こんにちは、株式会社Genon 代表取締役社長の高原 千晶です。
私たちは、ヒフメドというAI画像解析(皮膚疾患鑑別解析、重症度評価、治療プロトコル)とオンライン診療のプラットフォームを提供しています。
なぜ、皮膚疾患に特化したプラットフォームを立ち上げたのか。今回は、私自身の生い立ちから起業に至るまで、そして事業に込めている想いについてお話ししたいと思います。
科学大好き少女が原点
小さな頃から、「やってみたい」と思ったらすぐ行動するタイプでした。
科学や宇宙は小学校の先生や友達の影響で好きになり、家の冷蔵庫に研究材料を隠して実験したり、パン発酵に夢中になったり。好奇心が何よりの原動力だったと思います。その性格は大人になっても変わらず、高校卒業後は専門学校で遺伝子や栄養について学びました。
重度アトピーで寝たきり「このままじゃ終われない」
しかし、20代前半で私の人生は大きく変わりました。
もともと体質的に弱かった肌やアレルギーが悪化し、アトピー性皮膚炎や合併症のため全身を包帯で巻く生活に。包帯を外すと肌ごと剥がれてしまい激しい痛みがあり、服を着ることすら困難でした。その結果、1年間ほとんど寝たきりの生活を余儀なくされました。数少ない友人に会うことすら避け、天井を見つめて過ごすあの孤独と絶望の日々は今でも忘れられません。
「ただ普通に働いて、普通に生活したいだけなのに」
そう思い続ける中で、病院に行くと同じように皮膚疾患に苦しむ多くの人々と出会いました。そこで私は、患者の数に対して対応できていない医療体制の現状に強い疑問を抱くようになったのです。
一念発起して、ITや業務改善の経験を積むために(株)モノタロウへ転職。
オフィスでも、肌荒れや皮膚トラブルに悩んでいる同僚が思った以上に多く、「これは社会の課題だ」と確信しました。
このころから「この肌で起業しよう」と心に決め、2021年に事業準備し、試行錯誤を重ね、様々医師や薬剤師、その他専門家と2022年1月に株式会社Genon/ゲノンを設立しました。
起業前は、迷いと試行錯誤の連続だった
とはいえ、最初から「医療用AI画像」や「オンライン診療」をやろうと決めていたわけではありません。
当初は、自分なりに「課題に寄り添ったつもり」のサービスアイデアをいくつも考えていました。でも今振り返れば、それらはどれもプロダクトアウトの発想だったと思います。
たとえば、宇宙の無重力空間で治療ができたらどうか? という極端なアイデアや、
遺伝子検査によって最適な治療法を個別に導くという未来志向のサービスなど。
実現性や医療制度との整合性を深く考える前に、「面白そう」と先に手を動かしていました。
次に取り組んだのが、皮膚疾患に特化した診療体験の再設計です。
症状は個人差が大きく、かつ変化も複雑。それなのに、ほとんどの診療は3分で終わってしまう。しかも「自宅治療はどうだったか」が診察中には見えない。そこに違和感を抱いたのが、ヒフメドの原点です。
実際に資金調達やPOC(実証実験)を試みる中で、ユーザーが本当に求めているのは、「治ること」「ちゃんと診てもらえること」で、何度も「本当にこの方向でいいのか」と悩んできました。
でも、そのたびに「まず動いてみよう」と自分に言い聞かせてきました。悩み続けるよりも、小さく試して、反応を見て、変えていく。今思えば、子どもの頃からずっとやってきた「とりあえずやってみる」の延長なのかもしれません。
「ヒフメド」が目指す、医療のアップデート
現在の皮膚科診療は、保険点数の制約から「短時間診療・高回転」が求められています。
実際に、3人に1人は肌の悩みを抱えており患者数は多く、待ち時間が長い一方で、診察自体はわずか3分。4時間待つという状況も珍しくありません。
その結果、診断精度や薬の選択精度に課題が残り、治療効果が現れるまで7日〜4週間かかることもあります。
課題を解決するため皮膚科オンライン診療サービス「ヒフメド」を提供しています。
患者は写真を撮影またはアップロードするだけで、AI画像解析により疾患予測・重症度判定・最適な薬の提案・治療方針を無料で提示。さらに、必要に応じて皮膚科専門医によるオンライン診療を受けられ、
一人ひとりに合わせたパーソナライズした診療を提供します。
これにより、従来よりも効率的で、安心感のある治療体験を実現しています。
患者満足度95.44%、継続率は80%です。
皮膚疾患は見た目や感じ方に個人差が大きく、画一的な診療では限界があります。
だからこそ、データと記録を活かして“自分に合った治療”へたどり着ける環境を作りたいと考えています。
皮膚科を中心に事業を展開していますが、現在、形成外科、整形外科などより多様な皮膚疾患への対応や、医療機関・製薬企業との連携をしています。
そしていつかは、アジアやオセアニアなど海外にも展開して、誰もが「自分に合った治療」を受けられる世界を実現したい。
医療は、まだまだ変えられると信じています。
おわりに
このnoteが、同じように悩んでいる誰かの背中をそっと押せたら嬉しいです。
そして「医療にもっと選択肢があっていい」という私たちの取り組みに、共感してくれる仲間が増えることを願っています。
読んでいただき、ありがとうございました。