釧路市役所 農林課で、地域おこし協力隊「地域農産物振興推進員」として活動する是川佑介さん。
前編では、東京などで広告・プロモーションや写真の仕事を経験した是川さんが、なぜ地元・釧路へ戻り、地域おこし協力隊という働き方を選んだのかを聞きました。
後編では、もう一歩踏み込んで、実際の仕事と暮らしについて聞いていきます。
市役所にデスクを持ちながら、地域へ出る。
その働き方は、一般的な「市役所勤務」のイメージとは少し違うようです。
市役所4割、現場6割。「市役所の中だけでは完結しない」
——普段は、どんな働き方をしていますか?
年によって活動内容や比重は変わりますが、平均すると、市役所内で仕事をする時間が4割、地域の現場で活動する時間が6割くらいです。
市役所では、イベントやPR活動の企画、資料作成、関係者との打ち合わせ、SNSや広報物の制作などを行っています。
一方、現場では生産者の方を訪問して、農作物や取り組みについて話を聞いたり、写真や動画を撮影したりします。
実際に畑作業や酪農作業を体験させてもらうこともあります。
自分自身が現場に入ることで、生産者の方の仕事や想いをできるだけ深く理解したいと思っています。
現場で知ったことを市役所へ持ち帰り、「どうすればこの魅力が伝わるだろう」と考える。
市役所で考え、現場で感じ、その魅力をまた地域へ発信する。
その繰り返しが、今の働き方です。
行政と地域、両方を行き来できる面白さ
——市役所に活動拠点があることには、どんな良さがありますか?
地域で活動するうえでは、大きなメリットがあります。
地域の情報を得やすいですし、分からないことがあればすぐに職員の方へ相談できます。必要に応じて、関係部署や関係機関へつないでもらうこともできます。
行政がどんな考え方で地域の事業を進めているのかを身近で知れることも、自分にとっては大きな学びです。
ただ、仕事は市役所の中だけでは完結しません。
地域へ出て、生産者や事業者の方と直接話して初めて分かることもたくさんあります。
行政の中にいるからできること。
現場へ出るから分かること。
その両方を行き来できるのが、この仕事の面白さだと思います。
——地域おこし協力隊ならではの役割は何でしょう?
「行政と地域の間をつなぐ存在」だと思っています。
地域の中では当たり前になっているものを、外で働いた経験から「これは魅力なんじゃないか」と気づけることがあります。
一方で、市役所の中にいるからこそ得られる情報やつながりもあります。
その二つを行き来しながら、地域の魅力を外へ伝えたり、地域の声を行政へつないだりする。
そこに、地域おこし協力隊だからこそできることがあると思っています。
約30回の野菜マルシェ。「伝える」だけでは届かなかった
——これまでの活動で、特に手応えを感じた取り組みはありますか?
野菜マルシェの取り組みは印象に残っています。
活動を始めて感じたのが、地元の方でも意外と地元の農産物を知らないということでした。
スーパーに地元産の野菜が並んでいても、「釧路でつくられたもの」と意識する機会は意外と少ない。
そこで、情報を発信するだけではなく、まず実際に食べてもらおうと考えました。
市内のさまざまな場所で、新鮮な地元野菜を販売するマルシェを開催し、これまでに30回ほど実施してきました。スーパーがない地域へ野菜を届けることもあります。
回を重ねるうちに、
「この野菜を楽しみにしていた」
と言ってくださる方も増えてきました。
ただ商品を販売するのではなく、「どんな料理に使うんですか?」と話しながら交流する。
地元では当たり前だと思われている農産物も、届け方や伝え方を変えることで、誰かの「楽しみ」や「好き」に変わる。
その変化を直接見られたことは、大きな手応えでした。
自分で考えて動く。でも、一人で仕事をするわけではない
——仕事は、自分で決めて動く部分が多いのでしょうか?
基本的には、自分で考えて計画を立て、判断して動ける部分が多いです。
写真や動画、SNS、販促物の制作、現場への訪問など、自分の専門性を活かせる仕事については、自分で考えながら進めています。
一方、新しい企画や関係機関との調整、行政として確認が必要なことは、早めに職員へ相談します。
自分で動くことは大切ですが、一人で抱え込む必要はありません。
分からないことがあれば相談し、周囲の知識や経験を借りながら形にしていく。
自分のアイデアをそのまま押し通すのではなく、
「なぜやるのか」
「誰に何を届けたいのか」
を共有しながら、一緒により良い形を考えることを大切にしています。
釧路は「思っていたより、ずっと暮らしやすかった」
——仕事以外では、釧路での暮らしをどう感じていますか?
自然が身近にありながら、生活に必要な環境も整っているところが魅力だと思います。
私はアウトドアが好きなので、登山や釣り、キャンプを気軽に楽しめるのは大きいですね。
少し車を走らせれば、海や山、湿原があります。東京で生活していた頃と比べると、仕事と休日の切り替えもしやすくなったと感じます。
食も魅力です。魚介類だけではなく、野菜や牛乳など、地域でつくられたものを身近に感じられます。
生活面でも、空港や駅、高速道路、病院、スーパーやショッピングモールなど、必要なものは一通り揃っています。
個人的には、東京で悩んでいた花粉の影響が少ないことや、夏が比較的涼しいことも嬉しいですね。
もちろん、車が必要になる場面が多いことや、都市部ほどお店やサービスの選択肢が多くないという面はあります。
それでも自分にとっては、
「釧路は思っていたより、ずっと暮らしやすい街だった」
というのが率直な感想です。
向いているのは、「まず自分から動いてみる人」
——市役所を拠点に地域で活動する仕事には、どんな人が向いていると思いますか?
まずは、自分から動ける人だと思います。
市役所の中で待っているだけではなく、地域へ出て、人に会って、話を聞いて、現場を見る。
自分の経験やアイデアを活かすことも大切ですが、「自分はこうしたい」と最初から決めるのではなく、まず地域を知ろうとする姿勢も必要だと思います。
予定通りにいかないこともあります。
だからこそ、状況に合わせて柔軟に考えたり、分からなければ周囲に素直に聞いたりすることも大切です。
特別な経験やスキル以前に、
「まずやってみよう」「まず人に会ってみよう」
と思えることが、大事なのではないでしょうか。
「自分に何ができるか」を考えすぎなくていい
——最後に、移住や応募を迷っている人へ伝えたいことをお願いします。
私自身も、自分の経験を本当に地域で活かせるのか、人間関係を一から築いていけるのか、不安はありました。
でも、実際に来てみると、動いた分だけ人とのつながりが生まれ、そこから新しい仕事や挑戦につながっていきました。
すべてを準備してから来る必要はないと思います。
少しでも興味があるなら、まず釧路に来て、人に会って、地域を自分の目で見てみてほしいです。
「自分に何ができるだろう」と考えすぎるより、
まず行ってみる。まず人に会ってみる。
そこから見えてくるものが、きっとあると思います。
今回募集している「地域採用コンサルタント」と、是川さんでは所属や担当する仕事は異なります。
一方、市役所を活動拠点にしながら、自ら地域へ出て人と関係を築き、自分の経験を地域の課題に活かしていくという働き方には、重なる部分があります。
行政と地域の間を行き来しながら、自分の経験を地域の未来につなげていく。
そんな働き方に少しでも興味を持っていただけたら、ぜひ釧路市の地域おこし協力隊「地域採用コンサルタント」の募集もご覧ください。