最初から不動産業界ではなかった
村田さんの経歴を教えてください
村田
経歴は大学を卒業後は精密機械メーカーの営業をやっていました。
不動産業界は最初からではなかったんですね?
村田
そうなんですよ。そのメーカーには3〜4年在籍して、 その後にもともと法律関係を志していたので、メーカー在籍中に行政書士の資格を取り、次のステップは司法書士と決めて司法書士事務所に転職しました。
でもなかなか司法書士の資格取得が難しく、そうこうしてるうちに結婚もして。司法書士は補助だと司法書士の手伝いだから給料も安かった。だからこれでは生活できないと司法書士は諦め、そこからマンションデベロッパーの大手企業に転職をしました。
直前まで司法書士事務所で働いていたので、その大手企業では登記関係のセクションで登記関係や住宅ローンの審査を担当していました。会社も上場し、居心地も良かったので、ずっとこの会社で続けようかと思った矢先、リーマンショックでそのマンションデベロッパーは倒産したんです。
そこから、どうしようと考えているうちに、もともと独立志向もあったので、行政書士として独立しました。で、ここから不動産仲介の業界に入っていきました。
あ、ここまで前フリだったんですね(笑)
不動産トラブルに関する相談対応がきっかけで不動産業界へ
村田
独立して3年、行政書士をやってきた中で不動産トラブルの相談が立て続けにあった時期がありました。その相談内容を簡単に言うと、大手不動産会社から騙されたり、リフォーム費用を倍近く請求されて払ったが、向こうは認めていない案件だったり。ほかにも囲い込みの話もあり、私は日本の不動産仲介はそんな業界なのかと思って。
もともと私は趣味とまではいかないけど好きなことが、小さいころから凝り固まったところを解放したいんですね。何がやりたくて行政書士になったかというと、私が行政書士になったときに農地法が変わり、農業はもともと農家さんしかできなかったんですけど、その法律の改正で会社もできるようになりました。
で、いろんな企業が農地を借りたい、農家さんも貸したいっていう中で、間に入っている農業委員会が癖物でした。農業委員会が全部要請を断っていたので、結局そうすると法律が変わっても関係なかった。その閉鎖的なのを壊したかったのが1つ。そうこうしてるうちに不動産業界も同じようなことがあると知り、不動産仲介のトラブル相談を受けている中で、不動産の仲介に対して興味を持ったのが、不動産仲介に足を踏み入れる第1歩でした。
それで不動産仲介をやってみるのもいいかもと検索していたら、2010年に風戸裕樹(現・らくだ不動産 会長)が当時28歳で不動産業会社を立ち上げたことを知りました。言っていることもまともだし、この人だったら不動産業界を変えられるかもと思いました。彼が立ち上げた会社は「不動産仲介透明化フォーラム」という名前の会社で、彼が会社を立ち上げたと同時に私は1号社員としてジョインしました。
「不動産仲介透明化フォーラム」へ入社までの経緯は?
村田
普通に求人サイトからでした。
普通に応募されたんですね。
村田
はい。「不動産仲介透明化フォーラム」が面白そうだと思ってクリックしたら、「あれ求人サイトだな」と思って。そこからまさかの不動産仲介にどっぷりとなりました。
不動産業界で一番興味を持った
「囲い込み」と「両手取引」
村田さんのここまでの経歴だと、不動産仲介の前と後はどれぐらいの比率ですか?
村田
2010年から仲介の業界に入りました。社会人歴は23年弱だから半々ですね。2010年に私にとって初めての不動産仲介会社となる「不動産仲介透明化フォーラム」に入社したんですが、その会社が正直衝撃でした。ちなみに「不動産仲介透明化フォーラム」は最終的に2014年に不動産専業の事業を持っていなかった大手企業に売却し、今や大手となった不動産が出来ることにつながります。
その4年間でエージェントを12〜3名採用しました。私もそうでしたが8人が仲介に関して全くの未経験でした。
当時は未経験者の採用が多いので無茶苦茶な採用をする人だと思っていました。でも今からこれを考えるとすごく良かった。まず不動産仲介で僕が一番興味を持ったものはいわゆる「囲い込み」と「両手取引」についてです。
例えば所有している不動産を売りたい人がいるのに、仲介側はそれを売るための情報を広めないことがあります。でも不動産業界にはそこに疑問を持つ人がほとんどいません。
それが慣習だからですよね?
