岳ガイド協会認定登山ガイドとして、北・南アルプスや八ヶ岳連峰を中心に登山ツアーを率いた経験もあります。
「広島には高い山がないから、つまらないでしょう」と言われることもありますが、実は、広島の自然をとても楽しんでいます。
広島県は、瀬戸内海に面し、山に囲まれた地形です。決して高い山はありませんが、県の北側、西中国山地に広がる標高1000M前後の丸っこい山々は、緑のさざ波のようにも見えます。
その山々では、かつて、古式製鉄法(たたら)が営まれ、その燃料となる炭の原料として植えられたブナなどの広葉樹が今も残ります。広葉樹の森は四季を彩り水を湛え、広島県に住む私たちを生かす命の山です。
山間の集落には、神楽と呼ばれる舞踏が伝承され、子どもたちから大人まで、その歴史と文化をつないできました。そんな人との関わりが深い山に端を発する源流が流れ下って三角州をつくり、その街並の遠望には、海沿いに立つ花崗岩地質の岩山が良いアクセントになります。私は、この日、そんな岩山に立っていました。
一度捨てた広島に戻ってきた理由
私が高校卒業まで過ごした広島市は、戦後30年以上を経てもなお、被爆の名残がありました。その暗く重い空気感に嫌気がさし、広島を捨て、将来を求めて東京に出て45年間東京で働きました。一昨年、事業会社で定年を迎えた後は、二拠点居住先であった長野県への完全移住を考え、新しい仕事のオファーを頂きながら、ちょうど一年前、広島にUターンすることに決めました。
Uターンを決めた背景には、家庭の事情があるのですが、広島での職探しで二日間滞在した時、広島の自然と流れる時間に、とても心地よい穏やかさを感じたことがあります。そんな環境と時の流れに囲まれて暮らすことは、きっと豊かな生活なのだろう。広島を離れた45年前には思い及ばなかった感覚でした。そして世界から多くの観光客が訪れる様子を間近に見て、観光の仕事を通じて故郷の役に立ちたいと思い、HITに参画することを決めました。
HITでの半年間
HITでの約半年間、来年度(2026年度)以降の5年間に向けた新五か年戦略の策定に関わりました。登山ガイドとして山岳の現場で、旅行会社の登山ツアーを率いてきた経験はありますが、戦略という俯瞰的な視点から観光を見たことはありません。まず観光統計データという「事実」に徹底的に向き合い分析し、それは過去の何を意味しているのか、広島県のどんな将来を指し示しているのかを考えながら、HIT内の議論に耳を傾けました。
当初、広島「県」に関する議論を聞いていて気がついたのは、「県全体」の議論が、いつの間にか瀬戸内がその対象となり、さらに二大世界遺産があるエリアに収斂される傾向です。しかしデータが示すのは、広島県を大きくみると北部・南部・東部・西部のマトリクス各々に「異なる個性」があり、まるで日本列島の縮図のようだということです。
その県内各地の「個性」は、地形や植生の成り立ちの違い、そこに長年暮らしてきた人々の生活によって創られ蓄積してきたものであり、その個性こそが、広島県観光の資源であり、魅力であると気づきました。
果たして、観光に関わる私たちは、広島県の魅力を本当に知っているだろうか。そしてその魅力を観光客の皆さんに届けられているだろうか。実際に来て頂いた方々に、「来て良かった」と思って頂けているだろうか。さらに観光客が「広島県に来て良かった」と思うとは、どういう状況なのだろうか。私の問題意識は、いま、そこにあります。
「来て良かった」と思って頂くための要素は、本当に様々です。
その中で、私自身がUターンに向けて感じた「穏やかな時間の流れ」こそ、他県にない“オーガニック”な広島の魅力ではないか。そして、「ああ、この地に住んでみたい」と思って頂けることが、「広島県に来て良かった」と表裏の感情なのではないかと思っています。
ただ難しいのは、限られた旅の時間と予算の中で、短時間滞在、ともすれば日帰りでお越し頂く多くの観光客の方々に、この「住みたくなる」魅力を十分にお伝えすることが容易ではないという現実です。
これからやってみたいこと
次期五か年計画の策定に区切りが見えてきた今、私が観光分野でやってみたいのは、広島県の中でも、あまり観光客が訪れない島しょ部を含む中山間地にある景観や植生、そこにある生活や文化をもっと知って頂き、体験して頂くことです。
広島県の自然の中にある資源を、歩き登り、滑り、漕ぎ渡っていただきたい。(アクティビティや自然体験)。触り、味わい、話し、聞き知っていただきたい(異文化体験)。運が良ければ、西中国山地だけに住むイワナの亜種ゴギにも会っていただきたい。そんな、じっくりと過ごすに価する旅を生み出し、提供してみたいと思います。そして、「ああ、ここに住んでみたい」と思って頂けたらうれしいです。
西中国山地だけに住むイワナの亜種ゴギ
2015年スウェーデンの北極圏で110キロをゆくロングトレイルハイキング・イベントに参加したことがあります。世界35ヶ国から約2,000人のハイカーが集まり、その時、交流したハイカーとは、今も世界を越えてつながっています。
これはアドベンチャーツーリズムと呼ばれる旅のスタイルですが、特に街に住み、あまり自然に馴染みがない広島県内外のファミリーや、世界から広島に訪れる自然が好きな旅行者が楽しめるフィールドになればよいと思いますし、広島県の自然には、そのポテンシャルがあると感じています。
広島に住んでみませんか
広島県には、この地に住んだからこそ肌に感じられる「穏やかさと心地よい時間の流れ」があります。
自然がある暮らしは、休日だけではありません。東京に比べて30分近く日の入りが遅いので、サツキマスが遡上する初夏には、仕事が終えた後でも、腹まで流れに浸かって太田川を渡り、夕陽をみながらルアーを投げることもできます。
朝は、その川を吹く風を感じながら、土手を歩いて、アストラムラインという新交通システムの駅に向かいます。昼は、川沿いのベンチで手作りの弁当を広げ、陽が暮れるまでオフィスにいた日は、紅のとばりと川面に映る街の灯を見ながら歩けば、一日の疲れも解けてゆくようです。
HITのオフィス近くの川沿い
休日になれば、広島県北からさらに足を伸ばして、山口県、島根県、鳥取県、愛媛県、高知県の渓流の踏査は何とか日帰り圏内ですし、キャンプ道具を持っていれば、中四国地方の渓流や海での釣りと登山を併せて楽しめます。いま、川や山、海とともにある生活が気に入っています。
私は、広島県をはじめ中四国をフィールドに、自然とともにある暮らしのあり方を模索してゆきます。みなさんも広島県に住み、この時間を共有しませんか。もしHITに所属し、広島県の魅力について一緒に考え、行動できる方に出会えたら、とてもうれしく思います。