アドビの製品といえばPhotoshopやIllustratorが有名。ですが私たちの製品はそれだけではありません。企業や個人が抱える課題を解決するべく、PDFや電子サインの「Adobe Document Cloud」や、マーケティングソリューションの「Adobe Marketing Cloud」など、様々な製品を生み出しています。
今回お届けするのは、「Adobe Experience Manager(以下、AEM)」に関するエピソード。AEMはコンテンツ管理システム(CMS)で、大規模な「グローバルで展開するWebサイト」や「数万点に及ぶ写真・動画・文章」などの管理を担うクラウドサービスです。
このAEMを開発・運用するために、アドビは複数の企業とパートナーシップを結んでいます。そのパートナー企業の中で、 FY2019に「Delivery Partner Award」を受賞したのが、文書管理ソリューションに特化した開発会社 大和株式会社 。
今回は大和株式会社(YAMATO, Limited) 取締役の小林努さんと、アドビ常務執行役員の小沢匠から、「AEMの特徴」と「アドビとデリバリーパートナーの関係」を語ってもらいました。
コンテンツを「合理的」かつ「安全」に届けるアドビのAEM
冒頭でご紹介したAEMとはどのようなシステムか? まずは、その特徴を解説します。
小沢 :AEMは単なるCMSではありません。単にコンテンツを管理するだけでなく 「ユーザーエクスペリエンス」 も管理できます。たとえば、コンテンツの雛形をひとつ作れば、PC・スマホ・SNS・デジタルサイネージなど、多様な媒体に最適化できる。媒体を問わない汎用性の高いアウトプットが、AEMの強みだと思います。
また、 AEMはコンテンツの一元管理に強く、 ガバナンスの効かせやすい製品 です。特に、黎明期からWeb発信を行なってきた企業や、グローバル展開をする大企業のサポートを行うことに長けていると思います。なぜかというと、いち早くWebを活用してきた大企業のサイトを見ると、統制が取れなくなっているケースが多々あるためです。部署や国ごとにサイトが分割されていたり、管理部門や国が異なっていても、AEMを使えば効率の良い運用が行えるでしょう。
コンテンツ管理システムに求められるのは効率や合理性だけではありません。安全性、つまりセキュリティも不可欠な機能です。
小沢 :コンテンツ管理において最も難しい点は「セキュリティと流通性のバランス」です。闇雲にセキュリティを守れば良いわけではなく、必要な方に必要な情報を届けられる流通性を確保しなければいけません。
たとえば、製品情報をコンテンツとして管理する場合、新製品はサイトの会員だけに先行して見せたいなどの要望が出てきます。こういう場合は、セキュリティと流通性のバランスを鑑みてシステムを設計しなければいけません。
ここが大和さんにパートナーなってもらった理由につながるのですが、大和さんはアドビのパートナーになる以前から、 文書管理システムのデリバリー をしていたのです。文書管理はコンテンツ管理よりもセキュリティと流通の幅が広く、難易度が高いはずだと思ったのです。書類には、経営に関する議事録など、トップシークレットの情報もあれば、社員や外部まで含めて広報するものもありますよね。
小林 :そうですね。高いセキュリティ性が求められる製薬メーカーや、原子力発電所の文書管理システムの開発実績もありました。いずれも難易度の高いプロジェクトでしたが、その開発で培った知見をAEMの開発に活かすことができています。
「効率化」と「セキュリティ」 を両立したAEMは、顧客の要望に合わせたカスタマイズも可能です。クライアントにデリバリーする時にはどのようなコミュニケーションが必要となるのだろうか。
小林 :デリバリーの際に最も大切なことは、 高度な製品知識と多様な発想を基にした提案力 です。ベースとしてはAEMに関する知識があること。次に、お客様の課題を適切に把握し、疑問や悩みに答え、快適に管理できるようにサポートすることが求められます。
小沢 :お客様の 潜在課題を適切に引き出し、一番良い答えを共に探すこと が私達の役割です。だから、 あえてお客様の要求とは異なる提案をすることもあります。 なぜなら、お客様の要求すべてを受け入れてしまうと、将来的に問題が生じることがあるからです。AEMはクラウドサービスなので頻繁にアップデートを行っています。お客様の要望通りに先鋭化した機能を盛り込むと、アップデートに対応しづらくなり、都度改修費用がかかってしまう。そのような課題を見越して、プロフェッショナルの視点から最適なルートを導き出すこと。それが、アドビのAEMデリバリーに求められる力です。