村田
私は業界に浸かっていないので疑問に思います。そして後から「不動産仲介透明化フォーラム」に入社した業界未経験の同僚も「この慣習は普通におかしいよね」って話になりました。だから業界慣れしていない業界に入ってない人たちで集ったのがまずポイントです。もちろん専門知識もかなり重要なので、入社後必死に勉強しました。
印象に残っているエピソードがありました。業界でも不動産仲介透明化フォーラムが認知されるようになってきた時に、風戸の元に大手も含め不動産会社の連名で封書が来ました。簡単に言うと適当なことを言うなとか止めてほしい趣旨の内容が記載されていました。風戸はその封書を破っていました(笑)。
大手の会社から連名でそんな封書が届くぐらいなので、少し風は起こせたのかなって自負はあります。
不動産仲介透明化フォーラムからのその後・・・
一方でここから先、全国で風を起こそうとすると、ブランド力がないとダメだと思い、会社の母体を大きくし、もっと全国に広げていくために、前述した会社を売却して合流しました。不動産仲介の2社目として合流した会社は、私が思い描いてたものとはちょっと違う方向になりました。
その会社は上場を目指していましたし、会社のブランド力が大きいので、業界にはかなりインパクトを与えました。だけど、人数も増え、規模も大きくなってきた時に、当然多くの利益が必要となってくる局面で、会社の方向性が私が描いていたものと違ってきた。上場を目指していく中で、そういうプロセスになるのはしょうがないと想いながらも、許容できない自分はいました。
その会社ができた当初は、「これで不動産業界が変わる」と業界が賑わったのを覚えています。特に構図は大手対その他の不動産会社なので、「これで大手もやっつけられる。頑張ってください」と同業者から激励の言葉をいただきました。
私もこれで業界を変えられるかなと思いました。でも最終的には上場のためには売り上げが必要になり、そうすると両手取引でもいいんじゃないかという声も出てくるわけです。結論から言うと会社の方向性に違いが出た結果、風戸が辞めました。
不動産業界で人にフォーカスしたい想いを持って
らくだ不動産に入社
当時悩んでいたときに、風戸がさくら事務所の長嶋さんと懇意にしていてらくだ不動産を新たに作ると言われました。その流れでらくだ不動産にジョインしました。
らくだ不動産にジョインした1番大きなところは、ブランド力をまとった会社の成長はもう見届けたと感じたことでした。もしこのブランド力がなかった場合、私たちエージェントは活躍してなかったのか、ブランドをまとってない不動産の仲介だと全然意味がないのか考えていて、結局人にフォーカスしたかったんです。
さくら事務所社長である大西さんや創業者である長嶋さんの想いや、もともと風戸も人にフォーカスするやり方だったから、自分の想いがらくだ不動産の理念とガチっと合いました。だからもう一度らくだ不動産で人にフォーカスした不動産、仲介、 不動産エージェントの価値を上げる活動をやっていきたい想いが強くあります。
だから、私がらくだ不動産でやりたいのはエージェント、不動産屋ではなくて、エージェントを育てたいんです。
会社のブランドでご依頼者様が来るのではなく、らくだ不動産のエージェントの力でご依頼者様が来てくれるようなエージェントを育てたい。
でも不動産仲介に入ろうとは全然思ってなかったですもんね?
村田
そうなんです。大学卒業する時に不動産屋には1番なりたくなかったんですよ。不動産屋のイメージが、売らせたり買わせたり騙すとかうさんくさくて嫌だった。
しかし行政書士のときに携わった不動産トラブルで、涙ながらの相談にインパクトを受けたこと、「不動産仲介透明化フォーラム」でこんなに正々堂々と不動産業界の悪いところを言っていいんだと思いつつ、それが「不動産仲介透明化フォーラム」ではうまくワークしたことが強烈な成功体験として不動産屋に対する印象が変わりました。
不動産を通じた地域活性化を実現していきたい
2つ目として私が思っているテーマが地域の活性化です。不動産を通じて、不動産の中古流通から地域を活性化させたい。例えばそれぞれの地域が動くときは、多くの場合、新築のマンションや開発からなんですよ。だから私はそうではなくて、既存のリソースを有効活用したい。例えば青森駅から徒歩15分の場所が青森だったら悪くないかもしれません。でも、もしそこが港区より価格が高かったら地域が盛り上がると思いませんか。
そこまで価値が上がらないとしても、いろんな付加価値をつけてその土地が高く売れたり、いい取引をすることが地域の活性化にも繋がると思います。私はそれを中古流通の中で起こしたい。
そのために必要なのがエージェントです。さくら事務所のホームインスぺクションも絡みますが、例えば建物が「築20年だったらもう建物の価値がない」ではなく、もし本当にいい建物であれば市場流通価格を高くできる価値に変え、それを届けられるエージェントがいればどうでしょうか。
地域の不動産流通も上がり、地域も活性化すると思います。最終的には私の人生の生き方でもあるんですが、もともと芸人になりたかったので楽しませたい・喜ばせたい・笑わせたいのが基準にあります。だから世の中の人がハッピーになってほしいし、それを不動産の中で実現したいのが根本にあります。
不動産仲介と不動産エージェントの違い
不動産仲介とエージェントの違いってありますか?
村田
まず1つはここまでお話した”会社”の社員なのか、個人なのかって私が思っているのはその部分で、エージェントの場合は、ある程度自分でジャッジできるし、言いたいこともしっかりご依頼者様に伝えていいですが、その代わり自分が持つ責任も生じます。その分もちろん自分の裁量があります。しかし不動産仲介の場合は基本的に会社の裁量の中で動きます。
エージェントのメリットの2つ目は、エージェントとしての価値が高まれれば、直接個人名で指名をいただけるので、どんどん自分の力になります。
他のところではあまりないんですか?
村田
全然ありません。例えば大手の不動産仲介で、「この人を指名したい」と指名したとしても、その通りにはならない可能性が高いです。店舗の売上を上げるために会社は1番できる営業にどんどん送客した方がいいんですよ。あと年功序列だったりするので、まずどんな反響が来ても、そこから割り当てられると・・・という世界です。だから不動産仲介では基本的に個人はフォーカスされません。そこが不動産仲介と不動産エージェントの違いですね。