『100BLG』立ち上げメンバーである前田隆行、徳田雄人、猿渡進平、河野禎之、平田知弘が一堂に会し、『100BLG』の発足についてそれぞれの想いを語りました。
— この回では、河野が認知症のひとにやさしいコミュニティをどう測り、社会的評価としていくのか? というお話を中心にお伝えしていきます。
河野 禎之
- 『100BLG』のCKO(最高知識責任者)
- 筑波大学 人間系助教
- 臨床心理士
一貫して認知症の人と家族の支援に関する研究に関わる。研究領域は、認知症の認知機能障害及び行動・心理症状、Quality of Life(QoL)のアセスメント、社会における認知症の人と家族のダイバーシティとソーシャル・インクルージョン、認知症にやさしい地域の評価等がある。認知症フレンドリージャパン・イニシアチブ(DFJI)「認知症にやさしいまちの指標プロジェクト」代表。世界認知症若手専門家グループ(World Young Leaders in Dementia)の一員でもある。
河野 僕は研究者としてこのプロジェクトに関わっています。DFC※、つまりコミュニティをどうつくっていくか? というのが、研究テーマです。これまで僕は、認知症の方々の行動や精神症状、認知機能などについて評価(アセスメント)をしてきました。その評価軸をもとに、個別の支援や対応方法の検討をするんです。リハビリテーションの一連の流れですね。
※DFC……Dementia Friendly Communityの略。「認知症のひとにやさしい地域・社会」の意味。
ある日、お世話になっている訪問診療のK先生に尋ねられたんです。
「この研究を何のためにやってるんだ?」
僕は、あれこれ自分が考える役に立っているだろうという根拠をいくつか話したと思います。
「じゃあ君は、認知症の方の生活を見たことがあるのか?」
いいえ……これが僕の答えでした。いつも、病院で2か月に一度、30分から1時間ほど通って来る方に接することはあっても、実際にその方の普段の生活を見たことはなかったからです。
そこからK先生の訪問診療に同行させてもらうことになりました。認知症と診断されたあと、絶望してしまう。周りの目が気になって買い物に行けない悩みなど、ご本人やご家族から聞くことができました。認知症の方々が実際にどう生きているのかを、目の当たりにしました。
ご本人に「がんばれ」って言うのは違うんだと気づいたんです。周囲に、社会にアプローチしていかないと、地域に暮らすご本人の悩みは消えない。そこから「認知症にやさしいまち」をどう評価するのか? をずっと考えています。評価と一口にいっても、地域をつくるのは、住んでいるひとたちです。地域だって、日本だけで見てもあらゆる特色のある地域があります。同じ評価軸をつくって、上からマスを埋めるようなテストをしても意味がない。ひとつのものさしでは、評価できないんです。地域に住むひとたちが、自分たちでその地域の目指すところ、ものさしをつくっていかないと、アクションにつながらない。