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流し雛

三月三日の桃の節句を目前に、青工逢山の雛飾りをAINEXTへお届けしてきたのでご報告いたす。
まずは作品をご覧いただきたい。
桃の節句を盛り上げるよう、総じて桃色に仕上げた本作品は、もちろん桃を活けている。
桃に纏わせた、同じく桃色の紙は、人形(ひとがた)や形代(かたしろ)と呼ばれる。
この人形や形代とは、なでたり息を吹きかけて穢れや厄をそれに移し、最後に海や川に流して人の身代わりとするものである。
平安時代の頃より、毎年三月に女児がすくすくと成長できるよう願いを託し、人形や形代を水に流した習わしこそが、現代に連綿と受け継がれる「流し雛」の由来であり、雛人形の起源の一つだ。
雛人形は座して動かざるものであるが、この流し雛は水の流れを汲むため、その世界に流動が生まれる。
本作品は水の如き流動を組み込み、躍動感、生命力あふれる雛飾りを生み出した。



穢れを水に流すということ

古来より日本人の観念は、死だけでなく、罪や病気、天変地異などの災厄も穢れに含み、禊(みそぎ)や祓い(はらい)で身を浄めてきた。
心に巣食う嫌なことを「水に流す」というのも、この禊が由縁の言葉である。
憂い事を水に流した後は、心身ともに軽くなり、晴れ晴れと、若しくは清々しく感じられた経験をお持ちの方もいることだろう。
これは水の豊富な国の人、水の流れに美をみる日本国の民ならではの心であるらしい。
本作品から、清らかな水の流れを感じて束の間、泰平な心持ちでお過ごしいただければ幸甚である。



おわりに

流し雛の行事は全国各地で行われ、次代に受け継がれている。
現代では女児の健康と幸せを願う行事として定着しているが、そのルーツを紐解き、老若男女問わずお楽しみいただくのも一考の値があろう。
また、六月末の夏越大祓の際に「形代流し」を行う地域も散見されるので、清らかな水に流してご自身の禊をするというのも如何だろうか。


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