みなさん、こんにちは。脇口水産新入社員の山本です。
新人社員が訊く!脇口水産の社員インタビュー第1回め。今回は、錦工場長へ取材をさせていただきました。脇口水産はマグロの仲卸会社でありながら、自社で工場を持っています。仕入れたマグロの解体・加工を行う出荷業務の要である工場。
その工場長が23年間、どのように仕事に臨まれてきたのか。その思いに迫ります。また社長のマグロ愛を一番近くで見てきた工場長がその想いを工場でどう反映させているのかも気になります。
【錦工場長の経歴】
ーー本日は、よろしくお願いします。では、私は工場長とお話する機会があまりないので、まず経歴からお伺いしてよろしいですか?
錦:入社は1998年。23年前ですね。その間、ずっと工場です。最初何年かは市場の方で、みんなと一緒に作業をしてました。
ーーそうなんですね。
錦:市場終了後に工場に行っていました。
ーー前職もマグロ関係のお仕事だったんですか?
錦:前職はスーパーの鮮魚売り場で働いていました。
ーーそのころからマグロの目利きもできたのでしょうか?
錦:マグロの目利きというのは、特殊なので全然できなかったです。
ーー他の魚と比べてどこが違うんですか?
錦:マグロは10本あっても、十人十色でそれぞれが違うものなんで、それをどう見ていくかが重要です。マグロって奥深いんです。
【工場でのポジション】
ーーでは、続いて工場での仕事内容なのですが、工場の中でどういったポジションがあってどういうことをしているのでしょうか?
錦:工場の役割は、市場で買い付けられて工場に持ってこられたマグロを、取引先の出荷の形態ごとに切り分けて発送することです。取引先によって求めるランクや品質が違うのでそれに合わせて、マグロを選別していきます。ブロックだけでなく、スキンレス、スライス、角切り、特殊冷凍加工まで、それぞれのお客様のご要望に応じた製造を行っています。
その中でも私の仕事は、マグロの選別と注文数を確認して出荷の段取りをすることが中心です。選別とは各取引先へどのマグロを送るか選ぶこと、段取りはマグロを注文に合わせてざっくりと振り分けを行うことです。
選別はある程度見方の決まりはありますが、長年培ってきた直感のようなところもあります。
段取りを組むのは、注文数が多い時ほどとても重要な仕事です。注文総数を見て、1日で仕上げが無理なら仕込みをしておくこともあります。従業員の人数を加味して、彼らの力量なら出荷に間に合うなというように決めていきます。
ーーなるほど。確かに重要です。
錦:知らない方が多いですが、脇口水産の社員はだいたいマグロを切れるんです。トラックのドライバーの2人も切れます。
ーーえっ、そうなんですか。みんなが切れるようになってるというのは、何か理由があるんですか?
錦:脇口水産は2ポジション制を採用しているんです。私だったら、工場でマグロを切り、マグロについて熟知しているからこそ営業もができる。ドライバーは、解体ができてマグロの繊細さを知っているからこそ、商品を手荒に扱わない。これは、マグロ愛にも通じる部分ですね。これいいなと思うマグロが出てきたら、料理屋さんに「いいのありますよ」と提案できたり、それぞれの分野で自分のスキルを活用できると思います。
ーーそれは、自然のものだからこそできる面白みかもしれませんね。
錦:スーパーで働いていた時は、冷凍物を扱うことが多かったし、スーパーさんで売れる値段帯のものを扱っていたので切るマグロの種類も限られていました。だからいま、生で、しかも市場で買ったさまざまな値段帯や特徴のあるマグロを切れるのはおもしろいですよ。自分食べるわけじゃないですが(笑)いいものを切れるのは、やっぱり気持ちいいですよ。切ったマグロがお客様の元へ行って、どこかで食べてもらえていることを思うと嬉しいです。
ずっと毎日が同じ作業の繰り返しとかではなくて、毎日違う出会いがある。それが自然のものを扱う醍醐味ですね。
【23年働いていても、マグロの目利きは日々勉強】
ーー私が想像する工場での働き方は、市場で揚がったマグロを選別して、それを出荷するまでの行程だと思ってるんですが、このお仕事を23年間続けられているモチベーションはなんですか。
錦:工場の仕事は単調に見えますが、自然のものを扱っているので実は毎日変化があるんです。
マグロを目利きして選別することを、極めるのはやっぱり難しくて、もう今でも日々勉強です。説明は難しいのですが、色だけではなく、鮮度、身質などを見ています。
【仕事へのプライド・使命感】
ーー特に冬の時期など(マグロのシーズンは冬)、脇口水産の工場ってすごく忙しくて仕事の時間が長いですよね。注文数が多い日は夜まで残って仕事されているのをお見かけしてて、私だったら働くのがちょっと難しいかなって思う部分もやっぱりあって、そこで錦部長はどういう気持ちでお仕事をされているのか気になります。
錦:やっぱり注文いただいた分をきちっと数量欠品することなく、出荷時間に何が何でも間に合わせるのが使命です。人間なので時間がたってくると、選別が甘くなりがちですが、取引先に見合う商品があるまで選別は妥協しません。市場から届いたマグロが全部「商品」にできるというわけではないのですが、これならいけると自分が選んだ商品を、注文してくれたお客さんが納得して、喜んでもらえるものを出したいと思っています。
また、忙しい現場だからこそ、コミュニケーションを大事にしています。出荷が多いと、やっぱりみんなモチベーションが下がっていって、しんどくなるんですが、それをよし頑張ろうという気持ちに変えていく。そういうのがやっぱ本来の私の仕事じゃないかと思います。私はあまり喋らない方ですが、出来うる限り、ちょっとした休憩のときに従業員たちに声をかけています。やらされ仕事やしんどいととらえるのではなく、頑張った先に達成感を味わえる。そういう雰囲気作りが、本来の仕事なのでお互いに気を使わないで接するようにしています。
【社長の思いと伴走していく】
ーー社長の言葉のどこに共感したのでしょうか?