実際にデリバリーされる際の流れもお話しておくと、プリセールスを終えてプロジェクトがキックオフしたタイミングで、アドビや大和さんを始めとする開発パートナーが入ります。その後、詳細を詰めながらルートを描く。具体的な話を詰める中で、開発時の課題や将来的な運用の課題などが見えてくるので、適宜正しいアクションを考えるための話し合いを設けています。ゼロベースから導入してリリースまではおよそ4、5ヶ月。その間、お客様が「本当に使いやすい環境」を整備するために熟考を重ねているのです。
システムのバリューは基本的な機能だけではありません。適切なカスタマイズができるデリバリー体制もプラスアルファの「価値」だと言えます。
相乗効果で高みを目指す。私達がパートナーシップを組む理由 ここからは話題を変えて、アドビとデリバリーパートナーの関係性について掘り下げます。前段で紹介したAEMの強みは、大和をはじめパートナー企業と共に作り上げたもの。パートナーはAEMの発展になくてはならない存在です。
大和株式会社とのパートナーシップはAEMのローンチ直後に結ばれています。この出会いは、とある大型案件が発端でした。
小沢 :昔、アドビで担当した大規模なWebサイトの管理プロジェクトがありました。それは世界50カ国、70言語に対応したWebサイトの更新と管理を一本化するもの。おそらく日本では事例がない、多国籍・多言語の案件でした。
それぞれの国の支社が独自に管理ツールを導入していたので、ガバナンスが効かせづらく、言語も多種多様。開発による部分最適はもちろん、プロジェクト全体を俯瞰できるコンサルタントも必要でした。そのような時に、開発チームのマネージャーを務めていたメンバーが、大和さんを紹介してくれたのです。大和さんは、セキュリティの高いデリバリーに携わった実績がありましたし、開発力にも長けていた。そこで、デリバリーのパートナーを依頼したのです。現在のパートナーシップがあるのはそのプロジェクトがあったからだと言えます。
小林 :大和も担当したことのない規模でしたが、「お力添えいただきたい」とお声がけをいただき、ご一緒する運びとなりました。製品のエキスパートとして企業を支える仕事なので、やりがいを感じたことを覚えています。その後も、チャレンジ精神を掻き立てられる案件でお声掛け頂いています。
小林さんは、パートナーとしてデリバリーに関わる魅力を 「刺激を受けつつ対等な立場でプロジェクトに携われること」 と表現します。
小林 :アドビには腕利きの優秀なコンサルタントやPMが多く在籍しています。人材の成長には ロールモデル が不可欠ですが、大和社内の若手に「アドビのあの人を目指したら良いんじゃないかな?」とロールモデルを示せるのはありがたいこと。プロジェクトを進めるなかで学びや発見もあるので、大和の会社としてみてもプラスは大きいです。
小沢 :アドビが提供するソリューションはAEMだけではありません。Webでの発信をどのように行い、どう検証し、何をネクストアクションとするのか。ユーザーの行動にアプローチできるすべてのツールを持ち合わせています。大和さんを始め、パートナーのみなさんとは「これらのツールをどのように活用したら最大限の効果を得られるのか」を対等に話せる関係性を築いている。アドビの若手メンバーもパートナーさんから学ぶことが多く、常に刺激をもらっています。
パートナーシップを結ぶアドビと大和は、今後も共に大きなことを成し遂げられると確信しています。最後に、未来に懸ける想いをそれぞれ聞いてみました。
小沢 :アドビは、今後もパートナーの方々と信頼関係を築き、共に未来を作りたいと考えています。先日行われたカンファレンスでは、現代表からパートナー企業に対して、 「Your Success is My Success」 と声明がありました。 「パートナーの成功は、いずれ自分たちにもリターンとして還ってくる」 。そう考えている私達にとって、大和さんのように心強いパートナーの存在は必要不可欠な存在です。
今後アドビは、2020年に向けて、事業規模を急激に拡大させていく計画を立てています。大和さんとは、今後も強いパートナーシップを築き、ともにビジネスを成長させられたら嬉しいですね。
小林 :小沢さんと話していると、いつだって「お互いにコミットし合いましょう」と提案してくださる。現に、「プロジェクトを増やすので人員を増やすことは可能ですか?」と提案をいただいたこともありました。当時の大和にとってチャレンジングな提案でしたが、現在ではアドビのプロジェクトに関わる人員はご提案いただいた当時の10倍近くになっています。今後も現状に満足することなく、共に高みを目指していけたらと思います。
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