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【代表インタビュー】「森林の6次産業化を拡め、循環する里山づくりを」兵庫県丹波市から日本の地方創生を目指す覚悟とこれからについて

「自分以外の誰がやるんだ。」

そう覚悟を決めて、決断できる人は一体どれくらいいるでしょうか。

日本の国土の3分の2は森林であり、その大きさは約2500万ヘクタール。しかし、それにも関わらず衰退の一途を辿り続けています。丹波市で父親の代から林業に触れてきた代表の足立さんだからこそ挑戦できる、”山林を資源化し循環する里山”への道。

今回はフォレスト・ドアグループ代表の足立さんにこれまでの変遷と森林問題について、またこの事業に身を置くと決めて覚悟について伺いました。

足立 龍男 / 代表取締役

兵庫県丹波市生まれ。製材業を営む株式会社木栄から独立し、2008年4月に建築請負業・株式会社栄建を設立。「日本ログハウス・オブ・ザ・イヤー」ロケーション賞や「ひょうご木の匠木の住まいコンクール」優秀賞を受賞するなど各方面で高い評価を得る。その後、丹波市内の森林を整備することが急務と、2016年に株式会社森のわを設立。丹波市の森林再生に尽力。
2022年3月に廃校利活用施設の運営とグループ広報を担うソーシャルカンパニー、株式会社フォレスト・ドアを設立。「丹波の森林の6次産業化」を自社グループで実現する強みを活かし、地方創生にもつながる林業の新規ビジネスを追求している。

土砂災害支援と受け入れの原体験、起業の決意と覚悟

ーー林業と出会った経緯は、父親が製材業を営んでいたことですよね。そこからどのようにして、フォレスト・ドアの起業に至ったのでしょうか?

父親が丹波市内では割と大きな製材業を営んでいたのですが、今の自分では、父の会社を経営していく力が無いと思い、10年の間は修行の意味で別会社を起業し経営させてほしいと頼みました。そこで、建築・設計が自分の得意分野だったこともあり、工務店を立ち上げ、経営をしました。

そんな中、2014年8月の豪雨災害で起きた土砂災害が、一つ大きな転機となりましたね。当時、200人位が所属する商工会青少年部のリーダーをやらしてもらってて、当時は全国各地の商工会のボランティア受け入れなどもやってたんです。そこで土砂崩れした森林を目の当たりにし、森林整備への危機感を持ったことがきっかけです。そこで林業を事業とする「森のわ」の起業を決意しました。

ーー林業分野は多くの課題があるにも関わらず、起業を決意されたんですね。

このままでは数年後、もっと悲惨な事になる。しかし一体誰がやるんだと考え始めました。そんな事を考える中、次第に誰もやらないなら自分でやろうと決意しました。担い手が、丹波市にはほぼいない状態でしたから。丹波市ってめちゃくちゃ森林の量が多いんですよ。2万1100ヘクタール(1ヘクタール100m×100m)あるんです。それにもかかわらず、担い手が減少した理由は、外国産木材の輸入の増加です。国産材はどんどん価格が下がり、需要も減る一方。林業が儲からなくなってしまったんです。本来、林業はもっとかっこよく、スマートな産業のはずなのに。山の価値が下がってしまう中、山主が儲かる仕組みを作るため、収益のキャッシュバックシステムなどを取り入れながら、事業を展開しています。

「不価値の価値化」をテーマにした、森林資源の活用モデルの構築

ーー具体的にフォレスト・ドアはどのようなビジョンやミッションを掲げているのでしょうか?

具体的には、

■ビジョン :丹波の山林を資源化し、循環する里山をつくる

■ミッション:丹波産木材の需要拡大と、コミュニティフォレストリーの推進

■バリュー :楽しい+心の豊かさをお届けする。ソーシャルイノベーションを起こす。を掲げています。

ーーなるほど、「資源化」と「循環」がキーワードでしょうか。

山の空間を活用して、山林を資産化・資源化して循環する里山をつくっていこう、それが山を守っていく一番の近道だというのが私たちの考えです。2019年コロナの影響で、売上低下も契機となりました。

持続可能な事業を作るには、ビジネスとして成り立つものではないといけません。その考えを念頭に置いた事業展開をしています。そのほかにも、竹林を活用したバイオマス発電の実現に向けた研究など、多様な可能性を探っています。

ーー面白いですね。在る資源を活用しながら、可能性を拓いていく事業にワクワクします。

当社の経営顧問でもある神戸大学の忽那教授が言う「不価値の価値化」という概念があります。これは、山林だけでなくあらゆる地方におけるまだ使われていない隠れた資産に価値を見いだす事だと考えます。循環するビジネスモデルを考えていくことが、林業における一番の課題です。例えば、カーボンクレジット制度を活用し、民間企業と連携して、山の所有も推し進めるなど。