錦:マグロを商品として見るのではなく、大事にするところです
ーー錦工場長の品質を追求する姿勢はやはり、社長から受け継いだものなのでしょうか?
錦:社長は、マグロに対する敬意というところで、やっぱりすごく熱い方ですね。社長と同じ思いのレベルまではまだいかないですけど、そこに近づきたいと思っています。マグロ愛の精神が最初はあまりわからなかったんですけど、やっぱりずっと一緒に仕事をしていく中で、気持ちが少しはわかってきたんです。まだまだそう社長の思うところまではまだ到達してないんですけどいつかは社長が納得してくれるレベルへ到達したいです。社長のマグロ愛の信念を共有する、そういう工場長になれたらいいなと思っています。
マグロをまな板へそっと置くイメージ再現
【工場でのマグロ愛】
ーーー社長のマグロ愛をもとに、工場でどのようにマグロを扱っているんですか?
錦:工場の方でもマグロの扱い方について決め事があります。もちろん、マグロを手荒に扱いません。例えば、マグロは柔かいので、頭を持ち上げてしまうと身が割れてしまったりするんです。なので、運ぶ際に身が割れてしまわないように頭を水平にして運ぶようにしています。まな板にのせるのときもそっと乗せています。海外からの研修生にも、どうしても伝わりきらない部分あるんですけどそこはきちんと伝えています。
【マグロを切る面白さとは】
ーー多い時で1日何本くらいマグロを切るんですか?
錦:1000本くらいのときもあります。
ーーせ、1000本ですか…。すごい量ですね。
錦:工場ができたばかりの頃、1日に100本マグロを捌いたことがあります。その甲斐あって、いまでは20キロくらいのマグロで頭を落としたものなら早くて30秒で切れます
ーー私は、1本切るだけで10分ぐらいかかります(笑)お客様用の商品だと、クオリティも求められますよね?
錦:そうですね、バランスが大事です。歩留まり(※)も。マグロって切ってみないとわからない部分もあるんで、悪くても何かしら商品として(加熱用などに)活用できるようにしています。切って見るとイメージと品質が違うというのももちろんあります。血が飛んでいたり。でも市場での買値が安くても、品質がいいマグロを引いたりするとうれしいです。当たりを引いた気分です。
※マグロの可食部分のこと。上手い人が切ると可食部分が多くなり、下手な人が切ると過食部分が少なくなるのです…
【マグロの価値観】
ーー私は山口出身で大阪から那智勝浦に来たので、やっぱり珍しいものって思うんですよね。そこで、地元出身の錦部長にとってマグロはどんな存在ですか。
錦:僕にとってマグロは、切っても切れない関係です。
最初はどれを切っても同じイメージで、もう全部一緒に見えて、それが少しずつわかってきて、注文をくれたお客さんから「よかったよ」と声をいただいたことがあり、自分の目利きは大丈夫だと自信を持つことができました。それで、もっと目利き。精度を上げられるように精進していきたいと思います。
【一緒に働きたい人の条件】
ーー工場で一緒に働きたいと思う人はどんな方ですか。
錦:やる気と努力を惜しまない方がいいですね。あと礼儀正しい挨拶もできる。最初のうちは、そんな仕事がすごくできるとかそんなんじゃなくてもいいんです。とにかくやる気と努力を惜しまずやってくれる方ならいいかな。」
ーー努力っていろんなことに何か努力が必要かと思うんですけど、ここを一番頑張って欲しいというところというのはありますか?
錦:やっぱり苦しい時というのはあるのでそういうときに一緒に頑張れる方がいいですね。
ーーありがとうございました。