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レガシーな歯科業界を改革するHANOWAが描く、成長のロードマップ。目指すのは「なめらかな働き方」

(この記事は2021年5月20日に実施したWantedly様のインタビュー記事です)

歯科衛生士の「人材シェアリングサービス」を行う当社。女性が99%を占める歯科衛生士は、出産や子育てによってライフスタイルが大きく変化するのは珍しくありません。時間の制約がある子育て中の歯科衛生にとって、従来の正社員やパートという働き方だけでは限界がありました。

そこで、当社が提供しているのが、近年広がりを見せている「ギグワーク」という新しい働き方。特定のクリニックでシフトを組んで働くのではなく、人材が足りない複数のクリニックで「好きな時間に好きなだけ働く」というワークスタイルを実現しました。

今回は代表の新井に、現在の歯科業界が抱える課題や、これから目指しているビジョンについて話を聞きました。

資格を持ちながらも働けない「遊休資産」な歯科衛生士


―まずは起業するまでの経緯について教えて下さい。

私は人材業界の営業からキャリアをスタートし、その後HPの制作会社に転職して営業を行っていました。当時はクラウドソーシングが流行し始めた時期で、それまで制作会社にお願いすると150万円かかっていたHPが、クラウドソーシングを使って40万円ほどで作れるようになった時代。独立して自分で仕事をとり、クラウドソーシングを使って納品することにしたのです。

新井集客事務所という屋号で、不動産や美容室、エステや整体院といった業種をお客さんに、HP作成の仕事をしていました。

―歯科業界とはどのように出会われたのですか。

2016年の末に、とある歯科医院のインプラントの集客を請け負ったのが始まりです。インプラントは単価が高く、30万円の広告費だけで初月から300万円の売上を立てられました。順調に売上は伸びたものの、顧客である歯科を訪れる度に院長の元気が徐々になくなっていくことに違和感を覚えたのです。

院内の様子を観察してみると、院長が一人で必死に治療をしている後ろで、暇そうに雑談をするスタッフの姿が。医院のマネジメントが崩壊していることに気づいたのです。

―それでも院長は必死に治療を続けていたのですね。

私も院長に「なぜ、このような状況になってまでインプラント治療を続けるのですか」と聞きました。すると院長は「負債を返すため」「スタッフの給料を払うため」と答えるのです。そして「本来、医療の本質は治療ではなく予防。本当は私もインプラント治療をしなくてもいいようにメンテナンスに来てもらいたいんです」と続けました。

院長はこれまで医学の勉強はしてきても、病院経営は素人。独立開業しても経営がうまくいかず、いつしか借金を返済するためだけに働かざるをえなかったのです。見かねた私は見よう見まねで医院のコンサルをはじめました。

その中で歯科業界における人材不足に大きな課題を感じたのです。それを機に、歯科医院の求人票の作成代行をはじめました。


―求人票の作成代行の仕事はうまくいったのですか?

歯科医師会のつながりで顧客を立て続けに紹介され、2年で100件以上の申込みがありました。そうなると、他の仕事を受けるのも難しくなり、その頃から歯科医院向けの仕事に専念することになりましたね。

また、仕事をしていくうちに気づいたのが、歯科衛生士がうまく活用されていないこと。人材不足の医院があると思えば、その隣の医院では人材が余っていることが往々にしてありました。人材が足りなくて困っている医院と、仕事がなくて困っている衛生士がマッチングされずにいたのです。

加えて、歯科衛生士の国家資格を持っている人は全国に27万人いるのに対し、実際に働いているのは13万人と言われています。残りの14万人は資格を持ちながらも働けない遊休資産。この14万人が活躍できる仕組みさえあれば、業界の人材不足を解消できると思いました。

「なめらかな働き方」を実現するHANOWAのシェアリングサービス


―歯科業界の人材不足をどのように解決しようと思ったのですか?

ギグワークで働ける仕組みを作れば、もっと多くの方が働けると考えました。例えば一人の歯科衛生士が1日に8時間働くのではなく、4時間ずつ2人で働けばより多くの人が働けますし、1日8時間働けないけど4時間なら働ける、という人も活躍できます。

これなら子育てをしている方でも、仕事量を調整しながら働き続けられます。例えば20代は経験を積むためにフルタイムで働いたとして、子どもができたらギグワークに切り替えて仕事と子育てを両立します。20代でしっかり働いてきた方なら、決して難しくないでしょう。

子どもに手がかからなくなったら、またフルタイムで働いて挑戦、といったように働き方、さらに言えば生き方の選択肢を増やしたいと思ったのです。私達が掲げる「なめらかな働き方を通じた自己実現」というメッセージは、そのような生き方を表しています

―歯科衛生士に限らず、全ての女性に必要な選択肢ですね。

もともと私がそのような考えを持つようになったのは、母がきっかけでした。私の母親は私が14歳の時に離婚を考えたものの、実際に離婚したのはその7年後。離婚までそれだけの時間を要したのは兄弟全員を育てるためです。一番下の妹が中学を卒業するまで、母親は離婚を我慢して暮らしていました。

もし母親に子育てしながら働く選択肢があれば、もっと早く離婚して自分の人生を歩めたのではないでしょうか。子どもを持ったことで、人生の選択肢が狭まることがあってはならない、その想いがサービスの原点にあります。


―子育てしながら働けない問題は以前からありましたが、なぜこれまで放置されていたと予想しますか?