ーーさらに事業においては「地方」というキーワードも、ポイントになってきそうです。

フォレスト・ドアの取り組みもその一つですが、やはり地方を元気にしていくことが、今後の日本を元気にしていく大きなファクターとなると僕は考えています。そのために、自分たちの事業を通じて丹波が"モデル地域"となり、日本全国へ展開していくことが、日本全体が元気になることにつながると考えています。

ひとつ大切にしている点が、地域活動との棲み分けです。あくまでも、私たちがビジョンを達成するためにアプローチしたい課題は、木材需要の低下(木材利用の拡大)。今回リノベーションした廃校は父の母校でもあり思い入れも勿論あります。ただし、ターゲットを明確にした事業を行わなければ、持続可能にならないと考えています。メインターゲットは経営者(最終意思決定者)という一貫性を持った事業展開を行いたいですね。

まずは、自社が事業展開している1次産業×2次産業×3次産業をかけ合わせた「森林の六次産業化」の収益事業を持続可能にしていきたいです。

ーー他のグループ会社が、6次産業化における、それぞれの役割を担っている状態ですね。

そうですね。

①株式会社森のわ:1次産業(林業)

②株式会社木栄:2次産業(製材加工)

③株式会社栄建:3次産業(建築不動産)

上記3社のシナジーを生む新規事業を展開するのが、フォレスト・ドア、というイメージです。

モットーは「Think Globally, Act Locally」。様々な企業のPR / ブランディングを担当した経験者が語る、フォレスト・ドアの強みと戦略について | 株式会社フォレスト・ドア
数多のキャリアを経て辿り着いた、「自分の目指すところ」と合致したソーシャルカンパニー"フォレスト・ドア"。 これまでのPR / ブランディング経験をもとにどのようにフォレスト・ドアをデザインしていくのか、どのようなプロジェクト(戦略)が進んでいくのかを、行政と連携した旅行パッケージプランニングの経験や、ネスタリゾート神戸でPR / ブランディング経験を積んだ正垣さんに伺いました。 正垣直人 /
https://www.wantedly.com/companies/company_6673092/post_articles/432146
具体的な戦略や施策についてお話している記事はこちら!

地域資源を活かして自立した収入を生み出す新たなシステムの構築、実体験をベースとした、オフィスの木質化や山林ビジネスの提案による、中山間地域と都市部の交流促進を通じ、林業を中心とした中山間地域の課題を解決しながら、地元自治体と共に地方創生に取り組むソーシャルカンパニーと銘打っています。

モチベーションの源泉は「森林資源を尊重していない怒り」から。未来の子どもたちに価値ある地域を繋ぐ。

ーーフォレスト・ドアは「ソーシャルカンパニー」ですが、ここまで社会課題に対して行動できるモチベーションの源泉は一体何なのでしょうか。

森林や林業に対して軽視している風潮があることへの怒りを持っているからです。「モチベーションの源泉の多くは怒り」と言いますが、現在多くの事業者は、地域全体の山の事を考えず、自分たちの利益ばかりを考えている様に思えます。さらに、もともと林業は担い手が少ないので、政治的な支援が少なかったんです。でも、できていない事が理由で渇水や鉄砲水などが起こり、農業にも大きな影響が出るようになってきました。

そこで、農家側が行政に意見を出すようになってきたこと、加えて、SDGsが注目されてきたこともあり、林業にスポットライトがあたるようになってきました。例えば、山の腐葉土から出る、フラボ酸鉄という鉄分が海にしみ出さないと、プランクトンが育たないこと。山の荒廃を止めていかないと、海も持続可能ではない。もちろん農業も同様ですね。

ーーフォレスト・ドアがアプローチできる課題は、様々なステークホルダーにも影響するのですね。その中で、御社がアプローチしたい最も重要な課題は一体何なのでしょう。

森林の六次産業化による、国産木材の自給率向上を通じた、日本全国で起こる中山間地域の衰退、雇用不足の解消です。いわゆる、ウッドチェンジへの変革ですね。つまり、建物を建築する時にコンクリートから木材を活用しようという考え方です。現在木材自給率は40%、酷い時で20%でした。現在は国も木材活用の促進の為に、認定保育園などの建築は木材を活用する制限を設けるなどの動きも出てきました。現状、推し進めているのが、民間企業の木材利用。これだけ日本に木材が余っているのに、使わない状況が最も課題として大きいと感じています。

また、国産木材の自給率が低い理由に、そもそも山林所有の問題も根深いと感じます。今の山主は、山を管理せず、活用しなくなっているんですね。例えば、2000万円で購入した山が、20万円の価値まで下がっている。つまり、間伐したとしても、木材は売れない。儲からないから山に関心が無くなり手入れされなくなった。その結果、山の価値がどんどんと低下していきました。

ーー日本の中山間地域における課題解決の一助になる、可能性のある事業だと感じます。

地方の可能性をビジネス化していくことで、地域経済が周り、雇用が生まれる。本来、丹波だけでなく様々な地域には価値があると考えています。持続可能な事業を展開することで、未来の子供たちに地域を残していきたいですね。

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