武村 琢生
CEO / 代表取締役
2017 横浜国立大学 卒業
2017 株式会社博報堂DYデジタル 入社
2019 トレジャーデータ株式会社 入社
2020 株式会社レモンタルト 創業
── 起業までの背景を教えてください。
自分の中に「こういうことを実現したい」という思いが昔から強く、組織の中の役割だけでは、その思いを実現しきれないと感じていました。実家も会社勤めではなく、小さなビジネスを営んでいた背景もあって、自然と自分で会社をつくることに関心があったのかもしれません。
大学では計量政治学を専攻し、社会課題を定量的に分析する視点を学びました。新卒で入社した会社では、広告効果の測定などデータを活用したマーケティングに携わり、「数字で物事を読み解く」ことに面白さを感じました。
その後、海外市場向けのマーケティング業務にも関わりましたが、当時の企業にはそもそも分析できるようなデータが十分に揃っておらず、「まずはデータを集める仕組みそのものを整えなければいけない」と感じたのが正直なところです。自分の興味は次第にデータ基盤の設計や構築へと向かっていきました。
その後は、技術寄りの立場から企業のデータ活用基盤に関わるようになり、「データを集めるだけでなく、それを活かして価値につなげること」が自分にとって重要だと確信するようになりました。当時はまだWebマーケティングが中心でしたが、製造や流通など非マーケ領域も含めて、企業活動全体を横断したデータの活用に大きな可能性を感じていました。
── レモンタルト創業のきっかけは何ですか?
そうしたキャリアを経て感じたのが、「データだけでは限界がある」ということでした。分析して、示唆を出すところまでは自分たちでできる。
でも、その結果を活かして何かを実装したり、業務を改善したりするのは、別の会社の役割になってしまう。そうすると、自分たちが出した示唆が現場でどう作用したか、成果に結びついたのかを最後まで見届けることができないんです。
そんな時期に、アメリカでコンピューターサイエンスを学んでいた井手が、日本に戻ってくるという話を耳にしました。「何か面白いことをやりたい」と話していた彼に、私から「一緒にやらないか」と声をかけました。彼のガッツと技術力は当時から尊敬しており、共に事業をつくる仲間としてぜひ一緒にやりたいと思いました。
マーケティング領域では、当時から「この人はすごい」と感じていた川島に声をかけました。視点の鋭さと本質を捉える力に優れており、実務だけでなく会社をやる上でも信頼できる存在です。この領域を任せるなら彼しかいないと、迷いなく声をかけました。
大学時代の同級生だった谷にも声をかけました。彼はITコンサルタントとして働きながら、どんな環境でも柔軟に動ける人間で、ベンチャーにもフィットすると確信していました。いわばなんでも一緒に動ける存在として会社を支えてくれると思ったんです。
この4人がいれば、データ・エンジニアリング・マーケティング・ビジネスそれぞれの視点をバランスよく持ち寄り、企画から実行、改善まで一貫した支援ができる。そう考えて、レモンタルトを立ち上げました。
── ご自身の専門領域で大切にしていることは何ですか?
私自身が最も大切にしているのは、「目的から逆算して、必要なデータを明確にすること」です。
企業にはさまざまなデータが存在しますが、まず考えるべきは「何のために活用するのか」。目的を明確にしたうえで、それに対して「本当に必要なデータは何か」を見極める。これこそが、データに関わる仕事の核だと考えています。
現場では「とにかくデータを集めよう」となりがちですが、手段が目的化してしまっては本末転倒です。まずは目指す成果を明らかにし、それにとって必要なデータだけを選び、整え、活用する。それが最も現実的かつ成果に直結しやすいアプローチだと感じています。
── レモンタルトの強みを教えてください。
いまや多くの企業が「DX支援」を掲げていますが、私たちの強みは、少人数ながらも高い専門性をもったメンバーが柔軟に動ける体制にあります。
一般的なプロジェクトでは、企画はA社、開発はB社、デザインはC社……と分かれてしまいがちですが、レモンタルトではそのプロセスを一貫して担えます。企画立案・課題定義からソリューションの構築・実行・改善まで、状況に応じてチーム体制を組んで、スピード感高く成果を出すことができるのが特長です。
また、「多様な課題に対して、適切な打ち手を選び、ちゃんとやりきる」という姿勢が私たちの仕事の根幹にあります。
── クライアントとはどのように向き合っていますか?
私たちは「社外のベンダー」というより、「共に挑戦するパートナー」でありたいと考えています。
支援のゴールはあくまで事業成果であり、「ちゃんと成果につながっているか」は常に自問しながら仕事をしています。高額なシステムを入れても活用されなければ意味がありません。だからこそ、手段よりも目的にこだわる。成果が見えることにこだわる。
社内ではこれを「アンパンマンビジネス」と呼んでいます(笑)。つまり、高コストで成果が伴わない“バイキンマン的”な支援ではなく、正しいことをちゃんとやって、ちゃんと成果を出す“アンパンマン的”な支援を目指しています。
また、すべてを我々が抱え込むのではなく、クライアントが自走できる状態を目指すことも、パートナーとして大切な役割だと考えています。そのための仕組みや文化づくりについても、一緒に取り組んでいけたらと思っています。
── 組織の特徴について教えてください。
現在レモンタルトは約20名の組織で、ビジネス、IT・開発領域、CXマーケティング、デザインなど、複数の専門領域を持つメンバーがユニットとして連携しています。プロジェクトごとに体制を柔軟に組み替えることで、スピード感と質の両立を実現しています。
特徴的なのは、組織が非常にフラットである点です。役職に関係なく意見を言い合える風通しの良さがあり、領域を越えた対話の中から新たなアイデアや取り組みが生まれることも多くあります。
また、領域ごとの深い専門性を持ちながらも、チーム全体としての知見や文化を高め合うことを大切にしています。すでにナレッジ共有の機会は多くありますが、これからは育成にもより一層力を入れ、チームとしての総合力をさらに高めていきたいと考えています。
今後はどんな方と働きたいですか?
ありがたいことに、SUBARU様や福岡ソフトバンクホークス様といった業界を代表するような企業からもご依頼をいただいており、プロジェクト規模や業務量も拡大しています。そのため、今後も新たな仲間を迎えていきたいと考えています。
とはいえ、ただ、会社を大きくすることが目的ではありません。「正しいことを、ちゃんとやる」という価値観のもとで、クライアントの期待に応える中で必要な組織拡大や人材育成が伴っていく。そうした自然な成長が理想です。