川島 聖巨
CMO / CX本部
2017 慶應義塾大学 卒業
2017 株式会社博報堂 入社
2020 株式会社レモンタルト 創業
── 大学時代はどんなことを学んでいましたか?
2017年に慶應義塾大学経済学部を卒業しました。大学では「サービスデザイン」の研究室に所属していて、主にユーザー目線での体験設計、いわゆるカスタマージャーニーにおける顧客接点を、デジタルを通じてどう提供するかという研究をしていました。
「買い物の未来」について、メーカーと共同で考えるようなプロジェクトもありました。僕たちの世代にとって、マーケティングは最初からデジタルが基本でしたし、経済学部でもデータやデジタルメイン中心の研究が多かったですね。
── 博報堂ではどのような経験を積まれましたか?
「データマーケティンググループ」に配属され、日本の消費財企業や自動車メーカーが中国・台湾・ASEANで展開する際のマーケティングやブランディングをサポートしていました。そこで、今の社長である武村と出会ったのですが、この経験は今の仕事にとても活きています。
当時の中国は、すでにEC化率が50%を超えるデジタル先進国でした。そのような環境下で、私はデジタルマーケティングの最前線に身を置き、新しい市場を創造していくことに大きな喜びとやりがいを感じていました。
── 創業までの経緯を教えてください。
僕自身、学生時代に一度起業していたこともあり、「何か新しいことをつくる」ことに惹かれていました。武村とは新卒で入社した会社からの付き合いで、プライベートでもよく会っては、「次に面白いことをやるなら何がいいか」とか、「アーティストをマッチングできるプラットフォームがあったら面白そうだよね」とか、そんな話ばかりしていました。
そんな中、武村から「井手が帰ってくるらしい」という話を聞きました。そこから一気に動き出したという感じですね。「ちゃんと現場に入り込んで成果を出し切るところまで支援したい」。武村のそんな想いにすごく共感しましたし、自分もそういうプロジェクトをやってみたいと思っていました。
この4人なら、企画から開発、マーケ、データまで全部内製でできる。しかも、それぞれが領域のプロフェッショナルでありつつ、柔軟に動ける。メンバー的には不安がなかったので、「これをやる」とガチガチに決めるのではなく、とにかく始めて、走りながら考えていく形でした。
立ち上げ初期は、関係のあった企業の方々からも応援いただいて、ありがたいことにスムーズなスタートになりました。
── 現在のマーケティング・CX領域の役割は何ですか?
レモンタルト全体としては、デジタルに関わる課題を横断的に支援するパートナーを目指しています。その中で、私たちマーケティング・CX領域のチームが担っているのは、ひとことで言えば、「顧客を起点に、企業の変化を共につくっていくこと」です。
かつては、大手SIerが主導して大規模な基幹システムを構築する、というのが企業変革の中心でした。でも今は、一人ひとりのユーザーにどんな体験を届けるかが、企業の競争力そのものに直結する時代になってきています。そうした流れの中で、マーケティングやUXデザイン、コンテンツ設計といった観点から、柔軟かつスピーディに対応していく――それが、CX領域の私たちの役割だと考えています。
── どのようにプロジェクトに取り組んでいますか?
CXというと構想を描くところまでが役割だと思われがちなのですが、そうではありません。プロジェクトの実装フェーズにも深く関わりながら、実際に“動く仕組み”として顧客体験をつくり込んでいくのが私たちのスタイルです。
その際には、他領域の専門チームとの連携も欠かせません。たとえば、ビジネスアーキテクト(BA)がITコンサル的な立場で要件整理や業務設計を担っていたり、データ基盤や機械学習の設計を担当するデータチーム、アプリやシステムを実装する開発チームなどと協力しながら進めていきます。
CXチームは、そうしたチームと連携しながら、顧客接点の最適化だけでなく、プロジェクト全体の成果を見据えて全体最適を図る役割も担っています。
── 具体的なプロジェクト事例はありますか?
福岡ソフトバンクホークス様と一緒に取り組んだ、公式アプリ「ためタカ!」のリニューアルプロジェクトがあります。アプリ自体は一定数のファンに利用されていたものの、その利用が伸び悩んでいるという課題がありました。
目標はアクティブユーザーを数十万規模に増やすこと。そこでまず、アプリをインストールしているものの活用されていない層について、「どんな人たちなのか」「なぜ使われていないのか」「どうすればまた使ってもらえるのか」を把握するため、ファンを対象に調査を実施しました。分析も球団の皆さんと一緒に行い、そこで見えてきた課題やニーズをもとにアプリの機能やUI、コミュニケーション導線を大きく見直しました。
その結果、アクティブユーザーは開始直後から約157%に増加し、今も伸び続けています。さらに、アプリ経由のチケット販売も約3倍まで伸びるなど、副次的な成果も生まれました。
関わったデザイナーやエンジニアなどの社内メンバーも、自分たちの仕事がユーザーの行動変化や数字として可視化されたことに、大きなやりがいを感じたプロジェクトでした。
他にも、あるホテルチェーン様では、旅行サイト経由が中心だった宿泊予約を、自社顧客のデータを活用して直接予約を強化するプロジェクトも行っています。CRMやデータ活用の再設計などを通じて、顧客接点と事業成果をつなぐ支援を行っています。
── 最近感じている変化や可能性はありますか?
最近では、「アプリ」「CRM」「デジタルマーケティング」といった単発の施策よりも、もっと広い視点での支援を求められることが増えてきました。経営企画や経営戦略に近い部分で、ITやDXをどう組み込んでいくか、みたいな課題をいただくこともあります。
これは、企業がデジタルに期待している領域が本当に広がってきている証拠で、僕たちとしてもすごくやりがいを感じます。「目的は何か」ということを大切にしながら、チーム全体で共有して、その成果を一緒に実感できることが一番の喜びです。
── 今後の展望について聞かせてください。
いま、いろんな業界が大きく変わる予兆を感じています。たとえばモビリティやホテル業界など、すでにデータ基盤は整ってきていて、これからは「そのデータを使って何をするか」が問われるフェーズに入ってきました。自由度が増してきた分、可能性も広がっています。
マーケティングというと「販促」や「広告」のイメージが強いかもしれませんが、実際には開発・商品企画・製造といった事業の中枢にもデジタルや顧客視点が深く関わっていける時代になっています。
そして今後は、「マーケティング」「サービス」「業務」「システム」といった、これまで分断されがちだった企業内の機能を、顧客体験を軸に再編していくような支援にも、さらに深く取り組んでいきたいと考えています。企業全体として“お客さまにどう向き合うか”を見直すようなプロジェクトが、今後ますます増えていくはずです。
いろんなバックグラウンドのメンバーが集まって、ただの足し算ではなく“掛け算”で価値を生んでいく。それがクライアントへの貢献につながるし、そういう熱量を持った仲間と一緒に、これからのレモンタルトをさらに成長させていけたらと思っています。