同じような質問を、よくVCの方にもされます。「これまでそのようなビジネスがなかったのは、単純に儲からないからではないか」と。それは一理あると思います。

例えば、一般的な人材紹介の場合は一件制約すれば年収の30%程度が売上になりますし、パートの成約が決まれば一件30万円程度の売上です。比べて私達のビジネスモデルは、今は一件当たりの紹介手数料はせいぜい3,000円程度。これまで人材業界で成功した企業たちが、ビジネスモデルを転換するには魅力に欠けるのは納得です。

しかし、実際に私達のサービスは右肩上がりで成長しています。社会全体を見ても、今やギグワークは働き方の大きなトレンド。それは異業種のギグワークサービスの成長を見ても分かるでしょう。

―VCが難しいと指摘したビジネスが成長した秘訣はなんだと思いますか。

一つは私たちが誰の利害にも関わっていないこと。私のうしろだてはVCのエクイティ・ファイナンス、つまり資金だけ。もしもこれが業界の利害構造に組み込まれていたら、ここまでうまくいかなかったと思います。特に医療の業界は、医療機器や製薬メーカー、卸、販社など様々事業者の利害が複雑にからんで来ますから。

もう一つはサービス開始前に3年間、歯科業界との関係性を築いていたこと。院長先生や歯科衛生士のインサイトを掴んでいたことで、サービスの開発を始める前に市場のニーズは掴んでいました。2018年6月にサービスを作り始めてから、ただの一度もピボットを考えたことがないのは自慢です。

ちょうどサービスの開発を始める前、2人の子どもを持つ歯科衛生士に「本当は月4回働けるのに、新しい常勤の子を教育するために2回しか働けない。人が足りなくて困っている隣のクリニックで働ければいいのに」という言葉を聞いた時点で、私の中でロジックとしてはPMFは完了していました。

レガシーな業界を根底から改革する「人材輩出企業」に


―ビジネスの手応えを感じたタイミングを教えて下さい。

2021年の3月から4月にかけてです。その前の1月からクライアント獲得のための広告出稿をやめ、新規獲得コストゼロにも関わらず、クライアント数が増え続けているのを見て手応えを感じました。そのため新たに資金調達し、人材を採用して成長に拍車をかけようと思ったのです。

―なぜ広告出稿をやめたのでしょうか。

年末に大きくユーザビリティを見直したからです。それまでは毎月15万円ほどかけて、歯科医院に向けて広告を出していたのですが、ユーザービリティの悪さから利用継続率があまり良くありませんでした。そこで、年末に大きくサービスを改善した際に、思い切って広告をやめてみたのです。

―これから成長フェーズに入ると思いますが、今後はどのようにビジネスを展開していくのか教えて下さい。

現在は歯科衛生士のマッチングを行っていますが、さらに職種を拡げていきたいと思います。歯科医師や治療に使う金属を加工する歯科技工士などですね。単価もあがり、よりチャレンジングになると思っています。

また、2023年には自社で歯科クリニックを作ることも予定しています。完全デジタル化されてスマホで予約でき、待ち時間ゼロ、不快な治療音も聞こえない、これまでにない歯科クリニックです。

―なぜ自社で歯科クリニックを作るのでしょうか。

レガシーな産業を変革するには二通りの方法があると思います。一つは深く刺さるプロダクトの一点突破し、そこから周辺領域に拡げていく方法。

これはフットワーク軽く挑戦ができますが、既存産業の中にいる人からすれば基幹システムをリプレイスすることは大きなストレスを伴います。そしてそのツールがどれだけ便利でも、例えばサービス利用者の年齢のボリュームゾーンが50代半ばとかなら、新たに学習して慣れるより、現状維持で逃げ切る方が楽かも知れません。

もう一つは、勝てるプロダクトをそのまま自前で実装して、自分たちで参入してしまう方法。これはこれで、挑戦するスタートアップには相当の覚悟が必要です。しかし我々の場合、ギグワークプラットフォームを運営する中で自然と資産として、人材のデータベースが溜まります。結局、歯科クリニックを多店舗展開する中で、ボトルネックになるのはいつもお金でも、ノウハウでもなく、人材と立地です。

後者の方法で業界を変革するのは、勝算もあると思いますし、何より面白そうです。そして自分たちで本当に理想の労務環境が整った歯科クリニックを全国各地に配置するのは、歯科医療従事者たちの滑らかな働き方を通じた自己実現にも寄与すると思います。

―最後にHANOWAに興味を持った方にメッセージをお願いします。

私達の仕事は、働けば働くほど景色が変わっていくレガシーな業界です。コードを書けば書くだけ、営業をすればするだけ業界のスタンダードが変化していきます。その証拠に公式LINEを通じて毎週のように感謝の声が届きます。

短期間で業界を変える実感を得られることこそ、私達のやりがい。社会に大きなインパクトを残したい方にはこれ以上ない環境だと思います。

また、私は「産業を改革できる人材の集団を創りたい」と思っています。明治から昭和初期にかけて活躍した政治家・後藤新平は次のような言葉を残しています。

「金を残すのは三流。
事業を残すのは二流。
人を残すのが一流だ。」

私も人を残すことにこだわり、HANOWAを一流の人材輩出企業にするのが目標です。一緒に産業を変えたいと思う方はぜひ一緒に挑戦しましょう。

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